「TOEICテストのリーディングセクションが苦手だ」「時間内に解き切ることができない」という悩みはよく耳にしますよね。
そのように、自身のリーディングスピードに悩みをもつ受験者の中には、『○○をすれば読解スピードが上がる』などのリーディングテクニックに安易に飛びついてしまう方もおられることでしょう。
しかし、リーディングセクションでハイスコアを得るために何よりも重視すべきことは「基礎的な読解力を身につけること」です。
「この設問がきたらここのポイントをチェックしよう」「このワードが出てきたらこういうひっかけの選択肢に注意」などの小技を知ることも、もちろん必要なことではありますが、根本的な解決にはなりません。
「最近リーディングセクションのスコアが伸び悩んでいるな」「いろいろな参考書を見てテクニックを学んできたけれど、イマイチ手応えが感じられないな」という方はぜひここで一度基本に立ち返っていただき、今回ご紹介する「精読」を用いた基礎的な読解力を養う学習方法を実践してもらいたいと思います。
読解力を養うベストな方法は「精読」
「リーディングセクションでいつも時間が足りなくなってしまう」と嘆いている方の中には、「読むスピードが遅いのなら単純にスピードを上げればいいんでしょ?」と安易に『速読』というテクニックを取り入れてしまう方も少なくありません。
しかし、速読の手法が成功するのは、基本的な語彙力・文法力・読解力といった基礎をきちんと身につけている人だけです。
ただ、読むスピードを上げただけでは文意を正確に把握することができないため、結局読んだ内容を忘れて本文を何度も繰り返し読む羽目になってしまうのです。
時間内に解ききれない、読むスピードが遅い原因はズバリ、本文の内容をしっかり理解できていないからに他なりません。きちんと本文の内容や設問の意味を把握できないままに選択肢を選んでしまうから、「こっちが正解かな、いやこっちかもしれない」と迷いが生じてしまうのです。
選択肢の判断に迷う時間が長ければ長いほど大幅なタイムロスとなり、最終的に時間がたりなくなってしまうのです。従って、ハイスコアを目指すのであれば、まずは精読によって英文を正確に読めるようにしていくことが大切なのです。
精読のやり方
精読とは、英文の構造や意味をしっかり理解しながら読み進めていく手法のことです。
英文の概要だけを把握しながら読み進めるのではなく、単語や熟語、文法、文構造などを正確に理解しながら英文を読み進めていきます。
「TOEICテストはただでさえ時間が足りないのに、そんな丁寧な読み方をしていて大丈夫なの?」という声もあるかもしれませんが、ここでしっかりと正確に英文を読めるようになるかどうかが勝敗の分かれ目となってきますので、以下のような要領で実践していきましょう。
※詳しくは後述の例題を参照
②問題集の問題を一通り解く
③答え合わせをする
④英文に再度目を通し、意味がわからない単語や熟語、表現などに〇の印をつけ、辞書や参考書などを使って調べていく
⑤主語や動詞、目的語、補語、修飾句や節などを見分け、意味のまとまりごとにスラッシュ(/)を書き加えながら英文の先頭から一直線に読み込んでいく(このとき、関係代名詞や接続詞のところで「戻り読み」をしていては読むスピードが遅くなってしまうので、戻り読みをせず前から順に読む癖をつける
⑥文法や文構造が理解できなかったところ、解釈できなかった箇所を調べる
⑦英文がすべて理解できたら、その英文を何度も音読する(視覚だけでなく聴覚も使って学習する方が理解度は増すので、ぼそぼそと声に出しながら読んでいく)
⑧最初のうちはゆっくり読み、慣れてきたらペースを上げて音読する
精読するときに注意したいポイント
知らない単語の意味や品詞、用法などを調べることにプラスして、以下の点にも注目できるようになると、より正確に答えを導き出すことができるようになりますよ。
①言い換え表現
一度でもTOEICテストを受験した人であればわかるかと思いますが、TOEICテストでは至る所に言い換え表現が使われています。
リスニングにおいてもリーディングにおいても、本文で使われた表現がそのまま選択肢に使われることは少なく、答えを選択するための重要な箇所に限って言い換えられているケースがほとんどです。
例えば、本文ではcolleaguesと書いてあるのが、設問や選択肢ではcoworkersと言い換えられている、driver’s license をphoto identificationと言い換える、hotelをaccommodationに言い換える、などです。
TOEICテストに出てくる言い換え表現に関しては例を挙げるとキリがありませんが、精読をするたびに言い換えのパターンをチェックしていくことによって言い換え表現に慣れることができるので、よりスムーズに答えを選べるようになりますよ。
②キーワード
登場人物や会社名などの固有名詞、日付や曜日をチェックするのはもちろん、話の流れを把握する上で重要なワードは確実に押さえながら読み進めていきましょう。
「butやhowever、yetのあとには重要なことや言いたいことがくる」「Unfortunately,…とあるからこれから何か不都合なことが来そう」「First,…やPreviously,…のあとにthenやafter thatとあるから時系列をチェックしないと」などといった具合です。
TOEICでは「雨天だから~で開催します」「昨年は~だけれど今年は…します」などの変更は頻出ですので、キーワードを的確に把握しながら文意を理解していくことによって、情報を整理しながら読み込んでいけるようになりますよ。
精読に挑戦してみよう!
では、実際にPart 6の練習問題を使って精読に取り組んでみましょう。Part6では4問×4セット出題され、e-mailや記事、広告文などの空所に当てはまる単語や文章を選択肢から選びます。
文脈に合うフレーズや接続詞を選ぶ問題では、全体の流れを読みとる力が問われますよ。
Questions 131-134 refer to the following e-mail.
No. 131
(A) interest
(B) interests
(C) interested
(D) interesting
No. 132
(A) develop
(B) raise
(C) open
(D) complete
No. 133
(A) After all
(B) For
(C) Even so
(D) At the same time
No. 134
(A) Let me explain our plans for on-site staff training.
(B) We hope that you will strongly consider joining us.
(C) Today’s training session will be postponed until Monday.
(D) This is the first in a series of such lectures.
引用元:https://www.iibc-global.org
問題を一通り解いて答え合わせをしたら、再度英文や設問、選択肢を確認していきましょう。知らない単語や熟語があれば〇印をつけて調べる→SVOなどの文構造を理解する→意味のまとまりごとに前から順に意味をとらえていく(関係代名詞などのところで戻り読みをしない)→すべて理解できたら音読する、の流れで精読していきます。
※便宜上、主語はS、動詞はV、目的語はO、名詞句や名詞節は[ ]、形容詞句や形容詞節は( )、副詞句や副詞節は< >を用いて解説していきます。また、英文の文意を確認していく際には前から順番に意味を把握する癖をつける必要がありますので、自然な日本語ではなく意味のまとまりごとの日本語訳をあえて載せています。
※effectively(副)効果的に division(名)課、局、部署 competency(名)能力
benefit(動)利益を得る interactive(形)相互に影響し合う postpone(動)延期する
・No.131 C
同じ単語の異なる品詞が選択肢に並んでいます。空所の前後を見るとfor employeesとなっているので、employeesという名詞を修飾する形容詞(C)interested(興味のある)か(D)interesting(面白い)が入りますが、文脈に合うのは(C)interestedとなります。
・No.132 A
同じ品詞の単語が選択肢に並んでいる語彙問題です。develop a (deep)understanding「~への理解を深める」という表現をこの機会に覚えましょう。正解は(A)developです。
・No.133 D
接続詞に関する問題です。前後の文章の関係を正しく理解しなければなりません。空所の前の文では「サポートによって経験の少ない従業員でもデザイン行程の理解を早く深められる」、後の文では「部署を超えて効率的にコミュニケーションを取る能力を改善できる」とあるので、並列の接続詞である(D)At the same time(同時に)が入ります。
・No. 134 B
文末への文章挿入問題の場合、締めの言葉や読み手に何か提案することが多くなります。空所の直前の文で「~に参加していただきたいと強く思っています」とあるため、セミナーへの参加を呼びかけている(B)We hope that you will strongly consider joining us.(参加を前向きに検討していただけることを願っています)が適切です。
続いてPart 7の練習問題も解いてみましょう。
Questions 1-3 refer to the following memo.
1. What is the purpose of the memo?
(A) To make a suggestion
(B) To arrange a meeting
(C) To announce a move
(D) To present a problem
2. When is the Kent Center expected to reopen?
(A) In January
(B) In February
(C) In March
(D) In April
3. In which of the positions marked [1], [2], [3], and [4] does the following sentence best belong? “This is a little higher than that for the current building, but we were not able to find a suitable place other than Hawthorne.”
(A) [1]
(B) [2]
(C) [3]
(D) [4]
※引用元:https://www.goken-net.co.jp/goken_sample/329.pdf
※analysis(名)分析 relocate(動)~を移転する temporarily(副)仮に address(動) ~に取り組む
notify(動)~に通知する available(形)利用できる current(形)現在の other than~のほかに
someが単数の可算名詞の前につくとき「とある」He went to some place in the United States.合衆国のどこかへ行った。
No.1 C
Part 7の1つ目の設問の大半は英文全体の目的や意図を問うものです。少し読んだだけでヒントが出てくるものもありますが、ある程度読み解いてから答えを選択するのが無難です。今回は1文目でwill be relocated temporarily、3文目にtemporary officeとヒントがありますから、移転のことをmove「引っ越し」と言い換えている(C) To announce a move が正解となります。
No.2 D
設問がwhenから始まり、選択肢に日付や曜日が並んでいるものはピンポイントで情報を探す必要があります。「いつreopen(再開する)つもりなのか?」に対して本文ではhope to be operating as normal back in Kent from April「4月に戻って通常営業したい」とあるので(D) In Aprilを選びましょう。
No.3 B
本文の[1]~[4]のどの場所に文を挿入すればよいかを問う問題です。This is a little higher than that for the current building, but we were not able to find a suitable place other than Hawthorne.(これは現在のものより少し高いのですが、ホーソン以外に適切な場所を見つけることができませんでした)とあるので、現在の家賃よりも高いけれど$525でレンタルすることにした、という文脈になるよう(B)[2]を選択します。
まとめ
いかかでしたでしょうか?精読は一見するととても遠回りな学習方法に見えてしまうかもしれませんね。
しかし、理解できていない英文をいくら数多くこなしても、理解不十分なままではスコアは伸びません。
公式問題集などで問題を解いたあとに上記のように一文一文ていねいに文構造や意味を確認する、そしてそのあとに完璧に理解できるまで音読をする、という地道な学習を繰り返すことによって着実に読解力を身につけていくことができますので、ぜひ実践していってくださいね。