こんにちは。私は2014年からアメリカに在住しており、ユナイテッド航空の社員でもあります。
この記事を読めば、アメリカで航空会社に就職する方法、仕事の具体的なイメージが分かります。航空会社の就職を目指している方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
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目次
1. アメリカにはどんな種類の航空会社があるか
大手航空会社に関しましては、
・ユナイテッド航空
・デルタ航空
・アメリカン航空
が挙げられます。
わが社に関しましては、世界一の規模、社員数約10万人、全世界342都市に飛んでおり、年間約40兆ドルの売上があります。
また、大手航空会社は、アメリカに複数ハブ空港が存在します。
そして、特定の航空会社グループに所属しています。
例えば、ユナイテッド航空は、ANAなども所属しているスターアライアンスに所属しています。グループ内の航空会社をよく利用する人は、マイレージを貯めることができたり、グループ内で上級会員になれたりするメリットがあります。
中堅・LCC航空会社に関しましては、
・サウスウェスト航空
・ジェットブルー航空
・アラスカ航空
・スピリット航空
・フロンティア航空 等
が挙げられます。
これらの航空会社は、国内の特定の空港のみに飛んでおり、航空券が格安なのが特徴です。そのかわり、手荷物預けや発券など他のサービスにも別料金が発生したり、必要最低限のサービスしか無かったりします。
2. 航空会社に就職する際の選ぶ基準について
前に述べた事柄を踏まえ、自分はどんな規模の航空会社に就職したいのか、どんな雰囲気の航空会社がよいのかを考えるのは大切ですが、他にも考えることがあります。
それは、
その会社にはunion(労働組合)があるか
ということです。
これはとても大切なことです。
なぜなら、アメリカの会社というのは終身雇用の考え方が多い日本の企業と違い、何かあるとすぐに解雇ということが起きるからです。労働組合がある会社は、すべて会社と従業員との間に結ばれている契約によって従業員は守られています。
また、労働組合があるかないかで、給与やその他の待遇にも大きな違いが出てきます。
アメリカの大手航空会社に関しては、
・ユナイテッド航空
・アメリカン航空
は労働組合がありますが、
・デルタ航空
は労働組合がありません。
3. 航空業界にはどんな仕事があるのか
航空会社の仕事内容ですが、皆さんがイメージされている
・パイロット
・フライトアテンダント
以外にも、地上のお仕事がたくさんあります。私はグランドスタッフ(地上係員)ですので、そちらについて詳しく説明します。
主な地上の仕事の種類は、
・Customer service representative
→接客。主に、カウンターにてお客様のチェックイン、ゲートでの搭乗業務、手荷物受取場での預け荷物に関する業務、遅延や欠航便のお客様の便振替、預け荷物の手配、ホテル手配等。ラウンジや、オペレーション(便のステータスの管理やゲート使用の管理、パイロットと密に連絡を取ること)で働く事もできます。
・Ramp agent
→こちらは、基本的にはお客様には接しません。Bagroomで預け荷物の積み下ろし、外で飛行機離発着時にパイロットにシグナルを送る、飛行機が着いたら預け荷物を積み込む、reroute(便振替のお客様の荷物を遅延便から探し出し、新しい便に積み込むこと)
・Reservations
→こちらは、空港では働きません。コールセンターに勤務し、お客様からカスタマーサービスにかかってきた電話を取り、お客様の航空券予約、発券業務、便の変更など、お客様のご要望に応じて処理します。
ここで、大切なことですが、自分の希望の職種でないものにしか空きがない場合があります。どうしても航空会社に就職したいのであれば、
「希望でない職種や空港でも、募集があれば、応募する」
ことをおすすめします。
というのも、いったん入社すれば、希望の職種に空きがでた場合社内で変更できます。希望の空港に転勤、パートからフルタイムに変更またはその逆も、数か月から長くて数年で容易に変更できるからです。
4. アメリカの航空会社の給与、福利厚生
こちらは主に自社の内容にはなりますが、やはり上記で述べました、
「労働組合があるか」
ということがこちらにも関わってきます。
1.給与について
給与に関しましては、労働組合契約にある内容に基づき、初任給 時間給13ドルくらいから始まり、年2回昇給、入社10年後には時間給35ドルくらいになります。
フルタイムもパートも同じ時間給です。こちらにプラスボーナスになります。残業、ホリデーペイは条件により時間給1.5倍または2倍になります。基本は、フルタイムは、週40時間労働、パートタイムは週20-30時間労働と決まっています。
2.Shift tradesについて
厳密に言いますと、実際は上記の労働時間よりかなりフレキシブルです。
同僚とシフトを交換する制度がありますので、最低労働時間は、月の自分のシフトの半分と決まっています。例えば、フルタイムなら月80時間程度が最低労働時間、最高は1日16時間です。
やり方は簡単です。自社のサイトにいき、自分の働きたくない日または働けない日、時間を投稿すると、余分に働きたい人はリストを見て働きたいシフトをピックアップするだけです。誰もピックアップしないようなら、同僚に直接お願いすることもできます。
3.有給休暇について
有給休暇には、Vacation payとsick payがあります。Vacationは、入社年数に応じて最高年間6週間分まで与えられます。
4.福利厚生について
福利厚生には、各種健康保険(歯科保険含む)、年金制度、401k(確定拠出年金)、オプションの保険などがあります。フルタイムとパートタイム含め、全社員にあります。
5.Flight benefitsについて
全社員は、本人と直属の家族(配偶者、子供、親、兄弟、祖父母)は無料でいつでも飛行機が乗れ、全世界に行けます。スタンバイにはなりますが、空いていて必ず乗れる便は分かってくるものです。
5. アメリカの航空会社で働くために必要なビザについて
アメリカの航空会社で働くためには、アメリカ市民であること、あるいは永住権(グリーンカード)を持っていることが条件になります。
ですので、日本人の場合は、アメリカ市民に帰化するか、グリーンカードを取得する必要があります。
また、ユナイテッド航空に関しての条件ですが、
「アメリカ市民でない場合、アメリカ在住5年以上」
という条件もあったりします。航空会社によって異なる条件があるかもしれませんので、調べる必要があります。
ちなみに、私は在住2年目の時に入社しましたが、当時は会社が日本語を話せる人を求めており、特別に入社できましたので、そういう事もあるかもしれません。
6. 必要な英語力について
アメリカの会社で働くということは、当然ですが英語のみになります。英語で履歴書を書き、会社に連絡をし、書類関係を処理したり、英語で業務をすることになります。それらのことが問題なくできる英語力が必要になります。
ただ、ネイティブのように英語を話す必要はありません。
というのは、アメリカは日本と違い、人種のるつぼとも言われるように世界中からの移民、またアメリカ人といっても様々なバックグラウンドを持った方たちがおられるので、英語がネイティブでない人も多く住んでいますし、アメリカ人もそれはよく分かっています。
ですので、多少日本語英語であったり間違えたりしても、笑われたりしませんし、伝わる英語を話すことのほうが大切なのです。
また、航空会社で働く上で世界中の人が同僚、お客様になりますので、様々な人種、バックグラウンド、考え方、習慣、宗教などを持った同僚と働けるか、がとても大切になります。
7. 就職活動、面接について
アメリカの航空会社は、基本的に
・高卒以上
のところが多いです。ですので、必ずしも大学卒が必要なわけではありません。
重視されることは、5つあります。
1.航空関係の仕事経験
2.接客関係の仕事経験
3.なぜ航空会社で働きたいのか
4.入社したら何ができるか、どんな事がしたいのか
5.お客様に対する姿勢
1に関しましては、もちろんあったほうが優遇され採用されやすいですが、私は航空関係は初めてでしたので、絶対ではありません。
2に関しましては、接客の経験が無い方は、航空会社に応募する前にアルバイトか何かで接客を経験しておくことをお勧めします。面接で経験やエピソードについてアピールすることが増え、有利になります。
以上のことを踏まえ、就職活動、面接に備えてください。
8. 入社するにあたってコネはあるのか?
知人が航空会社で働いている場合、募集があれば、知人にその空港のGeneral managerに推薦してもらうことは可能です。また、夫婦、親子、兄弟で働いている人もたくさんいます。
ただ、やはり面接の際は本人重視なので、いくら知人や家族が働いていても、本人が悪ければ採用されません。
9. 私が今の航空会社に入ることになった個人的なきっかけ
私は、国際結婚を機にアメリカに移住しました。私の住んでいるところは私と主人と子供だけで、私の実家は日本ですし、主人の実家も飛行機でしかいけない他州です。航空会社の仕事なしには、私の家族そろってしょっちゅう帰国することは金銭的にも現実的ではありません。
一番のきっかけは、私が航空会社に入社することによって、無料で飛べるようになり、家族そろって日本にいつでも帰国したり、主人の実家に帰ったり、日本の家族がアメリカに来られることにより、家族で時間を過ごしたり、私や主人の親が孫の顔が見れたりということができるようになることです。
もう一つのきっかけとしましては、私は日本で小売業に勤めており、接客の指導などの経験もあったため、経験が生かせると思ったからです。
10. 航空会社に向いている人、向いていない人
1.時間にフレキシブルな人
シフトは、すべてseniority(年功序列)順に取っていきます。入社した時は、残ったシフトになりますので、勤務時間や休みの曜日を選べません。午前3時~午前1時の間いつでも働ける必要があります。
また、土日祝日は特に忙しいので、お正月やクリスマス、サンクスギビング(感謝祭)等も働きます。それができない人は航空会社に向いていません。
2.急な残業ができる人
空の便は、天候や機材不良、機内で病人が出た等、急なことが起こります。そして、急な遅延、欠航、diversion(進路を変え目的地とは別の空港に着陸すること)がよく起こります。その結果、急な強制残業が発生し、その場合断れません。
自社の場合、強制残業は1日最高4時間までと労働組合契約で決まっています。
3.重いものをある程度持ち上げられる人
カウンターでは、手荷物係がカウンターの後ろにいてバッグをベルトに乗せてはくれますが、自分でしなければいけない時もあります。最低でも23kgは持ち上げられる必要があります。他の重い作業としては、飛行機のドアを開けたり、jetbridgeのアダプター(乗るときの橋)設置などがあります。
4.メンタル面で強い人、様々な状況に臨機応変に対応できる人
お客様相手のお仕事ですので、いろいろな方がいらっしゃいます。カスタマーサービスではありますが、航空業界において何よりも大切なのは、お客様、従業員の安全です。
例えば、カウンターやゲートで騒いでいる、大声を出している、暴れているお客様がいらっしゃった場合、私たちの仕事は、そのお客様が搭乗する事を止めることなのです。
つまり、まずはカウンターでチェックインしない(ゲートに行かせない)ことであったり、ゲートでは搭乗させないことであったり、警察を呼ぶ必要があることも場合によっては発生します。
それは、いったん飛行機が飛んでしまうと、密室の中でトラブルが起きてもどうしようもありませんし、カウンターやゲートで暴れているお客様を見て、「あの人と一緒に乗るのは不安だ」と言ってくるお客様もいらっしゃるからです。
また、ゲートで働くには時間のプレッシャーもあります。お客様の様々なご要望に答えながら、同時にたくさんの仕事をこなし、便を定時出発で飛ばさなければいけません。そのなかで、予想外の事もたくさん起こります。その際も、適切に対処しなければいけません。
11. 日本の航空会社とアメリカの航空会社の違いについて
1.年齢は関係ない!
日本の航空会社といったら、若い女性が働いているイメージがありますが、アメリカの航空会社に応募するのに年齢や性別や定年は関係ありません。現に、私の同僚には70代の方も数名いらっしゃいます。
というのは、アメリカでは法律で年齢差別は禁止されているからなのです。つまり、働く能力がある人は働け、それを会社が強制的に制限できる力はないのです。
2.直接雇用かどうか
日本の航空会社は、契約雇用や、派遣などがあるようですが、アメリカの航空会社は直接雇用のところが多いようです(一部の航空会社除く)。
3.お客様、従業員との人間関係
日本の航空会社は、「お客様は神様」という精神であったりとか、上司と部下の上下関係が厳しかったりしますが、アメリカは基本的に、お客様と従業員は対等な関係です。
こちらのお客様もそれを分かっています。だからといって、お客様をないがしろにするという意味ではなく、接客には力を入れていますが、アメリカの会社で重要なのは、できる事とできない事ははっきり言うということです。
アメリカは、上司と部下もフレンドリーな関係で一人一人が意見を求められ、部下も提案したり、上司も部下が働きやすいように意見を聞く、部下が仕事がしやすいように手助けするというのが基本です。
4.サービス残業はアメリカの法律で禁止!
アメリカでは、日本の企業のようにダラダラとサービス残業は法律で禁じられています。残業がない場合、皆定時で必ず帰り、1分でも残業したら、残業代が発生します。
12. まずはチャレンジしてください
以上が、アメリカで航空会社で就職するにあたって知っておくべきことです。不安もあるかもしれませんが、まずはチャレンジしてください。この記事を読んで、一人でも多くの方に航空業界に興味を持っていただけることを願っています。