音楽留学とは、どのようなことをするの?憧れるけど準備の仕方や方法がわからないという方に読んでいただけたら嬉しいなと思い、私自身の留学経験(クラシックのピアノが専門でアムステルダム音楽院に留学していました)をもとに書かせていただきました。
音楽留学に興味がある方、興味があるけどどうすればいいかわからない方は是非、ご覧になってください。
名前 MANAMI
プロフィール TOEIC880点(リスニング満点)取得後、ヨーロッパへ音楽留学。
・同志社女子大学卒業
・ヨーロッパに渡り、アムステルダム音楽院でディプロマ取得
・常勤講師として特別支援学校に勤務
・ヤマハミュージックリテイリング に正社員として勤務
・結婚を機に退職し、現在フリーランスで演奏活動やピアノの指導を行なっており、音楽教室ではブログも執筆中
目次
音楽留学とは?
一般的に音楽留学というと、海外の音楽院、大学・大学院の音楽学部などに入学し、ディプロマ取得することをイメージする方が多いのではないでしょうか?
日本で高校・大学・大学院を卒業後の進学先として海外を選び、学校に在籍し音楽を学ぶスタイルです。留学期間は長期になり、留学先の学校や単位の取得状況にもよると思いますが、ディプロマ取得に2年以上かかるケースが多いです。
また短期のものでは、海外で行われるマスタークラスなどがあります。実際に数日~数週間滞在することで国の雰囲気もわかりますし、先生との相性などが良いとそこから長期留学を決意される方も多いです。
あまりメジャーなパターンではないかもしれませんが、学校などに属さず個人的にレッスンを定期的に受けるという方法をとっていた知り合いもいます。
この場合、音楽学校などの生徒というわけではなく学生ビザがもらえないため、滞在許可がおりる期間をうまく組み合わせながら入国や出国をして時期や期間を調整しているようでした。
大きく分けるとこのような3つのスタイルになります。ここからは、海外の音楽院や大学などで長期間にわたり学ぶ場合を想定してお伝えしていきます。
人気の留学先の国は?
クラシック音楽でやはり人気があるのは、ヨーロッパの各国、そしてアメリカ合衆国です。
その中で、
・必要な言語
・○○出身の作曲家の作品を特に深く学びたい
・費用(学費は国によって差が大きいです)
・師事したい先生がいる
などを考慮して留学先の国を絞っていく方が多いです。
必要な費用は?
学費
値段は国によって大きく異なります。日本よりも安いところもあれば、高いところもあるので必ず興味のある国は調べましょう。
生活費
現在円安の傾向にあるので、日本での暮らしよりも多めの費用を準備しておくと安心です。住居費も首都など都会に住まなければならない場合は日本よりも高額な場合が多いです。学生寮がある場合は利用してみるのもよいと思います。また、家賃をおさえるためにルームシェアをする方も多いです。
保険
海外へ行く際に不安になるのが医療費だと思います。私は、学生用の任意保険に加入していました。大きな病院での受診であれば保険証を提示すれば請求が直接保険会社に届くタイプのものもあり、現金で支払いをする必要がなく、高額な医療費が不安な方にはおすすめです。
実際、私は留学中にけがをしてしまい、MRIを撮ることになりましたが全て保険でカバーできたので万が一に備えておいてよかったなと思っています。
渡航費
留学先までの飛行機代がもちろん必要になります。留学中どれくらいの頻度で日本へ一時帰国したいのかなども考えておきましょう。
実際にアムステルダム音楽院留学にかかった費用
1年間にどれくらいの費用が留学先でかかるのか具体的に知りたい方は参考にしてください。(2015年当時)
・住居費(光熱費・水道代・インターネット込み):380ユーロ×12か月=4,560ユーロ
・交通費(通学のための定期券代のため夏休みの一時帰国中はかかりませんでした):100ユーロ×10か月=1,000ユーロ
・食費や生活用品:200ユーロ×10か月=2,000ユーロ
・航空券(年に1回、夏休みに2か月日本に帰国):1,800ユーロ
・保険:200ユーロ
・通信費(プリペイド式の携帯電話):年間20ユーロ
ここまでの必要な項目でだいたい14,000ユーロです。
その他、ここからは絶対に必要ではないですが、ヨーロッパにいる間にコンサートや美術館へ行ったり、旅行をしたり、友人とごはんに行ったりしたい場合は費用を見積もっておきましょう。その年にもよりますが、私は年間でだいたい2000ユーロほどかかっていました。
費用は国や都市によっても大きく変わりますし、生活スタイルにもよるかと思います。
とくに、住居探しでは楽器の演奏ができる家を探すのか(ピアノの場合はレンタルするのかなど音楽留学特有の問題もありますね)、一人暮らしをするのかでも大きく値段が変わりますので、節約したい方は住居選びを慎重にされることをおすすめします。
必要な英語力や音楽のスキル(入学試験)
国によって必要な言語も違いますし、語学レベルも学校によっても異なります。
フランスやドイツはそれぞれの国の言語が必要です。
私が留学したアムステルダム音楽院は、オランダ以外からの留学生も多く英語で授業が受けられるため、オランダ語はできなくてもTOEFLのスコアが60以上(2012年当時)であれば語学のレベルとしては入学できました。
ただ、入学してからレポートやプレゼンテーションなどを求められる機会も多いため、入学できるスコアを目指すだけでなく授業を安心して受けられる準備をしておけばよかったなと反省しています。
音楽のスキルについては学校ごとにも大きくレベルが違うので、志望校の学生の演奏会を聴いてみるのも良いですし、実際に入学後に師事したい先生のレッスンを受けて自分のレベルが達しているのかを伺うのが確実です。また、受験科目についても調べ、準備しましょう。
志望校決定から入学までの手順
音楽の勉強をする場合(海外留学にかかわらず国内の音楽大学受験でも同様)1番大切なのは主専攻をどの教授のもとで学びたいかということだと思います。まずは、
・講習会や特別レッスンなどで出会った先生
・師事している先生の恩師
・師事している先生の紹介
などの中で、レッスンを受講し学びたい先生を決めます。
(まず、留学したい国を先に決めて、その国の中で様々な先生のレッスンを受けて先生を決めた友人もいました。)
師事したい先生が決まったら、どこの音楽院で教えていらっしゃるのかなどをリサーチします(複数の音楽院で教えている場合もあります)。
受験したい学校が決まったら、入学に必要な語学スキル(英語であればTOEFLやIELTSなど)を取得、入試科目の準備をします。
準備が整い、入学試験を受け合格したら、ビザなどの必要な手続きや家探しをしていきます。おそらく留学で1番大変だったなというのが、合格してからの渡航のための準備と実際に住み始めてからの手続きでした。
余裕をもって手続きができるようなスケジュールで動くと、スムーズに進まなかった時もあせらずにすみます。
音楽留学のメリット
尊敬する教授の元で学ぶことができ充実した日々を送ることができたのが私にとっては最大のメリットですが、大きく留学全体を通してみたメリットをご紹介します。
精神的に強くなれる
留学すると、日本にいたときには考えもしなかったようなことが起こります。留学先の国の文化や習慣に驚くこともありました。
また、世界中から集まった学生と一緒に学ぶことになるのでバックグラウンドや価値観が違う人とどのようにしたら良好な関係を築くことができるのか工夫する必要もありました。たくさんのトラブルを乗り越えていくことで精神的には強くなれたなと思います。
人の温かさを感じることができる
日本にいると、一人で解決できることも多いですし、身近な家族に助けてもらうこともできますが、留学するとなかなか大変なことも多いです。そんなときに、門下の先輩や友人、大家さんなどたくさんの人が手を差し伸べてくれました。
伝える力がアップする(語学力)
当たり前かもしれませんが、毎日英語を使うので日本にいた時より、伝える力はアップしました。難しいことを話せるようになったというよりは、母語が英語でない人が多い中誤解のないコミュニケーションを取りたかったので、シンプルな表現で相手に確実に意図が伝わるような表現をするようになっていきました。
音楽の生まれた場所で学ぶことができる
街の教会に行くと大作曲家が演奏をしたことがあるパイプオルガンがあったり、生家やお墓があったりと、どこか遠い存在だった作曲家を身近に感じることができる瞬間があります。ヨーロッパは古くからの街並みが残っていることも多く、同じ石畳みを歩いていたのかなと思いを馳せることもありました。
音楽留学のデメリット
私自身は大変なことも多かったけれど、留学して良かったなと思っているのでデメリットをあげるのは難しいですが、強いて言えば下記の2点です。
気軽に家族の元へ帰れない
現在はとくにコロナの規制もあるので、私が留学していた時よりも日本へ帰国するのが大変になっています。家族が病気になるなど何かあったときにすぐにかけつけるのが難しいのはデメリットかなと思います。
日本での就職準備が大変
日本で働きたい場合、オーディションを受けるのが日本にいる方と比べると大変な印象はあります。日本との物理的距離の問題もありますが、欧米では9月入学、夏ごろの卒業というカリキュラムの学校がメジャーなので、日本と時期がずれている点も注意が必要です。
その後の就職や進路
学校を卒業した後の進路は様々です。大きく分けると
・進学する(同じ国の場合もあれば、国を変えることもあります)
・留学先など海外で仕事をする
・日本に帰国して仕事をする
のいずれかを選択する方がほとんどだと思います。
留学先などに残りたい場合は、学生ビザから就労ビザに変更する必要があります。収入源を確保しなければなりませんし、就労ビザの場合は仕事の内容に制限がかかることもあるので早めに留学先の情報を把握して準備しましょう。
職種としては、学んだことを活かせる、
・演奏家(ソリスト・室内楽奏者・伴奏者・オーケストラ団員など)
・指導者(学校で教えたり、個人で教えたりとスタイルは様々)
が多いです。
音楽留学のよくある質問(FAQ)
長期留学は、学校によっては入学する際に年齢制限がありますが、そうでない場合は受験に合格すれば可能です。メリットや効果については個人差があると思いますが、音楽以外の会社で社会人経験を経てから入学し、首席で卒業されとても活躍されている方もいらっしゃいます。
例を挙げますと
・ヤマハ音楽振興会 https://www.yamaha-mf.or.jp/shien/shogaku/outline.html
・よんでん文化振興財団 https://ycf.or.jp/scholaship.html
四国出身者が対象となりますが、このように地域の学生を応援するために募集しているものもあります。
応募の方法はそれぞれ異なりますので、募集要項をチェックしましょう。
また、留学先の学校や政府などが募集している奨学金もあります。申し込みや要項がもちろん日本語ではないので、語学が苦手な方はその点が大変かなと思います。
もし、日本の小・中・高等学校で音楽の教員になりたい場合は、教員免許は日本でしか取得できないためまずは日本の音楽大学進学がおすすめです。
6月に帰国後、いくつか音楽関係の企業や財団の企業説明会へ参加し採用試験を受け、9月ごろ4月から正社員としての内定をいただきました。また、教員免許状も留学前に取得しており、帰国後すぐに講師登録をしていたところ、たまたま欠員が出たため、正社員として入社する前の7か月間も県立学校の常勤講師として幸運にもお仕事をさせていただけました。
まず学校や先生選びは、恩師が協力してくださいました。入試の情報収集や申し込みは、志望校のサイトにオフィシャルに発表になるので、その内容を自分なりに調べて出願しました。合格後の、入学申請手続きやビザについては不明な点も多く、入学する音楽院の事務やオランダの日本大使館など様々な機関に現状をお伝えしながら、どのような手続きをしていく必要があるのかを教えていただきながら行いました。
1人でできないわけではないとは思いますが、時間に余裕がない方、不安な方はエージェントを利用するとスムーズに手続きが完了すると思います。
さいごに
留学は大変なことももちろん多いですが、音楽留学に興味のある方は、短期留学など参加しやすいものもあるので、ぜひチャレンジしてみて下さい。新しい出会いや経験が、より豊かな音楽人生を築くきっかけになることを願っています。
おすすめ関連記事
→ヨーロッパへの大学留学ならオランダ留学が安い!1年間の費用はいくら?