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英検1級講師が教える「NHKラジオは英語学習に効果がない」の3つの誤解

前回と前々回の記事ではNHKラジオで英会話を学ぶことのメリットをご紹介しました。
詳しくはこちら:英検1級講師が英語初級者にNHKラジオをおすすめする2つの理由

この記事ではNHKラジオ講座での英語学習における、よくある誤解を3つご紹介します。

誤解①:NHKラジオで易しめの講座を受けても「効果がない」

塾の講師を長年行っていると、たまに「自分のレベルより低いことを勉強したって意味がないじゃないか」という声を耳にしますが、それは間違いです。

よく「英語を勉強したって全然聞き取れない、話せるようにならない」という不満を耳にしますが、私から言わせてもらえばそれは当然のことです。

「読む勉強」をしただけでは「聞く能力」はほとんど改善しません。
「聞く勉強」をしただけでは「話す能力」はあまり身につきません。

「聞く能力」を「読む能力」に近づける練習、「話す能力」を「聞く能力」に近づけるトレーニングが必要なのです。

また勉強というとどうしても「知らなかったことを新しく覚える」ことにフォーカスしてしまいますが、それだけでは英語が得意にはなりません。

何かを勉強するとまず「少し考えればわかる」というレベルに達しますが、その段階では実戦には役に立たないのです。

特にリスニングはその場その場で相手の言っていることを理解しなければなりません。

「えーと、You’re supposed toって言ったのかな。うーんと、be supposed to ~って何だっけ?そうだ、『~することになっている』って意味だったよな。で、その後に何と言ったんだろう」などと考えていると、相手は既に5~6文言い終えているのです。

長文読解でも同様です。

「思い出す努力をすれば思い出せる」というレベルの語句・文法が多数入っている文章は時間内に読み切ることができません。

英語ができると実感できるようにするには「少し考えればわかるレベルの知識を、見た瞬間、聞いた瞬間にわかるレベルにする」という定着トレーニングが欠かせないのです。

私は職業柄、英語が得意な生徒も苦手な生徒も何百人、何千人と見てきましたが、その最大の違いは定着トレーニングができているかどうかです。

前回の学習内容をしっかりと覚えてきている生徒は、新しく学習する内容もすんなりと頭に入りますし、前学年の内容がマスターできている生徒は模試でも優秀な成績を取ります。

当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、大人の英語学習でも同様です。新しい表現の意味を確認して終わっていないでしょうか。

英文を日本語に訳して満足していないでしょうか。

英語を得意にするためには「考えればわかるレベル」を「見た瞬間・聞いた瞬間わかるレベル」に、「見ればわかるレベル・聞けばわかるレベル」を「自分で使いこなせるレベル」に引き上げる定着トレーニングが必要不可欠なのです。

そこで私がお勧めするのがNHKラジオ講座のうち、テキストを見なくても解説を聞けばギリギリ理解できるレベルの講座です。

2つの講座を使い分けるというのもアリです。

たとえば「基礎英語3」はテキストを買ってじっくりと勉強し、「基礎英語2」をテキスト無しで定着トレーニングに使うという方法を採ってもいいでしょう。

そして「基礎英語3」がテキストなしでもわかるようになったら、今度は「ラジオ英会話」のテキストを買い、「基礎英語3」をテキスト無しで定着トレーニングに使うというようにレベルアップしていくこともできます。

定着トレーニングと言っても難しいことをする必要はありません。

テキスト無しで聞いて、テキスト無しで理解する、テキスト無しで発音練習する、テキスト無しでエクササイズを行い質問に答える。
たったこれだけです。

普通の勉強との違いはテキストを見ないことだけです。

ただそれだけの違いですが、テキストを見ないことによって聞き取りや英語の処理能力に負荷をかけて鍛えることができます。また、隙間時間や家事の時間を勉強に充てることができますので、英語学習の習慣を増やすことにも繋がります。

余談ですが、家事をしながら音声を聞くときはBluetoothイヤホンがお勧めです。

コードがないので邪魔になりませんし、スマホやPCに接続すればYoutubeでもNetflixでも手持ちのCDを取り込んだデータでも聞くことができます。

そして何より嬉しいのが、掃除機をかけようが、皿洗いをしようが気にせずにクリアな音声が聞けることです。音質を気にしなければ2,000円未満で手に入りますので、日々の家事にうんざりされている方は是非試してみてください。

誤解②:NHKラジオで文法を勉強しても効果がない

NHKラジオで文法を勉強しても効果がない
NHKラジオでは文法をしっかり解説しています。

「文法なんて勉強したって英語を話せるようにならない」「文法なんて知らなくたって英語はできるようになる」と反論されるかもしれません。

それは半分正解ですが、半分は誤りです。

たとえばある外国人が「私、しないだった、買う、車」と言っていたら、おそらく「私は車を買わなかった」という意味だろうなと想像できるでしょう。

このレベルで十分という人には、文法は確かに必要ありません。よく使う単語さえ覚えていけば、必要最低限のコミュニケーションはとれます。

ただ、この外国人がこのレベルで満足して、これ以上日本語の勉強をしないとしたらどうでしょうか。

ニュースを理解できるようになるでしょうか。
日本語で小説を読めるようになるでしょうか。
映画やドラマを楽しめるようになるでしょうか。
ビジネスシーンで取引先と契約を結べるようになるでしょうか。

答えはもちろんノーです。

「私、しないだった、買う、車」で意味が通じるとしても、「私には新車を購入するような余裕はなかった」という状況もありますし、「私は車を買い換える気は一切なかった」という場合もあるでしょう。

この違いがわからなければ、物語を楽しんだり契約を交わしたりすることは不可能です。

相手の意図を正確に読み取るには、そして自分の言いたいことを詳しく伝えるには文法の理解は間違いなく必要です。文法の学習をするから英語ができないのではなく、文法以外の学習が足りていないから英語が読めないし話せないのです。

どのレベルを目標にするか、そのためにどのような手段をとるかは人それぞれです。

観光地で買い物ができれば十分なのか、英語で海外の人との会話を楽しみたいのか、英字新聞が読めるようになりたいのか、英語でビジネスをしたいのか。

いずれにせよ最終的な目標に合わせて必要な努力をすることが重要なのです。

誤解③:学習者向けのクリアな音声は効果がない

NHKラジオ講座の音声は非常にクリアです。

実際の会話に出てくるような言い淀みや言い間違いがありません。初級者向けの基礎英語だけでなく、最難関と言われる実践ビジネス英語でも全員がハッキリと喋っています。

ここは賛否両論あるところですが、私は学習者にとってはプラスの方が大きいと思っています。

確かに実際の会話では単語をクリアに発音することは稀です。言葉につまったり、話している途中で相手に遮られたりすることもあるでしょう。

文法的に正しくない文が使われることもあります。

私はBon Joviが大好きなのですが、彼らの初期の曲にShe Don’t Know Meという歌があります。

主語がSheなのにdoesn’tではなくdon’tです。

Lady GagaにもIt Don’t Mean A Thing (If It Ain’t Got That Swing)という歌があります。

このように、ネイティブも文法的に正しくない英語を使うことがあります。

わかっているけれども敢えて無視している場合もあれば、思わず言い間違えた場合もあるでしょう。

ちなみにain’tはis [am/are] notまたはhave [has] notの短縮形で、若干行儀が悪い言い方です。

日本語でいえば「~じゃねぇ」といった感じでしょうか。

さらに人によっては、don’tやdoesn’t、didn’tの代わりに使われることさえあります。

There ain’t no hope.「希望なんかありゃしねぇ」のように二重否定なのに単純な否定文として使われることもあります。映画・ドラマ・洋楽ではよく耳にしますが、私も含めて英語学習者はあまり使わない方がいいでしょう。

またネイティブ発音ではハッキリと発音せずに誤魔化している部分もよくあります。

たとえば
I’m gonna show you an example.「例を挙げますね」
と言っているのか
I wanna show you an example.「例を挙げたいと思います」
と言っているのか私も区別がつかないことがあります。

スロー再生してようやく、I’m gonnaの方が近いかなと判断できるくらいです。Iに至ってはスローで聞いても言っていないんじゃないかと疑うことさえあります。

このあたりは別に英語に限った話ではありません。

日本語でも「ありがとうございます」を崩して「あざーす!」と言う人がいますよね。

主語の省略に至ってはむしろ日本語の方が頻度が高いくらいです。

確かにこういった崩した英語を聞き取れるようにする(正確には聞こえない部分を想像や経験で補う)のはNHKのラジオ講座だけでは無理です。ドラマや映画などの容赦ないネイティブ発音でのトレーニングをしなければなりません。

とは言え、殆どの人はいきなりネイティブの日常会話やドラマ・映画を聞きまくっても効率がよくありません。

語彙や文法等の知識が足りない状態でネイティブ発音の勉強をしても、語彙に課題があるのか、文法に課題があるのか、聞き取りに課題があるのかわからないからです。

最初にクリアな発音で正確な発音のしかたや表現のしかたをマスターし、ある程度の語彙や表現、文法を理解しておいた方が結果的にネイティブ発音も早くマスターできるでしょう。

ラジオ講座で言えば「遠山顕の英会話楽習」や「高校生から始める現代英語」がほぼ100%理解できるくらいになってから始めた方がいいです。

ぜひご参考にして頂ければ幸いです。

NHKラジオ勉強法シリーズ

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stagbeetle / 英検1級の英語講師
stagbeetle / 英検1級の英語講師
40代半ばの英語講師
大学を卒業後、縁があって中学生対象の学習塾に就職。
高校~大学の英語の成績はお世辞にも良いとは言えなかったが、「教える立場であるからには正確な知識を身に着けたい」という想いで本格的な英語学習を開始。

30歳の時点で受験したTOEICは700点だったが、コツコツと学習を継続することによ30代後半で英検準1級を、40代前半で英検1級を取得。
Never too lateをモットーに、現在は海外ドラマを中心に英語を学習中

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