皆さま、はじめまして。Hitorikechaと申します。
兵庫県で生まれ30年以上日本で育った「純ジャパ」で、日本での勉強のみで英検一級を合格した会社員です。
その後イギリスにて3年間の駐在生活を送り、現在は日本に戻ってアメリカ・イギリス・中国・シンガポールと、さまざまな地域のメンバーと日常的に英語を使って連携しながら仕事をしております。
今回ご縁をいただき、私の経験をエッセイ記事として掲載させていただくことになりました。
それこそ学生の頃は、英検一級など夢のまた夢だと思っており、合格すればネイティブと対応に渡り合うことのできるグローバル人材になれると思っていたクチですが、実際に自分が合格、そして海外生活を行う中で見えてきた現実から、
果たして「英検一級を取ることで人生がどれだけ変わるのか?」
僭越ながら持論を述べさせていただければと思います。
英検一級を取得するまでの学習歴
今でこそ英語ミーティングや海外生活に抵抗なく、また日常的にネイティブの友人や同僚と話す生活を送っていますが、ここに至るまでの英語学習は挫折の連続でした。
今でも覚えているのですが、中学校に入学し、最初の中間試験が終わったあとのことです。
英語の授業で生徒ひとりひとりに成績が配られたのですが、当時の先生が上機嫌で「今年の学年はとても優秀だな。50点台が学年で2人しか居なかったぞ」とコメント。
クラス全体がなんとも言えない優越感に包まれている中、私の名前が呼ばれ成績が渡されたのですが、なんと結果は52点。特に最低点が言われていないわけですが、恐らく当時の学年最下位だったのではと思います。
ここから焦って相当時間をかけて英語学習に取り込んでいったものの、けっきょく有効な勉強法は分からず、やみくもに単語帳を暗記したり、大量の長文読解をこなしたりという力技ばかり。
勉強自体にかけている時間が長かったこともあって、最終的には平均以上の点を取れるようにはなったのですが、ひたすら問題演習の数をこなして培った勘で解いていた分も多く、一定以上の偏差値まで上げることはできませんでした。
そこから大学に入り、夏休みに授業の一環でフィリピンのスラムにフィールドワークに行くことになりました。同じ大学の学生同士でいくわけなので、帰国子女などを除けば別に英語力に差はないだろうと思って参加したわけですが、これが大間違い。
序盤こそ、英語を話すのに緊張をしている様子だったメンバーですが、1週間もすると、ほとんどの人がのびのびと英語を話すようになっていきます。
いっぽう私はいつまでも英語が出てくることがないので、滞在中の劣等感は募るばかりでした。一体どうして皆がこんなにすぐ英語を話せるようになったのか、その時はわかりませんでした。
帰国後、自分自身を奮い立たせるために目標をたてようと思った私は、わかりやすく「英検一級」をゴールに定めました。
ペラペラと話す姿に憧れがあったので、まずはスピーキングからやってみようと思い、インターネットで検索して一番上の方にでてきた「テソーラスハウス」という塾に入ることにしました。
しかしながら、当時は週一で通ってスピーキングをするだけだったので、自分の英語力が伸びている実感があまり持てませんでした。また、1次試験の過去問を見ても合格できる画が浮かばず、一旦はここで英検の勉強を挫折することになります。
社会人になって学習再開、そして合格
そんなわけで、いまいち英語の運用能力が停滞していたまま社会人になり何年か過ごしていた私ですが、ここでブレイクスルーとなる出来事があります。当時の先輩が「新宿のNCC綜合英語学院というのが英語の習得にめちゃくちゃ効果あるらしい」という情報を聞きつけてきたのです。
さっそくホームページを検索してみたのですが、このページのデザインがなかなか奇抜(今も変わらないと思います)で、良い噂をきいていないのであれば絶対に入らないレベル。一抹の不安はあったものの、入塾を決めました。
結果は大成功。
この学校で学んだ英語習得理論が、自分のいままでの停滞を一気にぶち破るカギとなりました。
この学校の授業の大半は「瞬間英作文」というもので占められています。
授業では、テキストに書かれている日本語をとにかく英語にする。その後、教師が具体的にどういう文法を使うことで瞬間的に英語にできるのかを解説してくれるというもので、いままでなんとなくでしか把握できていなかった色々な文法を、正確に、かつ瞬間的に使えるようにする訓練を行うことで、どんどん英語が自然に口に出せるようになってきました。
ここで初めて分かったのは、「文法が分かる」というのは、このレベルまでいかないとならないのだということ。
また、ここで初めて、大学の同級生がすぐにスピーキングができるようになった理由も分かりました。彼らは受験勉強の中で文法を正確におさえていたので、それがいざフィリピンの実地で使うときに効果を発揮していただけだったのですね。
この学校の勉強を通して会社の英語ミーティングもそれなりにこなせるようになってくると、かつて挫折した英検一級にもう一度チャレンジしたいという欲求が湧いてきました。
さっそく過去問を購入し、各パートを眺めると、リーディング・ライティングに関しては瞬間英作文を通して身に着けた文法力でどうにかなりそうだと思ったのですが、最初の語彙問題がものすごく難しい。
これは徹底的に単語を見直すしかないと考え、書店に行っていくつか単語帳を見ている中で、旺文社のでる順パス単シリーズが、過去問に出ている設問をことごとくカバーしていることに気が付きました。
もはや日本英語検定協会の公式冊子なのではというレベルなのでこちらを選び、4-5周まわすと、見違えるように問題が解けるようになりました。英検一級の鬼門は語彙問題なので、これさえこなせば合格率はぐっとあがると思います。
これで一次試験に関する不安点は解消されたので、数年のブランクを経て「テソーラスハウス」に再入会。
前回と異なり、自分が話すときには文法知識を背景にすることができたので、再度いただいた模擬問題集を取り組んだ時の効果をはっきり実感できるようになっていました。
いうなれば前回は、何を改善すればよいのか分からないまま、PDCAサイクルを回していたような状態だったので、成長が無かったのだということも分かりました。
スピーキングを練習する方は、自分の言っている内容を全て文法的に説明できる状態にすることをゴールにすると効果的かと思います。
先生に新しい言い方を教わったときも、それを丸暗記にするのではなく、文法的な解釈を加えたうえで覚えておくと、次回以降、自分の言葉として自在に使えるようになるのでオススメです。
これらの学習を通して満を持して英検一級を受験。緊張もあり、模擬試験ほどスラスラ回答できたわけではありませんが、合格最低点から比べると、かなり余裕を持った点数で合格することができました。
そしてイギリスへ…英検一級で通用したこと・しなかったこと
英検一級を取得して半年ほどしたある日、会社の上司に呼ばれました。何のことかと思っていると、「イギリス子会社で駐在員を探している。東京のメンバーをみたときに、あなたが一番マッチしていそうだから赴任してほしいと思っているのだが、どう思うか」という相談でした。
もちろん、学生の頃からの夢ですから二つ返事で承認です。東京で働いている分には、自分は英語ができるという自負もありましたので、来るべき赴任の日にワクワクしながら過ごしていました。
ところが、赴任生活はそう簡単には進みません。
イギリス生活がはじまり、最初の週末。日本の荷物は船便で送ってしまっていたため、替えの靴を買いに行こうと、地元のモールに入っている靴屋に向かいました。
店の入り口に居た大学生くらいの店員に、欲しい靴とそのサイズを尋ねたのですが、言っていることが全く分からない。
おそらくポイントカードか何かのシステムの説明をしているのだと思いますが、なにしろ何の単語を言っているかがほとんど拾えないので、相手が何を言っているかは無視して、一言、”I want this” だけ言って靴を購入、なんとか自宅に戻りました。
これはショックでした。あれだけの時間をかけて英語を勉強して、資格試験でいうと最高峰である英検一級まで取ったのに、日常会話のようなシーンでさえまるで聞き取れず、最後は逃げるようにして帰る羽目になったのですから。
ちょうどこのころ、家具の購入や車の運転など(日本とルールが違うのでこれも緊張)、新しくやらないとならないことが重なっていたこともあって、精神的にはなかなか厳しいものがありました。
この時の苦境を乗り越えるのに役立ったのが、YouTubeの英語コンテンツです。
現地の人の英語があまりにも自分の知っているBritish Englishと違うので、イギリスのアクセントに関する動画をいくつか見たところ、BBCのような綺麗な発音はRP(Received Pronunciation)と言い、イギリスの全人口でいうと2%ほどの人しか話していないということを知りました。
代わりに当地で主流だったのが、Cockneyというアクセントで、これはロンドンを中心にイギリス南部の幅広い地域で話されているのですが、YouTubeの動画で、この訛りの特徴的な音変化をまとめたものなどを見て、まったく分からなかった地元の英語が、ある特定のルールで違う発音がされていたということが分かりました。
本当に笑ってしまうくらい違うので、皆さんには是非一度、動画を見ていただければと思います。
タイトル:ロンドン人が COCKNEY (ロンドン訛り) の話し方を説明
そこからはとにかく慣れで、買い物・MTGなど、あらゆる機会でシャワーのように彼らの発音を聞いていると、少しずつ、どういう単語が発音されているかが理解できるようになってきました。
そこで気づいたのは、彼らの英語は、発音こそ日本で学んだものとまったく違いますが、使っている文法は自分が英検を取るまでに勉強してきたものでほとんど対応ができるものだったということです。
英検一級でベースとなっている文法と語彙を作ってきたので、音にさえ慣れてしまえれば、そこから相手と普通に会話できるようになるまではすぐでした。
個人的な実感でいうと、3か月〜半年ほど同じ音に触れる生活をしておけば大体は聞き取れるようになるので、留学・駐在・移住で海外に住まわれる方は参考いただければと思います。
また、現地で生活をするうえで発音とは別に最初苦労するのが、スラング・イディオムです。英検でも一部勉強すると思いますが、日常生活で使われるイディオムの数は圧倒的に多いので、初めは圧倒されました。
例えば、私の上司はunderstandの代わりに”get my head around”と言う言葉を多用してくるので、初めは何のことを言っているのか、全く意味不明。
また、業務上の指示で「将来に備えて何か準備しておこう」と言いたいときに、彼は
”keep your powder dry”(弾薬を乾かしておけ=すぐに使えるように武器を準備しておけ、というところから転じたイディオム)
という表現をしてきたりなど、一筋縄では解釈できない指示をもらうこともしばしばです。
これらの表現を全部覚えるというのはハードルが高いのですが、日本人にも口癖があるように、だいたい1人の人がよく使うイディオムというのは決まっているので、実際に生活する上では、よく会話をする人からその表現を覚えてしまえば、すぐに適応できるものだとは思います。
ただこれも、英検一級の語彙学習を通して重要な基本単語はある程度抑えているからできたことで、もしイディオム以外の単語でも知らないものが多かったら、より大きな苦労をしていたのではと思います。
日本では「英検一級の単語は難しすぎて意味がない」という話をしばしば聞きますが、これは全く事実でないと断言できます。そのへんの中学生でも英検一級の単語は普通に使ってきますので、皆さんには安心して単語を覚えていただければと思っています。
まとめ
このように、実際に英国生活をはじめてわかったのは、英検一級を取っただけで現地にすんなり入るのは難しいこと。
いっぽうで、英検一級を取っておくと、あとは現地でチューニングするだけでスピーディに適応できるようになること。
私も渡英当初は絶望しましたが、そこから慣れるまでの速さには自分でも驚くほどで、その基礎を固めておく上で、英検一級は非常によくできた試験だと思っています。
これから受験をされる方におかれましても、私の個人的な体験が少しでも参考になれば幸いです。
英検1級にチャレンジしてみよう!おすすめ勉強方法をチェック!
>>【英検準1級・1級完全ガイド】勉強方法・出題形式・試験対策、おすすめ参考書、全て教えます!
英検1級で人生は変わるか?に関するQ&A
最後に、時折聞かれることのある質問をFAQとして回答いたしますので、併せてご笑覧ください。
語学力が必要な局面であれば、ネイティブを雇えばよいだけの話。あくまでも自分が提供できるバリューを育てることが高い優先順位にあるべきで、それを海外でも発揮できるようにするうえで語学が役に立つ、とお考えの方が良いと思います。
第一に、塾に通うということ自体をペースメーカーにすることができるので、学習が止まることを防げるということ。勤勉でないという方であればこの効果は馬鹿にできません。
第二に、塾にいって効果的な外国語習得ができる方法を学ぶことは、先々英語以外の言語を学ぶ上でも役に立ちます。事実、わたしもその後、英語以外にフランス語/中国語を一定程度使えるようになったのですが、その際は、英語をマスターする上でやってきたことを別言語にそのまま置き換えることで解決し、特に塾には通いませんでした。成長する上でのあるべき基本動作というのは、自分で想像して習得するのは難しい部分もあるので、これを塾に取りに行く、というつもりでいくと良いと思います。
イギリスに居たので、どうしても喩えがヨーロッパ基準になってしまうのですが、ネイティブは言うに及ばず、英語と構造が近い北欧/オランダの方と比べても低いレベルにしかたどり着かないと思います。ドイツ人の平均英語力と同等かやや下くらいが個人的なイメージです。
ただし、スピーキングは、
(1)相手側の発音ルールを知っていて聞き取れるか否か
(2)話している話題が自分の知っている者か否か
で大きく左右されるので、この2つは住んでいるともの凄いスピードで改善されていきます。必要となる局面になればすぐに話せるようになる、とご安心いただいて構いません。
こちらの記事もおすすめ:【英検1級面接対策】一度落ちた私がおこなった合格勉強法とは?