みなさんご機嫌よう。

フィリピンは7109の島々からなる海洋国家。セブ島をはじめフィリピン国内の国々は各地域が海で隔てられており、国内・国外への物資の輸送は船で行われるのが一般的です。

一つ一つの島々も面積が小さいものが多く、漁業や海産物の加工が生活の中心となっているエリアも多くあります。そう、フィリピンは海と密接に結びついた国なのです。

「進水式とか興味あります?」

先日、俺セブ管理人の斉藤氏より突然こんな言葉をかけられました。

こちらは、幼き頃に旧日本海軍の軍艦のプラモデルを組み立てては水辺に浮かべて遊んでいた身。当時まだ何もない荒野だった東京のお台場まで『船の科学館』を訪ね、展示物を見ては大興奮していた船マニア。そりゃあ、興味ありますとも。

実はセブ島には日本の老舗造船会社である常石造船の現地法人、TSUNEISHI HEAVY INDUSTRIES, Inc. (以下、ツネイシ)の造船所があるのです。そして、今回はなんとそこで行われる「進水式」にセブ日本人会の方々と一緒に参加できることになったのです。

滅多に見ることのできないセブの進水式の様子を「俺セブ」がレポートいたします。

フィリピンで活躍する TSUNEISHI グループとは

http://www.tsuneishi.co.jp/wp-content/uploads/2017/04/wpid-3301511476635.jpg

今回進水式を実施するツネイシとはどのような企業なのでしょうか。

常石グループは、1903年(明治36年)に創業者である神原勝太郎氏が海運業をスタートさせたところから始まります。その後、1917年(大正6年)に広島県福山市沼隈町常石に「塩浜造船所」を創業したことが、後の「常石造船株式会社」へとつながります。

ツネイシホールディングスの造船事業は、日本の常石造船をはじめ、中国浙江省や南米パラグアイにも生産拠点を持っており、その中でもフィリピン・セブを拠点とする TSUNEISHI HEAVY INDUSTRIES, Inc.(ツネイシ)は、グループの主力工場として、船台2基、建造ドック1基、さらに修繕用フローティングドックを備え、3~18万トン級バルカーを中心に年間30隻の建造能力を備えています。

堂々の世界第4位;フィリピンの造船事情

そもそもフィリピンで「造船」というイメージを持つ人は少ないかもしれません。
ところが意外にもフィリピンは世界の造船量の第4位を占めている造船大国なのです。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/ship.html

もともと造船大国の日本は、かつて世界一位の造船量を誇っていましたが、近年は韓国や中国がトップ争いを演じており、ここ数年は中国が生産量で首位に立っています。日中韓がシェア9割を握る寡占市場で、フィリピンはわずかとはいえ、2010年に欧州を押しのけて世界4位となりました。

そのフィリピンでの大規模造船所のけん引役となっているのがツネイシです。フィリピン政府も製造業育成の先陣として造船業界の成長を目指し、日本や韓国などの外資の誘致に力を入れています。

フィリピンで建造される大型船舶の約半数をツネイシが生産しているのです。まさにフィリピンの造船業会をリードするツネイシ。その業績によりフィリピン政府から優良企業として数々の賞を贈られています。

フィリピン・セブ島での造船事業

そんなツネイシがフィリピンのセブに進出したのは、1994年。すでに20年以上の実績を誇ります。

現在、ツネイシでは1万人を超える従業員を抱え、年間20隻の大型船を生産しています。しかも、造船所としては年間30隻は生産する能力があるとのことです。

http://www.tsuneishi.co.jp/thi20thj/about.html

その造船所の面積は日本の常石造船の3倍の規模。建造隻数では、日本や中国の拠点を含めた常石グループ全体の4割を占めるまでに成長しています。

では、なぜツネイシはフィリピンの地を選んだのでしょうか。それは主に以下のような理由からだそうです。

(1)安い賃金コスト
(2)高い教育水準
(3)カトリックが主流で人々が穏やか
(4)日本からのアクセスの良さ
(5)自然災害が少ない
(6)現地の優良なパートナー企業の存在

やはり、日本や中国と比較して賃金コストが安いことが挙げられます。また、日本では部品の調達などをアウトソースすることも多いですが、フィリピンでは外注できる業者がないため、船の建造プロセスを全て自社で実施しており、従業員数が1万を超える大所帯となります。そのため、賃金の安さが重要な要素となっています。

また、日本で造船業というといわゆる3K(きつい・汚い・危険)職場のイメージがあり、日本人の働き手が少なくなっているようです。しかし、フィリピン人はそのような仕事でも真面目に取り組むため貴重な存在となっています。

船体を検査するフィリピン人研修生(広島県福山市の常石造船常石工場)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ05IG3_V00C15A1TJC000/

そんなツネイシでは技能実習制度を実施し、フィリピンからスタッフを日本に派遣してトレーニングを実施しています。また、幹部候補生も日本での研修を受けており、すでに現地の関連子会社の社長はフィリピン人が抜擢されるまでになっています。

こうした面からもツネイシがフィリピンでしっかりと腰を据えて事業に当たっているのがわかります。

いざ進水式に参加!

さて、進水式当日、朝7時にセブ市内の某所に集合した私たちはツネイシの用意したバスで現地へ出発。

行き先は、セブ市から片道2時間かけての山越えルートを通り、セブ島の西岸にあるバランバンの街です。

予定より1時間ほど早く到着したにもかかわらず温かく迎えられ、早速ツネイシの事業について詳しい説明をして頂きます。これまでのツネイシのフィリピンでの事業の経緯や今後の展望などを教えていただきました。

そして、11時半から進水式の会場へ移動します。

すでに会場は準備万端。
セレモニー会場の飾り付けの背後に巨大な新造船がすでに見えています。

そして、当日は要人をゲストに迎えてセレモニーを実施する予定。ゲストを迎えるのがこちらのチビッ子ダンサーたち。一糸乱れぬ動きで素敵なパフォーマンスを見せてくれます。

セレモニーを控えて新造船の前で整列をしています。

それでは、いよいよ船に近づいてみましょう。

さすがにでかい!
しかし今回の船はツネイシで建造される船としては小さな部類に入るそうです。これで小さいというのですから驚きです。

さて、セレモニーの時間が訪れ、いざ進水式開始となったところでなんと土砂降りの雨。それでもセレモニーは雨天決行。テントの下に隠れて様子を見守ります。

合図とともにくす玉が割られます。

すると・・・



あっという間に巨大な船が海面へと滑り落ちていきます。

当日は地元の学校も見学に来ており、良い校外学習となったのではないでしょうか。
こうして、進水式が無事終了しました。

その後は、バスで広大な工場の中を見学して回ります。残念ながら工場内の撮影は許可されませんでしたが、いたるところで船の巨大なパーツが並べられており、見ているだけで楽しめます。

その後は、ツネイシの社員寮で昼食をいただきました。
もともと日本人の料理人が常駐していたそうで、いまではフィリピン人スタッフが完璧な日本食を提供しています。

ツネイシでは日本人スタッフの寮を始め、フィリピン人の独身寮も施設内に備えています。さらに驚くべきことにホテルまで自社で運営しています。主に日本から出張に来るグループ社員やゲストが利用するために儲けているそうですが、バランバンには他に宿泊施設がないために工場内に自社のホテルを構えているとのことで、さすがに驚きです。

さらに驚きの点としては、ツネイシはグループ会社で農業事業を展開しており、セブ島の隣のネグロス島で「天心山牧場」という酪農事業を展開しています。

そこで生産しているのがこちらの牛乳。フィリピンの牛乳は高温殺菌で牛乳臭さが残るものが多いようですが、天心山牧場の牛乳は低温殺菌で牛乳臭さを排除し、本来の美味しさを感じられるものとなっています。

セブ市内では「町家マート」で購入できるそうです。

町家マートについてはこちらの記事をご覧ください:
買い忘れしても大丈夫!日本製品が買えるお店5店舗inセブ

TSUNEISHI がセブにもたらしたもの:バランバンの街への貢献

さて、そんなセブの地に根を下ろして活動しているツネイシですが、地元バランバンの街への影響力は計り知れません。

ツネイシは「地元地域と一緒に成長する」というポリシーのもと、「地域密着」を掲げてそれを実行に移しています。

雇用の創出

先ほども述べたように、ツネイシは1万人を超える従業員を抱えています。そのほとんどが、バランバンを中心に隣のトレドやアストゥリアスといった近隣地域からやって来ます。実際、バランバンの地域ではほとんどの家庭が何かしらの形でツネイシと関わっています。

学校建設

地域貢献の一つとして、地元のバランバンに学校を建設しています。

こちらはサン・ホセ大学の付属幼稚園から高校までの学校です。こちらの校舎をツネイシが建設し提供しています。

こちらは幼稚園の教室の様子。

学校施設はセブの中でもとてもクオリティの高いもので、セブ市内の学校にお子さんを通わせている日本人会のメンバーからも称賛の声が上がっていました。

学校の運営はサン・ホセ大学が実施していますが、こちらの学校を卒業した優秀な学生をツネイシで就職できるようオファーを出すなど、教育から就職まで一貫したサポートを実施しています。

市場の建設

学校に続いて、地元の市場の建物も提供しています。

今回訪れたのは比較的規模の小さな市場です。
ツネイシではバランバンにある複数の市場の建物を建設し、地元の人の生活にも密接に関わっています。

こうしてバランバンの街はツネイシの企業城下町といった様相を呈しています。
これは、地元の協力あってこそ造船のビジネスができていることに感謝して、地元にその利益を還元していることの現れと言えます。

TSUNEISHI のこれから:セブがグループの中心拠点に

こうしてセブで活躍するツネイシですが、今後は展望はどのようなものでしょうか。

以前、ツネイシがフィリピンでの20周年を迎えた際、河野 仁至 社長はメッセージの中で、「今後はフィリピンにおける経済成長を機に、東南アジア諸国の中で“マザーヤード”の役割を担い」たいと述べて、バランバンのツネイシをグループ全体の中心的存在にする構想を表明しています。

こうして今後も地元と共に成長していけば、ますます日本とフィリピン・セブの良好な関係が深まっていくことでしょう。

このように日本とフィリピンの関係を深めるのに活躍している日本企業があるということを知ると、セブについての見方も変わってくるかもしれません。

セブで活躍する日本企業についてフィリピン人講師と話してみよう

他にもセブで活躍する日本企業はたくさんあります。そしてその多くが地元の発展に貢献しています。

セブといえばビーチリゾートなどのイメージが強いですが、こうして日本企業との関係を知った上でセブの街を見てみると新たな発見があるかもしれません。

語学学校のレッスンでもフィリピン人講師とこうした会話をしてみると色々新しい情報を得ることができ、普段と異なる会話の練習にもなると思います。特にビジネス英語のコースを実施ている学校では、授業の際にセブの地元での日本企業の様子などを話し合うと深いディスカッションができることでしょう。

ぜひ、皆さんもセブに来て実際にこうした様子をご覧になってみてはいかがでしょうか。

それではまた。

【まとめ】セブ島にある有名・評判な語学学校の一覧表

CoReDi Connection 代表
・ファイナンシャルプランニング
・企業マーケティングコンサル
moro moro project 代表
・台日友好音樂會「音繋」主催

大手旅行会社で営業職を務めた後、2004年に渡英。英国のホテルで約2年にわたり多国籍のスタッフとともに働く。
帰国後、大手金融機関の新規事業部立ち上げに参加。企業のM&A、海外進出支援、CO2削減の取り組みなど多種にわたる事業に従事。上場企業の社長・役員に直接コンタクトを取り、電話&メールのやり取りだけで3ヶ月で2億円を売り上げ話題に。

その後、検索エンジンで有名な米国大手IT企業の新規プロジェクト立ち上げにスーパーバイザーとして参加。新製品の日本市場導入準備を担当、のちに法人向けクラウドウェアサービスを担当し、再び多国籍のスタッフとともに働く。

2015年に渡比。
2017年までセブ島の韓国系、日系の語学学校マネージャーを歴任。

現在はセブを拠点に東京、台北などで複数のプロジェクトを手がける。

Blog: 【日刊セブ便り】常時更新中ですのでよかったらご覧ください。
https://nikkancebudayori.wordpress.com/

この記事、あなたはどう思いましたか?ぜひご感想をください。

Please enter your comment!
Please enter your name here