英語の習得を目指している方々は、毎日真剣に勉強をされていることと思います。

しかしその反面、なかなか自分が上達していることを実感できなかったり、退屈な文法の学習に飽きてしまい、長続きしないという結果になることも・・・。

言語習得の難しいところは、一朝一夕に結果が出ないこと。

そんな時、英語学習者としては英語を身につけるのに効果的な学習メソッドにも関心があるかと思います。

考えてみれば、英語ほど様々な種類の習得メソッドが提唱されてきた言語もないでしょう。時代とともに次から次へと新しいメソッドが提唱され、廃れてしまったものもあれば、広く定着したものもあります。

近年では、「第二言語習得論」を元にした複数のメソッドが登場していますし、セブ島の語学学校ではイギリス発祥の「カランメソッド」などが脚光を浴びています。

そんな中、近年ヨーロッパを中心に急速に広まっている、ある英語学習法が注目されています。それが、CLIL(クリル)と呼ばれる学習法です。

実は、2020 年から英語が小学校で「教科」になることを踏まえ、小学校の英語教育での CLIL の活用も議論されています。今回は、そんな CLIL について少し調べてみようと思います。

1. CLILとは

そもそも CLIL とは何でしょうか。

CLIL は、『 Content and Language Integrated Learning 』を略した呼び方で、日本では「内容言語統合型学習」または「教科学習と外国語の組み合わせ」などと訳されることが一般的です。

つまり、単に英語を学ぶのではなく、これまで日本語で学習していた理科や社会といった科目を適切な支援を受けながら英語で学ぶことにより、各科目の内容と英語を同時に習得するということです。そうすることで、英語を日本語の代わりに実践的に使うことになり、英語の知識と技術を発達させることができると考えられています。

似たような学習法として、アメリカ発祥の内容重視指導法 (Content-based Instruction) やカナダ発祥のイマージョン教育がありますが、CLIL は効果を引き出すための具体的な技法が体系化されている点で異なります。

CLILが生まれた背景

Europe Flag European Union Symbol National Eu

CLIL はもともと 1990 年代にヨーロッパで始まり、ヨーロッパを中心に発展してきました。

その背景として、EU (欧州連合)の統合により、ヨーロッパ各国のボーダレスな人の行き来が生じ、市民同士の外国語でのコミュニケーションの機会が急速に高まったことが挙げられます。その結果、EU 圏内での各国市民の外国語教育によるコミュニケーション能力の育成と多文化への理解が必須となったのです。

実際、ヒト、モノ、サービス、資本などが自由に移動できる単一市場を目指していた EU では、真に自由な移動には市民による実際のコミュニケーションが不可欠であると考えられています。

EU の平和と安定のためには、他言語や多文化への理解が求められます。1995 年に発令された母語以外の 2 言語を学ぶことを目標とした EU 言語政策のもと、それを具現化するための外国語教授法として CLIL は生まれたのです。

CLIL の特徴:4つの C

出典;CLIL(Content and Language
Integrated Learning)の方法論(上智大学:池田真)

そんな CLIL にはどのような特徴があるのでしょうか。
一番の特徴と言えるのが、「4つの C 」によって構成されているという点です。これらの「 C 」とは以下の通りです。

1. Content(科目やトピック)
2. Communication(単語・文法・発音などの言語知識や読む、書く、聞く、話すといった言語スキル)
3. Cognition(様々な思考力)
4. CommunityないしCulture(協同学習、異文化理解、地球市民意識)

CLIL では、これら4つの C が互いに支え合う存在と考えられています。

また、これらを使って(1)科目やトピックの学習(2)外国語の習得(3)学習スキルの訓練、といった三つの分野を学ぶために高品質な授業の実現を目指しています。

2. CLIL の利点

では、CLIL を用いることにはどのような利点があるのでしょうか。

1. 多重知能の刺激と記憶の定着


これまでの英語教育では、文法の分析力や暗記力というものを頼りに学習が進められ、そういったことが苦手な人は成果を上げることができず、結果として多くの「英語嫌い」を生み出していました。

しかし、CLIL では英語を生きたモノと捉え、言葉と内容教育の両方に焦点を当てているため、内容に興味や強みがあれば、誰もがクラスについていくことができます。

また、CLIL の持つ「多角的な知能に訴える」という点は、記憶の定着にも効果的であるとされています。「学び」と定着は、外からの新情報と学習者が持つ既知の情報が密接に結び付けられる結果として起こります。そのため、CLIL は認知の面から見ても理にかなっていると言えます。

2. 生きた英語とモチベーション


CLIL では、理科や社会といった授業科目や身近なテーマを扱ったトピックなどを用います。そのため、利用する資料も新聞や雑誌といった「生素材」を多用することになります。こうした生の英語に触れることのできる取り組みは、学習者のモチベーションに良い影響を与えます。

また、日本人の英語学習者の多くは、間違いを非常に恐れる傾向にあります。その要因の一つは、従来の暗記力重視の学習方法によって言語的な正確さへのこだわりが強くなったことも考えられます。ミスを恐れるあまり、授業中は発言を控えるといった態度に表れてしまいます。

しかし、CLIL では形式よりも意味に重きが置かれているため、こうした不安が少しは和らぐモノと期待されています。

そして、4つの C の一つである Community (協同学習)の理念に沿ってペアワーク、グループ活動を積極的に取り入れるので、学習者がインタラクティブな活動を行う必然性が生まれるというメリットもあります。

3.CLIL の実践

では、実際に CLIL を用いた授業はどのように教えることができるのでしょうか。

CLIL の10大原理

CLIL には、指導のための 10 大原理と呼ばるものが存在します。CLIL 形式の授業を行う場合は、次の項目を満たす教材や授業の取り組みが求められます。

1. 内容学習と語学学習の比重を等しくする。
2.  オーセンティック素材(新聞、雑誌、ウエブサイトなど)の使用を奨励する。
3. 文字だけでなく、音声、数字、視覚(図版や映像)による情報を与える。
4. 様々なレベルの思考力(暗記、理解、応用、分析、評価、創造)を活用する。
5. タスクを多く与える。
6. 協同学習(ペアワークやグループ活動)を重視する。
7. 異文化理解や国際問題の要素を入れる。
8. 内容と言語の両面での足場(学習の手助け)を用意する。
9. 4技能をバランスよく統合して使う。
10. 学習スキルの指導を行う。

(1)にあるように学習はあくまで内容と英語学習の比率は1:1です。どちらかに偏ることがあってなりません。CLIL は「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」のです。

また、新聞やウェブサイトなど本来学習を目的として作成されていないオーセンティック素材を多用するのも CLIL の特徴です。こうした素材は、実際にネイティブの人たちが使っている生きた英語を学ぶのに最適です。さらにこうした資料は本来その内容をメインとしていますので、興味深いトピックを知ることができるでしょう。

さらに協同学習を通して、メンバー同士で相互のコミュニケーションを取らざるを得ない状況が生じます。こうしたやり取りは、他者を理解、尊重することを覚えるのと同時に英語がコミュニケーションの「道具」にすぎないことを思い起こさせてくれます。実際、海外留学を経験した人へのアンケートでは、出発前には英語が現地生活での重要な事項として考えていた人でも、帰国時には英語が単なるコミュニケーションスキルにすぎないことを現地で認識し、「積極性」や「問題解決能力」などに重きを置く傾向が見られます。CLIL のアクティビティでも同じような効果が期待できるかもしれません。

4つの C に沿った学習

続いて、すでに紹介した「4つの C 」に基づいた学習についても考えてみましょう。

Content(内容)

まず最初の「 C 」は、Content。

Content は、CLIL の授業で扱われる科目の内容、またはテーマやトピックに関連して複数の科目を横断して扱われる内容のことです。

ここで大切な点は、扱われる内容は学習者にとって少し難しいが、意味のある理解可能なものを豊富に提供するということです。それにより、英語習得のための良質なインプットを大量に実施されることになります。その上で、学ぶのに値するだけの価値があり、学習者にとって何らかの関連性がなければなりません。

最新のニュースなどが良い学習材料になるかもしれません。

Communication(言語)

二つ目の「 C 」は、Communication です。この場合は、授業の中で使用される学習言語を指します。

CLIL では、英文読解などの学習よりも対人コミュニケーションや学習ツールとしての英語の使用に重点を置いています。その上で、次の「3つの言語」を使用することで、言語活動が促進されていると言われています。

1. Language learning (学習の言語)
内容理解のための語句や表現。授業においてはその時間に習得の目標となる英語表現を指します。
2. Language for learning (学習のための言語)
「 Hello, Look at this. 」 など、それ自体は言語習得の目標とならないものの、講師が授業を進行する上で必要な表現。いわゆる「クラスルームイングリッシュ」と呼ばれるものです。
3. Language through learning (学習を通しての言語)
こちらは授業の過程で偶発的に取り上げられる言語表現です。たとえば、授業の過程で本来教える予定になかった表現、語彙を生徒が使う場合があります。その表現を取り上げて、さまざまな文脈の中で何度も使用することで定着させることができます。

Cognition(思考)

4つの C の中で特に重要なのが Cognition(思考)。生徒が学んだ内容を生かし、意味ある文脈の中で英語を使って考え、話そうとする活動です。これは言語習得において必要不可欠な「理解可能なアウトプット」のために重要な要素とされています。

講師はこうしたことを踏まえ、生徒に与える課題などがどれほどの認知負担になるかを意識して授業を進める必要がります。そうすることで、暗記や理解に偏ることのないバランスと乗れた学習が実践できます。

Communitiy/Culture(協同、文化・国際理解)

最後は Community あるいは Culture です。これは狭義では教室で他の生徒と協同の学びを行うことで他者への理解を深めながらコミュニケーションを行うこと、また広義では、英語によるコミュニケーションを通して国際理解、また言語や文化への理解を深める活動と言えます。

CLIL では、これらの4つの C が「統合」されてはじめて効果が期待できるため、一つ一つがバラバラでは良い授業にはなりません。
「内容」と「言語」が統合されていても残りの二つの C が欠けていれば、ただの英語知識の学習になってしまいます。また、「思考」があっても「言語」がなければ話し合いは日本語になってしまい、「思考」を伴わない「協同」は単なるゲーム担ってしまう可能性もあります。

そのため、CLIL 学習ではこの4つの C がすべて統合されている必要があるのです。

4. 小学校での CLIL 活用の可能性


冒頭でも述べましたが、2020 年から小学校でも英語が「教科」になります。そんな中、CLIL を小学校の英語学習で活用することができるか注目されています。

すでに一部の小学校では、試験的に CLIL を利用した英語学習を実施しているところもあります。そうした学校の過去の報告によれば、CLIL の導入により「児童の興味・関心に合わせた授業」の実現と「生きた文脈」の中での体験学習の実現が可能だとしています。

また、授業で昔話を扱った際に本来は理解が困難なはずの言語で話されている内容を児童が理解できるという現象が見られたとのこと。これは、すべての言語の意味がわからなくても、文脈を頼りに意味を理解していることを示唆しています。

このように小学校での CLIL を導入した活動は「理想的」ではあるものの、課題もあります。

それは、担当する教師の負担が大きいということです。授業のための教材の作成や取り扱うトピックの準備、また扱う内容が児童にとってどの程度難しいかなどの判断が求められます。そして何より、小学校の教員が全員英語が堪能だとは考えられません。

こうしたことからも、小学校の授業での導入にはしっかりした準備と教員のトレーニングが必要です。指導する側の負担を軽減させることが CLIL を浸透させる上での課題となっています。

5. まとめ

社会や経済のグローバル化が叫ばれている昨今、ビジネスの舞台はアジアをはじめとする海外にシフトしつつあり、海外からの人の流入も活発になっています。

英語をはじめとする外国語でのコミュニケーション能力が求められる中で、CLIL によって言語だけでなく、思考力やコミュニケーション能力を身につけることができるのは魅力的です。もちろん課題はありますが、これまで良いとされてきた教育原理や実践を取り入れた CLIL はまさに良いとこ取りと言えます。

そして、CLIL はスマホのようです。それまで、電話やメール、インターネットにゲームといった個別の機能は存在しましたが、それらを一つにまとめたことでスマホは付加価値を見出しました。同じように CLIL も一つ一つの方法論や技術は目新しいものではないものの、それらを「4つの C 」などで一つにパッケージしたことで世界中に広まりました。

こうした大きな可能性を秘めた CLIL を英語学習に活かせたら良いですね。

【まとめ】セブ島にある有名・評判な語学学校の一覧表
原山 雅行

CoReDi Connection 代表
・ファイナンシャルプランニング
・企業マーケティングコンサル
moro moro project 代表
・台日友好音樂會「音繋」主催

大手旅行会社で営業職を務めた後、2004年に渡英。英国のホテルで約2年にわたり多国籍のスタッフとともに働く。
帰国後、大手金融機関の新規事業部立ち上げに参加。企業のM&A、海外進出支援、CO2削減の取り組みなど多種にわたる事業に従事。上場企業の社長・役員に直接コンタクトを取り、電話&メールのやり取りだけで3ヶ月で2億円を売り上げ話題に。

その後、検索エンジンで有名な米国大手IT企業の新規プロジェクト立ち上げにスーパーバイザーとして参加。新製品の日本市場導入準備を担当、のちに法人向けクラウドウェアサービスを担当し、再び多国籍のスタッフとともに働く。

2015年に渡比。
2017年までセブ島の韓国系、日系の語学学校マネージャーを歴任。

現在はセブを拠点に東京、台北などで複数のプロジェクトを手がける。

Blog: 【日刊セブ便り】常時更新中ですのでよかったらご覧ください。
https://nikkancebudayori.wordpress.com/

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