スキューバダイビングの最初に取得する、オープンウォーターダイバー(OW)。
しかし、スキューバダイビングにはオープンウォーター以外にも、様々なステップアップライセンス(上級ライセンス)が存在します。オープンウォーターではなくステップアップした方がいいのか、どんな種類があり何が違うのか。
今回この記事では、ステップアップするべき理由と、ステップアップライセンス一覧とその内容についてご紹介します。
目次
1.オープンウォーターから抜け出そう!
スキューバダイビングのライセンスとして最初に取得するオープンウォーターダイバー。
もしかして、オープンウォーターだけで満足していませんか?
ダイビングが辛くてもうダイビングをするつもりはない、たまに南国へ行く時に1日だけできればいいという人以外は、オープンウォーターから脱出しましょう!
オープンウォーターは実は制限だらけ。ダイビングを始めると実感しますが、ポイントのほとんどが18メートル以上。最低限の本数制限やアドバンス以上必須というポイントが多いことを実感すると思います。
もちろんオープンウォーターだけでもダイビングを楽しむことはできますが、せっかくダイビングを始めたのですから、日本国内の、そして世界各国のダイビングポイントに足を運んでほしいと思っています。
そのためには、ステップアップライセンスを取得が前提条件です。
2.ステップアップライセンス一覧
まずはどんなライセンスがあるのか、そのライセンスでは何を学び習得できるのか、紹介します。
ライセンス(Cカード)発行団体によって名称が異なっている場合もあります。ここでは1番有名で発行数の多い団体、PADIの一例です。
2-1.アドバンスドオープンウォーター(AOW)
取得条件:24種類のアドベンチャー・ダイブの中から、5種類のアドベンチャー・ダイブを選択して講習(水中ナビゲーション、ディープダイブを含む)
オープンウォーターを取得したら、次にアドバンスドオープンウォーターを取得します。オープンウォーターは水深18mの制限付きですが、アドバンスを取得すると最大30mまで潜ることができます。
日本を含む世界中の海では18mでも十分楽しめますが、この制限が意外と厄介なのです。ポイントのほとんどは20mを越しますし、ダイナミックなダイビングとされるダイビングのほとんどは「アドバンス保持者必須」という制限がついています。
正直25m以降がダイビングの醍醐味と私は思います。ダイビングをより楽しみたいのであればアドバンスは必須です。
また、アドバンスは水中ナビゲーション、ディープダイブを含む5本の潜水が条件となっています。水中ナビでは水中で迷わないための訓練、ディープでは深場に行くことによる現象や知識を学びます。
その他、中性浮力やナイトダイビングなどスキル向上に役立つ項目があります。自分がもっと上達したい、学びたいアドベンチャーダイブを選択できるのできっと上達することでしょう。
補足:OWとは違い、テキストはありますがテストはありません。5本潜るだけで取得可能です。最短2日間で取得できます。
2-2.レスキューダイバー(RED)・EFR
取得条件:学科試験+海洋でのレスキュー課題10+シナリオ2。レスキュー課題とシナリオで少なくとも2日間以上の講習修了者。
あらゆるトラブルに対処できる知識を持ち、救命救急で人を助けるだけではなく自身のトラブルにも対応できるレスキューダイバー。それと同時にEFR(エマージェンシー・ファースト・レスポンス)の講習も必須です。
EFRはダイビングだけではなく、最新の医学的基盤に基づいた信頼性の高いプログラムで、世界中のさまざまな機関から承認されているライセンスです。
レスキューとEFRは基本的にダイビングショップで同時に取得可能です。また、ダイビングのライセンス(Cカード)に関しては有効期限・更新は必要ありませんが(DM以上のプロ資格除く)、EFRは2年ごとの更新が必要です(プロとして活躍する場合)。
アドバンスまではダイビングを楽しむためのライセンスでしたが、レスキューからは人のため、自分の命を守るために学ぶライセンスです。
実際にインストラクターを要救助者とみなし、海底から浮上速度を守りながら浮上、陸上まで器材を外しながら一定間隔での人工呼吸、最後は大人一人をかついで陸に上がり助けを呼び、人工呼吸と心臓マッサージをするといったことをやります。
私自身なんども浮上速度を守れずやり直し、水面で相手の器材を外しながらの人工呼吸はかなり難しいですし、女性が大人一人かついで陸に上がることは非常に大変でした。
正直このライセンスが1番難しいです。テストもありますし、一発合格でしたが合格点ギリギリでした。2日間座学と実習でヘトヘトになった記憶があります。
補足:座学・実習・テストあり。最短2日間で取得可能。
2-3.ダイブマスター(DM)
取得条件:知識開発、水中スキル、実践応用、評価
ダイブマスターからプロのランクになります。ガイドとしての活躍、インストラクターと共にお客様のアシスト、スキンダイビングやシュノーケルであればダイブマスター一人で実施することができます。
レスキューダイバーまでとは違い、プロとして働くためのスキルを身につけます。知識開発と呼ばれる学科の勉強量も半端ないボリュームですし、400m水泳、立ち泳ぎ、シュノーケル水泳、水中での器材交換などの泳力テストもあります。
レスキューまでは正直泳げない人でも取れるライセンスですが、ダイブマスターではそうはいきません。レスキューの内容もすべてできるものとしてテストされるのでプレッシャーです(笑)
オープンウォーター取得以来、水中でマスクを外したことない私でも、ダイブマスター講習ではできる前提で全てチェックされるので、自身のスキルチェックにも役立ちます(笑)
実践応用と呼ばれる課題では実際にオープンウォーターを取りに来たお客様を相手にインストラクターと一緒にお手伝いもします。
ここからは講習内容も学科もグンと量が増えるので、講習期間も最短1週間程度のところもありますが、2〜3ヶ月が平均です。趣味でダイビングをしている人でもダイブマスターを所持している人が多いです。プロとして活躍しなくても持っているだけで違うので是非、チャレンジしてみてください。
私もダイブマスターを所持していますが、申込時にDMと書くだけで「お、じゃぁ何も問題ないね!」と言われます。そのぐらいダイブマスターを持つということはプロであり、全てをそつなくこなすスキルがあるということです。
補足:座学・実習・テストあり。1週間〜最大2・3ヶ月程度で取得可能。
2-4.アシスタントインストラクター(AI)
取得条件:詳しい取得条件はこちら
アシスタントインストラクターとは、PADIインストラクター開発コース(IDC)の最初の一部です。
次に説明するインストラクターコース(IDC)は、アシスタントインストラクターコース(最低4日間)とオープンウォーター・スクーバ・インストラクター(OWSIプログラム、最低4日間)を連続して組み合わせたものがIDC(イントラ開発コース、7日間)となります。
なので、アシスタントインストラクターのランクだけではお客様のオープンウォーター認定はできませんが、お手伝いすることができます。
IDCコースの一部なので、一気に取得する時間がない人は、まずはアシスタントインストラクターだけ受けてみるのもいいかもしれません。
2-5.インストラクター
取得条件:詳しい取得条件はこちら
ダイビングのライセンスで最高峰のライセンスがインストラクターです。
しかし、インストラクターと言っても実は種類があります。
・オープンウォータースクーバインストラクター(OWSI)
・マスタースクーバダイバートレーナー(MSDT)
・IDCスタッフインストラクター(IDSI)
・マスターインストラクター(MI)
・コースディレクター(CD)
基本的には最初のオープンウォータースクーバインストラクターを目指します。その上で経験を積み、ステップアップすることができます。
最後のコースディレクターが全ての資格を持ち、アマチュアにダイビングのライセンスを発行するだけではなく、プロのインストラクターを育てることができるライセンスです。
趣味でインストラクターのライセンスを持っている人はほぼいませんが、オープンウォータースクーバインストラクター(OWSI)を目指してみるのもいいかもしれません。
2-6.各種スペシャリティー
取得条件:種類によって異なる。学科だけもあれば2本の実習の場合も。
最後に紹介するのが、スペシャリティーと呼ばれるライセンスです。といっても、スペシャリストを養成するコースではなく、あくまで特定の分野で、学んだ知識とスキルを学び、そのトレーニングと経験の範囲内で、監督者なしで、その特定のダイビングをすることができるようになります。
基礎スキルから水中フォトや魚の見分けなどの遊びに徹底したもの、ディープやドリフトなどの活動範囲を広げるものまであります。
アドバンスを取得する際に選択するアドベンチャー・ダイブから選びます。より深く学びたい、もっと上達させたいと思うものがあればスペシャリティーを取ってみるのも良いと思います。
ちなみに私はスペシャリティーは一切所持していません。
3.私的おすすめはレスキューダイバーまで取得
ステップアップライセンスの説明をしてきましたが、もちろん全て取得する必要はありません。
ダイビングを楽しみたい、ダイビングをするのは年に1〜2回までという人はアドバンスドオープンウォーターまで取得することをおすすめします。オープンウォーターだけでは深さの制限がある上に、ポイントによって潜れない場所が出てくるためです。
・与那国島の海底遺跡(深さ20m、流れやAOW以上という制限ショップがほとんど)
・伊豆の神子元(ドリフト、迅速さが求められる、最低30本以上)
海外
・パラオ(上級ポイントがほとんど、深さやドリフトが求められる)
・サイパンのバンザイクリフ(季節限定、潮の流れがきついため)
・セブのマラパスクア(ハンマーヘッドポイントは深さがあるためAOW以上)
いや、こういった場所には行かないし潜らない、そう思った人もいるでしょう。しかし、ダイビングを始めてハマっていくと、絶対にこのような世界にここだけしかないポイントに潜りたくなります。絶対に!(笑)
沖縄やグアムの南国ののんびりとしたポイントを潜るのであれば、オープンウォーターでも問題ありませんが、潜れるポイントの制限があまりに多いため、オープンウォーターのライセンスのままはおすすめできません。アドバンスを目指しましょう。
もっとダイビングへ行く、上達したい!という人はレスキューダイバーまで取得することをおすすめします。
3-1.レスキューをすすめる理由
私がレスキューまですすめる理由として、
・自分自身のスキルの上達
・緊急事態に対する対応
・セルフレスキューができる
・自分が楽しむだけでなく、周りを見渡し視野が広くなる
ことが挙げられます。
レスキューでもかなりの本数を潜りますし、人を助けることを前提としたライセンスなので、レスキューを通じてスキル向上も図れます。浮上速度を守ったまま人を抱き抱えての浮上はかなりのスキルが必要です。器材を水面で外しつつ、人工呼吸をしながら泳ぐことも経験できないことです。レスキューを通じて自身のスキルはかなり向上するはずです。
また、緊急事態に対する対応ができます。水面でパニックを起こした人の救助方法、人工呼吸や心臓マッサージ法、水中から陸までの移動方法などです。特にダイビング時以外でも役立つ知識とスキルです。プールや川で溺れた人を冷静に助けることもできます。日常生活でも役立ちます。
そして1番の理由が、セルフレスキューです。他人を助けるためではなく、自分自身をパニックやトラブルから避ける・対処することができます。水中で足をつった場合、パニックを起こした場合、器材トラブルでパニックを起こした場合、水中でガイドはぐれた場合などです。レスキューを通じて人を助ける方法だけではなく、あらゆる事態の対処法も学ぶのでとても役に立ちます。
そして、今まで自分が楽しむためのダイビングだけだったのが変わります。視野がとても広くなります。人の行動にも目を向けることができ、周りをしっかりと見渡せることでしょう。
周りを見渡せるようになれば、人にぶつかることも、サンゴを折ってしまうこともなくなるでしょう。後ろにいる人に気を使うこともできます。ダイビング中に困っている人がいれば手を差し伸べることもできます。
レスキューを通じてスキル向上、緊急事態の対応だけではなく、自信もつくはずです。
4.まとめ
今回はスキューバダイビングのステップアップライセンスの種類と内容、私がおすすめするライセンスとその理由を紹介しました。
ダイビングは場所や国によって様々な特色があり、本当に楽しいスポーツです。
オープンウォーターはあくまでダイビングの入り口。オープンウォーターのままではその楽しみもかなり制限されてしまいます。どうかアドバンス以上のライセンス、できればレスキューまでを目指して、楽しく安全で他の人にも安心を与えられるいいダイバーになってください!