皆さんはきちんと正しい知識を持って安全に楽しくダイビングしていますか?オープンウォーターの講習で習ったことを忘れずに覚えていますでしょうか?
講習のときにもらった教科書を今でも保管しているでしょうか?たまに読み返していますか?講習の教科書には難しいことばかり書いてありますが、すごく重要な記載が沢山あります。
インストラクターに教えてもらっても、なんとなく「ふーん?」で終わっていないでしょうか?
スキューバダイビングを行うにあたって、我々の体には様々な現象が起きます。その現象を知らずに放っておくと大変なことになりますよ。もちろん死に直結するものもあります。
正しい知識を覚えなおし、知らなければ覚えて安全で楽しいダイビング計画を立ててダイビングをしましょう。
我々の体に起こる現象とその注意点・予防を5つご紹介
1. 飛行機の搭乗時間の制限
ダイビング終了後は飛行機の搭乗はできませんと聞いたことありませんか?
どこのダイビングショップへ行って、体験ダイビングやファンダイビングをするにも、注意書きとして明記してあると思います。
特に旅行などで沖縄や離島、海外へ行きダイビングをする場合は気をつけなければなりません。ダイビングをした当日に飛行機に搭乗することは出来ません。
それでは何故?ダイビングをした後に飛行機に乗ってはいけないのか?
その答えは、減圧症にかかるリスクがあるためです。
減圧症については次の項目で説明します。ここでさらっと言うのであれば、ダイビングをすると体内に窒素が溜まります。その状態で高所に行くとその体内の窒素が血管内で膨張し気泡となり、激痛または意識を失う場合があるからです。
飛行機搭乗まで最低限12時間の待機時間が推奨されています。
当日2本以上(反復ダイビング)または数日間にわたってダイビングを続けた場合は、
飛行機搭乗まで最低限18時間の待機時間が推奨されています。
減圧潜水(特定の水深で特定の時間留まること)を行うダイビングをした場合は
飛行機搭乗まで最低24時間〜48時間の待機時間が推奨されています。
こちらの飛行機搭乗までの待機時間については、RDPと呼ばれる理論に基づいたデータを用いて計算されています。ダイブコンピューターを持たないでダイビングする方はこちらのRDPに基づいた計算方法でいいと思われます。
ダイビングを行った当日に飛行機に乗ってはいけません。また、飛行機ではなく高所(300〜400M以上)を超えてでの移動も同じです。特に伊豆などの山が沢山ある場所を車で移動して自宅に帰る場合に注意が必要です。
御殿場付近でも標高は400M以上あります。飛行機ほどではないものの、体には負担がかかってきます。日帰りでのダイビングを計画している場合は、必ず無減圧潜水内でのダイビングを心がけ、遠回りでも標高の低いルートを選びましょう。
2. 減圧症・窒素酔い・肺の過膨張障害
スキューバダイビングは空気の入ったタンクを背負い、水深20M前後の深さまでいき、1本で平均45分前後潜ります。そうすることによって我々の体には地上では起こることのない様々な現象を引き起こします。
一つ目は減圧症です。
さきほどの飛行機の搭乗の因縁についてお話ししたときに出たように減圧症にかかると大変です。
症状としては、関節痛、頭や喉、胸の痛み、重度になってくると神経系の損傷等、重篤な後遺症を招く恐れがあります。
減圧症にかかったら、すぐに病院に行き再圧チャンバーと呼ばれる機械に入り、体に再び圧をかけて徐々に気圧を戻していくという治療法をします。
再圧治療施設のある病院はこちらを参照ください。
参照:NAUI減圧症の予防の3ページ目
減圧症の原因は以下の要因があります。
・潜水時間(長ければ長いほど減圧症にかかりやすい)
・浮上速度(浮上速度が速いほど減圧症にかかりやすい)
・安全停止の時間と深度(安全停止は5Mで3分間の停止です。守らないと減圧症にかかりやすい)
・水面休息時間(ダイビングとダイビングの間に取る休憩時間。短いと減圧症にかかりやすい)
以上が原因と理由です。
深度が深く、時間が長く、そして浮上速度を守らずに地上へ出てしまうと一発で減圧症にかかります。なぜ、浮上速度を守らないといけないのか?安全停止の必要性などはオープンウォーターの講習で勉強しました。
忘れてしまった方はもう一度教科書を読みましょう!教科書がない場合はこちらのサイトがとても詳しく載っていますのでおすすめです。
参照:減圧症の予防について
二つ目は窒素酔いという症状です。
減圧症とは異なり、窒素酔いというお酒に酔ったような感覚を水中で引き起こします。これも非常に厄介で、窒素酔いになってしまうと正常な判断が出来なくなってしまいます。
うっかりレギュレーターを外してしまったり、気持ち悪くて吐いてしまったり、潜行または浮上しているのかわからず浮上し、減圧症にかかったりと。
窒素酔いは深度が深ければ深いほど、かかりやすくなります。
スキューバのタンクの中は酸素だけではありません。我々が吸っているタンクの中の空気は8割ぐらいが窒素です。なので窒素による麻酔作用が働いてくるのです。
窒素酔いには個人差がありますが、予防としては深い深度には行かないこと。自分の限界の深度を知ることが大切です。また、バディシステム(二人一組)を遵守し、少しでもどちらかが怪しい行動をはじめたら、速やかに手を取りゆっくり浮上を開始しましょう。
三つ目は肺の過膨張障害です。
こちらも減圧症でご紹介した要因の一つである、浮上速度と潜水深度に深く関わってきます。そしてダイビング時に一番してはならないこと呼吸を止めてしまうこと。これが深く関わってきます。
地上と10M、20M、30Mとでは、このように圧力がかかっています。
それでは理科の実験です。パンパンに膨れた風船を地上から水深30Mのところへ持って行ったら?
深度が増すにつれて風船は小さく圧縮されます。では、これが人間の肺の場合に例えてみたらどうでしょうか?
水深30M付近で思いっきり息を吸います。そこで呼吸を止めて地上まで浮上するとしましょう。今度は逆です。ぱんぱんの肺が地上に向かうにつれてどんどん膨張していきます。
しまいには破裂してしまうでしょう。これが肺の過膨張障害です。
私たちは水中で息が吸えて、肺を常に膨らませたり縮ませたりできます。なので、ダイビングでしてはいけない息を止めてしまうと、空気の逃げ場がなくなり、どんどん膨張していき、最悪の場合破裂するのです。
こうならないためにも、ダイビング中は息を止めてはいけません。そして浮上速度を守ることです。浮上速度は少なくとも18m/分を超さないことが明記、奨励されます。ダイブコンピューターを持っている方は浮上速度が速いと必ず警告音が鳴るようにできています。
ダイブコンピューターが警告音を出さない速度を心掛けましょう。
3. 減圧潜水・反復ダイビングをする際
減圧潜水とは
皆さんは、きちんと無減圧潜水を守っているでしょうか?無減圧潜水とは、減圧を必要としない潜水方法です。ダイブコンピューターと呼ばれる時計を持っている人は、深度や時間によって無減圧潜水で行ける時間が明記されています。
ダイブコンピューターの選び方について記事があります。
では、減圧潜水とは?減圧を必要とする潜水をしてしまった場合です。この状態になると、通常安全停止と呼ばれる5メートルの水深に3分間の停止だけではダメになってきます。
7メートルで何分、10メートルで何分、とコンピューターから細かい指示が出てきます。これが減圧潜水です。この潜水方法はおすすめしません。減圧症にかかるリスクがあるためです。
反復潜水とは
反復潜水とは、1日に1本のダイビングではなく、2本以上ダイビングを行うことです。多い人は1日で5本潜る人もいることでしょう。反復潜水は窒素が抜けきっていない状態でダイビングを繰り返すために減圧症のリスクが高くなります。
基本的に1日2本〜3本を推奨します。
反復潜水を行う際の注意点は、1本目になるべく高深度を取り、2本目以降は浅いダイビングを心がける。ダイビングの間の水面休息を必ず45分以上取ることです。
毎回深度30Mを潜っての3本続けると危険です。2本目以降は18Mまでの水深を心がけましょう。
4. 体の中で起こる現象、スクイズ・耳抜きについて
スクイズとは
水圧によって空気が圧縮されて締め付けられる現象のことです。スクイズは体のいろいろな部分でおきます。
一番多いのが耳です。耳についてはこの次に説明します。
その他に多いのが、歯です。実は虫歯などで歯に空洞がある場合、スクイズを起こします。そうすると激痛が起き潜ることができないほどの痛みになります。
ダイビングをする際は、放置してある虫歯などの治療を行ってから行くことをおすすめします。
次はサイノスと呼ばれるサイナス(副鼻腔)です。これも厄介で水深3Mあたりから起こるのでダイビング続行不可能になります。私もこれはよくなり、また対処法や予防法がほとんどわからないので困っています。
基本的には鼻づまりに起こるので、鼻炎薬などを飲んで鼻水が詰まっていない状態で潜るようにします。ダイビング中にサイナスがきたら、ゆっくり鼻から常に息を吐き続けて和らげます。
耳抜きについて
ダイビングでは絶対に必要なスキル、それが耳抜きです。
これができないと、残念ながらダイビングが出来ません。。。なので、コツを覚えて耳抜きが出来るようになりましょう。
耳抜きも水圧によるスクイズが原因で起こる現象です。水深2M付近から耳に違和感を感じることでしょう。もしそのままなにもせずに潜ってしまうと、鼓膜が破れてしまいます。
耳抜きの方法は、手で鼻をマスクの上からつまみ、鼻からゆっくり息を吐きます。そうすると両耳がぽこぽこという音と共に、周りの声が少し大きくなったように感じると思います。
陸上でももちろん出来ますので試しにやってみてください。これが出来ればダイビングが出来ます!
耳抜きは体質によって異なり、耳抜きを必要としない人もいれば、何度やってもできないからダイビングを諦めた人もいます。鼻をつまんでもできない人は、顔をどちらかに傾けてみたり、耳の後ろをマッサージしてみたり、アクビをすることによって出来る場合もあります。
人によってやり方も様々。自分のやりやすい方法を見つけてください。
❺漂流事故やダイビング中のロストを防ぐ
いくらダイビング中に今まで挙げたことに気をつけてダイビングをしていても、漂流してしまったり、ダイビング中に仲間を見失ったりしては意味がありません!
漂流をしないためには?バディや仲間を見失わないためには?どうしたらいいのでしょうか?
漂流をしないために
大事なことは、信頼できるダイビングショップを使うことです。ダイビングでは船を使うことが多いかと思われます。その場合、ほとんど船のキャプテン側の過失、またはスタッフの過失が大きいです。
スタッフと船のキャプテンの連携がうまくとれていていれば、防げる事故です。特に毎回船をレンタルしていて違うキャプテンを使っているお店には要注意です。
また、漂流を防ぐためにシグナルフロートと呼ばれる救命器具を一人一つ持つように心がけましょう。空気を入れて水面で自分がここにいるよと知らせる道具です。船からではどうしても人間を見つけるのは難しいのです。
ビーチからエントリーの場合は、自分でもコンパスを持って陸上がどっち方面なのかを知っておくことも大事です。そうすればガイドとはぐれた場合でも陸の方面に向かって泳ぐことが可能です。
ダイビング中のロストを防ぐには
ダイビングではバディシステム(二人一組)は遵守です。一人でダイビングを行ってはいけません。ダイビング中に一人になってしまうということは大変な事態です。
仲間を見失わないためにも、予防策を知っておくことが大事です。そして万が一見失ってしまったら…その対処法も覚えておきましょう。
ロストを防ごう!
ダイビング中はなにかに夢中になりがちです。あなたが写真ダイバーであったら、撮影に夢中になることでしょう。魚肉ソーセージでずっと餌をあげていて周りを見ないダイバーもいらっしゃいます。
写真を撮っていても、なにかに夢中でも必ず定期的に周りを確認しましょう。できれば1分ごとです。ガイドさんは沢山のダイバーを引き連れています。必ずついてきているものと思っています。
ガイドさんも定期的に振り向いて確認はしますが、視界が悪い海況であったら、1分移動して振り返ってもなにも見えない場合があります。必ず定期的に周りを見て、自分の状況を把握することです。
ガイドさんが待っていてくれたり、バディが待ってくれていたら、撮影をまだしていても問題ありません。
夢中になりすぎないこと、定期的にガイドがどこにいるかバディがどこにいるか把握することが必要です。
万が一見失ったら
もし万が一、自分の視界内に誰もいない場合…焦らずに対処しましょう。
基本的なルールとしては、まずはじめに1分間そこに停止し、あたりを見回します。それでも誰も見つからない場合はその場で浮上を開始します。
これがどこのショップでも同じの基本的ルールです。
もしくは、ダイビングを始める際にはぐれた場合の対処を言ってくれる場合もあります。その場合はそれに従いましょう。
浮上したら、水中には戻りません。相手もバディなどが見つからない場合は浮上してきますので水面で合流します。必ずBCジャケットに空気を入れて沈まないようにしておきます。
もしすぐにガイドやバディが浮上してこない場合は、ダイビング時間の45分を水面で待つか、船が近くにあれば泳いで船に戻る場合もあります。ただ、そうするとまだ水中に残っていると思われて探してしまう場合があるので、必ずダイビングを始める前にルールを決めるのがベストです。
まとめ
ダイビングをするにあたっての、注意事項や対処法、予防法などは理解できましたでしょうか?
今まで挙げたことすべてはダイバーにとっては必要な知識です。あって当然の知識です。知らなかったでは済まされません。
自分の体のためにも、また自分の命に関わることです。しっかりと正しい知識を身につけ、あらかじめ予防をしていき、それでも起こってしまったことについては正しく対処をしていってください。
ダイビングの世界は楽しいです。ぜひ水中世界を堪能してください。