大学卒業を間近にしている大学3年、4年生の学生さんは、2020年春からの「コロナ禍」で海外留学を諦めた人もいるでしょう。また、「コロナ禍」で大学卒業後は大学院に進学せず、就職した人もいるでしょう。
近年の「円安」で海外留学は夢だと思っている人も大勢いることと思います。それでも、海外留学への可能性はとことん探してみてください。そこには、自分の可能性をさらに広げてくれるさまざまな「奨学金制度」があります。
海外の大学院留学をお考えの方には、「日本学生支援機構」がサポートする「海外留学支援制度の大学院学位取得型」をご検討してみてはいかがでしょうか。
(日本学生支援機構「Japan Student Services Organization」本記事においては、JASSOと表記します。)
これは、海外へ留学する日本人学生に対し、「日本学生支援機構」が「国費」より、海外において必要な生活費などの必要経費を支援するものです。親の年収は応募資格等の条件に入りません。全ては、応募者本人の留学への熱意と、能力によるものです。
こちらの留学支援制度は、海外の大学、大学院へ正規留学(学位取得を目指す入学)する人には、喉から手が出るほど合格したい制度です。
ほぼ、毎年同じ書類作成が必要ですが、書類の準備が大変で応募を諦めたり、またこの制度自体を知らない人も多くいます。一人でも多くの人に周知してもらい、自分に合った「奨学金制度」を是非、活用して夢を実現してほしいですね。
目的は、留学生の交流の一層の拡充、日本と海外との相互理解と友好親善の増進、日本から将来において国際的に指導的立場で活躍できる優秀な人材の育成等です。
将来のグローバル人材を育成することは、ひいては日本の国際化、国際協力化を高めると日本政府が考えられているからです。
日本の将来を担っていく若者に、日本の発展や進歩に貢献する役割を果たすことを大いに期待し、異文化での学習と生活経験を通じて国際的な視野を広げ、国際的な職業機会によりアクセスできるようになって欲しいと望んでいます。
JASSO のホームページをご覧頂くと、さまざまなタイプの奨学金があり、目的別に検索できます。またキャリア教育、就職支援の取り組みも行なっていますので、是非ホームページから検索してみて下さい。
ここでは、「海外大学院留学」のための応募について詳しくご説明します。大学院生となれば親の経済的支援を受けずに、自分の力で留学を志す方が多く、海外留学したいけど資金面に不安を感じるのは一般的です。JASSO の支援は大変厚いものですので、是非ご検討ください。
目次
1. JASSOの「海外大学院留学支援制度」とは
日本人学生、又はすでに社会人になっている日本人で、
・海外における修士又は博士の学位を取得するための留学
・日本の大学と外国の大学との間における、ジョイントディグリー
・日本の大学と外国の大学との間における、ダブルディグリー
上記いずれかの取得を目指す人への支援です。そして、修士又は博士の学位取得が可能な分野で、芸術の実技分野を除いた課程が対象です。
すでに海外大学院で留学中でも、2年目、3年目からの支給も対象なので、留学途中の人も応募できます。
日本政府から交付される補助金(つまり税金が原資)が財源で実施されていますから、他の用途等に使用することは出来ません。
応募は毎年9月1日から10月第2週くらいまでです。
推薦状も2通必要なので、時間に余裕を持って取り掛かって下さい。少なくとも1週間くらいは書類を揃えるのに時間がかかります。毎年、応募期限ギリギリではアップロードに時間がかかったり、反映されなかったりのトラブルがあるそうなので、9月中には応募完了が望ましいです。
細かいインストラクションが多々ありますから、「サンプル」や「注意事項」を何度も読んでください。何回サンプルを見ても、初めて気づくこともあります。
2. 「国費」留学するとはどういうことか
この奨学金は、日本政府、つまり国民の税金から歳出されます。
よって最終的には「日本への貢献」ができる人に支援するもので、自分自身のキャリアのためではありません。「日本のために役に立つ人材になろうとしている人」が応募できます。
留学期間終了後は、日本の国際競争力の強化や国際社会への知的貢献に役立つ教育研究を行う意思、または、将来的に国際機関等の中核的な職員として国際貢献に役立つ活動を行う意思がなければなりません。
さらに、自身が留学で得た経験や成果を、今後同じような志を持つ人のため、又は志を持つ人を育成するために、将来にわたって日本社会へ還元し、そのような関係性のある各種イベントへの参加、書籍への執筆、調査に協力できる人が対象です。
留学先の現地でも日本のPRが必要です。日本のことをより知ってもらう活動を現地でも行なって頂きたいのです。
3. 応募資格
①応募時の年齢が、「修士」の学位を目指す人は35歳未満、「博士」は40歳未満とされています。大学を卒業後、一度は就職し職歴を得ても、海外の大学院で学びを目指す人も、もちろん対象です。
②英語能力試験で、TOEFL iBT 95点以上、又はIELTS 6.5点以上(英検1級合格レベルです)
参考までに、アメリカ留学の奨学金で「フルブライト奨学金」という有名な奨学金制度では、応募資格がTOEFL iBT 80点以上なので、JASSO のTOEFL 95点以上はかなり高い得点が求められるといえます。
③大学の学部以降の成績 GPA 3.00 以上(最高値を4.00とした場合の換算値)
などがあります。まずは、応募資格を満たすよう英語力と大学での成績アップが必須です。
この奨学金制度は全世界の大学院が対象ですので、留学先の大学での使用言語が英語以外の場合は、その言語に対する自分のレベルを表す語学検定等の結果を表示することも必要となります。
また、どの奨学金も同じですが、他の奨学金との併給は確認が必要です。この「海外留学支援制度の大学院学位取得型」は、官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN 新日本代表プログラム」との併給は認められていませんが、その他の奨学金等とは併給は可能です。
4. 奨学金支給額
奨学金は、留学先の国と地域によって異なります。授業料や物価が高い欧米と、比較的物価が抑えられている東アジア諸国等では支給額に差があります。
2024年度においては、昨今の世界的物価高において支援内容の見直しが予定されており、2024年1月に公表予定だそうです。
よって、ここでの数字は2023年度の実績のものです。
②奨学金月額15万円から35万円の支給
③各年度300万円を上限支給
2023年度の採用人数は、151名でした。
5. 応募方法と願書の書き方
応募は「大学が取りまとめて応募するケース」と「個人で申し込むケース」に分かれますが、願書など準備する書類等は全て同じです。
「大学が取りまとめて応募するケース」では、学生課のJASSO担当者からIDとパスワードを受け取れば応募スタートです。オンラインで登録し、必要書類を順にアップロードします。
願書と応募書類の記入の仕方は、JASSOが公表しているサンプルを見て頂けば理解できます。しかし、「願書ファイル」については、ここで記入について詳細に説明します。
私がこの応募で経験した困難さの一つが、JASSO が用意している「願書」でした。
「願書ファイル」がEXCELのみ対応しているので、MacBookでNumbersを使っている人には、互換性がありません。
JASSO からはEXCEL のアプリの購入を勧められましたが、この奨学金応募のためだけに今後使用しないEXCEL を購入するのは、躊躇してしまいますよね。でも、Numbers で指定「願書」ファイルを開けて、記入して大丈夫です。
Numbersを使って、最初の「入力ページ」に入力しても、次のシートの「様式」「様式1」「様式2」には自動入力されません。ここが一番の困りどころです。
その際は、「入力ページ」にまずは全て入力し、その他のページは、マニュアルでインプットしてください。ほとんどが「入力ページ」と同様にインプットとできます。
自動入力されなくても、JASSO は、審査の際「様式」「様式1」「様式2」を紙に出力し、印刷用紙にて配布され審査官はこの3つの様式で審査します。
しかし、JASSOの事務方は「入力ページ」が全ての元と考えているため、何かしら検証が必要となった場合は、「入力ページ」でチェックします。よって「入力ページ」も等しく大切です。
ここでのポイントはJASSOの事務方と確認しました。「MacBook を利用している方はみなさん同じところで困っていらっしゃいます。」とおっしゃっていました。
個人的には、EXCEL での入力でなく、WEB入力できるフォームにして頂ければ、Windowsだから、 Macだからといった問題が無くなると思うのですが、来年度から変更して頂けたら嬉しいですね。
「入力ページ」にあって「様式」にないものが一つだけ存在します。それは「性別」です。
「入力ページ」には性別を入れますが、「様式」には入れる箇所はありません。「様式」の右上の四角は氏名の隣なので、性別を入れるのかと思うのですが、そこは「白紙」です。おそらくJASSO の事務方で使用されると思われます。
最後にNumbers で入力を終えたら、EXCELで保存します。なぜなら、EXCEL でアップロードすると指定があるからです。その後、Google Drive でそのファイルを開いて、EXCELに対応していることを確認してください。
もう一つ、テクニカルな事では、留学先大学の情報をホームページの写メ等で提出する際には、「文字の大きさ」に留意してください。
JASSO では「例で記載した文字の大きさより大きい状態にすること。これより小さい場合、書類不備扱いとなり、審査されません」と各ページにわたってお知らせがあります。
必ず、文字の大きさは「例」より大きく写メを撮りましょう。きっと、審査官の方々はご年配の方が多いので、彼らに寄り添った「文字の大きさ」が大切だと推測します。
英文のものは、ほとんど全てにおいて日本語訳が必要です。
また、留学先は「第一希望」と「第二希望」と二つの大学院について別々に用意します。
JASSO の奨学金の給付が決まった後、別の大学院から合格通知が来たりなどで、JASSOに応募した希望大学院以外の大学院、つまりは「第三希望」の大学院に進学することが決まった場合は、JASSO にその旨を連絡し、改めて「大学の情報」など必要な書類を用意することで支給されますので、落ち着いて対応して下さい。
せっかくJASSOから奨学金の支給が決まっても、大学院に合格しなければ受け取ることはできません。また大学院合格に「条件付き」があると、同じく対象から外れます。
「条件付き」とは、直近の大学でのGPA成績が何ポイント以上などの条件が付く場合があります。その際はリクエスト通りの成績を提出すれば、「条件付き」がなくなりますから、支給対象になります。
大学の成績は最後まで気を抜かず、しっかり好成績を納めるようにしたいですね。「条件付き」はさまざまですので、条件の内容をしっかり確認、認識して対応してください。
6. 3点ある記述論文(様式3、様式4、様式5について)
さて、これからは3点ある「記述論文」についての解説です。
主な記述論文は「業績等について」「研究計画及び修了後の進路計画書」「日本社会への貢献について」の3点です。
それぞれ、A4用紙1枚です。
①「業績等について」記述
基本、自由記述です。素晴らしい業績や成績等で表彰されたことがあるなどの実績を関係年月とともに記述します。また、自分の著書や発表論文がある人は、それらについてなど、自分のアピールポイントを書きます。
大学学部生でまだ実績や業績がない人は、「自分という人間像」のアピールを書きます。但し、この後に続く「研究計画及び修了後の進路計画書」と「日本社会への貢献について」の記述内容と関連性がある方が望ましいです。
「自分はこういう経験のもと、こういう人間で、このような考え方をしていて、それゆえにこのような研究を目標としている」などしっかり「流れ(フロー)」がある書き方を目指してください。
②「研究計画及び修了後の進路計画書」記述
なぜ留学したいのか、留学して何を研究し、留学後はどのような進路でどのような職業を希望しているのかなどを、具体的に自由に記述します。先ほど述べたように、全体として記述内容に「フロー」が必要です。
なぜ留学を希望しているのか、きっかけは何だったか、希望留学先では何を研究し、それはその後の自分の進路にどう関係していて、それは「日本への貢献」とどのように繋がっていくのかを明記することが、大切です。
この奨学金は「国費」ですから、「日本への貢献」については明確で、しっかりしたものが好ましいです。
例えば、留学先でのこのような研究(具体的)をすることで、日本の代表として国際機関でこのような(具体的)仕事、職種に就いて、日本のためにこのような(具体的)貢献ができるとアピールしましょう。
ご存知のように、日本は国際機関への資金の支出は他国に比べて大変多いです。一般的に資金の支出に応じて職員の人数は比例するのですが、日本に限っては、国際機関で働ける人材が育っていませんから、人数が予定数を大幅に下回っているのが現状です。
これはもう何十年も前から状況は変わっていません。人材が育っていない理由は多々ありますが、理由の一つが国際機関で働く人の資格が「修士」以上だからです。「博士」が望ましく、学部卒では資格が無いからです。
この「研究計画及び修了後の進路計画書」は、「要約」と「詳細」に分けて記述し、A4一枚でまとめる必要があります。また、内容は留学先の第一希望と第二希望を網羅した内容にします。
③「日本社会への貢献について」記述
まずは、「国費」で留学する意味について記述します。「経済的支援」「教育機会」「文化交流」「帰国後の発展」などについて自分の考えを自由にまとめます。
「国費留学」は一言で表現すれば、「留学を通じて得た知識とスキルで日本の発展や改善に貢献し、国内の専門家やリーダーの育成を支援する目的」を意味します。
どのように日本の社会へ貢献するのかを熱く語って下さい。留学先で日本をどのように具体的にPRするのか、現地で行う活動計画、さらに留学後の報告会計画もカバーしましょう。ここでも、A4一枚に「要約」と「詳細」に分けて記述します。
EXCEL の願書にも、800字程度で「大学と課程の選択」に関して、第一希望と第二希望として、なぜその大学と課程を希望し選択しているのかを書く欄があります。この選択理由は「研究計画」の記述と連動しているべき内容なので、そちらもしっかりと確認ください。
7. 第一次審査合格の次は「面接」
応募書類に基づいて、書面審査が実施された翌年の1月上旬に応募者に審査結果が通知されます。その後、合格者のみオンラインで面接審査が行われます。
面接は、JASSOから指定された日時のみで、基本自分の希望日時ではありません。2024年の場合は、2月第一週末の頃です。
面接試験の具体的な内容はJ、ASSOのポリシーや年度によって異なる可能性があります。一般的に、面接試験の内容は応募者の学業、研究計画、留学動機、リーダーシップ、将来のキャリア目標などに関連することが面接で問われることが多いです。
以下は、JASSOの奨学金プログラムの面接試験で評価される可能性のある内容の例です。
留学動機: 応募者は、なぜ海外での大学院教育を受けることを希望するのか、海外で学ぶことが将来のキャリアにどのように関連するのかを説明することが求められることがあります。具体的になぜその大学院を選んでいるのか、なぜその研究課程に進みたいか、などです。
研究計画: 応募者は、将来の研究計画や留学での研究目的について説明し、その研究がなぜ重要であるか、その研究がどのように日本への貢献に繋がるかを示すことが求められると思われます。
学業成績: 過去の学業成績や実績に関する質問が行われ、応募者の学業能力について評価されることがあります。
リーダーシップと貢献: 応募者がリーダーシップ経験やコミュニティへの貢献について問われることがあります。将来の日本社会貢献へのコミットメントも評価の対象です。プレゼンテーション能力や、コミュニケーション能力も評価されますので、是非、熱弁を振るって下さい。
8. まとめ
最終採否結果は、3月上旬です。
まずは、大学の学生課などでJASSO への応募希望を伝え、オンライン応募のIDを取得し、たくさんある必要書類をダウンロードすればもう10%クリアです。
願書はインプットし易い自分の情報などから始めましょう。同時に、推薦状を書いて頂ける大学の担当教授ら二人に、JASSO の推薦状をお願いしましょう。
もう20%の準備はクリアです。手間がかかる書類が多いですが、ひとつずつ丁寧に書類準備を行なって、何度も見直しをして下さい。一度提出すると変更や訂正は一切できませんが、それまでは何度でも直せます。
海外留学を支援する奨学金は、給付型から貸与型までさまざまあります。それらの奨学金は、海外留学したいと意欲ある日本の若者が、自ら一歩を踏み出す機運になります。
日本の税金がそうした若者の背中を押し、彼らがなりたい自分探しを含め、彼らの意欲がのちに日本への貢献となるのなら、納税者の一人としてこんなに喜ばしい税金の使い方はありません。
出来るだけたくさんの日本の若者がこの支援を活用して、世界へ飛び立ってくれることを切に願っています。
その他、学生が利用できる奨学金についてこちらの記事で紹介しています。
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JASSPの奨学金と併用はできませんが、トビタテJAPANの奨学金の詳細はこちらです。どちらが自分に合っているか確認しましょう。
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