コロナ禍でいろいろな資格試験が中止や延期になっている中、抽選による受験者人数制限が始まったために「受けたいのに抽選に外れ続けている」人も多く出ているTOEIC®。
SNSやTVでも「TOEIC落ちた」が話題になっていたりしますよね。それだけ日本での受験者が多いことがうかがえるこのTOEIC®とは、そもそもどういう試験なのでしょうか?
今回の記事ではTOEICの事を殆ど知らない方から、目安の学習時間を知りたい方、各パートの攻略方法を知りたい方、今伸び悩んでいる方のために、ゼロからTOEICを完全ガイドします。
目次
1.TOEIC®とは?
TOEIC® (Test Of English for International Communication「国際コミュニケーション英語能力テスト」の略)は、日常生活やビジネスにおける生きた英語力を測定する世界共通のテストです。
非営利の民間財団であるテスト開発機関Educational Testing Service(本部は米国ニュージャージー州プリンストン)が開発・評価を行い、1979年の開始以来世界150ヶ国で実施されています。
現在、TOEIC®には以下の3種類のテストがあります。
① TOEIC® Listening & Reading Test
1979年に始まった、ビジネスにおける「聞く・読む」能力を4択のマークシート形式で測定するテストです。
個人申込みの公開テストとIP(Institutional Program: 企業・大学等の団体が所属する従業員・学生等対象に実施するテスト)とがあります。公開テストは全国各地で実施されています。2020年10月25日の公開テストから、毎月1回の実施日に2回(午前・午後)実施されることになりました。
テスト構成はListening100問(約45分)、Reading100問(75分)です。全体で7つのパートがあり、ListeningがPart1-4、ReadingがPart5-7です。満点はLR各495点、合計990点です。各パートの問題の種類等は以下の通りです。
Part | 問 題 形 式 | 問題数・問題No. |
1 | 写真を見て適切な描写を選ぶ | 6 1-6 |
2 | 1つの質問または発言に対する適切な応答を選ぶ | 25 7-31 |
3 | 放送された会話に基づく設問の答えを選ぶ | 39 32-70 |
4 | 放送されたナレーションに基づく設問の答えを選ぶ | 30 71-100 |
5 | 短文の穴埋め問題。英文法・語彙の知識が問われる | 30 101-130 |
6 | メール等の長文の穴埋め問題。単語・文を選ぶ | 16 131-146 |
7 | 1つ(147-175)または2つ以上(176-200)の長文に基づく設問の答えを選ぶ | 54 147-200 |
なお、Lセクションの音声は問題ごと(Part 1)または話者・ナレーションごと(Part 2-4)に、米国・英国・カナダ・豪州のそれぞれの地域出身のナレーターにより発音されています。
② TOEIC® Speaking & Writing Test
2007年に始まった、ビジネスにおける「話す・書く」能力を測定するテストです。年に24回(日曜日の午前・午後に1回ずつ)、全国で最大16地域の会場で実施されます。
テスト構成はSpeaking11問(約20分)、Writing18問(約60分)です。それぞれのセクションで、各問0-3点または0-5点の評価がつきます。満点は180点(S90-W90)です。
Speakingではアナウンスなどの文章を音読する問題(2問)に始まり、写真を見て内容を説明する問題、資料や文書に基づいて説明に答える問題、メッセージ・会議の内容等を聴いて問題の解決策を提案する問題、与えられたテーマについて60秒以内(準備時間30秒)で自分の意見とその理由を述べる問題等があります。
Writingでは写真を見てその内容に合う文章を作成する問題、メールの返信を作成する問題、提示されたテーマについて自分の意見を理由または例とともに説明する問題があります。
60分のうち最後の意見記述問題に30分が配分されています。
(TOEIC® Speaking Test)
ビジネスにおける「話す」能力の測定に特化したテストです。年に48回(日曜日)、東京・神奈川・埼玉・愛知・大阪の5地域で実施されています。テスト構成と内容はSpeakingセクションと同じです。
③ TOEIC® Bridge Test
1990年代後半に導入された初中級者向けのテストです。L&RとS&Wの2種類があります。
L&Rは年に4回、全国13の地域で実施され、S&Wは年8回、東京・愛知・大阪で実施されています。
L&RはListening・Readingセクションに分かれ、それぞれのパートごとの問題の形態も同じです。ただし問題数が①の半分の100問(L50-R50)、セクションごとの試験時間はL25分・R35分となっています。満点は180点です。
S&WはSpeaking 8問(約15分間)、Writing 9問(約37分間)で構成されています。Speakingでは短い文章の音読問題2問に始まり、メッセージ等を聴いて趣旨や要点を伝える問題、資料に基づいて情報の要求・依頼・提案等を行う問題等があります。
Writingでは文の単語並べ替え問題3問に始まり、写真の内容説明問題、短文・長文メッセージ返信問題、指示された内容に基づくストーリー記述問題などがあります。
どのくらいのレベルの学習者がTOEIC® Bridge受験に適しているかについては、公式の見解ではないですが、公式のレベル換算表によるとTOEIC® Bridge LRの満点に近い160点がTOEIC® LRの570点に相当するとされています。
このことから、TOEIC® LRのスコアがおおよそ650点未満、英検で言えば準2級・2級未合格程度の方に適しているといえそうです。
これら4種類のテストに共通するのは、採点方法が正答数の足し算や問題ごとの配点に従った得点の合計によるものではなく、統計的処理を加えたequating systemという方法に拠ることです。
そのため、TOEIC®の点数は厳密には「点数」ではなく、「換算点」あるいは「スコア」scaled scoreという言い方が適切です。(本サイトでは慣用に従って「点数」「得点」「XX点」という言い方をさせて頂きます。)
このうち、年間の受験者が圧倒的に多いのは①です(以下、LRとさせて頂きます)。2019年度には公開テスト・IP合計約220万人が受験しています。ただし、1年間に複数回受験する人も多いのでこれは延べ人数と考えられます。
なお、SWの受験者はLRに比べると少ないですが年々増加していて、最近では年間約4万人が受験しています。
なお、やはり採点に技量が求められることから受験料はLRの6,490円に対して10,450円、追加申し込み期間は13,200円と、TOEIC®テストの中では一番高くなっています。(金額はいずれも税込み)
この状況から、本サイトではこれ以下、LRについて話を進めさせて頂きます。
2. TOEIC®の点数(スコア)によって何ができるようになるか
IIBC(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会:日本国内のTOEIC®テスト運営機関)の公式サイトに、LとRそれぞれのスコアレベル別の能力評価として「一般的に認められる長所・短所」が表示されています(Lは3段階、Rは4段階)。
原文の直訳のような感じなので、ここでは各セクションの上の2段階についておおよその内容をご紹介します。
レベル | 一般的に認められる長所 | 一般的に認められる短所 |
L375-495 | ・短い会話において、応答がイレギュラーなものであっても、語彙を使用した話の主旨、目的、基本的な文脈が推測できる。 ・同様に、複雑な構文や難しい語彙が使われている場合でも理解できる。 ・長い聴解文において、話の詳細が理解できる。 |
・あまり使用されない文法や語彙が出てくる場合のみ弱点が認められる |
L275-370 | ・短い会話において、特に語彙が難しくないときは話の主旨、目的、基本的な文脈が推測できることもある。 ・長い聴解文において、情報の繰り返しがあり、回答に必要な情報が最初か最後に提示される時は内容が理解できる。 |
・短い会話において、応答が間接的であったり簡単に予測できない時、あるいは語彙が難しい時は話の主旨、目的、基本的な文脈の理解が困難である。 ・同様に、否定構文や複雑な構文が使われている時は話の内容が理解できない。 ・長い聴解文において、広い範囲にわたって情報を関連付ける必要があり、もしくは難しい語彙が使われる時、情報が繰り返されない時は話の内容が理解できない。 |
R425-495 | ・文章の主旨や目的が推測できる。 ・事実に基づく情報が理解できる。 ・文章全体にわたる情報を関連付けること、関連する2つの文章のつながりを理解できる。 ・幅広い語彙、よく使用される単語の例外的な意味、慣用句的な使い方が理解できる。類似の単語を区別できる。 ・複雑な文法構造も理解できる。 |
・多くの考えや複雑な考えが、少ない単語もしくは複雑な方法で表現されている場合、または難解な語彙が出てくる場合のみ弱点が見られる。 |
R325-420 | (上の2つと一番下は同じ) ・中級レベルの語彙が理解できる。難しい語彙、よく使用される単語の例外的な意味、慣用句的な使い方が理解できることもある。 |
・文章内の広い範囲にわたる情報を関連付けることができない。 ・類似の単語は区別できないことが多い。 |
詳細は、IIBC公式サイトのメニューからテスト詳細→TOEIC® LRとは→「テスト結果とスコアの目安」ページ内の「レベル別評価の一覧表」をご参照ください。
3. TOEIC®で高得点を取った先のメリット
まず大学生・専門学校生の場合、就職活動の際に資格としてスコアを記載することができます。
ここでいう「高得点」が何点以上であるかは意見が分かれると思いますが、IIBC公式サイトが提示する「Aレベル」に該当する860点以上が一応の目安となります。
履歴書にAレベル相当のスコアを書くことができれば、少なくともリスニングとリーディングに対しては高い能力があると認められ、またビジネス英語の素養も認められるといえます。
ただし、たとえTOEIC®で満点やそれに近い得点を取っていても、それだけでは企業にとって魅力的な人材であることをアピールできるとは言えないでしょう。
英語力をアピールするとすれば、スピーキングやライティングも含まれる英検1級やTOEFL95点以上などの上級資格も取得することが望ましいでしょう。
また、たとえば大学生であれば在学中の専攻分野や卒論について、サークルやアルバイトで学んだこと・得たもの、その会社の志望動機などを英語で(それほど流暢にでなくとも)スピーチできるくらいのアウトプット力は必要です。これにTOEIC®の高得点が合わさっていれば確かに説得力が出ます。
TOEIC®は、大学によっては一定以上のスコアを推薦入試あるいは一般入試の英語科目の加点対象としているところもあります。
とはいえ、大学進学を希望する高校生の場合は、高3での英検準2級以上の取得が事実上義務付けられているため英検の受験者が圧倒的に多く、TOEIC®を受ける人は多くないと思います。
ただ、高2の間に600点以上のスコアを持っていると高3での英検2級合格の可能性が高くなります(700点以上だと準1級合格の可能性もかなりあります)。
また、違う角度から大学受験で必要な単語や文法事項を学んだり速読力・リスニング力をつけることもできます。
社会人の場合、主に以下のようなメリットがあります。
・英語を使う仕事への転職が有利になる。
・組織内での海外事業に配属される可能性が上がる
・メッセージ・資料類の英文を読んで理解するスピードが上がる
・ミーティングなど、オフィスでの英語話者の話が理解しやすくなる
・問題集をビジネス英語教材として学習していれば、メッセージや資料作成のライティング力が上がるほか、プレゼンや会話などのスピーキング力も向上する。
4. TOEIC®の試験形式
テストの構成・内容については1をご参照ください。ここではLRテストの当日のスケジュールについてご説明します。
12:35-13:00 試験の説明・音声チェック
13:00-13:45 Lセクションテスト
13:45-15:00 Rセクションテスト
15:00-15:15 問題用紙・解答用紙回収
15:15(予定) 解散
当日の持ち物は、証明写真を貼付けした受験票と本人確認書類、解答用のHB鉛筆またはシャープペンシル、消しゴム、腕時計です。
スマホの電源を切る等、音声遮断のルールは一般的な資格試験と同じです。腕時計はRセクションでの時間配分のために絶対必要です。
また、初めて受験する方が気をつけなければならないのはトイレです。12時30分を過ぎると休憩がなくなるので、必ず12時30分までにトイレを済ませましょう。
なお、これまでは受験者の増加によってトイレが混雑していましたが、コロナ禍での受験者数制限中はその心配がなくなったようです。
もう一つ注意すべきこととして、問題用紙・解答用紙への書き込み(メモ)が禁止されていることがあります。
実は以前は禁止されていなかったので、Part 3や4で音声を聴いている段階で問題用紙の選択肢に〇をつけたり、Part 7で答えの手掛かりになる情報に印をつけたりすることができました。
しかし、2007年のリニューアル時からこれが禁止されたため、日頃から模擬問題を解くときに書き込みせずに解答する練習をして慣れておく必要があります。
5. 勉強方法(自習、セミナー、スクール)
LRの場合は、(本番形式の模試を含めて)問題を解くことは自習でできます。公式問題集を始めとした本番形式の模試や、パート別の問題集、単語集、文法参考書等を学習したり、スタサプ等のアプリを利用して隙間時間にスマホで学習したりすることをお勧めします。
初心者向け!TOEICおすすめアプリ9選【無料・有料】androidも
Lセクションを中心に、レアジョブなどのオンライン英会話レッスンのTOEIC®対策コースもあります。
また、仕事で900点以上を取る必要に迫られている方など、費用がかかっても短期間で高得点を目指したい方はライザップ、プログリット等の短期集中英語スクールのTOEIC®対策コースを受講する方法もあります。
関連記事:【点数保証制度あり】東京・大阪のTOEIC・TOEFL対策塾「English Innovations」
6. ボーダーライン目安の勉強時間
目標スコアごとにおおよそ必要な勉強時間は以下の通りです。勉強時間には本番形式の模試を含みます。また、問題集その他のTOEIC®参考書だけでなく、NHK講座や英字新聞・雑誌、他の英語資格の勉強なども含めます。
目標スコア | 必要な学習時間 | 英検・他資格とのレベル対照 |
500 | 1000~ | 英検準2級合格可能 |
600 | 1500~ | 英検2級合格可能 |
700 | 2000~ | 英検2級上位合格 |
800 | 2500~ | 英検準1級合格 |
900 | 3500~ | 英検1級合格可能 CEFR C1が945相当 |
990 | 4000~ | 英検1級上位合格 IELTS7.0以上相 |
なお、上記の「目安となる学習時間」についてはそのスタート時点、つまり「1000時間なら、どこから1000時間なのか」が気になると思います。
これについては学習者によって英語学習歴が異なるので一律には定められないのですが、日本育ちで文法の勉強を中1から始め、大学受験を経験した(希望する)人の場合だと、次の程度の学習時間は既にこなしている(こなせると見込まれる)ことになります。
・1000時間: 中学卒業~高1の後半
・2000時間: 高校卒業時点
・2500時間: 英語が難関とされる大学(学部・学科)の受験生の大学受験時点
7. 近年のテスト状況
TOEIC ®LRの受験者数は年々増加し、それに伴って試験会場も多様になっています。各会場では事前に音声放送チェックをしているはずですが、会場あるいは部屋によっては音声が響きすぎるところがあるようです。
LRでは実際の会場を選ぶことはできないので(「大阪」等、地域を選ぶことはできます)、たまたまそういう会場にあたってしまい、Lセクションの音声が聞きづらく悔しい思いをしても、現在の申し込み抽選制度の下ではすぐに次の受験機会が得られるとは限りません。
そういうことが起こらないことを願うばかりですが、日頃からきれいなナレーター音声だけでなく、映画やドラマなどで訛りや不明瞭な発音も聞き慣れておいた方がよいかもしれません。
また、リニューアルによって時間のかかるPart 7の問題が増加したほか、全体的に難化しているという声も聞かれます。
8. TOEIC®の一般的な得点テクニック
TOEIC®で高いスコアを取るためには、小手先のテクニックではなく日頃からの4技能にわたる地道な学習が不可欠です。
また、Lセクションでは45分の試験時間中集中を切らさないことが必要になります。(少しでもボーっとしているとPart 2などはどんどん先に行ってしまうし、Part 3の会話やPart 4のナレーションではそのブロックの問題がすべてわからなくなってしまったりします。)
さらに、Rセクションでは75分で100問を解かなくてはならず、そのうち54問は長文読解で特に時間に追われます。
これを前提に、一般的な得点テクニックをご紹介します。
Part 1
2007年以前は20問あった写真描写問題ですが、2007年に10問になり、2016年4月からは6問まで減少しました。それもあり、音声を集中して聴く以外に特別のテクニックは必要ありません。
強いて言えば、日頃から画像や目の前の景色等、見えているものを英語でイメージする練習をすることをお勧めします(この方法はPart 1対策だけのためというより、英会話力向上のために非常に有効です。)
Part 2
このパートは、会話自体は質問も応答も短くて難しい語彙が使われることもあまりありません。また、選択肢も他のパートと違い3個になっています。
しかし、ここはLセクションの中でも唯一、画像や文字等の視覚情報がないパートというところに厳しさがあります。しかも、正解は質問に素直に答えている内容ではないことも多いです。
たとえば「これは誰の~ですか?(Whose ~ is this?)という問いに対して、正解は「それは私のではありません。」(It’s not mine.)のような否定形の応答だったりします。
また、Who/What/Where/When/Which/Whose/How等の疑問詞疑問文に対する応答と、Do you~?/Have you~?/Can you~?/Will you~?等の助動詞疑問文に対する応答のパターンはそれぞれあることはありますが、当然答えは多様です。
なお、問題によっては最初の発話が平叙文で、応答が疑問文になっていることもあります。
視覚情報が得られないので、本番では音声を集中して聴き続けることが一番です。
一つ明確なパターンがあるとすれば、最初の発話で出た単語と同じような音の単語(実はスペルが似ているだけで意味が全く違う単語)が応答で出てきた時はそれは正解肢ではない、というのはあります。
逆に、視覚情報がない分、日頃、移動中や家事をしながら等の「ながら学習」がしやすいパートでもあります。
音声を聴くことしかできない状況でもPart 2を聴いて頭の中で正解を選ぶ学習ができるので、特にこのパートは隙間時間を活用してできるだけ多くの問題を解き、反射的に正解を選べるくらいになっておきましょう。
Part 3
このパートは質問と選択肢が印刷されています。なので、定番のテクニックとしては、「最初にDirectionsが放送されている間にできるだけ多くの質問と選択肢を見ておく」というのがあります(いわゆる先読み)。
ちなみに、Directionsの放送時間はPart 3では約30秒間です。
ここで、合計39問分を先読みするのは難しいので、先読みできなかった分はその会話が放送されている時にすばやく読めばいいという人もいるかもしれません。確かにそれができれば良いのですが、実際は初めて聞く内容の会話を聴きながら同時に3問分の質問と選択肢を読み取るというのはかなり厳しいです。
筆者の個人的な提案としては、日頃からDirections音声の30秒間に39問分の問題と選択肢を先読みする訓練をしておくことをお勧めします。
Part 3の問題は1つの会話あたり3問x 13ブロックです。なので、1ブロックあたり2秒くらいで読み取る訓練をしておきましょう。
これをやりこなすには単語力はもちろん、英語を英語のまま理解する能力も必要になります。900点レベルの方にとってもかなりきつい訓練です。
しかしこれをやっておくとRセクションで威力を発揮するほか、英語の速読力が身につくことになります。
Part 3の場合はよく出てくる質問パターンがたくさんあります。例えばWhat is the problem? とか、Where is the conversation most likely taking place?(この会話はどこで行われていると考えられますか?) などです。
こういうパターンに沿った質問はそれごと意味を理解して覚えておけば、一瞬で読み取れるようになります。
Part 4
このパートも質問と選択肢が印刷されているので、Part 3同様の先読みは必要になります。Directionsの放送時間は約28秒で、質問は1つのナレーションあたり3問x 10ブロックです。
なので、1ブロックあたり3秒以内で読み取る訓練をしておくことをお勧めします。
よく出てくる質問パターンとしては、最初によくあるWhat is the purpose of the talk?(話の目的は何ですか)や、Who most likely are the listeners? (聞き手は誰だと考えられますか)等があります。これらを必ずまとめて覚えておきましょう。
ただし、Part 4では素材がアナウンスやスピーチ等のモノローグ形式なので、Part 3に比べて放送される音声が長く、また語彙もフォーマルで難度が高いものがよく出てきます。
先読みをやったうえで、さらに100ワード前後(30~33秒)の音声を集中して聴くことになるうえ、Part 3まで集中してきた疲れも出てきます。
これを乗り切り実力を出しきるための対策として、日頃からあえて疲れた状態でPart 4の全問先読み+聴き取り+解答の練習をしておくのもありです。
また、Part 4の音声の聴き取り能力をつけるうえで、ニュース番組の個々のニュースをPart 4の質問事項のようなことを意識しながら集中して聴くという方法もお勧めできます。
最低でもWhere・Who・Do what「どこで、誰が、何をした(している・まもなく行われる等)」という情報だけはおさえながら聴きとるようにしましょう。
Part 5
主に語彙・文法の知識を問う問題が30問あります。まず、このパートは10分以内(1問あたり20秒以内)で終わらせましょう。短文で穴埋めは1か所、文法と語彙の知識で解ける問題がほとんどです。
まだ時間があるので解答に迷うと時間を取ってしまいがちですが、ここの1問にこだわるとPart 7で解けたはずの問題を何問も時間不足で落とすことになります。
迷った問題は直感でマークしておいてPart 7を時間内に終わらせてから見直しましょう(言うのは簡単でも実践するのが難しいですが、確かにそのほうが得策です)。
Part 6
レターやメール等のパッセージの中の4つの空欄を埋める問題が4セットあります。このパートも、1セット4問を1分以内に解答するくらいのスピードが求められます。
4問とも前後の文の内容を理解している必要があります。Part 5に比べると語彙文法の難易度はそれほど高くないといえます。少し難しく感じるとすれば適切な文を選ぶ問題ですが、ほかの3問を解いてからもう一度文章全体を素早く読んで内容を理解すれば解けるはずです。
素材の文章のジャンルはPart 7と重なるので、日頃模擬問題のPart 7の中のレターやメールの文章をよく読み、Part 5の模擬問題を数多くこなしていれば特別なテクニックは必要ありません。
Part 7
単一のパッセージに基づく3-4個の設問に答える形式(シングルパッセージ問題、148-175)と、内容が関連する2個のパッセージに基づく5個ずつの設問に答える形式(ダブルパッセージ問題、176-185)と、内容が関連する3個のパッセージに基づく5個ずつの設問に答える形式(トリプルパッセージ問題、186-200)に分かれています。
このパートはとにかく時間に追われます。なので、Part 5、6を20分以内、できれば15-16分で終わらせてPart 7に55分、できれば60分近く配分するようにしたいところです。
解答テクニックもあることはありますが、一番大切なのは「No.200まで全部解答して少し余るくらいの時間を確保すること」だといえます。
速く解答できるようになる一番の方法は地道に語彙力・文法力・文章読解力をつけることです。また、Part 3と4の先読み訓練はこのパートの対策としても有効です。
その上で言えることとして「パッセージと設問を交互に読む」こと、「あらゆる情報を見落とさないこと。特に、メールやレターなどそれを書いた人と宛先・対象者、それを発した日付等、一目でわかる情報を先にチェックすること」があります。
「交互に読む」と言いましたが、厳密には①最初に一瞬だけパッセージを見る→②その一連の問題文と選択肢を読む→③答えを探す意識で細かい情報に目を光らせながらパッセージを読む(→解答する)の順に進めるとよいと思います。
すべてのパッセージ内のあらゆる情報に答えのヒントが隠されているといってもおかしくないのですが、中でもメールやレターの差出人・宛先、差出日付が関係する問題が必ずあります。
例えば、メールの宛先になっている人がある会社の中のどういうポジションにあるかを問う問題が出て、答えはそのメールの本文から読み取れる、みたいな感じです。
9. 有名講師、有名教材
いま現在、いわゆるTOEIC®講師の先生で一番有名なのは、スタディサプリ講師の関正生先生でしょう。また、20年以上前から続いている「講師が全員990点取得者」のエッセンス・イングリッシュスクールの講師陣は皆さん著書も複数あり有名ですが、中でも主任講師の加藤優先生、元・東進スクール英語科講師の森田鉄也先生等は特に有名です。
さらに、後出の「至高の模試」の著者のヒロ前田先生、990点を40回以上取得したテッド寺倉先生も多くの受験者に知られています。
有名教材は何といってもETS制作の公式問題集(IIBC刊行)です。
現在、No.6まで刊行されています。2回分の本番形式模試と解答・解説・音声CD付属です。1冊あたり税込みで3080円~3300円と市販の問題集としては高めなので全部揃えなくてもよいですが、受験することを決めたら最低1冊は必要です。
問題レベル、音声とも本番同様なので、まずこの模試を本番形式で試して時間配分等のシミュレーションをすることができます。解説は切り離して、問題文を素材とした英語学習に活用することもできます。
また、本番形式の模試としては「至高の模試600問」(ヒロ前田先生他著・アルク)が有名です。模試3回分と予想スコア換算シート、著名な講師陣による解法、解答テクニック等充実した内容です。
市販の対策本の中では、朝日新聞出版の「特急シリーズ」が多くの受験者に利用されています。パート別のドリルや「上級単語特急 黒のフレーズ」(藤枝暁生先生著)のような単語集等、1冊あたり税込み900円前後で揃っています。
目標スコア別(600・730・860・900・990)の問題集や対策本の中で有名なのがTOEIC® L&R TEST 英文法 TARGETシリーズです。Part 5の単語・文法・速読速解力を8日間で養成する構成になっています。
10. TOEICに関するFAQ
何から始めるべきか
LRは受験者が年間延べ200万人以上と非常に多いこともあり、市販の教材も溢れています。そのため、初めて受験する方にとっては何から始めてよいか迷うと思います。
本サイト筆者としては、まずテストの全体を知るために公式問題集から始めることをお勧めします。最初から本番形式で120分取って解くことができれば理想的ですが、挫折しにくい方法としてまずRのPart 5→6→7の順に、各パートは全問こなすというのがお勧めです。
正解数も気になると思いますが、大切なのは「どういう問題がどういう形式で出るか」を知るということです。LとRでは形式は異なりますが難易度も本番で取れるスコアもそれほど差がないので、まずRの方でテストを体験して、次にLをPart 1・2→3→4の順に、間をあけてもよいのでそれぞれを全問こなしてみましょう。
公式問題集の2回の模試を回したら、苦手と感じたパートから対策本等で強化していくとよいと思います。
なぜ高得点を取ることが難しいのか
大雑把に言えば、毎回行われるテストは平均点がだいたい580点前後になるように作られているから、といえます。
公式サイトでは過去の実施回の得点データが公表されています。これによれば毎回、受験者の中で得点が一番多いのは495-595点の得点帯で、ここだけで約20%です。795点以上は受験者の中で15%未満です。895点以上となると約3%です。
なお、データでは公表されていませんが、満点の990点を取る受験者は0.1%程度と目されます。
TwitterなどのSNSでは、毎回のテストのスコアが到着する日は「満点でした!」みたいに高得点のスコアレポートを上げる人が続出するので、あたかも大多数の人が900点台を取っているかのように錯覚してしまいますが、データが示すように決してみんなが高得点を取れるわけではありません。
やはりボキャブラリや文法理解力、構文把握力といった英語能力に比例して得点が出るので、たとえば日本の高校レベルの単語や文法の知識があやふやな状態では、会話がそれなりにできるとしても高得点を取ることは難しいでしょう。
さらにデータをLとRのセクション別にみると、平均点はLの方が高く(320点前後)、Rのほうが低くなっています(260点)。つまりRで高得点を取ることが難しい、というのも原因として挙げられます。
スコアの算出方法はあくまで推測なのですが、Lは必ずしも全問正解しなくても満点が出ている可能性が高い一方で、Rの方は全問正解した場合のみ満点とされることが多いのではないかといえます。同様に、素点(実際の正答数)に対するスコアがLの方が高く出ると推測されます。
また、Lの場合は音声の進行に従って解答を進めるので少なくとも時間不足になることはありませんが、Rでは多くの人が全問解ききれず、Part 7の最後の方の解答がマーク塗りつぶしだけになってしまうことも、Rの平均点がLと比べて低くなっている原因かもしれません。
なぜセミナーやスクールがあるのか、お金を払う価値はあるのか
TOEIC®LRのスクール(英会話・英語スクールに対策コースがある場合も含む)は数多く存在しています。中には短期集中型コースで数十万円の費用がかかるところもあります。
また、公開セミナーも頻繁に開催されています。これはやはり「受験者が多く、需要が大きい」ことが理由です。
これに対しては、テスト対策は自習で十分できるし、パート別の攻略法もネットで調べれば解決できるのにお金を払ってスクールやセミナーに行く必要があるのか、という疑問を持つ人がいるのももっともです。
本サイト筆者は特定のスクールの関係者ではないので個人の見解になりますが、別項目でも述べたようにスクールに対しては「お金をかけてでも、短期間で高得点をどうしても取りたい人」は受講するのも手だと思います。
最大半年、できれば3か月以内に満点とか950点以上を取りたい!というような必要に迫られていて、数万~数十万円の出費も構わないという方には有用のはずです。スクールの中には得点保証(一定期間内に目標のスコアに達しなければ受講料を返金する制度)をつけているところもあります。
スクール(特に高額のスクール)の利点として、個別サポートが充実していることがあります。
弱点を強化するにはどうしたらよいか、単にそのパートの問題を沢山解くというだけでなく、その人の生活スタイル・パターンに沿った英語学習の方法を提案し、それができているかどうかを随時チェックする・・等、たとえて言えばライザップのダイエットプログラムのようなマンツーマン指導を期待することができます。
ダイエット同様、そのプログラムで得たことをその後の英語学習にも生かし続ければ他の英語資格取得やキャリアアップに向けての大きな財産になるといえます。
セミナーの利点は、著名な講師による詳細な方法論を直接聞き、質問することもできるということです。マンツーマンの指導までは希望しないけれど、尊敬する先生がいて直接会って話を聞き、自分の質問にも答えてもらいたいという方は参加して得るものが大きいはずです。
高得点を取っても英語を話せない人がいる理由とは?
国際基準CEFRの英語資格レベル対照表を始め、一般的にもTOEIC® LRで高得点を取ると高い英語力があるとみなされます。「TOEIC900点?じゃ、英語ぺらぺらでしょ」のように言われることも少なくありません。
その一方で、これだけスピーキング・ライティング(アウトプット能力)上達の手段が増えた今現在でも、「TOEIC900点超えているのに英語全然話せない」と嘆く人や、そのように言われてしまう人がいるという事実があります。
その原因としては、その人の英語学習がインプットあるいはTOEIC®の得点テクニック習得に偏っている、というのが一番だと思います。
TOEIC®の問題はそれ自体が英会話や英語ライティングのお手本になるのですが、得点を取るテクニックには優れていてもテスト問題を自分の英語に取り入れようという姿勢が全くないと、「900点でも話せない」という状況に陥る可能性はあります。
ただし、余談ですが、個人的には「900点でも話せない」というような話は数回聞いたことがありますが、「満点なのに英語話せない」という人は聞いたことがありません。900点以上でも900点と990点では英語力にかなり差があり、主観的には950点あたりに少し壁があるように思います。
インプットに偏らず、アウトプットの訓練にも相応に時間を割くことがこの壁を突破する方策と考えられます。現在、CEFRによるレベル対照表で英検1級合格レベルが945相当とされるのはこの辺りに原因があるかもしれません。
また、資格試験でいえば英検1級やTOEIC® SW、IELTS、TOEFL等では高度のスピーキングやライティングの能力を必要とします。そのため、受験準備の段階でかなり「話せる・書ける」ようになります。
さらに、日英翻訳やビジネスライティング等の英文作成の通信講座を受講したり、ネイティブによる英文リライトサービスを利用したりすることによって、仕事で使える大人のフォーマルな英語のアウトプット力を身につけることができます。
ただ、他の資格やライティング講座は受験料や費用が高かったり、試験でいえば開催地が限られているという問題はあります。
仮にTOEIC®受験以外にあまり費用をかけずに話せるようになりたい、というのであれば、公式問題集のような模試の音声や解説を活用したスピーキングやライティングという方法があります。
高得点を取れるということは少なくとも大学受験レベルかそれ以上の単語や文法の知識、相応のリスニング力はあるということですから、「話せる」(という実感や自信が得られる)ようになるまでに決して時間はかからないはずです。
以上、TOEIC®テストの受験について参考にしていただければ幸いです。