The Big Apple ( = New York City) へ
さて、前回の記事で、国際業務を通じて「日本人の英語力を向上させたい」という想いが生まれたことをお話しました。
その後、社内で週一回、ボランティアの英会話勉強会を開催してみたところ、思いの外高い評価をいただきました。
私自身も楽しく「おもしろい…」 と手ごたえを感じるようになったのです。
でも「もっと効果的に教える方法を知りたい」と思うようになり、英語教授法(TESOL)の理論や方法論の勉強をしようと考えました。
調べてみると、ニューヨークにあるコロンビア大学ティーチャーズカレッジの評判が高いことが分かりました。
行ってみたかった海外の大学院、そしてニューヨーク…ちょうど外資系企業で働く夫もニューヨーク勤務を目指していたこともあり、そこから準備がスタート。
2007年夏、夫がニューヨークのプロジェクトの担当を任されたのを機に、私も5年間お世話になった会社に別れを告げて、ニューヨークへ転居しました。
ロックフェラーセンター展望台からセントラルパーク方面を望む
The City That Never Sleeps – 眠らない街
マンハッタンのミッドタウンにあるマンションは、タイムズスクエアとセントラルパークの中間に位置した賑やかな場所でした。
目の前は当時上演中のブロードウェーミュージカル「マンマミーア」の劇場。毎晩役者の出待ちファンの歓声があがり、まさに”The city that never sleeps”!
自宅から程近いタイムズスクエア、ネオンは24時間消えることがない
The Big Appleというニックネームで有名なニューヨーク市は、また移民が非常に多いことでも知られています。
通りを歩いていても、地下鉄に乗っていても様々な人種の人々が様々な風貌で、それぞれの言語、アクセントで話しています。
「周りと違う」ということがこれほど当り前に存在している社会があるでしょうか。
それと同時に「自分らしさ」「個性」が認められ、そんな中から新しいアイデアや才能が生まれている、そんな印象を強く持ちました。
芸術も一流の人が世界から集まってすごいものが生まれている街ニューヨーク。
月に1回はブロードウェーミュージカルを見て、ずっとやりたかったヴォーカルレッスンを黒人の女性シンガーから週1回受けることにしました。
街を歩いているだけでエネルギーが湧いてきて、本当に幸せでした。
ミッドタウンにあるブライアントパーク。天気がいいとオフィスからもランチに人が集まる
ニューヨーク生活にはタフさも必要
とはいえ、超快適&おもてなしの国から来た私たちにとっては、やはり生活の中でサービスレベルの違いにショックを受けることも多く…。
高級レストランに行って相応のお金を払えば、素晴らしいサービスが得られるのはNYでも当然ですが、スタバやコンビニでさえ丁寧な待遇を受ける日本のようなことはまずありえません。
特にイエローキャブの運転手には様々な人種、国籍の人がいて、英語も通じにくい人もいるので、ちょっとご用心を。
経験したいくつかをご紹介します。
₋ 中東系タクシー運転手が「I’m an entertainer!」と言って車内で突然カラオケ。自分の歌声に対してチップをせびってきた。
₋ アフリカ系タクシー運転手が「I have a gun. I’m not joking.」と自分は銃をもっている、と脅し、多めの請求額を求めてきた。現金はそんなにないのでカードでいいかというとATMがあるところでいったん降ろされて現金で払わされた。
₋ インド系女性タクシー運転手が目的地についてカードを出したら、「Your card is not working. Give me cash.(このカードは機能してない、現金で払え)」と言われ, 「That can’t be right.(そんなはずはない)」と言って何度かカードを試させるものの、カードが読めないとか。
とりあえず現金は渡さずに請求書にサインだけして降りる。後ほどクレジット会社から、このタクシー乗車への請求が5回分届く・・・。(すぐカード会社に電話して取り消してもらいましたけど~)
こんな嫌なことばかりが起こるわけでは決して無いです。
とっても親切なタクシー運転手も勿論います。
ただ、これからニューヨークのような世界の多民族が集まる大都市で暮らそうと思っていらっしゃる方には、予期せぬ状況に対応できる、ある程度の心の「タフさ」は必要かもしれませんね。
学んだ教訓
₋ 違う文化、価値観をもった人の集まる街で生きる時は、「日本のスタンダード」をいったん捨てる。
₋ 日本では起こりえないような状況がおこった時に泣き寝入りすることなく、相手にどうして欲しいかをロジックでしっかり伝える。
₋ その為には依頼や苦情といったコミュニケーションを円滑に行うための実践的な言語力を身につける。
コロンビア大学のTESOLへ出願
さて、そんな刺激的な街の生活にある程度慣れてきたころ、いよいよ大学院進学に向けて動き出しました。
大学院に進学となると最低2年間という期間、そしてそれ相応の学費が必要になります。
それだけの自己投資をすぐに決めてしまうことに多少ためらいがあった私は、同じくコロンビア大学ティーチャーズカレッジが主催する夏季集中の TESOL Certificate Program(TESOL資格取得コース)にまず参加してみることにしました。
これで手ごたえを感じればそのまま修士課程に進もうと考えたのです。とはいえアメリカの大学院、コースに入るのにはそれなりに準備が必要でした。
このコースに入るのに必要だったもの5つ:
2.成績証明書(卒業大学から英文で取り寄せ)
3.履歴書 (英文で作成)
4.エッセー(出願の理由を述べる小論文、レターサイズ2~3枚程度)
5.TOEFL iBTのスコア (105点以上)
最後のTOEFL iBTのスコア取得が課題でした。
以前受験したTOEFLはペーパーベースのテストで、スピーキングが含まれていなかったからです。
新しいTOEFL iBTでは、英語の4技能(聴く、読む、話す、書く)が4時間近くにわたって試されます。
しかも、マンハッタンの試験会場は劣悪で、受験者がぎゅうぎゅうに詰められた部屋で、リーディングを解いている人の隣でスピーキングをしている人もいる、というあり様でした。(しかも受験料が1回2万円近くかかる!)
1回目101点、2回目103点、3回目は思い切って場所を変えてお隣のニュージャージー州にある会場を選びました。受験者数が少なく、集中してテストに取り組めました。結果105点をクリアすることができました。ただし、交通の便が悪く、早朝の試験だったので、高いのは覚悟で、ハイヤーで向かったのですが、その甲斐がありました。
今思うと、このTOEFL iBTを受けるために勉強したプロセスが、英語力強化に非常に役に立ちました。
アカデミックな講義を聴き、その趣旨を1分以内に英語で要約して話すというような訓練は、それまでに受けたことがありませんでした。
自分のスピーキングを時間を計りながら何度も録音して練習しました。
語彙力、文法力に加えて、正確なリスニング力、スピードと精度が試されるスピーキング力、そして論理的な構成のライティング力、それらすべてを統合した形で問う試験としてはTOEFL iBTは非常に優れていると感じます。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、今後日本の入試をTOEFLに統一しよう、という案も出ていて、その難易度から反対意見もあるようですが、仕事で世界に通用する日本人を育てることを考えれば、入試をTOEFLに近い4技能を問うスタイルに変えていくことには大賛成です。
TOEFLの勉強をしに通ったニューヨークパブリック図書館
社会人から学生へ!
念願の教員養成の大学院、コロンビア大学ティーチャーズカレッジへの切符を手に入れ、2008年の初夏からTESOL Certificate Programがスタートしました。
コロンビア大学のメインキャンパス図書館をバックに。映画でもよく使われるスポット
キャンパスは、マンハッタンのアッパーウェストサイド120丁目に位置し、当時住んでいたミッドタウンの自宅からは、地下鉄で15分ほどの便利なところにありました。
マンハッタンにいることをふと忘れさせるような広々とした敷地に、様々な学部や大学院の校舎や施設が並んでいます。
ティーチャーズカレッジは125年以上の歴史を誇り、その校舎も映画に出てくるような味のある建物です。中には教室やセミナーホールに加えて4階建ての図書館、ブックストア、カフェ、ダイニング、キャリア相談センターなど様々な施設が入っています。
私たちは月曜日~木曜日にかけみっちりと英語教授法に関する講義を受け、金曜日には教育実習を行いました。
課題と教育実習のレッスン準備の為、夜遅くまでクラスメートと図書館に残ることも多かったです。
ちなみに図書館は深夜11pmまで、テスト期間中は1amまで開いていました。
125周年を迎えた歴史ある校舎(ティーチャーズカレッジ)
日本の英語教育は1世紀以上も遅れていた!?
最初のクラスは“Classroom Practices & Practicum”で、レッスン計画、アクティビティの作り方、教材の評価の仕方、クラスルームマネジメント、フィードバック方法などを理論と実践で学べるクラスでした。
「最新の理論に基づいた、効果的なレッスンの実施方法を知りたい!」
と意気込んで臨んだにもかかわらず、自分自身が日本の学校で受けた英語の指導方法 ”Grammar-Translation Method(=文法訳読法)”が、アメリカでは主に17~19世紀に主流の古典的指導方法であったことが分かりガックリ…。
今日でも(日本を含め)この指導法が使われている国がありますが、この指導法だけに偏ると、その場で話したり、書いたりするアウトプットの練習が欠如する為、「英語を読めても、話せない、書けない」学習者が増えてしまいます。(どこかで聞いたような現状ですね?)
このクラスを受講することでよりコミュニカティブな英語指導方法の知識を得、それぞれの指導法の利点欠点も理解できたことは大きな収穫でした。
また、それを教育実習の場(以下の写真:Community English Program)で試す機会を貰えたことで、徐々に英語教師になる自信が持てる様になりました。
教育実習したクラスの写真 (CEP=Community English Program)周辺地域に住むクラス様々な国籍の大人の生徒を対象とした英語プログラムを担当
多国籍、多様、多才なクラスメート
クラスメートにはアメリカ人、韓国人(←さすが英語学習大国!)が多く、その他、中南米、ヨーロッパ、日本からも少しずつ参加していました。
年齢層も幅広く、20代でこれから教師になることを目指す人もいれば、キャリアチェンジ、セカンドキャリアとして40、50代で参加している人もいました。
比較的同年代のクラスメートが多い日本の大学や大学院と比べ、文化や過去の経歴がまったく違うクラスメート達と一緒に学ぶ環境は、考え方の違いや表現の違いがとても面白く感じられました。
地元ニューヨーク出身のクラスメートはとてもディスカッションが上手で、私の多少「遠慮がち」な姿勢に対して突っ込んできました・・・
「Yoshiko, what do you mean by “I understand your point…”? Speak like New Yorkers!(吉子、「あなたの意図はわかる」ってどうゆうこと?ニューヨーカーみたいに(遠慮せず)話しなよ!)」
5年半の日系企業生活で「傾聴」の姿勢をたたき込まれていたためか、「自分の意見をしっかり伝える」スキルが不足していたのかもしれません。
しかも沈黙を恐れるアメリカの文化では、間を取ることなく、畳みかけるように話にカットインすることが多く、タイミングを掴んで自分の意見をすかさず表現するスピード力も大事なスキルです。
短時間に自分の意見を素早く伝えるようになる為の練習
ストップウォッチを使って1分間スピーチをする。テーマは好きな映画についてでも、将来の夢でも、今気になっていることでもなんでもOK。
1分間、できるだけ止まらずに話し続ける練習を毎日やり、その都度録音。聞いてみて、文章が完全に崩壊して意味をなさない場合はやり直し。
この練習を継続することで、いいよどみが減る効果が期待できますよ。
英語力にある程度自信がある人は、今社会で起こっている事象に対する意見など、少し難しめのトピックにチャレンジしてみてください!
クラスメートとキャンパス近くのバーにて
社会人経験を経て学生に戻る利点
日本では大学の学部を卒業後そのまま大学院に進学する人がとても多いですが、アメリカの場合はいったん社会に出てある程度経験を積み、そのうえで必要な知識や技能を深めるために大学院に進学するケースがとても多いです。
私自身5年半、社会人経験を積んだ上で進学したことで、大きなメリットを感じました。
何を学びたいか、なぜ学びたいか、学習目的が明確
経済的に親頼みだった学部時代と違い、投資対効果を真剣に考えて臨む(コミットメント!)
仕事の経験が、効率的な学習プロセスに役立つ
*忙しい職場で優先順位をつけながら業務をこなしてきた業務プロセスや、ITリテラシー(ドキュメント作成力)、コミュニケーション力などが、大学院の課題やグループワーク、レッスンの準備などを進める際に役に立つ
多様な文化と経歴を持つ仲間と学んだプログラムを通じて改めて感じたこと。
それは「人は何歳になってからでも新しいことを始められる」ということです。
だから、初めに働いた会社で、「本当にやりたいこと」が他に見つかったら、そこから新しいやりたいことにチャレンジすることは大いにアリだと思います。
前の仕事が無駄になるわけではなく、その経験が次のステージでもきっと生きてくると思います。そして新しい夢を実現するために学生に戻って学ぶことが有効なら、それにもトライしてください。
It’s never too late to make a brand new start!
TESOL修士課程
前回の投稿の続きとなりますが、コロンビア大学の大学院のNYキャンパスで無事TESOL Certificate Programを修了させた私は、英語教育への自分の情熱を確信、そのまま修士課程に進むことを決めました。
夫の仕事の関係でいったん日本に戻ることになったため、残りのプログラムはコロンビア大学の東京キャンパスに移って継続することにしました。
有難いことに、当時東京キャンパスでもNYキャンパスとほぼ同じプログラムが提供されていました。土日にクラスがあり、働きながら通える為、クラスメートはみな現役バリバリの英語教師達(日本人&外国人)という点も魅力的でした。
ここで出会った素晴らしいクラスメート達は今でも大きな財産です。
そして、そのうちの一人とは、のちにビジネス英語研修の会社を一緒に立ち上げることになります。
→ この写真にも一緒に写っていますがどの人か分かるかな?ー 答えは https://q-leap.co.jp/aboutus/
コロンビア大学のNYキャンパスから来たSecond Language Assessment講座の教授&クラスメートと
日本人向けの英語指導法にフォーカスした授業
NYキャンパスではスペイン語や中国語など、様々な言語を母国語にもつ学習者を対象にした英語指導(ESL=English as a Second Language)であるのに対し、東京キャンパスは「いかに日本人学習者が外国語である英語を上達させるか」にフォーカスした内容(EFL=English as a Foreign Language)だった為、発音や文法、語用論など、日本語と英語のそれぞれの特徴や違いを捉えながら教える、実践的なスキルを身につけることができました。
特にその後の英語指導にも役立ったのが、Phonetics & Phonology(音声学&音韻学)の授業です。
日本人はなぜ英語の発音が苦手?
私を含め、多くの日本人が学校の英語教育で発音をしっかり教わった記憶があまり無いのではないでしょうか?
私自身、発音記号は「何となく分かる」けど、実際の音は「ネイティブを真似る」くらいしかやったことがありませんでした。
この音声・音韻学のクラスは、理論に基づき英語の音やリズムのメカニズムが日本語のそれとどう違っているかを理解させてくれるもので、非常に役立つ内容でした。
日本人が英語発音やリズムで苦労する理由
英語にはそもそも日本語に無い音がある!
幼少期から青年期にかけて、一度も耳にしたことが無い音は、聞き分けるのが困難になるという研究があります。(Critical Period Hypothesis)
例えば、私は学生の頃、[m][n][ ŋ]はすべて日本語の「ん」にしか聞こえませんでした。また、think [θíŋk](考える)とsink [síŋk](沈む)を、全く同じ音で発音していました。
これはまだ脳が柔らかく音の違いに反応できる幼少期に、それぞれを「違う音として認識し、聞く、話す」機会がなかったことに起因しています。
ですから、最も効果的な発音習得方法は、幼少期から英語のネイティブ発音に触れさせることなのです。
残念ながら私を含めそのような機会を与えられないまま大人になった多くの英語学習者は、別の方法をとるしかありません。
それは、理論で英語と日本語の音やリズムの違いをある程度理解し、意識して発音練習に取り組む方法です。これを実践し続けることである程度ネイティブに近い発音ができる様になります。
音節の違いーすべてに母音がつく日本語vs.子音だけで終わる英語
Mc. Donald’s (マクドナルド) Spright (スプライト)を、英語らしく読んでみてください。何音節で読めますか?
Spright (1音節) → 日本式発音Supuraito (5音節)
日本語はどんな単語にも必ず母音(あいうえお)が付いているのに対し、英語は子音だけで終わることができます。そのため、日本人は、英語にも不要な母音を付けて音節を増やしてしまう傾向があります。
拍(リズム)の取り方の違い
まず試しに下記の3文を音読してみてください。
(ボブはそのカフェに行った)
Bob has been to the café.
(ボブはそのカフェに行ったことがある)
Bob might have been to the café.
(ボブはそのカフェに行ったことがあるかもしれない。)
3文ともほぼ同じ音の長さ読めたら上級者です!!
日本語は音節単位で拍をとり、音節が増えれば発音上の長さもそれに比例して長くなり、メリハリが少ない一方、英語は、リズムの強勢で拍をとるので、音節が増えてもメリハリあるリズムが保たれます。
文中で下線が引かれた単語は意味を持つ「Content Word (内容語)」と呼ばれ、強勢(ストレス)がおかれますが、それ以外の単語(might, has, the, to等)は「Function Word (機能語)」と呼ばれ、非常に軽く読まれます。
従って、きっちり強勢を付けて読む同じ「内容語」が同じ数だけ含まれている以上、上記3つの文の発音上の長さはほとんど変わらないのです。
これをすべての単語を同じ強さと長さでだらっと読んでしまったら、日本語っぽいアクセントの英語になってしまいます…
聴き取る時には、軽く発音される機能語にも耳を傾けて正確に意味を捉える必要がありますが、自分が英語を話すときは、内容語に強勢を置いて、リズムよく読むようにしてみてください。
1冊でも発音を扱った教材を持っておくと便利ですよ。
おすすめ教材:
日本人学習者向け:耳慣らし英語ヒアリング2週間集中ゼミ
教師向け:Teaching Pronunciation
英文をすべて発音記号で表記する課題。英文そのものを見ずに、発音記号だけを正しく読んでいくと、驚くほどきれいに発音できる。→PDFバージョンはこちら
コロンビア大学の卒業式。Jay-Z & AliciaのEmpire Stateでライブさながらのフィナーレ
2011年春、無事に修士論文が受理されてコロンビア大学のTESOL修士課程を修了、5月にはNYキャンパスで卒業式に参加することになりました。
ちなみに私は修士論文のテーマにComputer Assisted Language Learning(コンピューターを活用した言語学習)の分野を選びました。
以前は余り考えられなかった、ウェブ上のコミュニティやヴァーチャルな空間で、国境を越えて様々な人達と交流することの英語学習への効果について論じました。
テクノロジーが与える教育環境への影響は非常に大きく、それが、現在の語学学習指導や、仕事にもいろいろな形で直結し、生かされていると感じています。
卒業式は2日間にわたり、1日目は各学部や大学院の個別の式、2日目は全学部合同のセレモニーでした。
私の所属した教育大学院はキャンパスそばの歴史ある教会で行われ、一人一人卒業生の名前が呼ばれていきました。₍私の苗字Aibaはアルファベット順でもトップ。あっという言う間に呼ばれてしまって、その後全員の名前が読み終えられるまでが長かった~(*_*;)。
2日目は、コロンビア大全体のセレモニーでした。
3万人を超える人がキャンパス中央の広場に集合。日本の厳粛な雰囲気の卒業式とは違い、各学部長が「自学部生を称賛しまくる」スピーチもユーモアに富み、笑いの絶えない式でした。
アメリカの大学の卒業式ではよく、著名人がゲストスピーカーとして呼ばれます。
この年は、同大出身のオバマ大統領が来るらしい(!)と聞いてワクワクしていたら、全体のセレモニーではなく、ある学部の式にのみ参加ということが判明してがっかり…。
セキュリティ体制等を考えると屋外で行う全体セレモニーにオバマが参加するのは確かにちょっと無理があったのかもしれないですね。
それでも式は大盛り上がり!最後にはFrank Sinatraの“New York、New York”、そしてJay-Z&Alicia Keysの”Empire State of Mind”が流れ、会場はライブ会場さながら。とても思い出に残る式になりました。
その様子はこちら→ https://www.youtube.com/watch?v=4m4BdCUNC7A
一緒に卒業したクラスメートと
アメリカの大学院を出てよかったこと
これから海外で留学や就職を考えている方もいらっしゃると思いますので、私自身がアメリカの大学院を出てよかったと思う点を3つお伝えします。
のちに米国企業で働こうとした際、採用プロセスで有利になった
外国人でもアメリカの高等教育を受けたということで採用側が安心してくれる。英語力についてもある程度信用を持たれる。また就労ビザを会社に取ってもらう際有利*
国際的な人脈、ネットワークが広がった
アメリカの大学や大学院にはいろいろな国からの生徒が集まるので、国境を越えて貴重なネットワークが広がる。
英語力が向上した
大学院の授業、ディスカッション、課題、論文などをこなす過程で英語力が磨かれる。
企業で教える英語スピーキングの講師に
さて、多少時間が前後しますが、TESOL修士プログラム在学中から既に、語学教育や教材開発で知られている㈱アルクの講師として、企業や大学向けに英語スピーキングを教える仕事をさせて頂いていました。
業界は、商社、製薬会社、自動車メーカー、石油ガス開発、大学法人など多岐に及びました。合計20社を超える企業研修を担当する中で気づいたこと、感じたことを少しシェアさせて頂きます。
英語のスピーキング力が伸びる学習者の特長
明確な目標がある
半年でTOEIC800点を超える、3か月後に海外駐在など、明確な目標があって学習に取り組む人は効果が出やすいです。
社交的である
そもそも英語は、文脈から意図をくみ取ってコミュニケーションが成り立つ日本語文化と違い、「文脈に頼らず言葉に頼る」特徴があります。
ある研究によると、アメリカ人の成人の1日の平均発話量は、日本の成人が日本語でおこなう言語活動の約2倍あると言われています。
という訳で、もともと社交的でおしゃべり好きな人は、英語学習に向いていると言えます
継続的に学習する
継続は力なり!特に大人になってから語学を学習しようとする人は、忙しい生活の中でも工夫して、隙間時間に英語でニュースを読んだり、単語帳を見たり、スピーキングの練習をしたりする努力が必要です。
目標に対して効果的な学習法を日々積み重ねる、それが結果につながっていきます
こうして英語講師をしていて、一番励みになったことは、実際に教えたクラスの生徒さんが、その後国際事業に携わるようになったり、海外駐在になってグローバルに活躍している報告を受けた時です。
アメリカで研修、駐在になった生徒さんとは、のちにニューヨークで再会する機会もありました。
英語はたかが道具、されど重要な道具。
PCのスキルと一緒です。使えなければ仕事になりません。そこをサポートすることで、日本人のグローバル環境でのキャリアアップを少しでもお手伝いができることは、とても幸せで遣り甲斐を感じることです。
某企業の若手研修最終日。元気とやる気に溢れる受講生の方々と。
一方で、「ビジネスの最前線にいる人を対象に英語を教えるのに、もう少し自分自身にも、国際ビジネスの経験が必要かもしれない」と考え始めたのもこの時期です。
さて次回はこの想いを行動に移すべく、ニューヨークでビジネススキルを学べる職場探しを始めます。
(2/3) ニューヨークへ。英語教授法を学ぶべく、大学院進学を目指す(この記事)
(3/3) 再びニューヨークへ。アメリカで就職活動Calvin Klein入社