レアジョブ物語 後編

重大ミッション – 資金を調達せよ!

迫り来る倒産リミット

仲間も次第に増え、ユーザーも右肩上がりに伸びてはいたものの、加藤たちには大きな課題が残されていました。

それは、事業を継続する上で欠かすことのできない資金を調達することです。

結局加藤と中村は305万円ずつを出資し合い、会社の資産は610万円になっていました。しかし計算してみると、このままでは1年ほどしか会社がもちません。大きな黒字を出すまでの資金が12ヶ月分しかないのは、なんとも心許ない状況でした。

足りない分の資金を、なんとしてもどこからか調達してこなければいけません。とはいえ起業したばかりの会社では、銀行から融資を受けることなどできそうにありませんでした。

しかも数百万の調達では、とても足りません。ザッと計算しても、 1,000万から 2,000万円ぐらいは必要です。

当時の加藤にとって 1,000万円台は、見たこともふれたこともない大金でした。これだけの大金を調達してもらうとなると、現実的なのはベンチャー・キャピタルから株式で出資してもらう方法しか思いつきません。

「ベンチャー・キャピタル」とは、まだ上場していないベンチャー企業などに対して株式を引き受けることによって投資をし、その企業が株式公開するなどしたのちに株式を売却して利益を出す集団のことです。

加藤はまず、複数のベンチャー・キャピタルと交渉することにしました。あるベンチャー・キャピタルに勤務する友人の助けを借りながら、創業間もないベンチャー企業にでも投資してくれるベンチャー・キャピタルをリストアップしました。

当時はそのようなベンチャー・キャピタルは、数えるほどしか存在していませんでした。加藤はアポを取り、担当者に会いに出かけました。

時価総額が1億円を超えた!

- ベンチャー・キャピタルとの交渉 -

実際に会って交渉するとなると、はじめのうちは緊張を隠せませんでした。あまりにも緊張し過ぎたために巧く話せないこともあり、面談して20分も経たないうちに席を立たれたこともありました。

また「株式の半数をいただきたい」、あるいは「上場できなかった場合は経営者が買い戻すこととする」など、投資をするにしても加藤たちにとって不利となる条件を提示してくるベンチャー・キャピタルもありました。

そんなときベンチャー・キャピタルの1社から、投資しても良いとの連絡が入りました。そこはXさんが個人的に投資をしているベンチャー・キャピタルでした。Xさんは気さくで、ネットベンチャーに精通している頼れるお兄さん、という感じの人でした。

提示された条件も、悪いものではありませんでした。

「現時点でのレアジョブの時価総額を、資本金610万円の約5倍、3000万円で評価するのはどうだろう。そして僕のところからは1000万円を投資する。これだと3000万円対1000万円で、株式のうち75%を経営者が持ち、残り25%をベンチャー・キャピタルが持つ格好になる」

Vol.06 ベンチャー・キャピタルとの折衝法を、僕は大連の行商人から学んだ│加藤智久「レアジョブ奮戦記」 より引用

これだと加藤と中村にとって、305万円の出資金が5倍の 1,525万円の価値に膨れあがったことになります。

Xさんの投資を受け入れようかと思っていた矢先、新たにグローバル・ブレインというベンチャー・キャピタルから連絡が入りました。オフィス兼加藤の自宅に当たる白山のアパートまで、担当者はわざわざ足を運んでくれました。

この頃には、加藤もだいぶ慣れていました。さほど緊張することもなく、交渉に臨めました。

- 功を奏した交渉術 -

ベンチャー・キャピタルと交渉するときに、加藤が意識していたことが二つあります。ひとつは自分のことを好きになってもらえるように努めること、もうひとつは自分からは決して数字を言わないことの二つです。

話は大いに盛り上がりました。予定した2時間はあっという間に過ぎ、相手に好意を持ってもらえたという手応えを感じました。どうやら「好きになってもらう」という目的は達せられたようです。

交渉は核心に近づき、質問が飛んで来ました。

「資金調達時の御社時価総額はいくらぐらいを希望していますか?」

「来た!」と思いましたが、「自分からは決して数字を言わない」のセオリーにしたがい、「すみません、いまはサービスづくりに手一杯で、時価総額がいくらとか、そこまで頭が回っていないんです」とお茶を濁しました。

その直後、さりげなく「うちのような企業の場合、だいたいどのくらいで評価されるのでしょうか?」と逆に聞いてみました。

担当者はしばしためらったのちに、口を開きました。

「1億円はありうると思います」

1億円と聞き、加藤は飛び上がらんばかりに驚きました。わずか610万円で始めた会社が、まだスタートしてから数ヶ月しか経っていないにもかかわらず、時価総額にしていきなり1億円と評価されたのです。

それほど高く評価されるとは、想像さえしていないことでした。

何度かのミーティングを重ねた後、時価総額はさらに膨らみ、1.4億円に達しました。これも「自分からは決して数字を言わない」に徹したことの効果です。

- 仲間が増えた! -

Xさんとグローバル・ブレインのどちらのベンチャー・キャピタルと手を結ぶべきか、加藤たちは迷いました。

金額条件では劣るものの、いくつものネットベンチャーを成功に導いているXさんからのアドバイスを受けられることは魅力的です。自社を高く評価してくれるグローバル・ブレインの誘いも、捨てがたいものがあります。

中村と相談し、迷いに迷ったあげく、グローバル・ブレインに決めました。決め手となったのは、対応の迅速さでした。

グローバル・ブレインのオファー内容を伝えてからは、Xさんの意思決定に時間がかかるようになっていました。グローバル・ブレインは翌日までになんらかの回答をしてくれました。

加藤は語っています。

「ベンチャーは不安だ。時間がかかるともっと不安だ。迅速に返してくれると安心できる。仲間なんだと思える」

2008年の4月、グローバル・ブレインから 2,000万円の投資資金が届きました。操業資金をなんとかするというミッションを、加藤たちはこうして乗り切ったのです。

グローバル・ブレインの担当者は毎週のようにオフィスに顔を出してはミーティングに応じてくれました。それだけで加藤は心強いものを感じていました。

グローバル・ブレインとレアジョブは別会社ですが、レアジョブが成長することで時価総額が大きくなればなるほど、グローバル・ブレインも得をします。加藤にとってグローバル・ブレインの担当者たちは、仲間も同然でした。

信頼できる仲間が多いほどレアジョブはますます大きく成長できると、加藤は確信していました。

ミッションとビジョン

- ミッションとビジョンとは何か -

最近はよく企業ごとに、ミッションとビジョンについて耳にするようになりました。「ミッション」とは企業経営において、その企業が果たすべき「任務や使命」のことです。

いわばミッションとは、何のために企業が存在しているのかという企業にとっての存在意義そのものです。ミッションを実現したいがゆえに、企業を経営しているといえます。それだけにミッションは、企業にとって最も優先されるべきものです。ミッションは社員にとっての行動指針であり、モチベーションの源です。

「ビジョン」とは、企業が目指す将来の理想の姿を表現するものです。企業はミッションで定められた「任務や使命」に基づいて事業を行います。その結果として、将来的にこうありたいと思い描く企業や社会の姿を具体的に表すものです。

ミッションとビジョンにどれだけ重きをおくかは、企業によってまったく違います。立派なミッションとビジョンを掲げていても、実際にはそれはお飾りに過ぎず、より多くの営利を出すことだけを優先している企業も、あまたあります。

では、レアジョブはどうでしょうか?

加藤は早くからレアジョブのミッションとビジョンを打ち出し、それに基づく経営を心がけてきました。レアジョブにとってミッションとビジョンは、けして耳あたりの良いお飾りではありません。

3人の共同創業者で決めたミッションとビジョンこそは、レアジョブの経営を通して社会をこう変えたいのだと、端的に表したものです。

レアジョブの社員であれば、まずはじめに考えることはミッションとビジョンです。すべての意思決定はミッションに基づき、ビジョンを実現するためにこそ行われます。

社内でもこれほどミッションとビジョンにこだわる企業は、まれな存在といえるでしょう。

たとえばレアジョブでは合宿の際に、幹部がミッションとビジョンについて真剣に議論し合います。中期経営計画を作成する際にも、まずはじめにミッション・ビジョンからブレークダウンして考えはじめることが定石となっています。

こうした徹底ぶりは、企業として営利を出す方向とはずれるのではないかと思われがちですが、そうではありません。

加藤は述べています。

レアジョブがそうできるのも、企業として利益を出すには、社会をいい方向に変えていくのが最も確実な方法だと信じているからだと思う。

レアジョブのこと、 今日は本音で語り合ってみよう より引用

- レアジョブのミッションとビジョン -

レアジョブのウェブサイトには、ミッションとビジョンが次のように掲げられています。

サービスミッション
日本人1,000万人を英語が話せるようにする。
ビジョン・ミッション

グループビジョン
Chances for everyone, everywhere.

加藤は常々、事業とは「正しい問いを立てて、その問いの答え方がなんなのか分からない中、試行錯誤しながら解決していく」ことだと考えていました。

なにより大切なのは、はじめに正しい問いをたてることです。加藤にとってレアジョブのミッションとビジョンに掲げたものは、「正しい問い」そのものです。

問いが正しければ、あとは「問いの解」に着実に向かっていくだけです。営利だけを優先するのではなく、「正しい問いの解」に向かって動いてさえいれば、お金は必然的についてくるものだと加藤は信じています。

創業以来、一人では限界があるけれども、仲間が力を合わせることで力は何倍にも膨れあがることを、幾度となく経験してきました。一人ではできないことでも、仲間とともに取り組めばどんなことでも成し遂げられると、心の底から信じることができました。

仲間が結集する強さを引き出すために大切なのは、みんなが同じ方向を向けるかどうかです。文化や言葉の異なる人たちが同じ方向を向くことは、けして簡単なことではありません。

だからこそ、全員をまとめるためにもミッション・ビジョンは非常に重要な部分だと加藤は考えています。ミッション・ビジョンがあれば、文化や言葉の壁を越えて共有できるからです。

数多くの起業家のなかでも、加藤はことさらミッション・ビジョンを大切に扱っています。いつ頃からミッション・ビジョンを重視するようになったのかと聞かれた際に、加藤は次のように応えています。

「最初お話しした、自分でレールを敷きたいという話ですが、正確には僕は多分、起業家になりたいというより、なんかこう、新しい社会をつくりたいな、という想いが念頭にあったと思うんです。それを表現する手段が起業であり、ビジネスだったのです。なので、最初からミッションを重視していたように思います」

平等であるべき世の中のチャンスをフラットにしていきたい インタビュー:加藤智久 より引用

- 歴史を早めるようなビジネス -

レアジョブがサービス・ミッションとして掲げる「日本人1,000万人を英語が話せるようにする」が実現すれば、日本の人口のおよそ 10%の人が英語を話せるようになります。

そうした社会は、いずれは現実になると加藤は考えています。英会話を苦手とする人が多い現在の日本の状況からは想像しにくいことですが、加藤はよくパソコンやクルマの運転免許になぞらえて、このことを説明しています。

たとえば Windows95 が出る前までは、1,000万人がパソコンを使う時代が来ると言われても誰も信じようとはしませんでした。その当時は BASIC 言語などを打ち込むことでしかパソコンを使えなかったため、相当な知識がなければ使いこなせないと思われていたのです。でも今や、多くの人がパソコンを使いこなしています。

クルマの運転免許にしても同じことです。クルマが初めて登場した1900年頃は、1,000万人が運転免許を持つようになる社会を想像できる人など一人もいなかったことでしょう。当時のクルマの価格は、現在の1億円ほどもしたのですから。

英語もまったく同じです。1,000万人の日本人が英語を話す未来を今は想像できなくても、いずれは必ずそうなります。

では、レアジョブの存在価値はどこにあるのかといえば、「歴史を早めることだ」と加藤は考えています。

「私たちは、『歴史を早めるようなビジネス』をしたいと思っています。『日本人1,000万人を英語が話せるようにする』というのも、レアジョブが何もしなくても徐々にそれに近づいていくかもしれません。しかし、それを40年、50年ではなく、10年、20年というタームで実現させていくことが役割だと考えています」

レアジョブは「歴史を早める」事業である より引用

- ミッションが開く世界への扉 -

「日本人1,000万人を英語が話せるようにする」というレアジョブのサービス・ミッションは、単にスピーキング力やヒアリング力を上げることを意味しているわけではありません。

加藤の思いは、「世界に出て行きたい、世界中の人と友達になりたい、世界中で活躍したい、そういう人が人口の1割は占める国にしたいのです」という言葉ににじみ出ています。

英語はコミュニケーションツールのひとつに過ぎませんが、英語の本当にすごいところは、世界とつながることにあります。英語が話せれば、世界への扉が一気に開けます。

その扉の向こうには、様々な可能性が広がっています。たとえば何かを学びたいのであれば、その分野の世界最先端の場所に行って学ぶことができます。外国へ行った際に現地の人と自由にコミュニケーションを取れることで、より奥深い世界を知ることができます。

世界に向けて、外国人であろうと臆することなく、いろんなことを発信できるようになります。日本のことや自分のことを知ってもらうこともできれば、様々なことを吸収できます。

英会話をこなせる能力があるかないかによって、就職先や任せられる仕事も大きく違ってきます。ある統計によれば「英語ができる人」はそうでない人より、数百万円以上も年収が高いと言われています。こうした傾向は、日本がようやく世界の標準に近づいたに過ぎないため、今後ますます加速していくことでしょう。

世界的な流れからして、英語の重要度が今後さらに増すことだけは間違いありません。

「日本人1000万人が英語を駆使して、各国で活躍できる世界をつくりたい」

加藤の思いはレアジョブのサービス・ミッションとして、社員全員に共有されています。

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ドン山本
タウン誌の副編集長を経て独立。フリーライターとして別冊宝島などの編集に加わりながらIT関連の知識を吸収し、IT系ベンチャー企業を起業。 その後、持ち前の放浪癖を抑え難くアジアに移住。フィリピンとタイを中心に、フリージャーナリストとして現地からの情報を発信している。

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