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留学マナビジンarticles【第二話】実はドゥテルテ大統領は数千人も殺していなかった!フィリピンメディアが誘う数字のミスリード

【第二話】実はドゥテルテ大統領は数千人も殺していなかった!フィリピンメディアが誘う数字のミスリード

ドゥテルテ大統領はなぜ支持率が高いのか?

前回【第一話】正義と幸福の間に横たわる悲しみの続きです。6000人を超す死者が出ているにもかかわらず、ドゥテルテ大統領はなぜ大多数のフィリピン国民から圧倒的な支持を受けているのか、今回は徹底的に分析します。

それでも支持率が高いのはなぜか?

殺人が横行するフィリピンの現状は、多くのメディアによって海外にも配信されました。そのため海外からは、ドゥテルテ大統領は人権を暴力によって踏みにじり、フィリピン国民を恐怖のどん底に陥れている独裁者と見る動きもあります。

海外の人権団体は一斉にドゥテルテ大統領を非難し、非合法な殺人を止めるように勧告しています。

しかし海外の反応とは対照的なのが、フィリピン国内の反応です。就任以来、ドゥテルテ大統領の支持率は極めて高い数値をはじき出しています。

ドゥテルテ大統領の就任直後から麻薬撲滅戦争によって死者が急増しましたが、フィリピンの世論調査機関パルス・アジアによると、2016年7月の調査での支持率が91%、同9~10月は86%、同12月時点の支持率は83%だったと公表しています。

就任直後から見ると微妙に下がってはきているものの、依然として高い人気を誇っていることは明らかです。12月時点の不支持率が、わずか4%にとどまっていることにも注目すべきでしょう。

連日のように死体がさらされているにもかかわらず、フィリピンの国民はなぜこれほどまでドゥテルテ大統領を支持しているのでしょうか?

高まる安全への期待

https://philippinesreport.com/duterte-ranked-1st-popular-president-world-2016/
https://philippinesreport.com/duterte-ranked-1st-popular-president-world-2016/

2016年10月4日の朝日新聞には、マニラのタクシー運転手、ビリャーさん(47)の言葉が掲載されています。
「麻薬中毒者だから殺されても仕方ない。おかげで運転手仲間から強盗被害を聞かなくなった。ドゥテルテは解決策を出してくれる」

30代の男性は「麻薬、渋滞、貧困をなくすと政治家に聞かされ続けたが、何も変わらなかった。ドゥテルテならできる」と語っています。

また、2016年10月20日号の週刊新潮には、「フィリピン・ドゥテルテ大統領、アメリカ罵倒でも支持率は91%」の記事のなかで、現地に住む日本人居住者の声が紹介されています。

「恐怖政治だなんてとんでもない。飛躍的に治安がよくなっているんです。警官が到るところにいて、強盗やレイプ犯と言えばお決まりのバイクの二人乗りを検問してくれています。欧米は麻薬犯罪者の人権ばかり言い立てるが、犯罪に怯える市民の人権はどうなるんだというのがこちらでは一般的ですよ」

現在、フィリピンで進行している超法規的殺人について聞いたとき、私たちは通常、今の平和な日本で同じことが起きたときのことを、つい想像しがちです。そうしたイメージに沿って、人権がないがしろにされていることに恐怖を覚え、怒りを募らせます。

しかし、現在のフィリピンと日本では、治安の良さに雲泥の差があります。殺人・暴行・レイプ・窃盗・詐欺などの犯罪がありふれた日常とともに身近に存在するフィリピンでは、国民の多くが安全を求めています。

「フィリピンでドラッグは純粋な若者たちを蝕んでいて、夜に一人で出歩くことなんてとてもできないのがフィリピンのイメージでしょう? でも、私が子供だった頃は夜8時、暗くなるまで遊べた。今みたいなことはなかった。今ではドラッグ依存症患者が国を支配して、殺人やレイプが多発している。そうした犯罪を野放しにすることの方が、依存症患者を殺害することより、よっぽど多くの人の人権を侵害する行為だと思う」

The Huffington Post 2016年09月28日より引用

ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅戦争が劇薬であることを、フィリピンの国民は十分に知っています。それでも、現在のような治安の悪い状態が続くよりも、他の周辺諸国と同じくらいに安心して暮らせる生活を、国民の大多数が望んでいます。

こうした事情が、ドゥテルテ大統領の支持率を引き上げています。

支持率の高さとメディアによる情報操作

https://www.rappler.com/nation/politics/elections/2016/132335-foreign-media-philippine-elections-duterte-trump
https://www.rappler.com/nation/politics/elections/2016/132335-foreign-media-philippine-elections-duterte-trump

もしかしたら、「このような世論が構築されたのは、政府がメディアを操っているからではないか?」と疑問をもつ人もいるかもしれません。

しかし、けしてそのようなことはありません。むしろ大手メディアは、反ドゥテルテへと動いているからです。

後で詳しくふれますが、フィリピンのメディアを牛耳っているのは、ロペス財閥です。ロペス財閥は前大統領だったアキノ氏と親密な関係を保っており、ドゥテルテ大統領とは多くのことで利害が対立しています。

そのため、ロペス財閥の息がかかったフィリピンのテレビや新聞・ラジオは、ドゥテルテ大統領に好意的な報道はしていません。麻薬撲滅戦争により非合法な殺人が横行していることが、連日強調されています。(副大統領のレニー・ロブレド氏はアキノ氏と同じ政党。ドゥテルテ大統領が辞めればレニー・ロブレド氏が大統領になります。そのため、ドゥテルテ大統領の支持率を下げようとしていると推測できますね。)

いわゆる偏向報道です。アメリカの大統領選挙においても、エスタブリッシュメントが推すヒラリー候補に有利な報道が繰り返されたことで話題になりましたが、現在のフィリピンでの報道にも、明らかに偏向的な報道がなされています。

 
日本でのドゥテルテ大統領に関する報道にも、同じことがいえます。日本のメディアは、こうしたフィリピンでの偏向報道をそのまま取り入れているケースが多いため、反ドゥテルテ大統領の色彩が濃くなりがちです。

メディアは多くの場合、なんらかの意図をもって情報を操作しようとしていることに、私たちは注意したほうがよいのかもしれません。報道に完全な中立性を期待すること自体が、間違っているのでしょう。

フィリピンではテレビや新聞などのメディアの多くで反ドゥテルテ大統領の論戦が展開されているにもかかわらず、国民の八割以上がドゥテルテ大統領を支持しています。

ドゥテルテ大統領を擁護する声

解き明かされるドゥテルテ氏の麻薬撲滅戦争
解き明かされるドゥテルテ氏の麻薬撲滅戦争

ドゥテルテ大統領を支持するバックボーンとなっているのは、主としてインターネットです。ネット上には麻薬撲滅戦争による遺体が盛んに投稿されていますが、そのほとんどはドゥテルテ大統領の思い切った施策を肯定する目的でなされています。

そこで次に、情報サイトである The Asian Policy で取り上げられた「解き明かされるドゥテルテ氏の麻薬撲滅戦争」という動画を紹介しましょう。

この動画は、Can Thought Experiment の名義でフェイスブックに投稿しているグループによって制作されたものです。

テレビや新聞などで伝えられる麻薬撲滅戦争の報道に対して、真っ向から反論する内容となっています。メディアによる情報操作とは裏腹に、ここで説明されていることこそが、大多数の国民に共通する認識なのかもしれません。

これより動画の内容を紹介しますが、動画のメッセージをより具体的に明らかにするために、その内容以上にかなり加筆しています。

されど、筆者の見解ではなく、あくまでビデオの趣旨に沿って説明しているだけですので、誤解しないでくださいね。

ドゥテルテ大統領を擁護する意見のおおよその雰囲気を汲み取ってください。

動画「解き明かされるドゥテルテ氏の麻薬撲滅戦争」より

動画「解き明かされるドゥテルテ氏の麻薬撲滅戦争」は、2016年7月1日から8月30日までの二ヶ月間に生じた麻薬撲滅戦争の成果について、警察の発表した数字を掲げることからはじまります。

訪問した家の数 555,018軒
容疑者逮捕 12,920件
家宅捜索令状の発行 812件
容疑者殺害 895件
自首 麻薬使用者 / 麻薬密売人 626,368件

これが、その内訳です。

全体から見ると、自首した人が97.84%を占め、逮捕されたのはわずかに2.02%に過ぎません。殺害された件数は、さらに低く、全体から見れば0.14%に過ぎません。

殺害者の割合を示すグラフ

マスメディアによる報道で何千人もの死者が出たと繰り返し報道されると、かなりひどい状況にあると感じられるかもしれませんが、実際に殺害されたのは全体の0.14%に過ぎず、きわめて限定的であることがわかります。

死者の数だけをやたらと強調するマスコミの情報操作に踊らされることなく、冷静に判断することが大切です。

ドゥテルテ大統領は司法以外の殺人を認めたか?

ドゥテルテ大統領は司法以外の殺人を認めたか?

また、マスコミ報道ではよく、警察官がかかわっていない殺人の数をカウントしていますが、これはフェアとはいえません。マスコミ報道ではこの二ヶ月間に二千件以上の民間人による殺人が発生したと伝えていますが、それはドゥテルテ大統領が進める麻薬撲滅戦争とはなんの関係もありません。

これまでドゥテルテ大統領が、司法以外の殺人を認めたことがあるでしょうか?

2016年6月30日、のドゥテルテ大統領は就任演説で述べています。
「私は弁護士として、また元検察官として、大統領の権力や権限の限界を知っています。何が合法で何が違法なのかわかっています! 私の然るべき手続きと法の支配へのこだわりは、けして妥協を許すものではありません」。

長年、検事として法の番人であることを実践してきたドゥテルテ大統領が、法律を犯すようなことをするはずがありません。

警察官のための大統領施政方針演説

2016年7月25日、警察官のための大統領施政方針演説においても、ドゥテルテ大統領は明言しています。
「我が国の警察官やすべての役人の方々、どうか任務を遂行してください。そうすれば大統領府の確固たる支援を受けることとなるでしょう。私はあなた方と共にあります。どんな時もです。

ただし、あなた方が権限を悪用すれば、その代価として地獄を見ることになるでしょう。あなたにとって、犯罪そのものよりも悪い結果が待っているかもしれません。

国家警察委員会には調査の実施、そして犯罪行為や違法行為に関わる警察官に対する行政訴訟の裁定を急ぐように命じ、またPNP(警察)メンバーのライフスタイルに関する方針を規定します」。

このように、就任以来ドゥテルテ大統領は、警察官に対して法を遵守するように徹底して訴えてきました。ドゥテルテ大統領が法律を無視した過激な行動を呼びかけているように演出するマスコミ報道とは、明らかに真逆です。

ドゥテルテ大統領が冗談やマスコミへのリップサービスとして発言したことと、公式な場での発言は分けて考えるべきです。

フィリピンは法治国家です。司法と行政は完全に独立しています。ドゥテルテ大統領はフィリピンの司法制度に忠実に、犯罪の摘発に努めているだけです。マスコミによる意図的な情報操作に惑わされないようにしてください。

ドゥテルテ大統領は無秩序な射殺を認めたか?

警察官を前にしたドゥテルテ大統領の演説

ドゥテルテ大統領が下した射殺命令にしても、マスコミ報道には大きな誤解があります。

2016年8月17日、警察官を前にしたドゥテルテ大統領の演説に耳を傾けてください。
「私は皆さんにわかりやすいように、もう一度繰り返します。もしあなたの命が危険にさらされていないのならば、殺してはいけません! しかし暴力的に(容疑者が)抵抗してくるのであれば逮捕するためにあなた方は、その人が法により拘束されるように押さえ込まなければなりません。

もしその人を警察署に連れていけないのなら、もしその人を法の支配下に置くことができないのならば(どうでしょう)。容疑者を押さえ込んで逮捕すること、これはあなた方の任務なのです。しかし、容疑者の抵抗が暴力的であり、それによってあなたの命が危険にさらされるのであれば、撃ちなさい! 射殺しなさい! これ以上に明確なことはありますか?」

ドゥテルテ大統領は一貫して上記のような訓示をしています。一部のマスコミ報道では、ドゥテルテ大統領が麻薬の売人や麻薬中毒者であれば射殺してもよいと奨励しているかのように扱っていますが、そんな事実はありません。

ドゥテルテ大統領は、容疑者が銃をもって抵抗し、警官の命が危険にさらされる危険があるときだけ射殺してもやむを得ない、と言っているだけです。先に警官によって殺害された容疑者数を895件と記しましたが、この数字がまさにそれです。

彼らが殺されたのは、彼らがあくまで抵抗し、警官の命を奪う恐れがあったからこそです。これは警官に認められた正当な権利の行使であり、けして違法行為ではありません。

自警団による殺人の背後に誰がいるのか?

では、警官以外の自警団についてはどうでしょうか?

この問題は、自警団による殺害の背景に誰がいるのかを考える必要があります。

一部のマスコミ報道では、ドゥテルテ大統領自身が自警団を組織したと誤解するようなミスリードを誘っていますが、もちろんそのような事実はありません。

警官にさえ、命の危険がない限り撃ってはならないと戒めているドゥテルテ大統領が、なんの権限ももたない民間人に殺人を許可するはずがありません。ドゥテルテ大統領は公式の場でそのような発言を一切行っていません。

繰り返します。ドゥテルテ大統領は民間人に殺人を奨励したり、殺人を許めるような発言は一言も行っていません。

大統領就任前のパフォーマンスが一人歩きしているだけです。就任前のパフォーマンスは、アメリカのトランプ次期大統領をはじめ、世界中の多くの政治家に見られることであり、ドゥテルテ大統領だけが責められるいわれはありません。

マスコミ報道によると、頭をテープでぐるぐる巻きにされた殺人が麻薬撲滅戦争とさも関係があるように報じられていますが、これはおかしなことです。

このことについて、ドゥテルテ大統領は語っています。

フィリピン麻薬撲滅戦争を徹底解説!【第一話】正義と幸福の間に横たわる悲しみ
「超法規的殺人において、人をプラスチックで巻いてバッグに入れるのは、警察の仕事ではありません。これは警察の仕事ではありません! 私は銃で撃てといっただけです! なぜ時間を無駄にして巻かなければならないのか!」。

こうした殺害の背景については、麻薬カルテル同士の抗争の疑いがもたれています。麻薬カルテルが麻薬撲滅戦争を利用して便乗殺人を行っているに過ぎない、ということです。
麻薬カルテル同士の抗争

麻薬カルテル(まやくカルテル)は、麻薬の製造・売買に関する活動を行う組織。 麻薬の所持、売買、使用等は、多くの国では制限が掛けられており、組織は非合法な存在となる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/麻薬カルテル

麻薬組織のトップが暗殺者を雇えば、殺人はいとも簡単に実行されます。フィリピンでの殺人の相場は、十万円とも噂されています。暗殺者に殺人を実行させ、「麻薬密売人」と書いたボール紙を遺体の近くに置くだけで、麻薬撲滅戦争での殺害と偽装することができます。

このような麻薬カルテル同士の抗争による殺人を、あたかも麻薬撲滅戦争の犠牲者のように装い、ドゥテルテ大統領を非難するのは、正しい行為とはいえません。

新聞社のinquire、テレビ放送局大手のABS-CBN、そしてソーシャルニュースサイトのrapplerが主となって、ドゥテルテ大統領を激しく非難しています。

しかし、本来非難されるべきは麻薬カルテルであって、ドゥテルテ大統領ではないはずです。

麻薬カルテルによる偽装殺人

フィリピンに浸透する麻薬カルテルの根は深いといわれています。上級公務員・軍上層部・警察官・議員・市長・判事に至るまで、麻薬カルテルの手は及んでいるとも噂されています。

だからこそ麻薬はフィリピンに蔓延したとも指摘されています。

果たして麻薬取引に関与している警察官はいるのでしょうか?

いずれにせよ91%のフィリピン人がドゥテルテ大統領を支持しています。果たしてこのまま、高い支持率が続くのでしょうか?

以上、動画「解き明かされるドゥテルテ氏の麻薬撲滅戦争」より、ドゥテルテ大統領を擁護する声の主旨を、実際の動画よりもふくらませてお伝えしました。


詳しくはこちらの動画をご覧ください。

警察官にも広がる麻薬ビジネス

https://globalbalita.com/2015/01/26/police-corruption-and-torture-chambers/
https://globalbalita.com/2015/01/26/police-corruption-and-torture-chambers/

ドゥテルテ大統領を擁護する声にも、それなりの説得力があると思いませんか?

この動画を配信した Can Thought Experiment と名乗るグループの正体については、Facebookを見ても匿名性の陰に隠れており不明です。純粋な一般市民かもしれなければ、あるいは政府による情報操作のひとつとかもしれないと疑えないこともありません。

しかし多くのフィリピン国民が、同じような認識をもっていることはたしかなようです。私の周りにいるフィリピン人に聞いてみても、ほぼ全員がドゥテルテ大統領は正しいことをしていると言っています。

麻薬を止めろと警告してもやめようとしない犯罪者が悪いのであって、ドゥテルテ大統領は法の下で犯罪者に鉄拳を下しているに過ぎない、と主張しています。

多くのメディアを通しても、フィリピンの人々から同じような反応が寄せられていることがわかります。

その一方で、先に事例のひとつとして紹介したセレスティーノさんのように、以前麻薬を使っていたものの、麻薬撲滅戦争を機に麻薬を断った人たちが殺される事件も相次いでいます。

路上に転がる死体が増えるにつれて、麻薬の売人や中毒者が次々に自首しています。しかし、刑務所はすでにどこも定員を大幅にオーバーしているため、簡単な事情聴取だけで帰されるケースがほとんどです。

ドゥテルテ大統領は麻薬の常習者とその売人のどちらに対しても、「降伏か死か」を選ぶように繰り返し求めていました。

そこで、多くの麻薬関係者は降伏を選びました。自首したり、更正施設に入ったり、セミナーに参加して麻薬を断つなどして、降伏の意を表したのです。ところが実際には降伏をしても、殺害される事件が増えていると地元メディアは伝えています。

先に軽くふれましたが、麻薬を断っても、あるいは自首しても殺害される容疑者が多い背景には、麻薬に関係していた警察官が多くいるためという疑念が指摘されています。

日本では考えられないことですが、フィリピンでは麻薬取引に手を出している警官が多くいるといわれています。捜査の過程で押収した麻薬を転売するのが主な手口です。

麻薬撲滅戦争がはじまり身の危険を感じているのは、こうした不正に手を染めた警官たちです。彼らから麻薬を買った中毒者や、取引を持ちかけた麻薬の売人たちが捕まり、真実を暴露されると困ったことになります。

もし、あなたが過去に不正をしたことがある警官であったなら、どうしますか?

不正が暴かれると、あなた自身が殺人のリストに載ることになります。

あなたの悩みを解決する簡単な方法があります。あなたの悪事を知っている証人を、端から消していくことです。いわゆる「死人に口なし」です。

麻薬撲滅戦争の対象となる容疑者リストを作っているのも警官です。彼らにとって都合の悪い人物の名前をリストに載せておくだけで、その人物の処刑がすみやかに行われます。

このような疑惑は麻薬撲滅戦争がはじまった頃から指摘されていますが、それが真実なのかどうかは、未だにわかっていません。

しかしながら常識的に考えて、先の動画であげられていた895件の殺害にしても、その全員が銃をもって抵抗したとは考えにくいものがあります。

警官が威嚇のためではなく、実際に容赦なく発砲することを容疑者の誰もが知っています。そのような状況下で複数の警官から銃を向けられているにもかかわらず、警官に向けて銃を構える容疑者が大量にいると想像するには無理があります。

ほとんどの容疑者は、抵抗することなく投降すると考える方が自然です。

ドゥテルテが暴いた警察幹部の腐敗

https://www.sunstar.com.ph/pampanga/local-news/2016/07/05/duterte-transfer-fear-criminals-483495
https://www.sunstar.com.ph/pampanga/local-news/2016/07/05/duterte-transfer-fear-criminals-483495

警察内部の末端に位置する警官が麻薬に関与している一方、警察の幹部までもが麻薬カルテルとつるみ、その分け前にあずかっていることは、フィリピンでは広く知られていることです。

しかし、こうしたことはあくまで噂の域にとどまっており、犯罪として表に出ることは滅多にありません。

ところが、こうしたフィリピンのなかに広がる疑念を、ドゥテルテ大統領は白日の下にさらしました。

2016年7月5日、ドゥテルテ大統領はルソン地方パンパンガ州のクラーク空軍基地で演説した際に、現職3人を含む警察幹部5人を名指しし、違法薬物密売組織に関与していると明言しました。

名指しされたのは前首都圏警察本部長のパグディラオ警視長をはじめ、前首都圏警察ケソン市本部長のティーニョ警視正、前国家警察西部ビサヤ地域本部長のディアス警視正、すでに退官したガルボ元警視監(セブの元セントラル・ビサヤ管区警察局長)とルート元警視正(元セブ州警察本部長)の5人です。ルート元警視正はこのとき、ビサヤ地方セブ州ダアンバンタヤン町の町長です。

この演説はテレビを通してフィリピン全土に生中継されました。フィリピンの大統領が現職の警官の不正を実名とともに告発するのは異例のことであり、フィリピンの国民のほとんどは、ドゥテルテ大統領に拍手喝采を送りました。

巨大な不正が暴かれるとき、人はそこに大きな感動を見出し、陶酔します。

ドゥテルテ大統領が国民から「英雄」と讃えられるのは、こうした実績があるからこそです。
国家警察麻薬取締班は同日、押収した違法薬物を転売する悪徳警官が存在すると明言し、これから本格的な調査に入ることを宣言しました。

名指しされた現職の警察幹部3人は、ただちに職務を解かれ、ケソン市の国家警察本部に連行されました。5人は容疑を全面否定しています。

パグディラオ警視長は地元メディアのインタビューに答え、「私が麻薬組織を援助しているという事実はない。私は長年、違法薬物と闘ってきた」と弁明しています。

ドゥテルテ大統領は「国家公安委員会の調査を期待する。見せかけではなく、真実を明らかにしてほしい」と要望するとともに、「違法薬物や他の犯罪に関わった者がフィリピンを崩壊させることはない。なぜなら私が彼らを殺すからだ」と相も変わらず強気の姿勢を見せました。

現職町長の不審な死

Albuera市長Rolando Espinosaが刑務所内にて射殺された事件について説明するFerdinand Lavin氏 https://www.philstar.com/headlines/2016/12/07/1651114/nbi-it-was-rubout
Albuera市長Rolando Espinosaが刑務所内にて射殺された事件について説明するFerdinand Lavin氏
https://www.philstar.com/headlines/2016/12/07/1651114/nbi-it-was-rubout

さらに、2016年8月7日未明にもテレビを通した演説において、ドゥテルテ大統領は「私が話すことに適正手続きなど関係ない。そんな手続きはないし、弁護士もない」と語ったあとに、麻薬との関与が疑われる人物として160人以上を名指ししました。

そのなかには、市長など自治体の長50人以上、判事9人、現職議員や元議員、現職および退職した警察官や兵士の名前があげられていました。

まさに驚天動地とはこのことです。公知の噂ではあったものの、麻薬に関連する汚職を行っていたとして、現職の市長や裁判官・議員・警察と軍の幹部たちの名前が、次々と公のもとにさらされたのです。

ドゥテルテ大統領は公開された160人についての護衛の引き揚げを命じ、彼らの武器所持許可を取り消しました。そして、「たとえわずかでも(彼らが)抵抗のために暴力を行使すれば、私は警察に『撃て』と命じるだろう」と警告したのです。

まるで映画のなかのワンシーンのような光景です。悪に手を染めた権力者に対して、正義の鉄拳をふるうドゥテルテ大統領という構図はあまりにわかりやすく、ドゥテルテ大統領をヒーローへと押し上げることに成功しました。

この演説の余波として、2016年11月5日に事件が起きました。このとき名指しされた町長の一人が、刑務所に収監中にもかかわらず、警察官によって射殺されたのです。

中部レイテ島(Leyte Island)アルブエラ(Albuera)のローランド・エスピノサ(Rolando Espinosa)町長とその息子が麻薬取引に関与しているとして名指しされました。

身の危険を感じたエスピノサ町長は自ら警察に出頭したことで逮捕され、刑務所に収監されていました。

しかし11月5日の早朝、刑務所内で不法に銃器を所持していないか警官が監房内を捜索している際、エスピノサ容疑者が隠し持っていた銃を発砲したため、やむなく射殺したと警察は発表しました。

この事件についてはあまりにも不自然なため、フィリピン国家捜査局(NBI)による調査が行われました。フィリピン国家捜査局とは、アメリカでいう米連邦捜査局(FBI)に相当する組織です。

調査を終えたフィリピン国家捜査局は同年12月6日、「当時市長は監房内で無防備な状態だった」とする調査結果を発表しました。警察やドゥテルテ大統領の主張を真っ向から否定したのです。

NBIのフェルディナンド・ラビン(Ferdinand Lavin)氏は「町長らを射殺し、そのあと嘘の証言をした」として、警官24人を殺人と偽証の罪で告発するよう求めました。

この事件は、警察による超法規的な殺人を裏付ける結果となりました。

それでも民衆の立場からすれば、それまでふれることのできなかった暗部にはじめてメスが入り、巨悪がなぎ倒されていく様を目の当たりにすることで、快哉を叫びたいという心理が働いているようです。それはきわめて自然な感情の発露といえるでしょう。

ただし、正式な裁判を経ることなく一方的に処刑されている状態では、本当に町長が不正に手を染めていたのかどうかはわかりません。名指しされた160名にしても、政権側の一方的な名指しであることには、留意すべきでしょう。

矛盾をはらみながらも、ドゥテルテ大統領が見せる巨悪をなぎ倒すというわかりやすい正義の構図に対し、フィリピン国民の多くはそれを支持しています。

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ドン山本 フリーライター
ドン山本 フリーライター
タウン誌の副編集長を経て独立。フリーライターとして別冊宝島などの編集に加わりながらIT関連の知識を吸収し、IT系ベンチャー企業を起業。

その後、持ち前の放浪癖を抑え難くアジアに移住。フィリピンとタイを中心に、フリージャーナリストとして現地からの情報を発信している。

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