Filipina business lady busy with work on computer

前回は、フィリピンで結婚件数が減っている理由のひとつとして女性の社会進出が影響していること、女性が社会を支える伝統がフィリピン古来より息づいていることを紹介しました。

今回は、世界レベルで見ても女性の活躍が目覚ましいフィリピン社会を支えている秘密について、考えてみます。

3.アジアで1番男女格差がない国

フィリピン

3-1.世界男女格差報告書から見るフィリピン社会

世界経済フォーラムが、2017年版の「世界男女格差報告書」を発表しています。

「世界男女格差報告書」とは、男女ごとの経済参加率と機会・教育達成度・健康と寿命・政治的エンパワーメントの4分野14項目を指数化したジェンダーギャップ指数を比べることで、国ごとに順位付けを行ったものです。

各国の男女間における格差を測る物差しとして、世界的に高く評価されている報告書です。

それによると、世界144カ国の調査のなかで、フィリピンは男女格差の少ない国として第10位にランキングされています。アジアでは1位です。

2016年の「世界男女格差報告書」では7位にランキングされていたため、今年度は少しだけ順位を落としたことになりますが、アジアでは断トツのトップであることに変わりはありません。近年では、常にフィリピンがアジアナンバーワンの座を独占しています。

女性の社会進出

2017年版の「世界男女格差報告書」からフィリピンのカントリースコア
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2017.pdf

フィリピンが特に目立って優れているのは教育達成度です。小学校から大学までの全過程の就学率で女性が男性を上回っており、この分野では世界1位です。さらに、専門職に占める男女比においても、男性38.5%、女性61.5%と、女性が男性をはるかに上回っており、ここでも世界1位です。

もっとも、ここまで女性の比率が高くなると、「男女格差なし」と言うよりも「女性の方が強すぎる逆差別」があるようにも思えてしまいます。

「世界男女格差報告書」は、女性に対する性差別をなくすことを目的としているため、逆差別については一切考慮していません。女性上位であれば、男女格差がないと判定されます。

世界ランキングで上位を占めるのは北欧の国々です。フィリピンが北欧に比べて劣っているのは、政治的エンパワーメントにおいてです。「エンパワーメント」とは簡単に言えば「権限」のことです。具体的に言えば、国会議員に占める女性の比率や、閣僚に占める女性の割合などを指します。

フィリピンは過去にコラソン・アキノとグロリア・M・アロヨという二人の女性大統領を輩出していますが、一般社会への女性の進出と比べて、政界への進出は遅れています。国会議員に占める女性の比率は29.5%、閣僚に占める女性の割合にしても25%に留まっています。

さらに、フィリピンでは女性の労働参加率が低いことが、順位を下げた大きな原因になっています。フィリピンの労働参加率は男性80.9%に対して、女性は 52.6%しかありません。

女性の社会進出

引用元:https://careerconnection.jp/job/guide/1320.html

上のグラフは最新のデータではないため数値に違いはありますが、各国の状況が一目でつかめます。女性就業率においては、日本の方がフィリピンを上回っています。

こうした統計を見ると、女性就業率が低いため、前回紹介したフィリピン社会の抱える事情と矛盾しているようですが、これにはカラクリがあります。

国民の大多数を占める貧困層を中心に、フィリピン女性の多くは家庭内労働に従事していますが、フィリピンの女性就業率では、こうしたメイドや子守などの家庭内労働者のほとんどが就業者としてカウントされていません。

また、多くの女性が家業の手伝いをしていますが、対価が支払われないことが一般的なため、これらも就業とは認められていません。たとえば、地方で家業の農業を手伝う女性たちです。

こうした統計からこぼれ落ちている女性たちをカウントすれば、フィリピン女性の労働参加率は当然のことながら跳ね上がります。

ちなみに、2017年版の「世界男女格差報告書」での日本のランキングは144カ国中114位で、過去最低となっています。他にはアメリカ 49位、中国 100位、韓国 118位です。

日本が順位を落としたのも、フィリピンと同様に女性の議員や閣僚が少ないためです。

2017年10月の衆院選では、定数の約1割にあたる47人の女性が当選していますが、世界各国と比べると政界への女性進出が際立って遅れています。政治分野は123位と、前回よりも20も順位を下げています。

男女の収入格差が大きいことと専門職や技術職で女性が少ないことが、日本の男女格差へとつながっています。フィリピン10位、日本114位という結果を見る限り、日本は明らかに女性活躍後進国といえるでしょう。

統計で見ても、フィリピンでは男女格差がほとんど存在していません。女性が活躍できる社会となったのは、男女の性別で差別をしないという観念がフィリピンに広く浸透していたからこそです。

それは、けして教育だけの成果ではありません。ここにも、古来から受け継がれてきたフィリピン社会の伝統が息づいています。

3-2.世界的に珍しい双系制社会としての伝統

古代のフィリピンは、世界的にも珍しい双系制社会であったと考えられています。「双系制」とは「男系」や「女系」と並ぶ文化人類学上の定義です。

父系制・母系制のいずれにも属さない双系制の社会では、子供は父親と母親双方の資産を男女に関係なく均等に相続できます。つまり相続の段階において、男だから、女だからという区別が一切存在しないと言うことです。

対して日本では、基本的に長男が全財産を相続する伝統が明治の頃までありました。男であれば財産を相続でき、女性であれば相続できないという慣習は、さまざまな男女差別へとつながっていきました。男尊女卑の根っこは、相続制度に求めることができます。

こうした慣習は、中国から入ってきた儒教の影響を受けたためとされています。儒教が伝わる前の古代日本には、フィリピン同様の双系制が根付いていたとする学説もあります。

フィリピンでは相続の際にも男女平等が貫かれたため、男女の性別で差別するような社会観念そのものが生じませんでした。

たとえば村の長が亡くなったとき、息子がいない場合は娘がその跡を継ぐことも一般的だったとされています。

今日に至るもフィリピンに男女格差がないのは、双系制社会としての伝統が活きているからです。

3-3.家事や育児は「妻の仕事」ではない

家事

女性が活躍することにかけて、フィリピンは日本をはるかに上回っています。しかし、働く女性のイメージは、日本とフィリピンの二国間で大きな違いがあります。

日本で働く女性といえば、仕事も育児もばりばりこなすキャリアウーマンのようなイメージを重ねることが一般的かもしれません。仕事と家事の両方の重圧に耐えながら、歯を食いしばって賢明に働く姿が浮かんできませんか?

ところがフィリピンでは、こうしたイメージは完全に的外れです。なぜならフィリピンには、「家事や育児は女性の仕事」という考え方がないからです。

では、誰の仕事なのかと言えば、「家事や育児は家族全員の仕事」なのです。

そこには当然、男性も入ります。フィリピンでは男性も家事を手伝い、子育てに協力するのが当たり前です。もし料理も洗濯もできず、子育ては妻の仕事と思い込んでいるような日本人男性がフィリピン女性と結婚して家庭をもつとなれば、たちまち家庭不和が起こることは必然です。

フィリピンの男性は、女性だけに育児を押しつけるようなことはしません。掃除や洗濯などの家事も、女性の仕事と決めつけることはしません。家事も子育ても、夫婦がそれぞれにできる範囲で協力し合うのが基本です。

こうした考え方がフィリピン社会の隅々にまで行き渡っているため、「嫁が仕事ばかりを優先して家事や子育てがおろそかになっている」といった日本でよく耳にする、嫁姑の間で起こりがちな問題も生じません。

「家事や育児は家族全員の仕事」という同意がどの家庭でもとれているため、嫁が非難されるいわれはまったくないからです。

貧困層を中心に、フィリピンでは大家族で暮らすことが一般的です。祖父母や父母、夫、子供に至るまで、家族の一員として全員が家事と育児を分担します。

前回、出産や育児についての社会的なサポートは、フィリピンよりも日本の方が手厚いことを紹介しました。

日本よりも劣悪な環境にもかかわらず、フィリピンの女性が楽々と社会進出を果たせるのは、家事や育児は「妻の仕事」ではないという考え方が、社会に浸透しているためです。

法的な社会制度は十分でなくても、家事や育児を女性がそれほど重荷に感じなくてもよい環境が、フィリピンには整っています。女性が働くことに対して、老若男女問わずに協力する社会的コンセンサスが、フィリピンにはできあがっているのです。

ただし、家族全員が家事・育児をこなすことが当たり前という空気がフィリピン全土を覆っていても、実際にそのすべてを家族だけでまかなうのは、最貧困層の家庭に限られています。

富裕層はもちろんのこと、中流階級や低所得者層に至るまで、フィリピンの家庭に欠かせないのは、メイドやヤヤと呼ばれるヘルパーの存在です。

フィリピン女性の果たすべき役割が日本と比べて圧倒的に少ないのは、実はこのヘルパーに負うところが大きいのです。

フィリピン女性の活発な社会進出を影で支えているのは、家内労働者であるヘルパーです。

4.男女平等を支える貧富の格差

家事

4-1.女性の社会進出を支えるヘルパー

日本でも、富裕層になるとお手伝いさんを雇う家庭が目立ちます。ですが、一般家庭にとってお手伝いさんはけして身近な存在ではありません。お手伝いさんを雇えるのは、あくまで「お金持ちの特権」と捉えることが一般的です。

ところがフィリピンでは、富裕層に限らず一般家庭でもヘルパーを雇う光景をよく目にします。どの家庭でも気軽にヘルパーを雇えるのは、ヘルパーの給料が驚くほど安いためです。

ヘルパーの月給は住み込みだとマニラ首都圏で 3,000ペソ(約6,000円)〜、通いだと 5,000ペソ(約1万円)〜、地方だとその半額以下もありえます。住み込みの方が安いのは、食事や光熱費などを雇用者側が負担するからです。

ただし、この月給はあくまで相場であり、実際にはもっと低い水準で働いているヘルパーが多数います。ヘルパー派遣会社を通せば相場は守られますが、ヘルパーのほとんどは人の紹介による個人請負のため、その実態は明らかではありません。

フィリピンの物価が安いことを差し引いても、ヘルパーの月給は格安です。

参考までにあげておくと、教育関係で 1万ペソ(約2万円)、看護師やバスの運転手 9,000ペソ(約1.8万円)、ホテルの客室係 8,000ペソ(約1.6万円)、販売員 7,000ペソ(約1.4万円)です。*地域によって異なるのであくまで目安。

ヘルパーの仕事は3つに別れます。家事と子供の世話の両方をこなすオールアラウンド、子供の世話だけを担うヤヤ、家事だけを担うメイドの3種類です。

子供の世話をするヤヤは、基本的には24時間子供と一緒に寝起きを共にします。お弁当も含めて子供の食事作りから学校の送り迎え、宿題のフォローもすれば遊び相手にもなり、夜は一緒に寝かしつけます。

子供が幼い間は、お昼に幼稚園に出向くのも大切な仕事です。フィリピンでは5歳ぐらいになっても一人で食事をとらない子が多く、ヤヤがスプーンで食事を子供の口に運んであげる光景をよく目にします。

学校で必要になったものを用意することもヤヤの仕事です。工作に必要なものをかき集めたり、学用品に名前を書き入れたりと、子供の生活のすべてに密着して世話をします(もっともこれらは家庭の教育方針によって異なりますが)。

ヤヤが子供の世話をすべてこなすと聞くと、では母親はなにをしているのかと疑問に思うかもしれません。これについては次節で紹介します。

家事を担うメイドは、家の掃除や洗濯、食材の買出しや料理など家事全般をこなします。富裕層になると掃除専門や洗濯専門、料理専門など複数人のメイドを雇うことが一般的です。

ヘルパーとして雇われるのは、そのほとんどが地方出身の女性です。ただでさえ雇用の受け皿が不足しているフィリピンでは、地方に行くと絶望的ともいえるほどに仕事がありません。

そのため、地方から職を求めて多くの若者が都会へと押し寄せます。その際、女性がもっとも見つけやすい仕事がヘルパーです。子供の世話にしても家事にしても、専門的な知識がなくても誰にでもこなせるからです。

多少安くても住み込みで雇ってもらえれば、安心して寝られる場所を確保でき、毎日三食が与えられるため、ひもじい思いをしなくて済みます。家賃や光熱費などの生活費がかからないため、月給のほぼすべてを故郷に住む家族のもとに送金できます。

こうした事情から、地方から出てきた女性の大半はヘルパーの職に就くことを希望します。なり手は次から次へと押し寄せるため、完全に買い手市場です。

このような環境のなかでは、雇用に当たって契約書を交わすこともないため、雇用者を守るために設けられた法律上の規制さえ、ヘルパーにはまったく適用されません。法定最低賃金が守られることもなければ、労働保険も一切つきません。

「ジェンダーの政治経済学:フィリピンにおける女性と性的分業」のなかで経済学者のエリザベス・ウイ エヴィオータ氏は次のように綴っています。

この仕事(ヘルパー)が賃金労働のなかで、いや、いかなる仕事のなかでも最低賃金が支払われているのは驚くにあたらない。

家庭奉公労働者は教育レベルでは最も低い階層に属し、経済的には差異貧困地域の出身者である。女性の国内出稼ぎ労働のうち最大の割合を占めているのは家内労働であり、家内労働に従事する女性の大部分は出稼ぎに出て、まだ間がない。

これら地方に住む貧民層の女性が請け負うヘルパーという仕事は、正規の仕事とは認められないため、統計の上ではまったく表面に出てきません。しかし、フィリピンの女性が出産や育児・家事に時間をとられることなく社会進出を果たせているのは、ヘルパーという存在があるからこそです。

では、その一方で、子供の世話をヘルパーに丸投げするフィリピン女性は、母親としての責任を果たしているといえるのでしょうか?

ここにも、日本とフィリピンの考え方の違いが大きく出ています。

4-2.母親に期待される日本とは異なる役割

子育て

家族愛が人一倍強いことは、フィリピン人の特徴の一つです。でも、日本的な感覚からすると「母親の役割として大切なはずの子供の世話をヘルパーに任せて涼しい顔をしているなんて、話が違うじゃないか!」と思うかもしれません。

たとえば日本では、母親が子供のために手の込んだお弁当を作ることが流行っています。ところが、フィリピンではお弁当を作るのはヘルパーの仕事であり、母親が自ら作ることはほとんどありません。

そう聞くと「子供への愛情が足りない」と思いがちですが、そんなことはありません。実際のところフィリピンでは、子供の世話をヘルパーに丸投げしているからと言って、子供への愛情不足を指摘する声など、どこからも上がりません。

なぜなら日本とフィリピンでは、母親に期待される役割が異なるからです。

日本では子供の世話をできるだけ自分の手でこなすことが、母親に求められています。仕事がどれだけ忙しくても、料理などの基本的な世話ができないとなると「駄目な母親」と見られがちです。

でも、フィリピンで母親に求められる役割とは、子供と多くの時間を共に過ごし、子供との会話を大切にすることなのです。学校で楽しかったことやその日の出来事について話す子供の声に耳を傾け、子供の悩みに答えることが母親として果たすべき責任なのです。

子供と向き合う時間をより多く作るために家事や子供に関する雑事を他人に任せることは、フィリピンでは誉められこそすれ、けして非難されるべき行為ではありません。

むしろ、日本のように料理や掃除・洗濯などの家事に追われるあまり、子供と満足に話す時間さえとれない母親こそが、子供への愛情が足りない駄目な母親とフィリピンでは見られます。

つまり、家事や子供の世話を外注に出すことで子供と会話する時間を多くとる母親こそが、フィリピンでは賢母なのです。

 
フィリピン人のほとんどは、家族と過ごす時間をなによりも大切にします。仕事の面でもそれは表れており、日本人とは違って残業をしないフィリピン人がかなり多くいます。就業時間になればさっさと家族のもとに帰るのがフィリピン流です。

残業を嫌がらない人も、残業せずに帰宅するフィリピン人の気持ちがよくわかるため、残業しないからと言って非難することはほとんどありません。また、残業をしなかったからと言って社内の評価が下がることもありません。

フィリピンでは社会のあらゆる仕組みが、「家族を一番に大切にする」文化を前提に成り立っています。だからこそ、家族の幸せのためにヘルパーを積極的に雇うライフスタイルが根付いているのです。

ホワイトカラーを中心に、ヘルパーを雇うことで女性は家事と育児から解放され、その結果として管理職や専門職の大半を女性が占めるに至っています。

それはまさに、女性が女性を支える社会といえるでしょう。しかし、実はそこには大きな問題がひそんでいます。

4-3.女性が女性を支える社会の真実

ホワイトカラーに属するフィリピン人は、一人あるいは複数人のヘルパーを雇うことで家事と子育てを任せ、安心して仕事に打ち込んでいます。日本人から見るとなんともうらやましいセレブのようなライフスタイルを、フィリピンではごく普通の中流家庭でもたやすく実現できます。

日本では無理なのに、フィリピンでは簡単にヘルパーを雇用できるのは、ヘルパーの給与が不当に安いためです。

では、それほど安い給与にもかかわらず、なぜヘルパーを希望する女性が次々に現れるのでしょうか?

その答えは、フィリピンには貧富の格差が存在するからです。先にも説明した通り、ヘルパーとして働く女性の大半は地方出身の貧困層に属しています。こうした女性たちのほとんどはまともな教育を受けていないため、就ける仕事にも限りがあります。

地方から出てきて仕事に就けないとなると、路上生活を送るかゴミ山に囲まれたスラムのバラック小屋で暮らすよりありません。賃金が安くても住み込みで働けるヘルパーの仕事は、地方から職を求めて都会に出て来た女性の間で、常に人気の高い職種なのです。

貧しさに窮した女性たちが、不当に賃金が低いヘルパーの仕事に群がる姿を見ると、フィリピンに横たわる貧富の格差という問題が嫌でも浮かび上がってきます。

ただし、ここでの貧富の格差は、富裕層対貧困層という単純な図式ではありません。貧富の格差は富裕層・中間層・貧困層のそれぞれの階層ごとにより複雑に絡み合い、フィリピンに深い闇をもたらしています。

つまり、こういうことです。

富裕層対貧困層という軸を考えたとき、これまで再三説明しているように富裕層の女性を貧困層の女性が支える構造が、フィリピンにはたしかにあります。

しかし、実は貧困層のなかにも貧富の格差が存在しています。貧困層のなかで活躍する女性を支えているのもまた、貧困層のなかでより貧しい状況にある女性たちだからです。

地方から都会に出てヘルパーとして働いている女性はホワイトカラーではないものの、実は社会に進出して活躍している女性の一人です。彼女たちのほとんどはまだ若く、地方に暮らす家族のもとに子供を預けているケースも多々あります。

では、彼女たちが家事や育児から解放されて、職を求めて都会に出てこられたのはなぜでしょうか?

それは、彼女たちに代わって家事や子供の世話をしてくれる女性がいるからです。

都会でヘルパーとして働いている女性は給与から毎月、家族のために送金しています。他の職種と比べて給与が格段と低いヘルパーであっても、毎月決まった額を家族に届けられるため、仕事に有り付けなくて困っている他の貧困層の家庭に比べれば、彼女の家族はかなり裕福です。

そこで、彼女の家族は洗濯婦やベビーシッターなどをパートタイムで雇います。その賃金は彼女たちが手にする賃金よりも、はるかに低く抑えられています。日本の感覚からすればタダ同然の時給ですが、地方では仕事がまったくないことも多いため、希望者はいくらでもいます。

こうして貧困層の女性のなかにおいても、貧富の格差を土台に女性が女性を支える社会が維持されているのです。

図らずもヘルパーという存在を通して、フィリピンの女性たちが階層化されている様が透けて見えてきます。

フィリピンの女性社会は経済的優位度によって階層化され、より低位にいる女性が上の階層にいる女性を助ける仕組みになっているのです。

もっとも、「助ける」といえば聞こえはよいものの、その実態は「搾取(さくしゅ)」です。貧富の格差があまりにも大きいために、上位に位置する女性は低位にいる女性を搾取します。その搾取された女性もまた、より低い位置にいる女性を搾取します。

最も低い階層に位置している最貧困層の女性たちは搾取される一方で、誰からも搾取できないまま、じっと堪え忍ぶだけです。

こうして女性が階層化され、女性が女性を支える仕組みができあがったことで、今日の女性活躍大国としてのフィリピンがあります。

『男女平等にかけては世界第10位』という高位置につけているフィリピン社会を支えているのが「貧富の格差」であるという事実は、フィリピンにとって不都合な真実です。

「女性が女性を支える社会」が成り立っていること自体が、フィリピンに貧富の格差があることの象徴といえるのです。

もちろん、だからといって男女格差がないことが悪なのではありません。男女格差がないという表面的な平等の裏に、貧富の格差という不平等が隠されていることが問題なのです。

今のフィリピンに必要なことは、男女格差をなくすことではなく、貧富の格差をなくすことです。

ところが実際には欧米の圧力により、男女平等を推し進める政策が積極的に導入されています。

ことに地方の援助プログラムになると、男女格差の解消を目的とするものが数多く実施されています。貧しい農村にNGOのスタッフが訪れ、男女格差解消プログラムを推し進めることは、珍しいことではありません。

こうしたピントがずれたNGOが多いのは、欧米諸国が男女格差の解消に力を入れているため、国際機関から男女格差解消のための予算を取りやすいためです。

しかし、フィリピンに暮らす多くの人々の苦しみを取り除くために必要なことは、男女格差の解消ではなく、貧富の格差という実態を伴った不平等を是正することです。そのための取り組みこそが今、待ち望まれています。

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ドン山本
アジア在中のジャーナリスト
タウン誌の副編集長を経て独立。フリーライターとして別冊宝島などの編集に加わりながらIT関連の知識を吸収し、IT系ベンチャー企業を起業。 その後、持ち前の放浪癖を抑え難くアジアに移住。フィリピンとタイを中心に、フリージャーナリストとして現地からの情報を発信している。

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