アメリカ、カナダへの大学進学は概ね同じ準備で出願できます。
ここでは、語学学校や短期留学、交換留学ではなく、アメリカ、カナダへの大学進学準備についての情報に焦点を当て、一人でも多くの日本人が海外の大学へ進む手助けとなる情報をご紹介します。
目次
アメリカやカナダの大学進学に向けた準備
「海外留学」は高校生、大学生の短期交換留学や自分で留学エージェントなどを通じて申し込む「語学留学」、そして現地のアメリカ人やカナダ人が目指す大学に、他の外国からの留学生と同様に、入学し、単位を取得し、卒業を目指す「海外大学進学」までさまざまな形があります。
ここでは、アメリカやカナダの大学を目指し、卒業後の就職も視野に入れた「留学」に関する願書の書き方から、必要な準備についての情報を記していきます。
留学の目標を明確化
英語の語学力向上を目指すだけでなく、「英語で何を学んで、何が出来るようになりたいか」を明確化させましょう。日本の大学進学と同様に、どんな学部で、何を学びたいかをはっきりさせると、自ずと進学したい大学が絞れてきます。世界ランキング上位に入っている大学は、多くが「総合大学」ですので、学部も多様で学びたい分野が必ずあります。
まずは、World University Ranking 2024 で世界の大学を調べてみましょう。こちらが2024 の最新版です。
世界ランキング上位の大学でも、外国人を必ず受け入れる一定の割合が存在します。しかし、成績上位者だけで外国人留学生を選ぶと、全員インド人になってしまいます。「多様性の観点」から大学にとっては日本人も必要な人材なのです。日本人の願書の数は、インド人や中国人より圧倒的に少ないので、少ない日本人願書の中から合格できるチャンスは必ずあります。
アメリカやカナダには多くの優れた大学があります。まずはさまざまな大学のホームページを見て、いろいろ想像するところから始めてみましょう。カリキュラムはもちろんのこと大学の立地、環境、寮生活や学食、カフェのメニューも載っているので、自分がその大学に通った時のことをイメージして楽しんでみましょう。
海外への「大学進学」は年単位で時間がかかりますから、出来るだけ早くから準備を始めることをおすすめします。自分の人生は一度きり、大学進学もなかなかやり直しできるものでもありません。世界の大学に進学して、さまざまな国籍の人と知り合い、多様性を学び、異文化を受け入れる、そんな素敵な4年間があったら、「彩り豊かな人生」になるために、今までなかった色をきっと添えてくれるでしょう。
大学への出願準備
アメリカの大学出願には一般的に、共通願書「コモンアプリケーション (common application」を利用します。これは、オンラインで全米およを900の大学へ共通して出願できるもので、アイビーリーグをはじめさまざまな名門大学もこれを利用します。入力項目はかなり多く、自分のプロフィールだけでなく親や兄弟の学歴や雇用状況(雇用中または失業中)、親の出身国などを入力する項目もあり、この共通願書作成には時間がかかります。
一方、カナダでは、アメリカのようにカナダ全土での共通の願書はありません。州によって異なり、オンタリオ州には共通願書がありますが、西海岸のブリティッシュコロンビア州では、各大学が指定したそれぞれの願書をオンライン提出します。そして、この後に紹介するアメリカにある SAT(Scholastic Assessment Test)(大学能力評価試験)のような共通の試験もありません。カナダの大学出願にもアメリカのSATは有効ですから、私たち日本人にとっては、アメリカとカナダは概ね同じ出願形式と考えられます。
英語を母国語としない国の出身者には、TOEFL (Test of English as a Foreign Language )で英語力を評価し、SATで英語と数学を含めたアカデミックかつ思考力を評価します。
アメリカやカナダへの大学の出願には、「高校の成績証明書」「TOEFLなどの英語能力証明書」「エッセイ」「推薦状」が主なものです。他に、ビザ申請など合格してから準備するものもあります。
そして、英語力の次に心配なのが「学費」です。アメリカの大学もカナダの大学も学費は高く、円安でますます高額に感じます。大学の寮などの生活費も高いです。よって奨学金や助成金もしっかり調べる必要があります。進学先の大学の奨学金を申し込むこともできますが、日本で受けられる奨学金もあります。
引用:https://www.jasso.go.jp/index.html
柳井正財団の奨学金
引用:https://www.yanaitadashi-foundation.or.jp/application/
留学先の国別、地域別などで検索できるサイト
引用:https://ryugaku.jasso.go.jp/index.html
などあります。
必ずチェックして欲しいのは、お住まいの「地方自治体の奨学金」です。給付型の奨学金となるものが主です。返済の義務はありません。
進学先の大学から得られる奨学金は、基本的にその国の生徒さんが第一、発展途上国の優秀な生徒さんが第二です。よって日本国内で得られる奨学金があれば是非利用したいものです。そして、奨学金の申込みは願書出願期限より期日が早い場合が多いので事前確認が必要です。
日本の国内で奨学金が受けられれば、願書には「大学からの奨学金は要りません」と記入できます。大声では言えませんが、大学は全額高い授業料を払ってくれる留学生は大歓迎なので、合格の確率が上がるのも確かです。前述の「多様性」と「奨学金不要」の2点は、期待以上に良い結果をもたらせてくれるものです。
まずはTOEFL 100 点越えを目指しましょう
世界ランキングの大学進学を目標とするなら、まずはTOEFL で100点越えを狙ってください。受験する大学の要件に合わせて、TOEFL のスコアは何点ほど必要かをチェックし目標を設定しましょう。TOEFL は会場でも、自宅でも受けられます。
自宅で受ける場合は、その環境を念入りに、カメラを回してチェックが入りますが、緊張も最小限で受けられるので、一度はトライする価値があると思います。会場でなかなか思うように点数が伸びない人は、是非、自宅で受けるTOEFL も挑戦してみましょう。日にちを選ばず、毎日のように受けられる点もメリットです。ただ、会場も自宅もTOEFLの受験料は、どの資格試験より高額です。
こちらが、TOEFL の申し込みからスコアチェック、大学にスコアを送るリクエストをするすべてのページです。
(注意:TOEFLを運営するETSのページを閲覧、使用する際のブラウザーはサファリよりクロムで開けた方が安定します)
TOEFL のスコアは2年間のみ有効で何度でも受けられます。
スコアを上げるためには、毎日少しずつ学習時間を確保して、試験の形式や問題の種類に慣れるために、過去問を何度も繰り返しやってください。
公式のTOEFL 過去問を購入できるサイトはこちらです。
TOEFL は英検とは違います。まずは、試験時間は3時間です。自宅で受ける場合は環境チェックなど要所要所でチェックが入るため、さらに時間は長くなり4時間を要することもあります。
問題数は多く、タスク毎で構成されています。日常の一般的な内容とは異なり、アカデミックな内容で、難易度が高いのが特徴です。難易度が高いと思わせる理由の一つが「英単語」です。TOEFL では日常の医学単語も必須です。
例えば、以下の単語は医学用語といっても日常的に私たちが使う言葉です。
意味だけでなくリーディング問題にも、ライティングにもやスピーキングにも活かせるように、発音や例文も一緒に覚えて、すべての4技能で活用できると効率が良いです。定着するための復習は、毎日の就寝前30分間がおすすめです。
まずは、過去問を見て自分がどのくらい点数が取れるのか、できれば模擬試験を受けてみるのも良いです。TOEFL は合否ではなくスコアの提出なので、出来るだけ短期で勝負したい人でも、1年間で3回くらい受けてみて、一番良いスコアを提出しましょう。しっかり2年ほど学習を積んでください。
TOEFL の次はSAT 対策
TOEFL の点数の目標と日々の学習が定着してきたら、並行してSAT 対策をしましょう。
TOEFL は英語を母国語としない、いわゆる外国人に対して英語力をはかるための試験ですが、SAT はアメリカの高校生がアメリカの大学進学の際に受ける日本版「共通テスト」です。よって、TOEFL よりSATの方が難易度が高いです。こちらも合否ではなくスコア提出です。
SAT Reasoning Testは 「Reading」 「Writing and Language」「Math (電卓使用不可)」「Math(電卓使用可) 」の4つのセクションで構成されておりマークシートで解答します。そして各教科ごとに200点から800点で合計1,600点満点で評価されます。まずは1000点越えを狙いましょう。世界ランキング上位の大学では、1400点越えがボーダーといわれます。ただ、SATのスコアが1600点近く獲得しても合格するとは限らないところがアメリカの大学進学の難しいところです。
Reading Test は、52問を65分間で Writing and Language では44問を35分間で解答するマークシート形式です。語彙力、読解力、推論力が必要です。また、表やグラフが出題され分析力が求められます。
Mathmatics with No Calculator 25分間とMathematics with Calculator 55分間が数学問題です。数学としては難しくなく、「演算、代数、幾何、統計、確率」の分野における中学3年生から高校1年生のレベルです。過去問を繰り返し練習し傾向をつかんでください。数学に必要な英単語を学習する必要がありますのでいくつか例をあげます。
SAT はアメリカでは年に7回、日本国内でも6回受けられます。日本の「共通テスト」のように1年に1回、1月のみの試験とは異なります。アメリカの高校生は平均でSATを3〜4回ほど受けます。1回目は願書提出の1年以上前に受け、その後3ヶ月毎に受けどんどんと点数を上げていくイメージです。
また、上記のTOEFLやSAT スコアを利用して、日本では東京大学、早稲田大学、上智大学、慶應大学、国際基督教大学などにも受験できます。
すべてはエッセイで決まる
TOEFL とSATの高得点狙いは当然ですが、もちろん高校の時の成績GPAも大切です。国によっても、高校によっても、先生によっても、テスト内容によっても異なるGPAは、大学側も参考程度に吟味します。GPA3.0 超えてれば良いとか、GPA3.4が最低限など大学によって異なります。TOEFL, SAT, GPAの3点は「足切り」に引っかからないためのものと考えてください。
合否は「エッセイ」次第です。願書を送ると、次に大学から「課題エッセイ」の提出が求められます。カナダの大学では、課題が5つほど与えられます。語数もそれぞれ決められていて、それぞれの課題に応える形でエッセイを提出します。いくつか例を上げます。
1)あなたという人はどんな人ですか
必ずと言って良いほど、エッセイの課題テーマになっています。
自分の価値観が相手に伝わるようなエピソードを交えて作成するのがポイントです。以前、成績はイマイチだけど、ハーバード大学からも名門大学からも多数合格通知をもらったエッセイを読みました。まるで脚本家か作家のような文章で、読む人を惹きつける文章とはこういうものだと感じる衝撃的な内容でした。
受けた衝撃の大きさとは違い、その生徒自身が10歳だった時の日常を描いたものでした。シングルマザーだった母親がボーイフレンドに殴られ病院に行き、殺人容疑をかけられるような環境で育った自分についての書き出しでした。子供の頃は引っ込み思案で、いじめを受けていた自分と、当時の母の生き様を重ね、人が自分のことをどう考え、どう理解しているかを心配する必要は全くないと気づき、それに気づくと自分は本当に自由になれたと続いていました。それからの自分は積極性を持ち、生徒会に入り、自ら行なった友人へのサポートは自分が認められたいという思いからではなく、その友人とお互いが尊重し合える関係になった時、真に満足感が得られるものだ、という内容でした。
大切なポイントは、「自分はこんなことに熱意を感じ、最大限に自分の能力を活かすためにこういうことをしている」読み手が、書いた人の熱意や興奮が伝わってくる内容が理想です。
普通は、面白いプロジェクトに参加して表彰をされた人が有利のように思えますがその必要はありませんし、また理系であることばかり強調してはいけません。世界には理系オタクがたくさんいますから、そんなオタクには太刀打ちできないからです。むしろ、出願書類全体を通して、人柄や信念がわかるような構成の願書作成が望ましいです。
2)なぜ、この大学のこの学部を志望しているのか
3)この大学での勉強が将来の自分のキャリア像にどう影響を与えるのかと考えているか
これらは一般にどこの大学でも聞かれる質問です。
いくつか、ユニークな質問がありますからご紹介します。
例えば、カナダの名門大学、University of Toronto からのエッセイ課題は通常5つありますが、その一つに、志願者が日本人だと考慮した上での課題の中に、「渋谷のスクランブル交差点で大勢の人が行き交う写真」が添付されていました。「この写真を見て、あなたはどんな社会性を感じますか?想像力をはたらかせて自由に書きなさい」でした。皆さんはどんな内容のエッセイを書きますか?
願書の中で一番重要視されるのがエッセイなら、エクストラカリキュラムは二番目といえます。「長期ボランティアでリーダーシップを発揮して、今までの活動とは違うものも取り入れた」などはポイントが高いです。社会への貢献がある活動が映えるのはもちろんですが、運動部の部長や、バイオリンのコンクール参加実績も加えましょう。これにプラスして、運動部の部長をやってみて、またコンクールの練習や人と競う経験を通じて自分のこういうアイデンティティができ、将来の目標ができたなど表現するのが良いでしょう。
就活はキャリアフォーラム
少々先の話ですが、アメリカやカナダの大学に進学したら、就職活動はボストンキャリアフォーラムを利用しましょう。通称「ボスキャリ」です。この世界最大級の日英バイリンガルのための就職イベントに参加するために、わざわざ留学する人もいるほどです。日本の人気商社から外資系トップコンサルタント会社、その他日本にある有名な外資系170社以上が毎年参加し、直接人事担当者と面接ができ、内々定まで出る就職活動の王道です。もちろん大学4年生になる前に参加し、インターンシップを得る学生さんも大勢います。
ボストンの街は、イベントの2日間アメリカ、カナダ中から集まったバイリンガルの生徒でいっぱいになり、ホテルは軒並み満室で、まるで「お祭りのようなイベント」です。私は第一回フォーラム参加者でもあり、その後人事担当としても参加しました。当時と今では認知度も上がり、重要性も増したと思います。同じ日本にある企業に就職しても、ボストンキャリアフォーラム経由で就職した人と日本の就活で就職した人では、初任給に差があることも知られています。
まとめ
- アメリカの大学には、common application を出願に利用する。
- カナダの大学には、州によっては共通願書があるが、大学個別の願書提出が求められる。
- 奨学金は、志望大学への直接申請も含め、国内で用意されているさまざまなタイプのものをしっかり調査する。
- TOEFL、SAT は年単位での準備が必要と心し、複数回受験し、最高得点のものを提出する。
- エッセイはTOEFL やSATスコアより重要で、自分を目立たせることにフォーカスした内容を目指す。
- エクストラカリキュラムでは、自分という人間はこのような経験を通して今の自分、そして自分の考え方の確立ができた内容を具体的に織り込む。
- 就職活動は、ボストンキャリアフォーラムを利用する。
さあ、これから続く長い人生を、自分の力で自分の思う彩りある人生にするために、是非、海外への進学に挑戦してください。そこには、きっと自分を成長させる素晴らしい経験があります。
これからの日本をそんな世界へ飛び立つ若者に託していきたいです。