世界中のあらゆる物資を運び、わたしたちの生活の支えとなる『貿易』。
仕事内容が多岐に渡り、世界を舞台に活躍できるやりがいのある仕事です。業種や職種がさまざまなので求められる英語スキルは異なりますが、基本的にどの勤務先でも英語に毎日触れることになります。
求人欄を検索してみると、ほとんどの企業がTOEICスコアや英語に関する技能を応募資格欄に必須または歓迎と記載しています。
これは、実務で英語を使用する機会が多いので、英語に苦手意識がある人を足切りするためでもあります。TOEICは今や採用試験や昇進・昇格試験において多くの企業で取り入れられている有名な語学試験です。
この記事では、現在、関西にある大手貿易会社で事務をしている筆者が、貿易業界における代表的な業種と付随して求められるTOEICスコアを紹介します。
貿易に関わる仕事とは?
貿易に関する仕事と聞いて、何を思い浮かべますか?
港や空港で荷卸しを行い、輸送手配の指示をするイメージを持つ人も多いでしょう。こうした『物流現場』と直接的に関わる業務もありますが、一方で基本的にどの仕事にも必要なスキルが『英語力』です。
取り扱う書類(貿易業界ではまとめて『船積書類』と呼ばれます。)は基本的に全て英語で表記されており、海外の取引先とはもちろん英語でコミュニケーションを取らなければなりません。
ここで貿易業界の代表的な業種と各々の職種を紹介します。
2.メーカー(営業、営業/貿易事務、資材調達(バイヤー))
3.フォワーダー(営業、貿易事務、通関士)
4.海運(船)会社(航海士、機関士、通信士、営業、管理事務)
そのほかにも税関職員、銀行員、JETRO職員などがありますが、総じて英語力と貿易の専門知識が必要です。こうしたスキルを身に着けるために、TOEIC以外にも下記のような資格を取得する人も多いです。ぜひ参考にしてみてください。
・通関士試験:国家資格であり合格率は10~20%と難易度が高い
・IBAT®:貿易知識に加え国際取引の実務内容を測る試験
貿易業種別に紹介する、必要なTOEICスコアとは?
業種や職種によって必要なTOEICのスコアは異なります。なぜなら、海外の取引先との交渉や商談が日常業務の海外営業と、貨物の荷卸しを行う船会社の荷役人では求められる能力が全く異なるからです。
ここでは、TOEICのスコアを業種ごとに紹介します。
商社
貿易業界の中でも最も高い英語力が求められる総合商社。今までは代理店として輸出入業務の代行を担っていましたが、最近の傾向では、新規ビジネスと既存のビジネスをうまく掛け合わせた海外事業投資が盛んに行われており、今まで以上に海外とのネットワークが強化されています。
その影響もあり、英語を公用語とした社内ミーティングや商談・交渉が多く、実践的な英会話スキルが求められます。自分の意見や会社の総意をネイティブの人たちに正確に理解されるには、相当の英会話力を求められるでしょう。
そのため、就職時には最低でもTOEIC730点のスコアを求められることが多いです。しかし、この730点というスコアは目標値に設定するべきではなく、あくまで最低ラインと考えたほうがベターです。商社は他の業界と比べても、高いスコアを持っていることが有利になる業種でもあるのです。
例えば、総合商社の双日株式会社では、昇格・昇進要件、海外赴任要件としてTOEIC730点を定めています。この730点というレベルは、あくまでクリアしないと次のステップに進めないというボーダーラインであり、業務において更なる高みを目指してほしいという企業のメッセージが込められているようです。
商社で働くためには、英語学習に対するチャレンジ精神と学習持続力が必要です。自分が活躍できる場をさらに広げるために、TOEIC試験を通して英語スキルを伸ばしていきましょう。
メーカー
自社で生産している製品や加工品を海外へ輸出する業務、海外原産品を輸入する業務を担うメーカー企業。通関に関わる業務はフォワーダーを介して行うメーカーが多いですが、最近は直接税関と書類の受渡業務を担うケースも増えています。
英語に関する事務作業は、主に船積書類の作成・確認作業と取引先とのコレポン業務の2つです。
そのため、メーカーの貿易事務はTOEIC600点以上を応募時点で必須としていることが多いです。これは、事務職が使う英語用途がそこまで高くなく、実際に働くうちに英語に慣れていくことを見越しているためでしょう。
一方、営業担当は現地へ出向き取引先と商談を進め海外の自社倉庫へ指導要員として赴任することもあるので、ビジネス英語でのスピーキング力は高いことに越したことはないです。レベルとしてはTOEIC700点以上、TOEFL IBT75点以上。
大手メーカーである川崎重工株式会社は、海外ビジネス担当者研修への参加要件としてTOEIC600点以上を設定しています。これは、海外市場の売上比率が大きくなったことを受けて、若手社員を中心とした英語力の向上を目的とされているためです。
このように、メーカーでも海外で活躍できるグローバル人材を育てる動きが出ています。TOEIC試験は英語学習成果を測るためのツールとしても人気で、導入されている企業も多いです。
フォワーダー
自社では運送手段を持たず、荷主(海外へ商品を輸出したい企業)と実輸送人の間を取り持ち、国際輸送業務を行います。商社やメーカーに代わって貿易業務(税関へ輸出入申告、関税支払、運送手配など)をサポートします。
船積書類や契約書など取り扱う書類全てが英語表記のため、ライティング力とリーディング力を要します。またそのほかにも、輸送途中のトラブルに対応するために、現地のエージェントと英語を用いてコンタクトを取ることが多々あります。
安全にスピーディーに荷物を送り届けるためにも、最低限のビジネス英語コミュニケーション能力が求められます。そのため、TOEIC600点程度の実力は必要です。
輸送手配・顧客対応が中心となる貿易事務は、書類やメールの読み取りができればそこまで高い英語スキルは求められません。
一方、直接海外のエージェントを相手に商談を行う管理職や営業職へスキルアップを目指す場合は、昇格試験の要件としてTOEIC750~800点を定めている会社もあります。
業務内容に合わせて目標スコアが異なるので、まずは600点を目指してみてはいかがでしょうか。
海運(船)会社
自社が所有する船やフェリーを利用して、さまざまな貨物を国内外に輸送するグローバルな仕事です。
仕事内容は輸送スケジュール調整、運賃見積もり、荷物の積み下ろし、入金作業など直接輸送に関わる業務が多く、貨物がどのようにして運ばれるのかをリアルに感じられます。
港湾など現場以外の職種では、船積書類やメールを使用したコレポン業務を行い、フォワーダー同様にライティング力とリーディング力が求められます。また、物流業界はスピード第一と言われるほど、毎日多くの荷物の輸送手続きに追われます。
そのため速読スキルが重要になります。応募資格としてのTOEICスコアは500点以上としている会社が多くそこまで難易度は高くないですが、実務でその実力では少し物足りないため、600点以上を目指してみましょう。
まずはTOEICを受験して自分の英語レベルを把握しよう!
貿易に関わる仕事といってもさまざまな業種があり、必要とされる英語力も仕事内容によって異なることがわかりました。
「もっと自分の力を活かしたい!」「将来海外で働くために今からスキルを身に付けたい!」という方はぜひ、商社や外資系メーカーに挑戦し、語学力を社会のために自分自身の成長のために活かしましょう。
グローバル人材の育成に力を入れ、TOEIC試験の受験費用を負担している企業は増えているので、こうしたサポートを積極的に活用し働きながら英語スキルを伸ばしていきましょう。