フィリピンセブ島にもあるスラム街。スラムツアーと注意点

「スラム観光」という言葉を聞いたことがありますか?その名の通り、外国のスラム街を観光する旅です。

海外旅行と言えば、遺跡や有名繁華街など、いわゆる「定番スポット」に行くのが主流ですが、今は海外旅行にもさまざまな目的があり、華やかな面だけではなく厳しい現実も見たいという需要もあるのです。

そういった需要に応えるように、いくつかの国でスラム観光が催されるようになっています。

ただ、スラム観光=スラムで暮らす貧しい人々を見世物のように扱うというイメージもあり、賛否両論あるのも事実。

旅の需要は多様化し、そこに対する視点も様々なものがあると言えますね。

今回は、そんなスラム観光について情報をまとめました。得られるものや観光の方法、注意点といった情報です。

また、スラム街は語学留学の有力候補であるフィリピンのセブ島にもあることをご存知でしょうか?

今回は、セブ島のスラム街を含め、世界のスラム街の実情にも触れながらスラム観光について紹介していきます。

世界のスラムの実態

スラムとは

スラムとは、「主に都市部やその周辺にできる貧しい人々が居住する地区で、インフラなどの公共サービスが行き届いていない地域」のことです。

スラム観光5
スラムが形成される流れとしては、一部の地域で急激な都市化が進み、地方に住んでいた多くの人が仕事を求めてその都市に集まってくるものの、仕事の供給量を上回る人口増により十分な仕事が与えられず、行き場を失って都市周辺に人々が住み着いてしまう(多くは不法占拠)というものが一般的です。

そのため、スラムは農村などの地方よりも、都市周辺に形成されやすいのです。

多くのスラム街が不法占拠でできているということもあり行政サービスは行き届いておらず、狭い地区に多くの人が住んでいる上に、水や電気などの生活インフラも不十分。不衛生な環境のために病気も発生しやすく、治安も良くない傾向にあります。

世界のスラム状況

国連広報センターによると「2012年時点で、71億人の世界人口のうち10億人近くの人々はスラム街に住んでいる」とのことです。
引用元:https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/

スラム居住人口が多い国としては、中国、インド、ナイジェリア、ブラジルなど、総人口が多い発展途上国が挙げられます。

下記に、有名なスラム街をご紹介します。

インド

インドには、ムンバイという大都市がありますが、その中にダラヴィというスラム街があります。

アジア最大のスラムとも言われ、2.5平方kmくらいの範囲に約70万人の人が住んでいると推定されています(当然、正確な人口はわかりません)。

人口密度は31万人/平方km。ちなみに東京の人口密度が6,500人/平方kmですので、ダラヴィの人口密度は東京の約50倍ということに。いかに人口が過密しているかがわかると思います。

映画「スラムドック・ミリオネア」の舞台にもなった有名なスラム街ですね。

ブラジル

スラム観光4

ブラジルには世界に名を知られるリオデジャネイロやサンパウロなどの大都市があります。その大都市内に、政府が認めていないスラム街がたくさんあるのです。なおブラジルでは、スラム街は「ファベーラ」と呼ばれています。

そもそも国家の治安レベルが低いブラジルですので、ファベーラの治安も当然悪く、殺人や強盗などの犯罪も頻発しており非常に危険。

しかしリオデジャネイロのファベーラには、街を一望できる丘があるなど、スラム観光としての人気も高い場所です。

インドネシア

インドネシア最大の都市ジャカルタ。東南アジアを代表する世界都市です。ここにも急激な都市の発展から取り残されたかのように、貧しい人々たちがスラムを形成して暮らしています。

ただインドネシアに関しては治安面や衛生面のレベルは低いものの、「都市化が追いついていないだけ」という意見もされており、今後の国の発展に伴い徐々に改善されていくとも見られています。

スラム街の形成にも、いろいろな背景があるのですね。

フィリピン

https://adb.exposure.co/life-after-smokey-mountain/ から引用(スモーキーマウンテン)

フィリピンにもスラム街はあります。

首都マニラに大規模なスラム街「スモーキーマウンテン」があります。フィリピンではゴミは焼却せず、リサイクル可能なものだけを集めてその他は埋め立ています。そのためゴミをリサイクルする人たちがその周りに住み出し、スラム街が形成されました。

実は、語学留学先としても観光地としても有名なセブ島内にもスラム街があるのです。セブシティの中心エリアから少し離れたところにはスラム街があります。

なおフィリピン政府は、2020年までにマニラやセブからスラム街をなくす計画を立てて取り組んでいます。

スラム観光で得られること

そんなスラム街、訪問して得られることはなんでしょうか。

それは一言でいえば「知見を得るため」。

日本に住んでいる日本人でも、外国にスラム街があるということは知識として持っている人もいるでしょう。写真や文章でどんなところなのか情報を持っている人もいるかも知れません。

しかしそれはあくまで誰かの目や考えを通した情報でしかありません。現地に足を運ぶことで初めて知ること、実感するもののほうが遥かに大きいはず。スラム観光ならではの獲得物は、自分の目で見て自分の肌で触れることによって得られるリアルな知見なのです。

以下に具体的な項目をあげます。

生活環境や仕事の実態が見える

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まずは生活面です。

スラム街に入るとその光景や独特の匂いにまず驚くと思います。正直に「こんなところに人が住めるのか」と思ってしまう人もいるでしょう。それに加えて電気や水道など生活インフラの質の低さ。これも日本では想像できないレベルです。

これらを踏まえ、彼らがどんな環境で暮らしているかを実感できると思います。

なお、スラム街は暗い不幸な地区というイメージを持っている人もいるかもしれません。

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しかし、現地の人は意外なほど明るく楽しそうに暮らしています。劣悪な環境でも前向きに生きている姿に、いい意味で衝撃を受ける人もいるのではないでしょうか。

またスラム街にも仕事はあります。

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人々がどんな仕事に従事しているのかを知ることで、スラム街が決して外界から切り離された地区ではなく、日々の自分たちの暮らしにも接点やつながりがあると気づく人もいるでしょう。

日常の暮らしでは実感できない格差を理解する

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スラムを訪問することで、普段の自分の暮らしとスラム街の人々の暮らしの間にある大きな格差を感じれるはず。

日本なら当たり前に与えられているものが、彼らには与えられていない。

スラム街は罪を犯した人を収容しているわけではありません。ただそこに生まれたからそこで生活しているだけです。この記事を読んでいるあなた自身、ただそこに生まれ、ただそこで生活しているという人も多いでしょう。

そういう意味では、スラムに住んでいる人もあなたも同じなのです。

ただ、場所が違うというだけでこれほどの生活格差があるという不合理。それが事実として存在しているのです。

この事実を目の当たりにすることで、いろいろ感じること、考えることがあるでしょう。

スラム街に観光収入が入る

スラム観光により、当然ながら現地に観光収入が入ります。スラム観光をする側のメリットではありませんが、現地にとっては貴重な収入源です。価値のあることといえるでしょう。

スラム街に住んでいる人にも誇り高い人はいます。哀れみの目で見て寄付をするようなことは、場合によっては失礼にもなりかねません。その点、観光収入という形であれば立場は対等ですので心配は不要ですね。

フィリピンセブ島でスラム観光するならスタディツアーがオススメ

フィリピンでスラム観光をしたいなら、スタディツアーに参加することをオススメします。

スタディツアーとは、現地を支援するNGOの活動を見学したり、自らボランティアをしながら旅行をするもので、一般の旅行に比べ学習要素が強いものとなります。

スラム観光の目的を踏まえても、スタディツアーが望ましいといえるでしょう。

以下に、スタディツアーを取り扱っている法人をご紹介します。

誰でもヒーロー

誰でもヒーロー
https://daredemohero.com

貧困層のフィリピン人の生き方に感銘を受け、フィリピンの貧困問題を根本から解決すべく活動している日本人が代表を務める「誰でもヒーロー」です。

セブ島を中心に、フィリピンの子どもたちと教育を通じて交流するスタディツアーを行っています。

貧困層の子どもたちの暮らしを実際に視察できるほか、オプションでゴミ山や墓場に住む人達の視察もできるものがあります。

日程は半日・一日という短期のものから、約2週間という長期のものまであり、夏休み等を利用してツアーに参加する人が多いようですね。

CECのプログラム

CECのプログラム
https://www.cecj.net/cebu/index.html

CECは世界の各国で海外ボランティアを行っている団体で、フィリピンにも活動プログラムがあります。

セブ島に暮らす貧困層の子どもたちとの交流を通じて現状を知るためのツアーがあり、高校生が参加できるものや、親子で参加できるものもあるのが特徴です。

墓地で暮らす貧困層のかたと一緒に食事をするプログラムなど、食育を中心としたものもあります。

期間は1週間~3週間と長期のため、腰を据えて取り組むことができるでしょう。

セブンスピリット

セブンスピリット
http://seven-spirit.or.jp/studytour/

フィリピンを中心に活動しているボランティア団体「セブンスピリット」では、フィリピンの子どもたちと音楽とスポーツを通じて交流を図っています。

スタディツアーとしては、1日コースにてスラム街を訪問しての出張音楽教室のサポート、貧困に関するプレゼンテーション参加、子どもたちとの交流といった内容。

数カ所のスラムエリアを訪問するようになっており、スラムごとの特徴や実態を知ることができます。

グローリアセブ

グローリアセブ
https://gloleacebu.com/volunteer/

「グローリアセブ」は、フィリピンのセブ島にて、山岳地域やスラム街での活動を行っているボランティア団体です。

子どもたちへの道徳教育への参加やスラム街の家庭訪問などを通じて、セブ島に住む子どもたちの実態を理解することができるほか、食事配給の支援を通じて食環境の実態を把握することもできるでしょう。

スタディツアー実施期間は9月末~12月初旬。1回あたりの開催日程は5日間ほどとなっています。

SLPC

SLPC
https://go-cebu.com/studytour.html

SLPCもセブで活動するボランティア団体です。

セブ島の貧困解決のため「教育」「食」「職」の視点で支援活動をしています。活動場所は墓地スラムや山村集落など、セブの格差を象徴する地域が中心です。週末ボランティアという形で土曜だけ参加することもできますよ。

セブ島スラム観光のリスクと注意点

上記のようなスタディツアーに参加することで、セブ島スラムを観光することができます。また、スラム訪問には現地に熟練したスタッフが同行してくれるため、概ね安全に過ごすことはできるでしょう。

それでも、健康管理面や安全面などは十分注意しなくてはなりません。

また、スラム観光は一般的な旅行(観光地を訪れるものなど)とは違います。学習意欲を持って現地を訪れるということは、絶対に忘れないようにしてくださいね。

以下に、スラム観光にあたっての注意事項を詳しくご説明します。

破傷風の感染

破傷風は傷口から侵入するウィルスにより感染する病気で、致死率も高い恐ろしい病気です。

日本では「昔あった怖い病気」といったイメージかも知れませんが、ウィルス自体は日本も含め世界中のどこにでも存在しています。

ただフィリピンは気温が高いため、ウィルスが増殖しやすい環境であること、またスラムでは衛生管理レベルが著しく劣ることもあり、日本に比べ感染リスクが高いことは認識しておいたほうが良いでしょう。

破傷風に関しては環境による感染リスク以前に、そもそも「予防接種を受けているかどうか」を確認することが重要です。

「日本人は幼少期に全員ワクチン接種しているのでは?」と思っている人もいると思いますが、ワクチン接種の有無や回数は産まれた時期によって異なるのです。もしかしたらワクチンを接種していない人もいるかも知れません。

現地に渡航する前には必ず血液検査を行い、破傷風の抗体を持っているかどうか確認し、ないようであればワクチン接種を受けるようにしてください。

抗体検査は多くの病院で対応してもらえますが、私が実際に通って破傷風の注射を打ってもらったのは、新橋にあるこちらの病院です。
公式サイト→https://www.ihc-clinic.jp/

↓記事はこちら↓

狂犬病

狂犬病は犬の病気と持っている人もいるかも知れませんが、ヒトにも感染します。そして発症するとほぼ生存は不可能という、それほど恐ろしい病気です。

ウィルスを持つ犬、猫、猿などの動物に噛まれたり傷口をなめられたりすることで感染、発症する可能性があります。

日本では狂犬病予防のための法律も厳しく制定され、飼い犬は必ずワクチン接種を受けることが義務付けられているほか、飼い主が確認できない犬(野良犬・野犬)は処分の対象となるため、狂犬病の発症は数十年確認されていません。

しかしフィリピンは管理レベルが日本とは大きく異なります。

無許可で飼われている犬や野犬も多く存在し、ワクチン接種は追いついていないのが現状です。ましてやスラムにいる動物なのですから、とてもワクチン接種が徹底されているとは言えないでしょう。

まず現地で犬などの動物に不用意に近づかないことを徹底してください。また、狂犬病は人用の予防接種もあります。スラム街に行く方は、渡航前に予防接種をしておくことをおすすめします。

万が一、狂犬病の犬に噛まれたらすぐに石鹸で水洗いを5分程度し、アルコールをつけ、24時間以内に近くの病院に行ってください。
発症までは数ヶ月から数年と言われていますので、その間にワクチンを打つ事で発症を防ぐことが出来ますが、いずれにしても対処は出来るだけ早く行う事が大事です。

腕時計や、ネックレス、イヤリングなどのアクセサリーは身に着けない

海外に行くときの基本事項ではありますが、腕時計など見るからに高価なものは身に着けないようにしてください。特に女性の方は、ネックレスやイヤリングなどのアクセサリー類も身に着けないようにしましょう。

現地にいる人が全員悪いことを考えているわけではありません。ほとんどの人は善良な心を持っています。ましてやツアーでいく箇所は現地の人達もマナーがあります。

ただ、先述の通りスラムは生活レベルが日本とは大きく異なります。日本人が何気なく身に着けている装飾品でも、彼らにとって見れば相対価値が非常に高いのです。

それらが目につくところにあると、現地の人を刺激してしまうことを忘れないようにしてください。盗難に遭うのも十分問題ですが、場合によっては強盗といった形で危害を加えられるリスクまであります。

対策は、目立つような服装や格好をしないことです。海外に行くときの服装に関する基本は「現地の人に合わせる」こと。これを徹底するようにしましょう。

カメラや携帯電話を出さない

カメラや携帯電話の扱いも要注意です。こちらもツアーで行く場所に関しては現場の大人から子どもたちまで、状況を理解しているので基本的に問題ありませんが、100%取られないわけではありません。

カメラも携帯電話も、非常に高価な電子機器であるということを忘れないようにしてください。

それに加え、カメラや携帯電話に関して注意してほしいのが「写真撮影」という行為です。

スラムは日本ではなかなか見られる光景ではありません。

そのため、その様子を記録したり人に伝えたりするため、写真に収めたいと思う人もいるでしょう。しかし、スラム街は本来、観光地ではありません。人々が暮らしている居住地です。

突然見知らぬ外国人がやってきて自分の家の写真を撮られたら…気にならない人もいるとは思いますが、嫌な気になる人も当然いますよね。それをきっかけにトラブルになることも考えられます。

セブ島のツアーではそこが観光地化しているため撮影できる場合が多いですが、まず事前にガイドの方に確認しておきましょう。

いずれにしても重要なのは、そこで暮らしている人へのリスペクトです。

まとめ

スラム街に行くことは、日本に住んでいる限りまず体験できないことでしょう。
(日本にもスラムと呼ばれる地域はありますが、海外と比べると規模や程度も大きく異なります。)

今までスラムに関する知識がまったくなかった人も、ニュースやネット記事などで一通りの情報に触れて知った気になっていた人も、実際に現地に足を運ぶことでいろいろな意味で印象が変わると思います。

より広い視点で格差や平和を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

興味を持った方は、ぜひ各種のボランティア団体のサイトをご覧いただければと思います。