少子化が進むなか、多くの私立学校は「生徒募集」を深刻な課題として掲げており、学校間の生徒獲得競争は激しさの一途をたどっています。
そんななか、近年注目されているのが「特色あるプログラムを用意して他校との差別化を図る」対策です。
数あるプログラムのなかでも、集客がうまくいっている多くの私立学校が力を入れて取り組んでいるのが「英語教育」です。
そこで今回は海外で語学学校を展開し、かつ国内で唯一「グローバル英語教育プログラム」を60校以上の学校に提供している、株式会社ジージー社長の平田利行氏に、「学校の差別化」を図る方法について、うかがってみました。
シリーズ第三弾です!
オンラインを活用した「グローバル体験」が差別化のキーワード!
*以下敬称略
斉藤 では、ここからは平田さんが学校と提携して現在進めていることについて、具体的に聞かせてください。現在は何校ほどと提携されてますか?
平田 60校です。
斉藤 そんなに……。かなり多いですね。
平田 そうですね、多い方だと思います。実績としては自治体ブロックも入ってきています。
斉藤 そうしたなかで、平田さんが首尾一貫して追いかけているキーワードが「グローバル」ということでしょうか?
平田 やはり今、日本はどんどん少子高齢化が進んでいるため、国内に頼り切ったまま経済を回していくことは、かなり厳しいと考えると、よりグローバルであるべきだと思うんですよ。
日本が豊かであり続けるためにも、「グローバル」というキーワードは外せません。では、グローバル化のために私ができることは何なのかと考えたとき、学校では学べないカテゴリーを受け持つべきだと思い至ったわけです。
斉藤 学校は受験と単位制に縛られているため、できることが限られてしまう。だからそこに風穴を開けたいと思ったわけですね。そういうことは、平田さんが学校を通していろいろな人たちと会ってきて、わかってきたことなのでしょうか?
平田 そうですね。話を聞くなかで、次第にわかってきました。それと、海外の学校を視察して回ったことで、日本との比較ができたことも大きいですね。比較することで、こうなればよいになぁという理想的なモデルが見えてきたんです。
斉藤 それが、先ほどから指摘されている、「いっそのこと受験がなくなれば全てが解決する」という論に繋がるわけですね。
平田 そうそう。そうなれば良いとは思っているけれど、私たちがワーワー騒ごうが、大きな波が押し寄せようが、国が重い腰を上げなければ、どうにもなりません。もちろん、ここ1・2年で変わるわけがないし、すごく長い時間をかけて変わっていくべきものだと思います。
だからこそ今、現実的にできることとして、学校では学ぶことのできない「グローバル体験」を、私たちが担って提供しようと思ったわけです。
斉藤 なるほど。普通はオンライン英会話を提供して終わりになるところを、もう一歩踏み込んで「グローバル体験」という付加価値を付けたわけですね。
平田 単にオンライン英会話を提供しているところと、オンライン英会話と国際交流を提供しているところとの満足度を比べたら、全然違うと思うんですよ。
私たちは、国際交流等のグローバル体験学習を含めたパッケージを提供したいと思っています。そのパッケージのなかにオンライン英会話が含まれている、ということです。
斉藤 平田さんが開拓した、オンラインで繋がることができ、なおかつ国際交流ができる国は、フィリピン以外ではどこがありますか?
平田 デンマーク・アイルランド・UK、これは交流とインターンとかも含めてね。あとは、マルタ・セルビア・インド・タンザニアなどです。もちろんフィリピン・タイ・ロシア・ハワイ・オーストラリアも大丈夫です。
斉藤 学校側がそういった外国人との交流をグローバル教育の一環として望んだ場合には、さまざまなプロデュースができるわけですね。
平田 もちろんです。国際交流の準備段階から提案できます。たとえば、すでに提供しているサービスとして、探究学習というプログラムがあります。探究学習には正しい答えが、そもそもありません。子供たちが自分で考え、正答のない答えを出していくんです。
たとえば国際交流として、向こうに日本の文化を教えるプレゼンテーションをやろうとなったとき、その準備過程としてオンライン英会話を使ってディスカッションしたり、プレゼンの練習を繰り返すことができます。
斉藤 具体的にひとつの例をあげていただけますか?
平田 たとえば先日、高校生がアイルランドとの国際交流で行ったのは、アイルランドの旅程表を最終的にプレゼンテーションすることです。
斉藤 それは、自分たちがアイルランドに旅行したときに、どこを観光したいのかを含めてプレゼンするみたいな……。
平田 そうそう。なにかしらのテーマを決めて、アイルランドにはこういうものがあるよと紹介するわけです。それをもとに、みんなで討論していきます。
それで「でも僕はもっと体験型のものを入れたい」という意見が出ると、体験ならばこういうものがあるよ、とアイルランド側が教えてくれるんです。それをまたみんなで検討して、プライスはどのくらいなのか、じゃこれでいいかな、という感じで煮詰めていきます。そうして最終的に旅行プレゼンを行うわけです。それを全部英語で行います。
斉藤 すべて英語でやり取りするなんて難しくないですか?
平田 いや、普段からオンライン英会話を通して英会話に慣れ親しんでいますから、それほど難しくはないですよ。やはり一番大事なのは、自分たちで考えることです。そうやって試行錯誤しながら自分たちで創り、それを発表することです。
斉藤 そこまで行くと、職業体験やインターンシップに近いですね。
平田 そうです。オンライン英会話だけではなく、そこにプラスαとして国際交流もできる、さらに職業体験もできる、ということです。
海外に行けなくても国際交流できる機会を、私たちはどんどんつくって提供したいと考えています。舞台はいくらでも用意できるから、どんどん参加していただきたいですね。
斉藤 平田さんは以前からインターシップに積極的に取り組んでいますから、その経験が活きているのでしょうね。ちなみにオンラインでできる大学生向けのインターンシップには、どういったものがあるのでしょうか?
平田 たとえば、インドのIT会社のインターシップをオンラインで行うとします。そこで「あるアプリを商品としてもっており、今後、このアプリに付随する新たなアプリを作りたい」という課題が出たとします。
そして実際に、「こういうサービスのアプリケーションを作りたいから、世界各国にある似たようなサービスのアプリを探してもってきてください」との指示が下されます。そこで日本の大学生が一生懸命に調べるわけです。
次に、調べてきたものを発表するプレゼンテーションをやります。すると、次の段階として、それをローカライズしてインドでやっていけるかどうかを分析する課題が新たに出されます。
企業や事業の現状を把握するのに効果的なフレームワークとして知られるSWOT分析を見せられ、自分たちの調査してきたアプリがインド社会にマッチングするのかどうか、どのようにローカライズさせなければいけないのか、入念な解析が求められます。それを何度か繰り返して、最終的にひとつのアプリの開発が決定されます。
斉藤 レベルが高いですね!オンラインとはいえ、これだけ体験できれば現地でインターンシップをするより、高い成果を得られるかもしれませんね。
平田 しかも、今あげたのは、ほんの一例に過ぎません。実際には、こういったタスクをいくつも経験することになります。ですから極論で言ってしまえば、普通のインターンシップで海外に行って、ここまでのことが経験できるかといえば、できないほうが圧倒的に多いわけです。
リアルのインターシップよりも、もっと深いところに入り、本当に商品化される商品の提案ができるオンライン・インターシップは、ある意味、すごいことだと思います。
斉藤 たしかにすごいですね。でもオンラインだとインターンシップの修了証までは手にできませんよね?
平田 いえ、そんなことはありません。IDEAが今後再開したときには、夜間にオンラインで参加することで、たとえばタンザニアやインド、アイルランドのインターンシップの修了証も取れるようになります。
斉藤 それはすごいですね! ちょっと想像できないのですが、どんなインターンシップを体験できるのでしょうか?
平田 たとえばタンザニアの場合、農業にしても、まだクワで一生懸命やっていたりするわけですよ。そこで、日本の高度な農業技術をタンザニアに提案できます。
そのために足りないものは何かと、オンラインでディスカッションを行います。その結果、資金が足りないことがわかれば、お金をどうやって集めるのか、という話まで交わせます。タンザニアの現状を学びながら、有意義なインターンシップを体験できる、ということです。
斉藤 なるほど、面白そうですね。でもディスカッションにしてもプレゼンテーションにしても、英会話がほとんどできない素人同然の人ではついていけませんから、ある程度英会話力を鍛えている人が参加する感じでしょうか?
平田 優れた英会話力をもっていた方が、充実したインターシップを体験できることは間違いありません。でも、私はCEFR(語学のコミュニケーションスキルを示す国際標準規格)のA2レベルまで到達したならば、どんどん挑戦してもらいたいと思います。そこで挫折を経験することも、成長へ繋がる貴重な一歩といえるはずです。
斉藤 A2レベルと言えば、まだ英会話初級者ですが、それでも参加できるレベルにあるというわけですね。逆に受け入れる側の海外の企業は、それでも大丈夫なのでしょうか?
平田 向こうは全然OKです。もう英語力ゼロからでもOKと言っていますので!
斉藤 え、さすがにそれは冗談ですよね?
平田 本当に「大丈夫!」と言っています。ただ、後になって「あの子の英語は本当に酷いね」と言ってくる担当者もいますが(笑)、英語力の程度にはこだわらないという基本スタンスを守ってくれています。
斉藤 だから気負うことなく、気楽に臨めばよいのだと!
平田 そうそう。結局、私たちにしてもプレゼンをするときに、別に100%完璧な英語を話すわけではありませんしね。
斉藤 完璧を目指すよりも、コミュニケーションを図ること自体が大事だということですね?
平田 そうなんですよ。まずはチャレンジしてほしいですね。学んできたことを発揮する場所でもありますし、どこまで自分ができているのかという物差しとしても役立ちます。
コロナによって従来では考えられなかった多くのものが、オンラインへと移行しました。私たちもそうした流れに乗って、インターンシップなどのグローバル体験をオンラインで提供できるようにサービスを拡充してきました。
幸いなことに、こうしたサービスに需要があることがわかりましたので、オンライン英会話を100席増やし、総勢250名ほどの英語講師を採用することにしました。
斉藤 拡大していますね!格安のオンライン英会話だとバイトばかりで、教師の質に不安がありますが、株式会社ジージーでは社員雇用で研修をしっかりしてくれるので、その点でも安心ですね。今後はさらに多くの学校との提携が可能になるわけですね?
平田 そうですね、でも、それだけ拡充しても、まだ足りなくなるかもしれません。ですので、オンライン英会話プラスインターンとか職業体験ができるようなプログラムを生徒たちに提供してみたいという学校は、早めに相談を寄せてほしいですね。
もうピンポンダッシュみたいなノリで構いませんので、気軽にノックしてください!
斉藤 ピンポンダッシュはさすがに……(苦笑)。
平田 いえ、いろいろな先生と話せることが私たちは嬉しいので、ほんとに構いません。学校の抱える課題を聞かせていただき、「学校の目指していることを実現できるように、私たちがどんなものを提供できるのか」と考えるのは、もうそれだけで楽しいことなんです。
ですからほんとにラフな気持ちで相談していただけると、うれしいですね。
斉藤 学校としてもグローバル教育を柱として生徒募集に貢献できますから大いにメリットがありそうですね。
平田 そうそう。何といったらよいのか表現が難しいのですが、私たちが提供できるサービスはバイキングみたいなものなんです。
グローバル教育を実現するための多くのパッケージが並ぶなか、どれを取るのかは学校側の自由です。自分の学校というお皿の上に、どのサービスをどう盛り付けていくのか、それを私たちと一緒に相談することで、ともに理想的なグローバル教育を実現しよう、というわけです。
斉藤 なるほど。今回のお話は、生徒の集客で悩んでいる学校にとっては、一つの解決策になるのではないでしょうか。平田さん、本日はありがとうございました。
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