こんにちは!
今回も、「出版翻訳者になりたいけど、どうすれば、なれるのか判らない!」という方々向けに、どのような経緯を経て私が出版翻訳者になることが出来たのか、その道のりの、パート3をみなさんにお話しいたします。
未読の方は、是非パートⅠ、Ⅱも併せてお読みくださいね。
みなさんのお役に立つことが出来れば幸いです!
本を選ぶ際の決め手とプロセス
1.「マル秘!」成功する本を発掘する秘訣とは? 持ち込みのプロセスとは?
今回は、私と同じように企画を出版社に持ち込みしたい!という方のために、私が本を選ぶ際の決め手とそのプロセスをご紹介しますね。
まず、既述の通り、私の場合は、Amazon.comでどんなにあらすじやコンテンツをみても、「コレだ!」というインスピレーションは一切降りてきません。
現物を見ないと、「コレだ!」は降りてこないのです。なので、Amazonで気に入った本を見つけたらお金はかかりますが、現物を取り寄せるのがベストです。
私は当時海外に住んでいたので、書店に実際に出向いて、自分がターゲットにする専門のコーナーをリサーチするか、形而上学を扱う専門書店に行きます。そのなかで、ピン!ときたものを全てピックアップしていきます。
最初の数ページを読むだけで、自分好みか、内容が理路整然としているか、論理性が欠如しているか、あまり役に立たないかなど、大体見当がつきます。
おおよその内容が掴めたら、著名人および著名作家が推薦しているか、全米で○万部突破、Amazonで〇週連続○位獲得など、本の帯などに書かれてある情報をチェックします。こうしたポジティブな材料が多い方が、出版社からもOKが出やすいからです。
次に、そのタイトルと著者名をもとに、日本のAmazonで邦訳がないかを検索してみます。ここで、もし邦訳が出てなかったら、amazon.comでレビューをチェックしてみます。日本でもそうですが、ステマの可能性は否めないものの、それでも一般読者による評価はかなり参考になるからです。
評価数が多く、かつポジティブな評価が多かったらさらに先に進みますが、出版後ある程度の期間が経過しているにもかかわらず、評価ゼロ、あるいはネガティブ評価が多いものは、この時点で除外します。
リサーチでポジティブな結果が得られた作品は、本のコンテンツをさらにアマゾンでチェックし、その内容が有益であると判断出来たら、購入します。本がゲット出来たら、改めて最初からリーディングします。英語力のある方なら1~4日もあれば、一般的なボリュームの本はほとんど読了できるでしょう。
本を実際にリーディングして、確かに優れた作品だと納得出来たら、ネットで著者を検索してみます。また、出版社あるいはエージェントの情報も掲載されていますから、両者に自分の簡単な自己紹介、本について抱いた感想、そして日本で出版することに興味があること、日本での版権が空いているかどうかを確認します。
既に日本での版権が取得されていたら、ここでリサーチは終了。まだ版権が空いている作品は、次のステップとしてシノプシスと企画書を作成します。
2.シノプシスと企画書を作成してみよう!
シノプシスとは、本をリーディングしてその概要や基本情報を作成することですが、決まったフォーマットがあるわけではありませんので、翻訳者としての力量を発揮する場面でもあります。
シノプシスによる原著の概要が凡庸だと、その時点でおそらく出版候補からはじかれてしまうでしょう。それくらい、シノプシスの役割は重要です。
出版社の立場になってみると判りますが、本を出版するには、出版そのものにかかるコストは勿論のこと、原著者への報酬、版権買取料、本のデザイン料、宣伝広告費など、多額の投資が必要になります。
これだけ本が溢れている世の中ですから、確実に売れると判っている本ではないと、出版社も手を出したくないのです。
なので、持ち込みをするのであれば「コレならいける!」という絶対的な確信が持ち込む側にもないと、可能性は薄いでしょう。裏を返せば、そのくらい確信が持てない作品以外は、持ち込まない方が賢明だということです。
私は、「なぜこの本が素晴らしいのか」という点を明確にして、所感に入れます。
その際、
●著名人・著名作家が原著を推奨している
●著名人・著名作家の推薦の言葉が入っている
●原著者の作品は過去に全てベストセラーになっている
●原著者の輝かしい経歴
そうした情報は、かなり説得力を持ちますので、必ず入れます。
また、なぜこの本を日本で出版させたいか、という点も明確にして、所感に入れます。
その際
●本書の情報が日本/日本人にとって、とても有益な内容であること
といった情報を入れます。
私は、持ち込みの場合にはシノプシス以外にも、企画書も作成して一緒に提出しています。
その際には、作品に対する思い入れ、作品がどれほど自分にインパクトをもたらしたか、読者レビューをベースに、作品がどれほど読者にポジティブな影響をもたらす可能性を秘めているか、などを述べます。
企画を提出する出版社と面識がない場合には、自分の連絡先と、翻訳者としての経歴やプラスになりそうな他の経歴も入れましょう。
これをメールあるいは郵送で出版社に送ります。
ほとんどの出版社は、「検討まで1~2か月お時間を頂きます」といった返事を送ってくれるでしょう。
この時、もしNGでもめげないことです。
某お笑い芸人は、自分の本が出版されるまで、全ての出版社に原稿を送ったと聞いています。
お笑い芸人という肩書があってもなお、そうなのですから、一般人ならなおさら売り込む努力が必要でしょう。著名な先生であっても、某出版社から自著出版の企画を断られたと、聞いています。
絶対自分の訳書を出版させたい、というのがあなたの夢なら、方法にさえこだわらなければ何らかの方法によってそれはいずれ叶うでしょう。
大切なことは、諦めないこと。
諦めなければ、夢は叶うのです。
3.予期せぬミラクルが!?
出版社と編集長の力量によって、さまざまな作品を、次から次へと翻訳出版する幸運に恵まれた私に、さらなるミラクルが起こりました。
自分の訳書の売れ行きは訳者としても気になるところですので、定期的にAmazonで順位などをチェックするのを習慣にしているのですが、ある日、信じられなことが起こりました。
なんと、尊敬する同分野の大御所が、実名で直々に私の翻訳作品のうち、2作品にレビューを寄せてくださっていたのです!
2作品に、ご丁寧に心のこもった称賛のレビューをしてくださったのです。
もちろん、私の方からPRして欲しいとお願いしたわけではありません。先生が、自主的になさってくださっていたのです。
私自身が、この先生の訳書を多数拝読して勉強させていただいていたので、嬉しいのも勿論ですが、とにかく信じがたいほどの驚きでした。この時、努力している人を神様はちゃんと観ていてくださっているのだ、と報われた思いがしました。
また、この先生も手掛ける訳書は、ほぼ全作品がベストセラーではないかというほどのヒットメーカーなのですが、こうした誠実なお人柄からも、絶大な人気があることに納得しました。
4.出版翻訳者の印税事情とは?夢の「印税生活」は可能か?
さて、出版翻訳というと、印税・報酬といったところが、皆さん気になるところではないかと思います。
私自身「本が1冊でも当たれば、家が1件建つ」と聞いたことがあります。
大変夢のある話ですが、正直なところこれは稀だろうと思います。ほとんどの皆さんが想像なさっているより、印税というのははるかに低いのです。
例えば、「定価1800円の本が、1万部でも売れたら、総額1800万円にもなるんだから、全額貰えるわけではないにしろ、かなり美味しい職業なのでは・・・?」なんて、単純に計算するかもしれませんが、そんなに甘くはありません!
通常、自著の場合でも、印税は10%が相場で、翻訳の場合は、大体その半分が相場なのです。
そう、5%が基準なのです。そこから、さまざまな要因(版権の買取り額、原著者へのギャランティー、訳者のキャリア)などを加味すると、さらに低い場合もあります。
従って条件等により、実際には、3%~6%くらいまで、幅があるのです。
というわけで、先ほどの例で印税をデフォルトの5%で計算しますと、報酬は1800×10000×0.05=90万+税金となります。
出版の全プロセスにもし3か月かかったとすれば、1ヵ月当たり30万の報酬となります。
無論、大ベストセラーになれば話は別ですし、「家が一軒建つ」も可能性としてはあり得ますが、いかがでしょう? 想像しているほどの報酬にはならないと感じている人がほとんどではないでしょうか?
夢を壊すようで恐縮ですが、これが現実なのです。
でも、やり甲斐のある、好きな仕事をしている、沢山の人に自分の手掛けた作品を読んでいただいている、僅かでも社会に貢献しているという自負心が得られるという恩恵は、お金には代えられません。
それに再度引き合いに出しますが、「第2のハリー・ポッター」さえ見つけられさえすれば、という「夢」があることには変わりありません。
また、印税額は通常、販売部数ではなく、発行部数によって決まります。
そこで、初版を何部刷るかですが、これは出版社の規模等にもよりますので、あくまでも目安ですが、通常6千部~1万5千部というところです。もちろん、ベストセラー作家の場合は、既にどれくらい売れるかが過去のデータから検討がつけられますので、それに基づいて、決定している可能性もあるでしょう。
出版社は、初版が完売することで儲けが出るように計算を組んでいますので、初版が完売なら、儲けは出たということです。書籍は、大体6千部売って、儲けが出る、と言われています。
初版発行分が良いペースで完売したら、重版がかかり、その部数に応じて追加の印税が支払われることになります。
追加の重版部数も、売れるペースと人気度によって変わってきます。
印税支払いのタイミングですが、これは出版社によりまして、出版の1か月後~3か月後が目安です。版権買取りなども含め、本を作るために投資したコストをまず回収してから支払う、ということですね。
したがって、出版翻訳1本で食べていくとなると、最初は印税が支払われるまでに時間を要しますので、軌道に乗るまでは、経済的に余裕のある状態を確保できているか、あるいは別の収入源を確保して、両立してやっていくことが必要になります。
また、万一出版するうえで、どうしても出版社から採用してもらえない、といった壁にぶち当たっても諦める必要はありません。
現在は、紙ベースにこだわらなければ、Kindle版などの電子書籍という手もあります。この方が印税率は高いので、当たった時の報酬も大きいですしね。
また、お金に余裕があるのでしたら、自費出版という手もあります。
知り合いの方は翻訳本ではありませんが、出版社と費用折版のような形で、ご自分の本を出すという夢を叶えられていました。とても感激なさっていました。
私自身、初めて自分の訳書を出版した時の感動は、言葉では言い表すことは出来ません。まさに、感無量でした。
ですので、これをお読みの方で、どうしても自分の翻訳書を出したい、あるいは自著を出したいという方は、諦めずに夢を叶えていただきたいです。
5.講談社から英語本を出版していただけることに!
翻訳書の3作品目が出版されたのと時を同じくして、かねてより企画を検討いただいていた講談社さんから、英語本を出版していただくことも決定しました。
英語本を出版するからには、自分の英語力が確かだと証明する証も必要だと思い、その目的だけのために英検とTOEICを受験することにしました。
TOEICはその前に2度ほど受験して、直近の得点は確か910点くらいだったと記憶しています。英検は、随分前に取得した2級があるのみでした。
その結果は、TOEIC965点獲得、英検1級合格で、英語本の著者としてのプロフィールとしては十分だろうと判断し、タイミング的にもちょうどプロフィールの掲載に間に合わせることが出来ました。
この時は、自著としては処女作でしたから、訳書を出した時とはまた違った喜びがありました。初版1万2千部で、約1年程で完売したようでしたので、結果も自分的には満足でした。
翻訳書を出したという実績がなければ、こちらも叶わなかったかもしれませんので、訳書を出せたというのは、自分のキャリアにとって大きな分岐点となりました。
そして、訳書を出すことが出来たのは、それまで行なってきた英語学習、不動産投資会社での仕事、ビジネス紙の記者の仕事、全てが積み重なって、初めて実現したのです。
なので、今仕事としてやっていることが、現時点では、意味が判らなくても、後になってそれが大きな意味を持つ、ということは人生では、往々にしてあることです。
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
この続きをお楽しみに!
まとめ
① 原著は既に全米で○○万部売れている
② 著名人・作家が原著を推奨している
③ 著名人・作家の推薦の言葉が入っている
④ 原著者の作品は過去に全てベストセラーになっている
⑤ 原著者の輝かしい経歴
2.持ち込みのためには、シノプシスと企画書を作成する
3.翻訳本の印税は3%~6%がおおよその目安
4.印税が支払われるのは、出版後1~3か月後
5.Kindle版、電子書籍でも出版は可能
6.出版翻訳の夢を諦めないこと!