「日本人の留学生は減少している」「日本の若者は内向き」などというニュースに接したことはありませんか?
文部科学省は毎年春ごろに「日本人の海外留学状況」という統計をメディアに公表しています。今回、留学事業者等の業界団体である一般社団法人JAOS海外留学協議会が発表した新たな統計より、実際の日本人留学生数はとても多いことが判明しました。
その統計を基に実際どのぐらいの日本人が海外留学しているのか解説します。
目次
文部科学省の統計には語学留学生は含まれていない
文部科学省が発表する統計、「日本人の海外留学状況」は高等教育機関等に留学している日本人が対象になっています。つまり日本人に一番多い留学形態である「語学留学」の数が含まれていません。
公表される統計資料をよく読むと、そのことは書いてあるのですが、マスコミで発表されるときにはそこが省かれてしまい、ニュースを見た多くの方は文科省の発表が日本人留学生の総数だと勘違いしてしまっています。
そもそも統計のタイトル「日本人の海外留学状況」というのが良くないですね。是非今後は「海外高等機関等に在籍する日本人留学者数」というように、紛らわしくないタイトルにしてほしいものです。
この文科省の統計を見ると、確かに高等教育機関などに在籍する日本人の留学者数は2005年からほぼ右肩下がりなのがよくわかります。また、その数も直近の2013年では55,350人になっています。
実態をより反映した語学留学メインのJAOSの統計では約65,000人
この度、JAOSは独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の要請によりが2016年1月に「JAOS」会員である留学事業者36社を対象に「留学事業者36社による日本人留学状況調査」を行いました。
その結果、文科省の統計とほぼ重複しない約65,000人の日本人留学生の存在が判明しました。
表からわかるように、JAOS統計内で文科省の統計と重複する可能性があるのは、大学や大学院留学の約2.7%にすぎません。
語学留学を中心にした他の留学に関しては、今まで数が明らかになっていなかった新たな日本人留学生の数字だと言っていいでしょう。
(ただ、JAOS非加盟の留学事業者もあるので、その数は当然含まれていません。特にJAOS非会員のフィリピン留学専門の留学エージェントは多いため、JAOS統計ではフィリピン留学の数がだいぶ少なめになっていると思われます。)
日本人留学生数の総数はどのぐらい?
前述したように、文科省の高等教育機関への留学者数が約55,000人、JAOSのそれ以外の留学者数が65,000人、両者を合わせて130,000人が日本人留学生の総数でしょうか?
実は、多くの日本人大学生は国内の自分の大学の留学プログラムを利用して留学しています。そしてその数は増加傾向にあります。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が調査発表を毎年している「日本人学生留学状況調査」によると、大学の協定等に基づく留学プログラムで留学した日本人留学者数は2014年度には52,132人でした。
日本人留学者総数は約17万人?約40%が留学事業者経由の留学
つまり文科省統計約55,000人、JAOS統計約65,000人、そしてJASSO統計約52,000人の3つの統計を足して、重複の可能性のある数字を除くと約17万人という数字が出てきます。
そしてその総数からJAOS統計の数字(=留学事業者経由で留学した人の数字)の割合を出すと、約40%になり、ざっくり「日本人留学者の約40%が留学エージェント経由」であるといえると思います。
17万人という数字は皆さんにとってどのぐらいに感じられますか?あまりピンと来ないかもしれませんが、マスコミで取り上げられる文科省の数字の55,000人の3倍以上と考えれば、少し世間の「日本人の若者の内向き志向」という認識も変わるかもしれませんね。
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国際教育事業コンサルタント 星野達彦