Part 7の長文読解問題は全部で54問もあり、TOEICテストのリーディングセクションの過半数を占める重要なパートです。
Eメールや広告、手紙、記事など、出題される内容や英文の難易度は様々で、「一体どれから手をつけていけばよいのかわからない」と対策に悩む受験者も多く見られます。
しかし、TOEICテストでハイスコアを目指すに当たり、Part 7は避けて通れない箇所です。今回ご紹介するポイントを確認し、確実なスコアアップにつなげていきましょう。
Part 7の概要をつかもう
まずPart 7では、シングルパッセージが29問、ダブルパッセージあるいはトリプルパッセージが25問出題されます。
シングルパッセージの場合は、1つの文章に対して2~4問の設問に答えるのが10セット、ダブルパッセージでは2つの文章に対して5問の設問に答えるのが2セット、トリプルパッセージでは3つの文章に対して5問の設問に答えるのが3セット用意されていることがほとんどで、これら15セットの長文読解問題を手際よくこなしていく必要があります。
Part 5やPart 6を解いたあとにどれだけPart 7のための時間が残っているかは人によりますが、シングルパッセージに25分、ダブルパッセージに10分、トリプルパッセージに20分で、計55分の時間が確保されていることが理想です。
しかし、多くの受験者が口をそろえて言うのが「時間が足りなかった」というものでしょう。
どこから解き始めるか、どれだけ時間をかけて解くかという好みもあるでしょうが、「時間が足りなくて最後は塗り絵状態だった」などの声はよく聞きます。
これは根本的な語彙力や文法力が不足していることももちろん関係ありますが、解答に時間がかかってしまう主たる原因は「読み直す回数が多い」ことです。
本文の読みが浅くてしっかり読みこめていない、また設問で問われている内容を理解するのに時間がかかる場合、何度も選択に迷って読み返す羽目になるので、解答にたどりつくまでに時間がかかってしまうのです。
その課題を解決するために、まずはPart 7に出題される文章の種類や設問パターンを確認することから始めていきましょう。
①文章の種類
Part 7で扱われている文章の種類は様々ですが、主たるものは以下のとおりです。
本文の上に “Questions 147-148 refer to the following .”と文章のジャンルが記載されていますが、ジャンルによって難易度や攻略ポイントも変わってきますので、Part 7では毎回この部分を最初にチェックするようにしてくださいね。
■ e-mail(Eメール)
e-mailやletterの英文の場合、まず「だれがだれに対して送ったものなのか」ということを確認します。
1つ目の設問で “Why did ~send the e-mail?”とメールを送った理由が問われたり “Who most likely is ~?”と差出人や相手について問われたりすることがよくあります。
ヘッダーのFrom(差出人)のところやメール下部の差出人名と所属などを確認し、人物像をイメージしましょう。メールを送った相手についても同様に、ヘッダーのTo(宛先)のところや宛先(Dearの後)をチェックします。
メールアドレスを見るだけでも、@の前が個人宛なのか会社の共有アドレス宛なのか、@の後ろが差出人と宛先で同じなら社内間のやりとりで、異なるのであれば取引先をのやりとりか、などの情報が得られます。
人名や会社名、所属、差出人と宛先の人物との関係性などについて、固有名詞や情報を整理しながら読み進めていくことが大切です。SubjectやDateのチェックも忘れずに。
■ article(記事)
新聞や雑誌などに掲載されている記事ですが、文章が固い、単語が難しい、固有名詞が多いなどの理由から苦手だと感じている受験者は多いでしょう。
“The restaurant,○○,still stands…”のように、カンマを使って話に登場する会社や地名や人物に関する情報を付加することが多く、固有名詞をきちんと整理しながら読んでいく必要があります。
また、どんなトラブルがあったのか、どのようにして乗り越えたのか、どのような業績を残したのか、だれがどのようなセリフを述べたのか、などについてもていねいに確認しながら解いていきましょう。
■ Web page(webページ)
パソコン用のwebサイトの画面が表示されています。通信講座のコース紹介や申し込みに関する内容、商品の紹介、サイトの紹介など内容は多岐に渡ります。
“What is mentioned about ~?” と1問目でサイトの概要や宣伝されている内容について問われるパターンがよく出題されます。webページのURLに文章のヒントが隠れているケースもありますよ。
また、webページの内容を受けて申し込みのメールがあった場合など、ダブルパッセージやトリプルパッセージの問題でもよく出てきます。
■ text-message chain(スマホのチャット)、online chat discussion(パソコンのチャット)
スマホやPCでのチャットアプリのやり取りです。スマホの場合は1対1のやり取り、PCの場合は3~4人程度のやり取りであることが多いです。
比較的カジュアルな文体であることが多い、交互に会話するのではなく1人が連続で書き込むこともある、 “At~A.M.,what does~most likely mean when he writes,~?”と文中の表現を書き込んだ意図を問われることがよくある、などの特徴があります。
■ notice(告知)
従業員や客、アパートの住人、ツアー参加者などへの告知が書かれた文章です。
What is the purpose of the notice?”など告知の目的についてたずねるもの、 “What is ~ invited to do?”(~は何をするよう勧められていますか?)と読み手に求められている次の行動についてたずねる設問がよく出題されます。
■ advertisement(広告)
求人広告の場合、どのような仕事内容でどのような人材を求めているか、勤務地や雇用形態、雇用期間、応募の具体的な方法などの順で書かれています。
商品の宣伝広告の場合には、商品やサービスの名前、セールスポイント、金額、割引などの特典、「~にアクセスしてください」とwebページへ誘導したり店舗の営業時間について書いたりする、といった具合になります。
②設問のパターン
続いてPart 7でよく目にする設問のパターンを確認していきましょう。設問の意味を理解するのにかかる時間を減らすことができますよ。
■ 英文全体のテーマや意図について問うもの(1問目でよく見られるが、英文をある程度読まないと解けないものも多い)
・What is the purpose of the article? (記事の目的は何ですか?)
・Why did Mr.Lee write the e-mail? (LeeさんはなぜEメールを書いたのですか?)
■ 特定の人物や会社などについての質問に答えるもの(答えの選択肢が長いケースが多く、情報を照らし合わせるのに時間がかかることが多いので注意)
・What is mentioned about Tim? (Timさんについて何が述べられていますか?)
・What does Ms.Ward suggest about survey comments? (Wardさんは調査コメントについて何を示していますか?)
■ 英文の内容から推測して答えるもの(同じく答えの選択肢が長いケースが多く、情報を照らし合わせるのに時間がかかることが多い)
・Who most likely is Ms.Park? (Parkさんは誰だと考えられますか?)
・What is probably true about Ms.Smith? (Smithさんについて正しいと思うものは何ですか?)
・What is inferred about Caivano Printing Services? (Caivano印刷サービス社について何が推察されていますか?)
■ 語彙の意味をたずねる問題(段落と行が示されているのであらかじめチェックした上で本文を読み込み、文脈にもっとも合うものを選ぶ)
・In the e-mail, the word “nearly”in paragraph 1, line 3, is closest in meaning to (Eメールの第1段落3行目にあるnearlyという単語にもっとも意味が近いのは)
■ NOT問題(英文で書かれている内容と違うもの、また文中では言及されていないものを選ぶ問題で、難易度が高く本文をきちんと読み込んでいないと答えられないものが多い)
・What is NOT true about the summer class schedule? (夏期講座の予定について正しくないものは何ですか?)
■ 文挿入問題(挿入文を入れるのに適当な箇所を選ぶもので、挿入文にit,this,thatなどがあればそれに対応する名詞が空欄直前の文にないか探すのがポイント)
・In which of the positions marked [1],[2],[3],and[4]does the following sentence best belong? ([1],[2],[3],[4]と記載された箇所のうち、次の文が入るのに最もふさわしいのはどれですか?)
実際に問題を解いてみよう
では実際に問題を解きながら流れを確認していきましょう。
先述のとおり、まず初めに英文上の “Questions 147-148 refer to the following .”の箇所を見てどのジャンルの問題なのかを判断します。
そして次に1つ目の設問に目を通しましょう。選択肢も読んでしまいたいところですが、そのうち3つは間違いなので誤った先入観を持ってしまう恐れがあります。設問のみを確認する方法がおすすめです。
また、1つ目の設問が英文全体のテーマを問うものである場合、英文をある程度読み込まないと解くことができません。そのような場合には2つ目の設問にも目を通し、本文を読みながら設問で問われている箇所が出てくる度に解答していきます。
※記憶を保持する能力に長けている人は設問を先読みせずに本文をすべて読んでから解答する方がやりやすいかもしれません。
また先読みする場合でも、「すべての設問を見る→本文をすべて読む→問題を解く」の手順の方がいい方もおられるでしょう。様々な解き方を一度試していただき、自分に合ったベストな方法を見つけてみてくださいね。
シングルパッセージの例題
Questions 4-6 refer to the following online chat discussion.
4.What is suggested about Idol?
(A) One of its products is made of fleece.
(B) Its sale takes place in November.
(C) It required a new design for jackets.
(D) It only sells children’s clothing.
5. Who most likely is in charge of production?
(A) Mr. Devy
(B) Mr. Orbach
(C) Ms. Keegan
(D) Mr. Venza
6. At 11:29 A.M., what does Mr. Devy mean when he writes, “Sounds like a plan”?
(A) He is willing to ask for an extension.
(B) More orders from DoleStar are expected.
(C) Some materials are already ready.
(D) Using an overseas factory is a good idea.
引用元:https://www.goken-net.co.jp/goken_sample/329.pdf
※additional(形)追加の toddler(名) 幼児、(形容詞的に)幼児用の fleece(名)フリース地 accessory(付属品) outsource(動)~を外注する ASAP(=as soon as possible)できるだけ早く be in charge of ~の担当である
※便宜上、主語はS、動詞はV、目的語はO、名詞句や名詞節は[ ]、形容詞句や形容詞節は( )、副詞句や副詞節は< >を用いて解説しています。また、英文の文意を確認していく際には前から順番に意味を把握していく癖をつけることが大切ですので、自然な日本語ではなく意味のまとまりごとの日本語訳をあえて載せています。
No.4 A
“What is suggested(示唆する)/implied(ほのめかす)/inferred(推測する)about~?“の設問の場合、本文の内容から推測して答える必要があります。
“Idol’s just called me for an additional order of 3,000 sets of toddler jackets.”(幼児用ジャケットの追加注文がある)、 “How about the material?” に対して“Amber Fabric has that fleece in stock”(フリース地の在庫がある)と答えていることから(A) One of its products is made of fleece.が答えだと推測できます。
※materialをbe made of(~から作られている)と言い換えている
No.5 B
“Who most likely is in charge of production?”と生産担当についての問いです。
“Then the key is the production”とDevy氏が生産について言及したときに “Our main factory is busy with DoleStar’s as always, but we could outsource this sewing abroad.”(メイン工場は手一杯なので縫製は海外に外注する)と生産のラインの確保の仕方について述べている(B) Mr. Orbach氏が担当であるとわかります。
No.6 D
発言内容の意図を推測する問題です。該当の発言がなされたときの状況から推察する必要があるので、前後の文脈(ときには英文全体)をしっかり読み取る必要があります。
今回は直前の“Our main factory is busy with DoleStar’s as always, but we could outsource this sewing abroad.”というOrbach氏の発言を受けて “Sounds like a plan.”(いい計画だ)と言っているので、outsource~abroadをuse an overseas factoryと言い換えている(D) Using an overseas factory is a good idea.が正解となります。
複数のパッセージの問題
ダブルパッセージでは文書が2つ、トリプルパッセージでは文書が3つ用意されています。シングルパッセージより文章量が増えるだけでなく、それぞれの文書に答えのヒントが散らばっている設問もあるので難易度も上がります。固有名詞を整理したりそれぞれの文書内の情報を関連づけたりしながら読み解いていく必要があります。
Questions 176-180 refer to the following advertisement and e-mail.
No. 176 According to the advertisement, why should customers visit the Business Audio Pro Web site?
(A) To hear voice samples
(B) To add a new phone number
(C) To submit a credit card payment
(D) To request recording equipment
No. 177 What is suggested about Business Audio Pro?
(A) It fills orders once a week.
(B) It advertises in the newspaper.
(C) It specializes in data-processing services.
(D) It has recently expanded its business.
No. 178 Who most likely is Ms. Annesly?
(A) An actor
(B) A script writer
(C) A sales associate
(D) A business owner
No. 179 What service does Ms. Annesly NOT request from Business Audio Pro?
(A) Professional voice talent
(B) On-hold messages
(C) Customized script writing
(D) Multilingual voice production
No. 180 What will Ms. Annesly most likely do within 24 hours?
(A) Meet with an actor
(B) Visit a recording studio
(C) Write a script
(D) Speak with a representative
引用元:https://www.iibc-global.org/toeic/test/lr/about/format/sample07_03.html
※解説
enhance(動)高める impression(名)印象 meet one’s specifications~の仕様を満たす numerous(形)非常に多くの dialect(名)方言 craft(動)~を精巧に作る distinguish(動)識別する、特徴づける multilingual(形)多種の言語の inquiry(名)問い合わせ specific(形)明確な transcription(名)コピー、転写 submit(動)~を提出する equipment(名)機器
No. 176 A
“According to the advertisement”とあるので、1つ目の英文を読めばいいことがわかります。ウェブサイトをたずねるべき理由は “Visit businessaudiopro.com to hear examples of what each actor sounds like and choose the one that best suits your needs.”(サンプルを聞いて選ぶため)と書かれていますね。
hear examplesをhear voice samplesと言い換えている(A) To hear voice samplesが答えとなります。
No. 177 B
Business Audio Proについて示唆されていることを選びます。示唆されていることを選ぶ設問の場合、ある程度広範囲に視野を広げる必要があります。
今回も1つ目の広告を読み終えても選択肢に該当する英文が出てきませんね。Eメールまで読み進めてようやく “I found your notice in the newspaper”と新聞広告を見て依頼が来たことがわかるので、(B) It advertises in the newspaper.が正解であることがわかります。
No. 178 D
Ms. Anneslyさんが誰であるか問われています。固有名詞を整理しながら読んでいると、Eメールの差出人であることがわかります。2つ目の文書を読んでいくと “wish to use your services for my data-processing and transcription business.”とあるので(D) A business ownerが答えになります。
No. 179 B
英文で書かれている内容と違うものを選ぶ「Not問題」です。 Ms. Anneslyさんが頼まないサービスを選びます。
2つ目の英文中の “I am looking specifically for a professionally recorded voicemail greeting” は(A) Professional voice talentのこと、 “I wonder if you would be available to write and record this for me”は(C) Customized script writingのこと、”Since I work with English-and Spanish-speaking clients, I would like the message to be recorded in both languages.”は(D) Multilingual voice productionに該当します。
ですから唯一触れられていない(B) On-hold messagesを選びましょう。
No. 180 D
Ms. Annesly さんが24時間以内にすることが聞かれていますね。24hoursという具体的な数字は1つ目の英文で “A representative will call you within 24 hours to discuss your project and provide a price estimate.”とメールで問い合わせた人に対して担当者が24時間以内に電話をするとありますので、(D) Speak with a representativeを選択できます。
このようにダブルパッセージの問題では両方の英文を関連付けて解くものが出題されます。
まとめ
TOEICのスコアアップのためのテクニックを紹介している対策本は数多くありますが、初心者~中級者の方が真似をした場合、かえってタイムロスになってしまうケースは珍しくありません。
リーディングセクションのスコアを上げる上で何よりも大切なことは「きちんと読み取る力をつけること」です。
問題文全体の意味を読み取れていないと正解できない設問も増えていますので、「急がば回れ」の気持ちでまずは基本的な読解力を身につけましょう。
そしてその上で今回ご紹介したような頻出ジャンルや設問パターンを押さえ、読解スピードを上げてハイスコアが取れるようにしていってくださいね。