私が英語の初級者~中級者に「英語の勉強を始めようと思うんだけど、何からやったらいいかな?」と聞かれたら、間違いなく「NHKのラジオ講座をやるといいよ」と答えます。
実際に私もNHKのラジオ講座には大変お世話になりました。
昔は放送時間にラジオの前で待っていたり、録音したりしなければなりませんでしたが、今は公式ホームページやスマホのアプリからいつでも好きなときに放送を聞くことができます(ただし放送から1週遅れです。また週ごとに更新されますので古い放送は順次聞けなくなります。)
NHKラジオ講座はなんと1925年に始まり、ほぼ100年の歴史があります。
このように書くと古臭いとか時代遅れという気がするかもしれませんが、そんなことはありません。
時代に応じて番組内容も少しずつ変わってきていますし、何より大正・昭和・平成・令和と4代に渡って続いてきたのはラジオ講座に他の勉強法にはないメリットがあるからにほかなりません。
今回はNHKラジオ講座の数多くのメリットとほんの少しのデメリット、それらを踏まえた上での活用法についてお知らせします。
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NHKラジオ講座をおすすめする2つの理由は2つです。
おすすめ理由1:NHKラジオは英語学習の習慣づくりに最適
NHKラジオ講座の最大のメリットは、英語学習の習慣をつけるのに最適であるということです。
習慣を作るのに重要なことは2つあります。
習慣化①短めにして実績を作る
1つは実績を作ることです。
習慣にしたければ、最初の1か月間は何があっても絶対にその行動を継続してください。「今日は疲れたから」「昨日頑張ったから」と言いたくなる気持ちはわかります。そこをこらえて1週間続ければペースが掴めます。1か月頑張れば続けることが当たり前になります。
このときにいきなり大きな目標を立てると続けるのが大変です。ある日突然何時間も勉強しようとしても、普通の人にはとても困難なことです。
みなさんは「明日から試験に備えて毎日3時間勉強するぞ!」と決意して、1日も達成できずに終わった経験がありませんか?
私は何度もあります。
当然のことですが、1日15分の習慣が身につかない人には、毎日何かを3時間やり続けることは無理です。ウォーキングでもいきなり毎日3時間歩くとなると、続けるどころか初日でギブアップする人がほとんどでしょう。
でも15分なら何とか頑張れるのではないでしょうか。
それに1日3時間の習慣を作るよりも1日15分の習慣を身につけるほうが楽です。
最初に1回15分の習慣を作ってしまえば、次に別の15分の習慣を追加し、そしてまた15分の習慣を加え、さらに15分と積み重ねていくことができます。こうなると1日に2時間でも3時間でも、英語の勉強をするのが苦ではなくなってきます。
ですから私は、最初にNHKラジオ講座で15分の習慣を作ることを推奨したいのです。
ラジオ講座は1回の講座が15分(「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」と「ボキャブライダー」は5分、「英会話タイムトライアル」は10分)と短いので投げ出したくなる前に終わらせることができます。
毎日学習する内容が変わるので飽きることも少ないはずです。
そして1時間、2時間となると時間を確保することが難しいかもしれませんが、15分なら暇つぶしに見るYouTube動画の1~2本分です。本気になればこのくらいの時間ならどこかで作れるはずです。
また、1か月分のテキストをやりきったという自信もつきます。
少々失礼な言い方になりますが、「英語ができるようになりたい」と思っている人で「この1冊は完璧にやりきった!」という経験をされている方はどのくらいいるでしょうか。
やる気になって新しい教材を買っては途中で挫折し、また別の教材に手を出しては途中で諦めという繰り返しをしている人も、少なからずいるのではないでしょうか。そう言っている私自身も恥ずかしながら心当たりがあります。
自信というものは過去の実績から生まれるものです。過去を振り返ったときに途中で投げ出した記憶だけが蘇ると「ああ、なんて自分はダメなんだ」となりますし、やり遂げた記憶を思い起こせば「自分だって結構できるじゃないか」と思います。
ぜひ本棚に学習済みのテキストを並べてください。やり終えたテキストが1冊増えるたびに自信がついていきます。
そしていつか「こんなに頑張れたんだから、まだ手を付けていない教材だってそのうちできるようになるはずだ」という新たな自信を得ることができるはずです。
習慣化②毎日することと組み合わせる
2つめは、毎日必ずすることと組み合わせること。
習慣をつけるのにもう1つ重要なことは、毎日絶対にすることと組み合わせることです。
私がNHKのラジオ講座を始めたときは、仕事の昼休みに勉強していました。お弁当を食べ終えたらラジオ講座を聞くというルールにしたのです。15分なので昼食を終えてから休み時間が終わるまでの間に終わってしまいます。
最初の1週間~1か月を頑張れば実績ができますので、あとは「さて、昼ご飯食べたからラジオ講座やるか」となります。
ご飯を食べるのが当たり前のように、ラジオ講座を勉強するのも当たり前になります。しかも周りで同僚が見ているので、途中で投げ出すこともできません。
余談ですが私は今、朝起きたら英語のドラマを2本以上見る、歯磨きをしながらアプリで単語の確認をする、通勤時は洋楽を聞く、お弁当を食べながら英語のニュースを聞くというルールで行動しています。
ちなみにドラマを見ながら洗濯物をたたむ、休日はドラマを見終わったら掃除機をかけるというオマケもあります。習慣なので面倒くさいとも思いません。
組み合わせは、その時々の目標や関心事によって見直しても構いません。
私も昼休みに英検やTOEICの勉強をしていた時期もありますし、通勤時にラジオ講座を聞いていたこともあれば、スティーブ・ジョブズやオバマ前大統領などのスピーチを聞いていた時期あります。
体調不良や急用で休むのは仕方ありませんが、気分でやるかどうかを決めることだけは厳禁です。
「やる気になったらやろう」と思っていると簡単に挫折します。
何かを始める前にやる気が湧くことは滅多にありません。やっている最中にやる気に火がつくのです。
やりたいこと、やらなければならないことがあって、それを習慣にしたいのであればペアにする行動を固定するのが一番確実です。
おすすめ理由2:講座が細かくレベル分けされているから
私がNHKのラジオ講座を勧める理由の2点目は、細かくレベル分けされていることです。
私は英語を学習する上で一番大切なことは続けることで、何をどのように勉強するかは二の次と思っています。
どんな教材であれ、毎日コツコツと続けられている間は必ず得るものがあります。
「○○を使って勉強をしたって意味がない」「○○で勉強するなんて時間の無駄だ」と言っている人もいますが、自分で効果を実感しているのであれば無視して構いません。続けている限り必ず英語は上達します。
とはいえ、最も効率よく勉強する方法というのは存在します。
それは易しい内容から順にステップアップすること、そして1つ1つ確実にマスターしていくことです。
英語の勉強は、階段を登るようなものです。
1段ずつ登れば時間はかかるかもしれませんが、確実に上の階に上がることができます。
1段飛ばしくらいなら問題ないという人も多いでしょう。
2段飛ばしでも頑張ればできるという人の方が多いかもしれません。
しかし3段飛ばし、4段飛ばし、5段飛ばしとなるとかなりのジャンプ力が必要となります。体力的にも続かない人がほとんどでしょう。
特に文法と語句は、中1レベルから順に積み上げていくのが一番効率的です。
中3で学習する現在完了を正確に理解したいのであれば、中1~中2の現在形と過去形の正確な知識は不可欠です。
高校で学習する仮定法を理解するには中学校で学習する接続詞や助動詞の理解が不可欠です。
(ちなみに2021年度から使用する新教科書では、仮定法過去も中3内容になります)
また、英単語は2,000語で全体の8割をカバーできるといいます。
一見難しそうに見える英文でも、その8割はaやhave、interestingなどの基本単語が占めているのです。
実際に英語学習者に評判の高いロングマン英英辞典はたったの2,000語で全ての見出し語の意味が解説されています。文法書は基本単語を優先的に使っていますし、英作文や英文解釈の参考書も基本単語はほぼ全て理解している前提で書いてあるものがほとんどです。
ですから、単語を覚えるときは最初に基本の2,000語、そして次に頻度の高い1,000語、またその次に頻度の高い1,000語と積み上げていくのが効果的です。
NHKのラジオ講座はレベル分けがキッチリとされていますので、文法も語彙も無理なく段階的にレベルを上げることができます。もちろんそれぞれのレベルに応じて講師が詳しくポイントを解説し、応用の仕方も教えてくれます。
ちなみに2020年度の講座で目安となるレベルは以下の通りです(なお数年ごとに講座が見直されて入れ替えが発生します。)
基礎英語2…中2レベル
基礎英語3…中3レベル
ラジオ英会話…高校レベル初級
入門ビジネス英語…高校レベル中級
遠山顕の英会話楽習…高校レベル中級
高校生から始める現代英語…高校レベル中上級(新聞記事風の文章)
実践ビジネス英語…高校レベルを超えた難しめの会話
そのほかに英語での発話力を鍛える「英会話タイムトライアル」と、易しめの英語のお話しを聞く「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」が基礎英語1~ラジオ英会話レベルです。
「ボキャブライダー」は単語を4つ紹介し、その例文を1つずつ確認していく番組です。1回5分と短いですが、高校レベルの重要単語がメインになっていますので個人的には非常にお勧めしたい講座です。
どの講座も1年を通した大テーマと月ごとに変わる小テーマがあり、どの月から始めても大丈夫です。
4月スタートにこだわる必要はありません。「やってみようかな」と思ったら即始めてしまいましょう。また、年間を通して実力がつくようにカリキュラムが組んでありますので、何度も同じことばかり復習させられることもありません。
次回の記事では、具体的にNHKラジオ英会話を使った勉強法をお伝えします。
英検1級講師が教える【NHKラジオ講座】5つの英語勉強法
英検1級講師が教える「NHKラジオは英語学習に効果がない」の3つの誤解