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なぜフィリピンは米国との訪問軍地位協定を破棄するのか?中国との南シナ海問題をわかりやすく解説

2016年にドゥテルテ政権が発足以来、フィリピンは従来までの親米路線を改め、中国への傾倒を深めています。

2月11日には、フィリピン軍と米軍との合同演習を可能にする「訪問軍地位協定(VFA)」を破棄すると米国に通告したことが明らかにされました。

失効まで180日間の猶予期間があるため、今後の交渉次第でどうなるのかはまだ不明ですが、フィリピンとアメリカとの軍事協力に亀裂が入ったことは明らかです。

フィリピン軍の中枢にいる幹部のほとんどは親米派のため、このまま一足飛びにフィリピン軍と米軍の軍事協力が解消されるとは予想しにくいものの、フィリピンがアメリカを離れ、次第に中国との関係強化に動いていることは間違いありません。

ドゥテルテ大統領は、なぜ中国になびきつつあるのでしょうか?

その背景について探ってみます。

目次

1.南シナ海の南沙諸島問題

ドゥテルテ大統領が中国に接近する背景には、中国とフィリピンの微妙な関係が影を落としています。1990年初頭、米軍がフィリピンにあるスービック海軍基地とクラーク空軍基地から相次いで撤退して以来、中国は南シナ海での海洋覇権を拡大する動きを強め、周辺諸国と紛争を引き起こしています。

南シナ海
ことに南シナ海の南沙諸島はフィリピン・マレーシア・ベトナム・台湾・ブルネイ、そして中国の6か国(地域)が領有権をめぐって争っていることから、「火種の島」と呼ばれています。

フィリピンは南沙諸島にある9つの島々と環礁の領有権を主張しています。なかでもフィリピンが実効支配しているパグアサ島は領有権争いの最前線として、中国との軍事衝突の危機に常時さらされています。

2014年以降、中国は南沙諸島に人工島を築き、7つの環礁を軍事拠点へと変貌させました。この7つの環礁は、すべてフィリピン側も領有権を主張している場所でした。

つまり、フィリピンの立場からすれば、自国の領土内で中国軍によって勝手に埋め立て工事が行われ、滑走路や灯台、港湾施設などを違法に造営されたことになります。

このことに対してフィリピンでは怒りの声が上がりましたが、軍事的威圧のもとに為された中国の実効支配に抗うことなど、到底不可能です。

領土問題の実態は実効支配した方が勝ちであり、された方が負けです。実効支配が話し合いによって行われた例はほとんどなく、結局は軍事力の差が勝敗を決します。

中国人民軍とフィリピン軍の陣容を比べてみれば、フィリピン軍がいかに貧相か際立つばかりです。2017年のフィリピンの国防費は約27億8,000万ドルですが、中国の国防費の54分の1にすぎません。

陸海空を併せた総兵力は12万5000人ですが、中国は陸上兵力だけで97万5000人です。航空機や艦船の数も質も、中国とは比較の対象にさえなりません。

それでもフィリピンの軍事力は 2019年版の世界軍事力ランキングでは第64位です(日本は第6位)。フィリピンの軍事力はけして高くはないけれども、それほど低いわけでもありません。中国の軍事力が傑出しているだけです。

東南アジア諸国が束になっても中国軍には適いません。中国は航空機の数で東南アジア全体の約3.4倍、艦船で2.6倍、国防予算で4倍です。

ミサイルを放ったり爆撃はしないまでも、軍事力を擁しているというだけで、軍事的威圧は十分に効力を発揮します。

フィリピンをはじめとする東南アジア各国は、自国領土と主張する南沙諸島の圏域に中国によって人工島を造られても、そこが軍事拠点化されても、抗議の声を上げるだけで、なにひとつ有効な手を打てませんでした。

事がこじれて軍事衝突となった場合、勝ち目がまったくないからです。

このような状況下において、フィリピンとして中国といかに向き合うべきかは、フィリピンという国家の興亡(こうぼう)に関わる重大事です。

フィリピン単独では中国の軍事的威圧に対抗する術はないため、アキノ前大統領はアメリカとの接近を深め、アメリカの軍事力を利用して中国を牽制(けんせい)しようと計りました。

アメリカの軍事力は中国軍を上回っているだけに、中国としても脅威です。

アメリカではオバマ政権の時代から米海軍の艦船による「航行の自由作戦」を繰り返し、威嚇によって南シナ海における中国の実効支配を止めようとしてきました。

しかし、実質的な効果はまったく上がっていません。

かえって中国に「米軍の脅威から南シナ海の主権を守る」という口実を与え、軍事拠点造営の正当化に利用される結果となっています。

そんななか、2016年から政権を担ったドゥテルテ大統領は、親米一辺倒だった前政権までの手法をかなぐり捨て、経済・外交・安全保障の軸足を、長年の同盟国であるアメリカから中国へ移す「ピボット(旋回)戦略」を打ち出しました。

南シナ海の領有権問題は棚上げとし、中国との宥和(ゆうわ)政策へと舵を切ったのです。

その背景にはドゥテルテ大統領には元来、拭いがたい嫌米感情があったこと、大学時代の恩師だったホセ・シソンはフィリピン共産党の創設者であり、その影響を強く受けていること、もともと社会主義者を自認する左翼思想の持ち主であること、等々が指摘されています。

さらに、親中への決定的な要因となったのは、「南シナ海で中国とフィリピンの武力衝突が起こったとしても、アメリカは支援しないだろう」との見透しを立てたこと、といわれています。

トランプ政権下でアメリカは2019年の3月、南シナ海でフィリピンの軍や公船、航空機に対して中国によって武力攻撃が為された場合、米比相互防衛条約の下、米軍がフィリピンの防衛義務を果たすと、初めて公式に表明しました。

しかし、ドゥテルテ大統領の抱えるアメリカに対する不信感が消えることはありませんでした。

ドゥテルテ大統領は次のように発言しています。
「米国は『あなたたちを守る』と言った。しかし、肝心なのはどんな宣戦布告も議会の承認が必要だ。米議会がどれだけひどいか知っているだろう」

アメリカが他国と戦争を始めるためには米議会の承認を必須とします。ドゥテルテは米議会がフィリピンのために中国との戦争に踏み切ることはないだろう、と匂わせることで、結果的にいざというとき、アメリカはフィリピンを助けないだろうとの持論をなぞったのです。

ロレンザナ国防相は「フィリピンはどの国とも対立せず、どの国とも戦わない。南シナ海で戦争に突入するのはフィリピンでなく、米国だ」と、米比相互防衛条約の見直しを協議したい意向を示しています。

フィリピンが南シナ海での軍事衝突に巻き込まれることを極度に恐れていることは、間違いありません。

もはや南沙諸島に中国の軍事拠点が築かれ、実効支配が確立した今、現実に目を移せば、フィリピンには中国と共存する以外に道はないのかもしれません。

「われわれは中国を止めることができない。中国との戦争を宣言すれば、すべての軍を明日失うだろう」と語るドゥテルテ大統領の言葉に、現実主義へ傾倒せざるを得ない苦しい胸の内が透けて見えます。

ドゥテルテ政権下で進められた「対中太陽政策」によって、中国からの投資は促進され、アキノ前大統領の頃と比べて直接投資額は20倍に膨れ上がりました。今や中国はフィリピンにとって最大の貿易相手国となり、両国の経済的な結びつきは強化されています。

インフラ整備計画においても中国からの投資は確実に増えました。フィリピンにとって日本が最大の援助供与国である事実は変わらないものの、ドゥテルテ政権発足後の国債を比べてみると、円建て国債(サムライ債)発行額は1,542億円、元建て国債(パンダ債)発行額は39億6,000万元(約633億6,000万円)と発表されており、フィリピン政府の資金調達に中国が大きく貢献していることが見てとれます。

2018年と2019年にドゥテルテ大統領と習近平国家主席が互いの国を訪問し合うなど、両国間の官民ハイレベルでの交流も活発化しています。それに伴い経済的な繋がりも密接となり、かつてはアメリカに依存していたフィリピン経済が、今度は中国への依存度を深める結果となっています。

依存が深まるほどに、中国の望むことを実行しようとする忖度(そんたく)が働くことも、仕方のないことといえそうです。

「訪問軍地位協定(VFA)」の一方的な破棄や、中国の主張する「一つの中国原則」に配慮して新型コロナウイルスの感染防止策として「台湾からの入国禁止」を一時的とはいえ発動したことは、中国への忖度の一環といえるでしょう。

そのことが目先の豊かさには繋がるものの、果たして本当にフィリピンの明るい未来を照らし出す力となり得るのかどうかは、まだわかりません。

2.中国の支配下にあるフィリピンの電力供給網

南シナ海での中国の軍事的威圧やフィリピン経済における中国マネーの流入とは別に、フィリピンにとって中国に逆らえない状況が、もうひとつ生まれています。

それは、フィリピンの電力供給が中国に抑えられていることです。

フィリピンでは電力システムの運用を民間企業のNGCP(National Grid Corporation of the Philippines)が請け負っています。ところが、NGCPの株式の4割を中国の送電会社である国家電網公司が保有しています。

「国家電網」は世界最大の電力会社として知られ、2018年のフォーチュンの世界企業500社売上高番付で2位にランキングされている中国企業です。

中国の企業は、日本やアメリカなど民主主義国の民間会社とは全く違います。全ての企業は中国共産党の完全な支配下にあります。

中国外務省は国家電網が、NGCPのプロジェクトについて現地のパートナーとして関与していると述べています。

どう関与しているのかといえば、次のとおりです。

株式の4割を保有している強みを活かし、国家電網はNGCPに中国人技術者を送り込んでいます。さらに送電システムの主要箇所には中国人技術者しかアクセスできない体制を、現在整えています。

この事実はフィリピンの国会でも問題とされ、調査報告書が提出されています。調査報告書によると「理論的には中国共産党政府は国有企業である国家電網公司を通してフィリピンの電力供給システムを停止させることが可能」と結論づけています。

もし、中国とフィリピンの間で有事が発生した場合、フィリピン国内の送電が中国によって停止される危険性がある、ということです。

現代社会において電力は、欠かすことのできないライフラインです。フィリピン人数千万人のライフラインが中国人技術者の手に握られていることは、フィリピンの安全保障に関わる重大な問題です。

中国は国策として海外の電力供給会社の株式を買い集めています。オーストラリアの電力供給会社(クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州のガス電力供給会社JEMENA)の株式も国家電網によって60%取得されています。

軍事力を行使しなくても、電力や水源などのライフラインを抑えることにより、戦わずして勝つ戦略を、中国は採用しています。

まさに、「孫子の兵法」そのままです。

電力という首根っこを中国に掴まれたフィリピンとしては、ますます中国の意向に逆らえない苦境に追い込まれています。

3.尾を引くドゥテルテ対財閥の戦い

ドゥテルテ大統領が中国との関係強化に動いているのは、中国を恐れているからだけではありません。

フィリピン経済がアメリカの影響下を離れ中国へと接近することは、ドゥテルテ大統領の悲願ともいえる財閥崩しに繋がっている、という事実を忘れるわけにはいきません。

フィリピン財閥の経済基盤が盤石なのは、長年にわたって培われた米企業との既得権益を握っているからこそです。中国との経済的なパートナーシップが強まれば、これら米企業との既得権益は自然に消失します。

また、台湾との決別は、ドゥテルテ大統領にとって政敵に当たるアキノ前大統領の母体であるコハンコ財閥の力を削ぐことにも繋がります。コハンコ財閥は中国福建省に端を発する一族であり、台湾系の財閥だからです。

現在、ドゥテルテ大統領はロペス財閥の保有するABS-CBN放送の放送免許の更新を認めない意向を示しています。なにかと反ドゥテルテの報道を繰り返すABS-CBN放送を閉鎖に追い込むことが狙いです。

思えばマルコス政権下で潰されたロペス財閥が復活できたのは、コラソン・アキノ大統領の決断によってでした。コハンコ財閥出身のコラソン・アキノ大統領が、財閥のよしみでロペス財閥を救ったのです。

その意味ではロペス財閥もコハンコ財閥も、ドゥテルテ大統領にとっては敵です。敵を打倒することが、フィリピンにおけるドゥテルテ一族の支配力をより強めることになります。

財閥の解体は経済格差解消の一助となるだけに、フィリピンの大多数を占める貧困層にとっては朗報といえるかもしれません。

しかし、別の問題もはらんでいます。既存の権力が消えることで、新たな権力が誕生することは世の常です。現在、フィリピンではドゥテルテ王朝が誕生する兆しが徐々に強まっています。

この問題については、別の機会に改めて記事にする予定です。

フィリピンと中国の関係については、今後も注視する必要がありそうです。

親中へ向けて舵を切ったドゥテルテ大統領の決断がフィリピン国民を本当に幸せに導くのかどうか、真価を問われるのはこれからです。

ドン山本
ドン山本
タウン誌の副編集長を経て独立。フリーライターとして別冊宝島などの編集に加わりながらIT関連の知識を吸収し、IT系ベンチャー企業を起業。

その後、持ち前の放浪癖を抑え難くアジアに移住。フィリピンとタイを中心に、フリージャーナリストとして現地からの情報を発信している。

監修サイト:日本とフィリピンの第二次世界大戦

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