コロナ禍が加速させた英語力による格差社会
前回はコロナ禍の影響を受け、私たちの働き方が大きく変わったこと、それによって多くの人が危機感を抱いていること、不安を解消するためにスキルアップを検討している人が急増している実態について紹介しました。
今回は身につけるべき新たな能力の一つとして英語力に焦点を当て、コロナ禍が生んだ英語力の有無による格差について追いかけてみます。
なぜコロナ禍で英語力による格差が生じたのか?
新型コロナウイルスは、私たちの生活環境を根こそぎ変えました。ことに働き方の激変ぶりは、私たちの日常にさまざまな余波をもたらしています。
今は感染防止のために人と人との接触を最小限度に抑えるよりなく、コロナ以前のようにオフィスに集まって仕事をすることさえ難しくなりました。そこで多くの会社が、オンラインを活用したテレワークの導入へと舵を切りました。現在ではテレワークが、働き方の常識になりつつあります。
テレワークの普及に伴い人事評価が成果主義へと切り替わったことは、前回紹介したとおりです。
テレワークが導入されたことにより、個人ごとの仕事の遂行能力が目に見える形で提示されることになったため、会社を運営する側からすれば、社員の実力に応じた人事評価を下すことが必然になったといえます。
成果主義が台頭する社会になった以上は、個人ごとの能力を高める努力をしないと、たちまち周囲から取り残され、最悪の事態としてリストラの対象になることが予想されます。
それだけに、周囲より際立った能力を示すことこそが、安定した生活を得るための初めの一歩になります。
コロナによる世界大恐慌が囁かれる今、身につけるべきスキルの一つとして、にわかに英語力が注目されています。
テレワークの普及に伴い、英語力のあるなしが仕事ができるできないの評価へとダイレクトに結びつくようになったことが、その一番の理由です。
なぜならテレワークによってオンラインへの依存度が高まったことにより、マーケットが一気に世界規模へと膨れ上がったためです。
たとえば部材の調達です。オンラインで発注する以上、隣町から調達しようが、地球の裏側から調達しようが、その手間暇はほぼ変わりません。海外は物価の関係で生産コスト自体が安いところも多く、輸送費込みでも結果的に安価に抑えられるケースも少なくありません。
同様に売り上げにしてもオンラインを活用するのであれば、英語ページを開設するだけで世界を相手に取引することも可能です。
コロナ禍によって日常業務の大半がオンラインの活用へと移行したことにより、地域や国内に限定することなく、世界を相手にビジネスを展開するチャンスが訪れた、ということです。
世界を相手とするビジネスは、コロナ以前であれば大企業の独壇場でした。ところがコロナ禍の影響により、地方の中小企業を含め、多くの企業が業務をオフラインからオンラインへとアップデートせざるを得ませんでした。
業務の中心がオンラインに移ったことにより、従来までの「距離」の概念が吹き飛びました。世界は確実に身近な存在となり、英語を活用するシーンは飛躍的に増えることになったのです。
世界の共通言語として英語の果たす役割は、ますます高まったといえます。
かつてないほど英文でメールをやり取りする機会が増え、電話やZoomを通して英会話をする機会も増えています。
従来まではオフィスに人が集まって仕事をする環境であったため、英語が必要になったときは英語を得意とする人に頼むことで、支障なく仕事が回っていました。
ところがテレワークが主体となると、基本的には何事も一人で対処することが求められます。英語が得意な人に仕事を振っている時間的な余裕がないことも多々あるためです。結局のところ、独力で英語に対応するよりありません。
つまり、一人ひとりの英語力の程度によって「仕事のできるできないが決まる」ということです。
テレワークにより、個人ごとの本当の実力が目に見えて測れるようになりました。もはや環境的に他人に仕事を押しつけることができなくなったため、個人の能力があからさまに問われる時代となったのです。これまで英語に関する業務を他の人に押しつけていた人たちは、立場が一気に苦しくなりました。
仕事上、英語を使う機会が増えれば増えるほど、英語力の有無があぶり出されることになります。業務を完遂できるだけの英語力がなければ、社内の仕事が減る一方で、肩身の狭い思いをするだけです。
このように、コロナ禍に伴うテレワークへの移行は成果主義を助長し、英語力の有無による格差を浮き彫りにしました。
では、実際にさまざまな現場で働いている人たちは、コロナ禍の今、英語力の有無によって損をしたり得をしたと感じているのでしょうか?
調査「英語ができなくて損したこととは?」
マナビジンではまず、正社員・派遣社員として働いている人たちの英語に対する意識を探るために、「コロナ後は本格的に英語を学ぼうと思いますか?」と聞いてみました。
その結果、およそ3割の人が「はい」と答えています。
この数字を高いとみるか低いとみるかは意見の分かれるところですが、「既にある程度の英語力を身につけている」人は対象から除外していることを考え合わせると、けして低くはない割合といえます。
多くの人が「英語力を身につけた方が得になる」と考えていることがわかります。
このことは、コロナ禍のもと、それだけ多くの人が日常業務で英語に接する機会が増えたことを裏付けているといえるでしょう。やむにやまれぬ必要があるからこそ、英語力を身につけた方が得になると考えるのが自然だからです。
次に一歩踏み込んで、英語ができな人だけを対象に、
「新型コロナ発生後、もし同僚より英語ができれば仕事は減らなかった、なくならなかったと思いますか?」とストレートな質問をぶつけてみました。
この質問に対しては約24%の人が「はい」、残りの76%の人が「いいえ」と答えています。
もとより、職種や業務内容によって英語が必要とされる機会が多いか少ないかは決まってきます。英語を使う機会がまったくない仕事も、当然ながらあります。
しかし、不特定多数の人に質問を投げかけたところ、およそ4人に1人が英語ができれば仕事が減らなかった、あるいは失わなかったと考えていることは、驚くべきことといえるでしょう。
コロナ禍の影響により、英語を活用する機会が確実に増えていることが浮き彫りとなりました。
英語力さえあれば解雇されなかった、仕事を減らされて惨めな思いをしなかったと考えている人が4人に1人はいる、ということです。
具体的な事情をくみ取るために、さらに「そのように考える理由について教えてください」と質問してみました。
実際に寄せられたコメントを、いつくつか紹介します。
英語力があれば仕事が減らなかったと考える方の声
とにかく「白衣がほしい」ということはわかったのですが、具体的にどのような効果のものがほしいのか、いつまでにほしいのか、そもそも送り先はどの国で、どのように発送しなければならないのか…。電話を受けた私は何を言われたのかサッパリでした。
会社には英語を流暢に話す中国人の方がいらっしゃったので、その方に代わっていただいたのですが、お客様を困惑させてしまったことが非常に悔しく、情けなかったです。職業にかかわらず、英語と接する機会はどのタイミングで訪れるかわからないものと痛感しました。そうしたことを受け、今中学生英語から学びなおしています。一日でも早く自分の力にしたいです。
いままでは身振り手振りでフォローしたり笑ってごまかしたりしていた部分ができなくなり、英語スキルそのものを高める必要性に迫られています。
コメントからは、英語を苦手とする人たちが今回のコロナ禍によって実際に損をしている実態が浮かび上がってきます。
英語力を身につけるための勉強をやろうやろうと思いながらも、諸事情によって先延ばししたまま2~3年ほど過ぎた人たちが、コロナという災厄を受けて計り知れないダメージを被っているといえるでしょう。
特に今回よく頂いたコメントに、
という内容がありました。
また、上記の24%は新型コロナ後に影響を受けた人たちですが、新型コロナ前も含めて英語が出来ずに損をしている人の割合で調査すると、46%まで上がります。
コロナに関係なく、英語ができないことで具体的にどのような損をしたのか、さまざまな現場からの声を拾い上げてみます。
コロナに関係なく英語ができないことでどのような損をしたか
日常的なちょっとした会話等は問題なく対応できたが、今回の事態も相まって英語での会議やメールでのやりとりが多くなり、進行に支障をきたしてしまうことも多かった。
以前から本部での勤務を望んでいたが、英語でのコミュニケーションがより多くなることは容易に想像ができ、今後のキャリアアップは難しいな、と感じてしまった。
そのため、海外出張や海外派遣などにはまったく選ばれずにいたため、その結果、同期との出世競争にも遅れをとっている。
しかも、自分の休みたい日に限って社内の時間調整を優先させられてしまいます。
こちらも相手が伝えたい内容が何なのか全くわからず、相手方へもこちらが伝えたいことが全く伝わらず、お互いにとってとても無駄な時間を過ごしてしまった。
今回のアンケートでは、英語を活用する場面はあまりないように思える職種であっても、昨今では英語を必要とする機会が確実に増えているように見受けられました。
ましてコロナ禍の今、テレワークが主体となったことにより、仕事の上で英語力が問われる機会は、ますます増えています。
業務の大半がオンラインへと移行したことにより、世界はより狭まりました。もとよりオンラインには国境線はありません。国内であろうと海外であろうと関係なく、リンクし合います。
その際、コミュニケーションのために使われる言語は英語です。世界への扉は、英語を通して開かれます。
まさに英語力のスキルが高い人材を優遇する方向へと、時代は動いているといえるでしょう。
一方、当然ながら、あらゆる職種で英語力を必要としてるわけではありません。英語ができなくても、仕事上、損などしないと考えている人もいます。
公平性を期すために、英語力など不要と考えている人たちの声も拾ってみます。
英語力は不要と考えている方の声
コロナ禍の影響で外国人観光客や外国人自体が減っているために、英語を必要とする機会が減ったとする声もいくつか上がっています。
ただし、外国人の減少はコロナ禍による一時的な現象に過ぎないことに、注意が必要です。ワクチンができるなどコロナが終息しさえすれば、再び外国人客が増えることは間違いありません。
図らずも仕事の上で閑散期を迎えた今、近い将来に備えて今のうちから英語力を身につける学習を始めることも、より安定した生活を築くために必要な視点といえるでしょう。
また、現在の仕事では英語を使う機会がなかったとしても、コロナによる不況が長引く可能性もあるため、やはり将来に備えて布石を打っておいた方が賢明かもしれません。
英語ができるというだけで、選択肢は大きく広がります。不況によって現在の仕事が失われたとき、新たな勤務先という受け皿がどの程度あるのか、不安が残ります。世界恐慌ともなれば大半の企業がコストカットに動くため、新規採用枠は極めて狭き門になると予想されます。
その際、英語力があれば応募できる企業の数は確実に増え、採用される可能性も高まります。英語力こそが、近い将来の魔法の杖になるかもしれません。
混迷の時代だからこそ、生き抜くための武器は多いに越したことはありません。特殊の職種に限定されることなく、広い範囲で役立つ英語力は、いざというときにあなたを助ける武器になることでしょう。
今回は現在のコロナ禍の環境において、英語ができなくて損をした事例を拾い上げて紹介しました。
次回は逆の観点から英語ができて得をした事例を紹介しながら、英語力というスキルを手に入れることで、実際のところ、どんな恩恵を受けるのかについて追いかけてみます。