
一度でもセブ島に行かれたことがある方は、セブ島の貧富の差に驚くでしょう。そして、彼らのために自分が出来る事をしたい!っと考える方も少なくありません。
そこでこのコーナーでは、既にフィリピン・セブ島で実際に働かれている日本人のボランティアグループをご紹介していきたいと思います。
第一回目はNGO法人『プルメリア』の代表「濱野直道」さんにお話をお伺いしました。
濱野さんは基本的に個人で「プルメリア」を運営しており、現地で100名以上の子どもたちのサポートをしています。
『NGOを運営するということはどういう事なのか』、『今後NGOやNPOで働きたい、団体を立ちあげたい方への現実』、『実際現場でどのような形で支援しているのか?』
などについてかなり詳しいインタビューになっています。(約1時間のインタビュー)ぜひご覧ください。
セブ島の子ども支援NGO『プルメリア』の事業内容と歴史
斉藤「濱野さん、本日はお忙しい中ありがとうございます。」
斉藤「早速ですがプルメリアはセブ島で、どのようなボランティア活動をなさっているのか、お教え頂けますでしょうか。」
濱野「基本は教育支援なんです。教育支援というのは何であるかというと、簡単に言いますと貧困家庭に所属している子どもたち。いつ学業を辞めなきゃいけなくなるかわからいっていう不安定な人たちが多いんです。
そこに資金援助をして、ちゃんと学校に行って、できれば大学まで卒業して手に職をつけて、ちゃんと自立できるようにしましょうということなんですね。
ただし、うちの場合は個人の団体ですし、いろんな歴史の中でむやみやたらにお金を配っても役に立たないということで非常にシビアになったんですね。
それで、ちょっと苦しいところではあるのですが、とりあえず、今、学校へ行っていることが大前提です。
ところが、重要なのはその学校に行っている状態ですよね。ちゃんと授業に出ていますか、成績はどうですかというところです。そういうところきちんと査定した上で、基本的には学校から推薦をもらうんですけれども、その上でこの子だったら今、資金援助をして、先々大学まで行って自立する可能性が高いな・・・という子を選抜して資金を提供していく、これがメインですね。
2番目が医療援助というのをやっているんですが、向こうはそうした貧困階層については保険云々とか、そういうのが全然ない状態なんです。日本は優れた介護保険制度というのがあるんですけど、向こうはもうザルみたいなもので。」
斉藤「そもそも、入っている人が少ないですよね。」
濱野「そうですねー。入っている人が少ない上に、入っていたとしても非常に弱い。通院ぐらいだったら全然でない仕組みなので、そういうところでなかなか貧困家庭の子どもたちが、親御さんも含めてなんですが、ちゃんと医者にかかるという習慣がないんです。
そういうわけで、つまらない病気を悪化させて大変なことになるとか、そういう事態を防ぐために、まず病気になったら支援しますからお医者さんに行ってくださいと、これが2番目です。
3番目は、親御さんたちが高度教育を受けた経験というのがほとんどないケースが多い。そうしたときに、何をどうしていいのかわからない。
そうした場合、こちらが子どもたちに直接、こういうときはこうしなさい、ああしなさい、こうしたほうがいいよ、そうした生活指導というか、勉強の指導というか、そういうものが必要ですよね。これが3番目。
4番目は、雑多なものがあるのですが、大学生と協力して音楽イベントをやったり、週に土曜日と日曜日を使ってなんですが、希望者に対して私が直接、日本語を教えている。
事業内容としては、そんなようなところです。」
斉藤「なるほど、有り難うございます。ところで元々、フィリピンのセブ島に決めた理由というのは何かあったのでしょうか?」
濱野「実は私は元々雇われていたんです。元々そこにそうしたNGO活動があった。通訳というか出張できる人間を募集しているという情報があったので、それに乗かっていったというのが始りなんですね。
ただ、そうしているうちに、私も正直な話、NGOとか何とかで飯を食っていくなんてことは夢にも思っていないし、今でも実は無理なんですけれども、やってみて必要性は感じましたし、もう一つは、ごちゃごちゃごちゃごちゃやっているうちに、日本の本体がコケちゃったんですね。前の団体が。コケたはいいんだけど、これ、じゃあ、どうするのっていう話になって。」
濱野「そのときに、その当時、残っていた里親さんその他もろもろと一緒に話を持ちまして言われたわけですよ。
『濱野さん、もし可能であれば自分たちも応援するからね、何とか活動を継続できないか?』・・・というお話しになりまして、自分もたまたまそのとき、蓄えは多少あったものですから、じゃあ、この蓄えの許す範囲の中で、別団体を立ち上げて、資金を集められて継続できるんだったらやればいいし、そうじゃなかったら、もう、ごめんなさいということになると思いますけど・・・
という形でスタートしたのがプルメリアだったんです。」
斉藤「そのような経緯があったんですね。プルメリアが出来たのは何年ぐらい前でしょうか?」
濱野「設立、プルメリアという名称をつくり出したのが、使い出したのが、もうかれこれ6、7年。」
斉藤「そんなに経つんですか。」
濱野「ぐらいになりますね。ただ、NPO法人として認可されたのが2009年ですから、まだ、最近のことです。このプルメリアを続けていた所、ホームページで情報公開をしたお陰で運よく番組の取材というのが入りましてね。
大坂の番組の制作会社からだったのですが、実際に出てみたら、そこで出たことによって反響があったというんじゃなくて、ある企業の本社(今後A企業とする)が興味を持ってくれたんですね。それでつながった。」
斉藤「サポート支援ですか。」
濱野「それでかろうじてつながった状態。そこから言うほど発展はしていないんですけども、何とかやっている状態です。」
斉藤「団体として成り立つ資金力にめどが付いたと言う事ですね。」
濱野「そういうことですね。」

個人でNGOを運営する難しさ
斉藤「学生さんの中にも濱野さんが今まさになされているようなNGOを、将来的に立ち上げたいという方もいるかと思いますけれども、やっぱり一筋縄ではいかないという事でしょうか?」
濱野「それは簡単じゃないですね。結局ね、今、A企業さんのほうでバックアップしていただいているのも、要は元々その社長がそういうことが大好きだったわけですよね。ところがお金がかかりますと。お金がかかるといったときに、やっぱり事業を持っていないとできませんと。」
斉藤「他の母体をということですね。」
濱野「そういうことですね。だから、そのために何をするかということで考えたのが化粧品の販売だということだそうです。合わせて元々自社でNGOをやっていたのですが、続けていけない問題が出てきて、じゃあ、もう切り離すしかないということで切り離した。
だけども、元々はボランティアをやるためのビジネスの素はある。そうしたところで浮いた資金をどうするかということで、今度は教育支援だということで切り替わった。そしてそのタイミングでうちがうまい具合に乗かった、そんな感じなんですね。」
斉藤「実際、仮に立ち上げをして運転資金を回すということを考えたときに、これもピンキリだとは思うんですけれども、予算は1年間で最低どのぐらい必要なのでしょうか?例えばセブ島内では・・・」
濱野「これはホント活動の内容になって全く変わってしまうので、何とも言えないです。でも、うちみたいな小規模な団体でも、年間予算でやっぱり700万円弱ぐらい使っていますからね。」
斉藤「すごいですね。物価の安いセブ島であったとしても、そんなにかかるんですか。」
濱野「それぐらいはかかりますよね。しかも、結局、配っているだけですからね。配っているだけというとおかしいですけれども。」
斉藤「別にそれは回収できるわけではないから。」
濱野「回収できるわけではないからね。」
斉藤「本当に母体がないとできないですね。」
濱野「そういうことですね。」
濱野「だから、通常だったら出しました、返りました。返りが大きいから事業として成り立ちます。だけれども、こうした活動というのは、出す一方。。。。基本的には。
だから、一筋縄ではやっぱりいかない。要は企業のほうがお金を出すとしても、じゃあ、それを出すことにうちに何のメリットがあるんだい?ということなんですね。」
斉藤「そうですよね。企業は別に広告を打てるわけでもないし。」
濱野「結局、そこに支援を出していますよということが、企業としてのいわゆる広告宣伝になればこそやるわけ。
だから、それゆえに、今回もそうなんですけれども、A企業さんでの活動報告会というのがありまして、既存の代理店さんへきちんと報告をする必要があるんです。お金を出しているのは代理店さんですから。実際にこういうことを現地でこういう問題が起きていて、こういうことをやっておりますと。」
斉藤「A企業の事業の一環として、こういうこともやっていますと。」
濱野「実際にご支援をいただいて、こういうふうになっていますという報告ですよね。」
斉藤「NGOを事業としてうまく成り立たせるには、自分の別の収入源、最低数百万を寄付として回せるだけの体力のある自分の事業がなければ、やはり大きなそれなりのサポーターを見つける必要があるということですね。」
濱野「そうですね。見つけてくるしかない。やっぱり結局、A企業でもそうなんですが、基本的には収入の柱か何かがドンとあってね。そこから余剰のお金が出てきますと、では、それでやれますという形でないと現行は難しいですよね。
海外でも相当いろんなNGOがありますが、やっぱりその実態として、特に資金力が大きいところは何かというと、やっぱり政治的な役割を担っていたりするんです。そうでないと回らない。だから、本当にいいことをやりたいといっても、それだけではなかなかついてこないですよね。」
斉藤「元手となるものも必要ですし、実際にそれをアピールしないといけないですもんね。世の中に対して。」
濱野「特に今、日本の経済状態、景気があまりよくない。そういう中で、そういうことをやっている余力というのが本当にないわけですよね。」
斉藤「企業としても。」
濱野「企業としてはね。だから、今日も横浜の支援者といいますか、これは会社としてやっていただいているところなんですけれども、上場企業とか、そういうところからは声はかからないのって聞かれて、いや、全然、かかりませんと。
結局、上場企業というのは、よっぽど何か名目がないとお金が出しづらいんですよね。もう、組織ががんじがらめになっているから。ただ、それでいいことをやっています。じゃあ、株主さんが納得しないわけですよね。」
斉藤「その寄付をしたことによって、株主がどう利益を得るかまでを考えて。」
濱野「そういうことですね。じゃあ、それをやっていることによってどういう利益、目に見えて利益が上がっているのか証明しろっていう話になりかねないんですよね。」
斉藤「だったら、そのお金を使わずに我々株主に還元してほしい、という話になってしまいますもんね。」
濱野「配当をもっとよこせっていう話になるかかもわからない。」
斉藤「そうですよね。NGOに寄付したことによって何か大きな分かりやすい広告宣伝になるとかであれば、また別なんでしょうけれども。」
濱野「そうですね。だから、逆に単発の支援というのはしやすいみたいです。(例えば学校を作りました、というのは会社のイメージアップに繋がる良い広告になりやすいという意味)

教育支援の結果はわかりづらい。
濱野「継続的にずっとこういう形で子どもの教育支援をして、人材の育成をしますというのは時間がかかるんです。効果がなかなか見えづらいし、目に見えない、物がないから、いるのは人だけなんで難しいんですね。基本的に。」
斉藤「その子が成長して学校に通って、どうなりましたっていうことぐらいでしか、言えないですよね。」
濱野「基本的に時間がかかるんですよ。だから難しい。一番分かりやすいのは学校を作るというような確実に目に見えるもだと思います。その企業の名前をつけたりすると、よりわかりやすくなりますね。」
斉藤「発展途上国の学校設立費用は・・・えーっとたしか600万とか700万ぐらいでしたでしょうか。」
濱野「途上国であればそれぐらいの予算を割けばできちゃう。ところがプルメリア側も年間運営してそれだけの資金がダラー、ダラーと出ていくわけです。それが一人の子どもを支援するのに10年とかというスパンで見るわけですよ。ものすごい金額になるはずなんです、最終的に。」
斉藤「しかも、それが目に見えづらいというか。結局、その子が最終的にどうなったかぐらいまで追っていかないといけないってことですよね。」
濱野「それはできるんですが、ただし、その時間たるや、ものすごく長い。」
斉藤「10年とか、かかるわけですもんね。」
濱野「結局、少しづつに見えるんだけれども積みあがっていく、実際に投資したお金はものすごいことになるはずなんですね。だから、今、さくっと話しましたけれども、何だかんだで私が前の団体から数えて10数年やっているわけです。そうすると、それだけで1億ぐらいのお金が飛んでいるかもわからない。」
斉藤「そうでしょうね。毎年700万、使っていれば。」
濱野「だから簡単な話が、事業をやるのに1億円、資本金を積みました。グルグルグルとうまいこと回したら、1年で2倍とか3倍とかになる可能性だってあるわけですよね。そいつをジャラっと出しちゃうというのはわからない。どこまでがそれが価値を生むのかわからないという世界。」
斉藤「ビジネスとして大きくした後で、寄付にお金を使えばいい・・・という考え方もできますよね。」
濱野「そういう考え方もできますよね。」
斉藤「そのお金を今、寄付するんじゃなくて、ビジネスで回す。変な話、5年間、10年間自分の事業に投資して大きなお金を得てから寄付をする。」
濱野「ちょこと、ちょこっと出していく。個人が自分で本当にやろうと思ったらそれしかないかもしれない。
斉藤「逆に、そうでもしない限りではできないですね。」
濱野「できない。だから、よっぽどうまい具合にスポンサーを見つけないと、ただ単に心ざしがありました、では難しいですよね。」
斉藤「海外でボランティアをやりたい、誰かを助けたいです!といっても、結局は今、目の前の人しか助けられないですもんね。」
濱野「そうなんですね。私なんかはそういう立場ですが、じゃあそこに自分の時間の大半をそこに割きました。では、無報酬でやれますか?・・・それは無理ですからね。」
斉藤「それはそうですよね。」
濱野「だから、今の資金規模では自分も100パーセント、この活動に体を預けることはできないのでいろんなことをやりますよ。結果として休みがないですね。
それもある面、好きでやっていることなので、体も悪くないし、精神も病まないですけれども。でも、これを例えば人から命じられて、ああしろ、こうしろってやったら、もう多分、倒れるでしょうね。」
斉藤「何人ぐらいでやっていらっしゃるんですか?プルメリアさんの仕事は。」
濱野「基本的には自分だけは大半の時間を抑えているので、報酬はちょこっとだけいただいていますけれども、あとは、役員、ホームーページにバっと載っていますけれども、皆さん無報酬なんです。」
斉藤「そうなんですか。」
濱野「それゆえに、こちらもあまり無理なことをは言えないんです。だから、ほとんど、だから自分でやるべきところ、運営の本体は自分で動かないとどうしようもない状態。」
斉藤「そうなんですね。」
濱野「だから、経理から何から全部自分でやっている状態。」
斉藤「それはムチャクチャハードですね。」
濱野「楽ではないですよ。」
斉藤「一つ運営するだけも大変なのに、他の事業までしていたら、本当に時間がないですね。」
濱野「ないですね。」
斉藤「今の、プルメリアさんの中でのメインの事業というのは、一番最初におっしゃられた。。。」
濱野「奨学金の支給ですね。」
斉藤「お金自体は一般の人より、A企業さんからの寄付がメインでしょうか?」
濱野「A企業さんから上がってくる資金と、一般の方々(里親さん)からの援助で活動が成り立っていますが、里親さんからには、通しで小学校からハイスクール、大学、ずっと一人3000円で援助していただいている状態です。ただ、それでやっていきますと、最近物価の上昇が激しくて。」
斉藤「物価の上昇は、ここ1年で本当にすごいですね。」
濱野「結局、10年で倍ぐらいになっているわけです。セブは・・」
斉藤「そんなに。」
濱野「そういう中で、今まで通しで3000円でいいですよってやってきたんですけれども、もう、大学生なんかは3000円では絶対に足りない。ヘタすると1万円近くはかかっちゃうわけです。超える場合もありますしね。これが何人かそろっていて、バランスをとっているから何とか回っている。また、A企業さんからの資金が無ければ、運営の為の経費も出ない状態です。」
斉藤「5万ペソぐらいいきますよね。確か、大学に通うと。半期とかでも。」
濱野「ピンからキリなんですよ。5万~6万ペソとかというと、結構、ハイクラスになるんですよね。」
斉藤「セブ大学とかでしょうか、5万ペソぐらいだったら。」
濱野「サンカルロス大学(セブ島で一番良い大学)とか、そのあたりですかね。私立大学の。」
斉藤「あ、なるほど。」
濱野「僕らは、そんなの丸々は放り出せないので、子どもたちにずっと言っていることは、ハイスクール卒業までの成績を一定ライン以上にしておきなさいよと。
それをすれば、うまいことしたら勤労学生という形の特典をもらって、授業料が半額になるとか、あるいは大学の中で働くことを条件に授業料の何パーセントか、うまくしたら全額免除になるか、それとも日本でいうところの特待生という形で、授業料を丸ごと免額されるとか、そういうことであれば足りない部分をこちらから出すことはできるよと。
そうでないともう回りませんよ。」
斉藤「一人にかけるお金が膨大になってしまいますもんね。」
濱野「恐ろしいことになっちゃいますのでね。」
斉藤「おっしゃられる通りですね。実際の現実として、通常のアルバイトでは大学に通うほどの資金を蓄えることが出来ないので、女性なんかは夜の仕事をやりながら。。。」
濱野「そういうことも出てきますよね。」
斉藤「CDU(セブドクターズユニバーシティ)、サンカルロス大学などのセブ島では一二番を争う学校でも、そういう所で働いている子もいるそうですね。」
濱野「特にそういうところは、お金がすごいんですよ。出方が。要は下のほうに合わせてくれないんですよ。プライベートスクールはビジネスですので、上のほうに合わせてボンボンやりますから。」
斉藤「教科書代もすごくなりますし。。。」
濱野「すごく高くなりますね。国の補助やら何やらが入っていて、誰もが受けられるのにという形には決してなっていないんです・・・」

支援の仕方
斉藤「例えば、もし学生や社会人の方がプルメリアさんに支援したいという場合は、一番いいのは寄付という形でしょうか。」
濱野「寄付という形をいただけるのが一番ありがたいです。けれども、それだけだと皆さんがやっている実感がないということが恐らく出てくるので、それであれば、スタディーツアー的なものですね。(スタディツアーとは簡単にいえば、貧しい子どもたちがいる場所に行き、彼らと一緒にアクティビティなどをして時間を過ごすこと)」
斉藤「あ、スタディツアーもあるんですか?」
濱野「やってはいないんですよ。まだ、本格的に。というのは、スタディーツアーで中途半端に、ビジネス的な感じで回していった場合にリスクをしょうわけです。結局、我々が入り込んでいくところというのは、もう観光客が入り込んでいくような状態の場所ではないわけですよ。
何か不測の事態がドンと起こったときに責任問題が出てくるともう、特に何かでお金を取っていますよということになると、逃げようがないはずなんです。いくら誓約書を取ろうがどうしようが、それがダメージになる可能性がある。だから、なかなか本格的には踏み出せないんです。」
斉藤「今、スタディーツアーをやっている他の組織団体の方も、やっぱり続けるのは難しいという場合も聞いた話しではいくつか出てきているようで。」
濱野「そこら辺がまた難しいんですよね。変にやると今度、旅行業とかそこら辺に抵触してくる可能性もあるし、やり方がすごく難しいと思うんです。」
斉藤「そういう提携先を見つけて、更にどんなプログラムを組むのかというのも難しそうですね。」
濱野「セブで同じように教育支援をやられているとある企業(B企業とする)が、NPO法人があるんですけれども、そことも情報交換とか、人の交流というのを長い間続けてやっているんですが、あそこは本体の役員さんの一人が旅行業の免許を持っている方で、比較的そういうのがうまい具合にできるんです。」
斉藤「実はちょうど昨日、B企業の代表の方と直接お会いする機会を頂きまして、お話をお伺いしたのですが、元々は、母体は違うことをやっており、そこの母体があってこの支援が続いているとおっしゃられておりました。うまく他の事業と組み合わせていかないと、なかなか難しいようで・・・」
濱野「難しいんでしょうね。だから、うちみたいにこのNGO1本でね、それこそ有志だけが集まってヤイノヤイノとやって何とか続いているというのは、もう例外中の例外かもわからないですよね。」
斉藤「もし、学生や社会人の方がセブ島のそういった地域、子どもたちの支援をしていきたいと考えた場合に、最初のステップとしてはどういったものが考えられますでしょうか。」
濱野「とりあえず、現地に来られるのであれば、まず、現場を見てくださいよと。その際に、回る経費と、あと、ホントわずかなご寄付。例えば、その見返りとしてこちらが、こういうツアーに参加されましたみたいな証明書みたいなのを切ったりとか、あるいは、ちょっとこじつけになりますけれども、日本語教室に来ていただいて、日本語でスピーチをしていただいて、それを学生たちに聞かせてああでもない、こうでもないという反応をとったりとか。
それが一応、お手伝いという形になりますので、これでお手伝いいただきましたという証明書が切れるわけですよね。ただ、それについては、あまりこちらで大きなチャージはかけられないので、商売ではないので、お気持ちだけ。そこを入口にして、もし、先々何らかのご寄付とかいただけるのであれば、それに越したことはないんですけれども、という感じですかね。」
斉藤「5000円の寄付があれば、実際にどのぐらい、生徒一人に対して1年間養うぐらいにはなるのでしょうか?」
濱野「足りないですね、5000円では。」
斉藤「1万円ぐらいですか?」
濱野「そうですね。今、ザクっと考えると、小学校というのはそんなに経費がかからないわけですよね。実際のところは。ほんのわずかなものです。医療費とか、就学のための資金として月額これだけ渡しますから、あなたが自分で管理しなさいとか、要はお小遣いですよね。
ちゃんとそこでお金の使い方もそこで覚えてくださいよという感じでやっている状態の中で、多分、それでも日本円換算すると月々平均で事務手数料とか全部抜きにして。。。」
濱野「月々でやっぱり1000円ぐらいはかかってきますよね。だとすると、年間でかける12をしていただいたら、金額が出てきますよね。」
斉藤「それが小学生ぐらいですか?」
濱野「それが小学生ぐらい。」
斉藤「ということは。」
濱野「これが小学校からハイスクールに行って、大学に行って、ほとんど倍々倍ぐらいでキュっと上がっていくわけですよ。」
斉藤「それは厳しいですね。大学、そうですよね。大学になってくれば。」
濱野「大学のほうもこっちがフルで出せる状態ではないので小学校から始ってハイスクールの間にね、今、頑張るんだよと。
卒業のときに例えば5番手、悪くても10番手ぐらいになっていれば何らかの特典を受けられる可能性もあるし、州立大学とか国立大学の受験は結構倍率が高いんだけれども、そこをくぐっていくこともできるし・・・という前提でやっているわけですよね。」
斉藤「フィリピンは本当に大学の社会ですよね。大学を卒業しないと、もう本当にどうしようもないですよね。」
濱野「どうしようもない形になっていますね。今ね。最低でも大学2年、旧システムは大学2年までは終了していないと苦しいですね。」
斉藤「いい就職はできない。通常の就職でさえ難しいですよね。」
濱野「まともな企業ですよね、そで働くということが難しくなる。」
斉藤「ホテルなども大学卒業資格が無いと難しいと聞いています。」
濱野「そうですね。ほとんどそうですね。」
斉藤「飲食業の、ローカルな飲食業では別かもしれないですけど、ちゃんとしたレストランの場合も大卒は必要。」
濱野「それなりにちゃんとした企業という形態をとっているところへ行こうと思うと、最低でもそれぐらい。」
斉藤「大学を卒業できるというのは、彼らにとってすごい大きな助けになりますよね。」
濱野「実際のところを言いますと、大学をとりあえず卒業しました、ギリギリで卒業しましたというだけでは使えないですね。」
斉藤「あ、そうなんですか?」
濱野「採用されませんね。逆に「大学をそこそこの成績で卒業しました」といったら、救いはあるんです。だから、ずっとうちらが言っているのは、『いいですよ、成績をちゃんとやっている以上は支援しますよと。』その裏にあるものは何かというと、せっかく支援したんだから、それが生きてほしい。最低でも。それだけなんですよね。」
斉藤「例えばいい大学、それなりのそこそこのビサヤ大学で成績が悪かった場合はどうなるのでしょうか?成績が悪いと就職が難しい?」
濱野「もう難しいでしょうね。すごく難しいでしょうね。」
斉藤「とにかく、仮に優秀な大学であったとしても、成績が悪いという状態は避けなければいけないということですね。」

多くの人を助けたければ事業を作る事
斉藤「繰り返しになりますがもし今後、学生、社会人問わずこういった方たちへの支援を考えていきたい場合というのは、現実としては、本当に理想的なパターンとしては、やはり何かしらの事業を構えて、それなりの資金を蓄えてからサポートするのがベストでしょうか。」
濱野「それしかないでしょうね。ホント、ぶっちゃけた話をしますとね、自分は最初、雇われでいきましたよね。ところが途中でコケました。じゃあ、継続しましょうかっていったときに、やっぱり私財を数百万円は投入しているわけですよ、そこで。それでお陰様で本当にスッテンテンになっちゃったんです。それでも継続はできたわけです。」
斉藤「なるほど~目の前の人たちだけでなく、本当に多くの人をサポートしようと思ったら、やはり資金が必要なんですね。」
斉藤「ちなみに年間で何人ぐらいの生徒さんを支援なさっているのでしょうか?」
濱野「今は130を越えて、140名近く。」
斉藤「そんなにいらっしゃるんですか!」
濱野「そうですね。それをずっと見ていっているんですね。だから、どうしてもかかるんですよ。お金は。」
斉藤「しかも、先々の予算も考えて。」
濱野「そういうことですよね。今、先々ということを見込むと本当にお先真っ暗じゃないかって。今、円安になっていますよね。これがすごく痛いんですよ。」
斉藤「ちょうど1年ぐらい前ですかね。100円で55ペソぐらいだったのが、今では100円で40ペソ、10ペソぐらい違いますもんね。」
濱野「資金力がボっと上がってくるわけですよね。すごいわけですよ。例えば、マキシマムで1万円が、5万5000円。5500ぐらいになっていたものが、もう最低の線で、最近38とかいっちゃったわけですよ。」
斉藤「いきましたね。」
濱野「バっと計算すると25パーセントオフなんです。そうするとモロに響くんです。こっちは。それを回しているわけじゃないから。ざっとそれだけ目減りしちゃうんです。」
斉藤「10万、100万の単位になったら、もう、エライ話ですよね。」
濱野「そういうことなんです。」
濱野「本当に企業何かは、いわゆる営業努力その他、もろもろやって上手に回していって、結果として利幅を何とか確保するということはまだやれるんですよ。ところが我々みたいに単純に寄付をいただいて、そいつをペソに換金して払い出しているというのは、ダイレクトに減っちゃうだけなんです。」
濱野「だから、本当にこうしてお話をさせていただくときによく言うんですが、こうした現実が最初からわかっていたら、とてもじゃないけど手は出さなかっただろうというのが本音です(苦笑)」
斉藤「なるほど。」
濱野「ただ、やってみてある面、それに生きがいを感じている部分もあるし、やーめたって言えない部分もある。だから今続いているんです。
もし、これからNGOを立ちあげたいという方がいるのであれば、最初からNGOを本業にして活動し始めるのではなく、とりあえず他の事業を立ち上げて、その中でできる範囲でやるっていうふうに考えたほうがいいかもしれません。」
斉藤「なるほど~、NGO法人の運営がシビアであることが、身にしみてわかりました。こういったお仕事はやりがいを感じる事は間違いないでしょうが、しっかりと計画準備をしてそれなりの資金を用意していないと、自分だけでなく資金を支援してくれる方、サポートする子どもや家族にも迷惑がかかってしまう・・・逆に言えば、そこさえしっかりしていれば長期にわたって彼らをサポート出来る、ということですね。」
濱野「そうでしょうね。」
斉藤「本日はとても勉強になりました。お忙しい中お時間いただきまして、本当にありがとうございました。」
濱野「ありがとうございました。」

今回ご紹介した、プルメリアの公式サイトはこちら。
→http://www.cebu-plumeria.jp/index.html
プルメリアを通じてセブ島の子どもたちへ教育支援を行っていただける方はこちら。
→http://www.cebu-plumeria.jp/pata/index.htm