英語学習を進めるにあたり、そこそこ単語は覚えられたけど長文の読解力に自信がなかったり、TOEICや入試試験の長文問題で時間が取られてしまったりということはないでしょうか。
リーディングの力を上げる方法の一つとしてオススメできるのが「多読」です。
今回、日頃から多読を行っている私(ミーヤ)が、リーディング力を強くする多読方法についてご紹介させて頂きます。
多読のやり方
多読とは英語の本を「たくさん読む」というそのままの意味です。ただし、そのやり方は以下のルールを守る必要があります。
1.ぱっと読んでみてまあまあ読めるかな、くらいの本を選ぶ
2.わからない単語が出てきても辞書は引かない
3.難しいと感じたら読むのをやめて、もっと簡単な本を読む
多読の目的は沢山の英単語を一気に流し込んで、頭を英語に慣らす勉強法です。精読とはほとんど逆のやり方で行うわけです。
多読を始めたきっかけ
私自身がなぜ多読を始めたのか少しお話すると、英文で経済・金融のニュースを読みたかったからです。
仕事上、経済・金融のニュースをチェックする必要があるのですが、ある日、読んでいる記事のほとんどは外国メディアの記事の和訳だということに気づいたのです。
日本でも、多くの優秀な記者さんや学者さんが最新の記事を発信していますが、やはりアメリカ、イギリスには敵いません。詳しく知りたければ英語を読む力を上げなければなりませんでした。
多読という方法を知った私は、まずネイティブの6歳児向けの本から始め、その後もう少し難しくても読めそうだな、と思い始めたら本のレベルを上げていきました。
本のレベルを上げられたということは読む力が上がっているということです。
これまで毎日20分の多読を欠かさず続けていますが、3ヶ月前には難しくて読めなかった英文が、気持ちいいほど読めるようになるほど効果が出ています。毎日続ければ確実に成長を実感できますよ。
本選びの難しさ
多読をするには何を読むかを決めなくてはいけません。
既にJapan Timesくらいはすらすら読めるよ、という人なら興味のある本を好きに選んだらいいですが、まだ多くの表現を知らない段階であれば、私のように小さな子供向けの本から始めることになります。
問題は子ども向けの本を大人が読んでも面白くないということです。多読は楽しめなくては意味がありません。
この記事では、多読を始めてみたい方の足がかりになるような、できるだけ大人でも楽しめる児童書をご紹介したいと思います。最後はリーディングの力が上がってきた方向けの本も取り上げています。
The Tale of Peter Rabbit: Beatrix Potter
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言わずと知れたピーターラビットの絵本です。とても簡単な英語で就学前の子供向けに書かれています。
なんといっても目を引くは作者のビアトリクス・ポターが描いた美しいイラストです。ところで彼女は菌類、きのこ類の優れた研究者だったことをご存知でしょうか。
しかし、当時のアカデミーは完全な男性社会で彼女の論文は受け入れられることはありませんでした。やむなく研究者は諦めて、彼女は絵本作家として生きることを見出したのです。
ピーターラビットの背景に書かれる植物たちの美しさは、彼女の向ける愛と無念さにも思えてきます。
The Big Case (Disney Zootopia): The Disney Storybook Art Team
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映画Zootopiaのストーリーを小学校低学年向けに書いた絵本です。
これはStep into readingというシリーズのうちの1冊で、他にもシンデレラなど過去のディズニー映画の絵本が出版されています。ディズニーが好きな方には入りやすい本でしょう。
Magic Tree House: Mary Pope Osborne
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アメリカでもベストセラーの児童書です。小学生低学年向けに書かれた本ですが、上の2冊より文章量が多く、いよいよ児童文学という雰囲気になってきます。ただ、癖のない文章でとても読みやすいです。
主人公は8歳と7歳の兄妹。ある日森の中で遊んでいると大きな木の上に小屋があるのを発見します。小屋の中には本が沢山。その中の本を開きながら「ここに行けたらな」と言うとその本の世界に入ってしまうのです。
第1巻は恐竜の世界にタイムスリップします。全28巻ですが1巻ごとの読み切りになっています。天真爛漫な妹ちゃんが可愛いです。
The Story of Doctor Dolittle : Hugh Lofting
かつて映画化されているので名前を知っている方も多いドリトル先生の第1作目です。小学生低学年向けに書かれていますが、上のMagic Tree Houseより文体に癖があり慣れるのに苦労するかもしれません。
動物と会話ができるドリトル先生が世界を旅するお話。
といえばメルヘンなストーリーを想像しますが、一文無しにも関わらずアフリカに旅立とうとしたり海賊から船を奪ったりと予想を超える先生と動物達の行動が楽しいです。話がテンポよく進んでいくので飽きずに読むことができます。
Comet in Moominland: Tove Jansson
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これもおなじみ、ムーミンの原作です。小学生高学年向けの本です。
この本はムーミンシリーズの第2作目です。第1作目はThe Moomins and the Great Floodというタイトルでムーミン家族しか登場しません。
この2作目にはスナフキンやスノークが登場し、みんなの知っているムーミンのお話という雰囲気があるのでこちらを取り上げました。ちなみにミイは第4作のMoominpappa’s Memoirsから登場します。
グリム名作選 The Best of Grimm’s Fairy Tales (ラダーシリーズ Level 1): グリム兄弟
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多読をする中でグリムやアンデルセンなど有名な古典童話を読んでみようと思うことがあります。
しかしこれらの作品は意外と難しい表現が多いのです。
このラダーシリーズは日本の中学生で習うやさしい英単語から有名作品を書き改めた本です。Level1から5まで用意されていますので、好きな作品があればこのシリーズで徐々に英語に慣れていくのもいいと思います。
Holes: Louis Sachar
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アメリカで大変人気があり、全米図書賞、ニューベリー賞を受賞している児童文学作家ルイス・サッカーの代表作です。多読の入門書として挙げられことも多く、小学生高学年向けの本です。
無実の罪で砂漠の少年院に入れられた不運な少年スタンリー。その少年院でなぜか穴ばかり掘らされる謎。
少年院で出会ったゼロとの友情。様々な伏線が後半で一つにまとまったときの気持ちよさはたまりません。子供向けの本でここまで読ませるとはルイス・サッカー恐るべしです。
There’s a Boy in the Girls’ Bathroom: Louis Sachar
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上のHolesと同じくルイス・サッカーの作品です。同じ作家の本を2冊挙げてしまいますがそれだけお薦めです。こちらの本のほうがHolesより読みやすいでしょう。
主人公はブラッドリーという5年生の男の子。勉強も友達も大嫌いないわゆる問題児。周りの子供達も彼と関わろうとしなかったし、先生も教育を諦めていました。
ある日、学校が雇ったカウンセラーの先生と出会うことでブラッドリーが少しずつ変わっていきます。最初は憎たらしかったブラッドリーを、いつの間にか心の中で応援していました。そして最後は涙です。
MANGA!
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日本のコミックは多く英訳本が出ています。
メリットは親しみやすく、教科書では学べないフランクな話し言葉が出てくるということです。デメリットは単語数が少なすぎるため多読としては物足りないところです。
従ってアクション漫画になると効果音や叫び声だけでコマが進んでいってしまうのでおすすめできません。多読は毎日継続することが大切ですので、今日はちょっと疲れてて気分が乗らないな~、というときにでもこれなら息抜きに読めると思います。
Norwegian Wood: Haruki Murakami
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言わずと知れた村上春樹氏の代表作であるノルウェイの森の英訳本です。村上作品の真骨頂はシンプルな表現に深いストーリーを含める美しい文体ではないでしょうか。
表現がシンプルということは英語にしても読みやすいということです。
ここまで紹介した児童書とは違い本格的な小説ですので相当な英語力が必要になりますが、大人向けの英語小説の入り口としては良いと思います。
The Big Short: Inside the Doomsday Machine
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2015年に「マネーショート 華麗なる大逆転」というタイトルで映画化された作品の原作。2008年リーマン・ショックのとき、事前にバブル崩壊を予測して大儲けした人たちを描いたノンフィクション小説です。
興味が分かれる内容ですのですべての人におすすめできるわけではありません。なぜ取り上げたかというと、冒頭で書いたように私自身は経済・金融のニュースを読む力をつけるために多読をしています。
その目的に少しでも近づけるようにこの本にトライしました。皆さんも英語を学ぶ様々な目的があるかと思います。その目的からずれないように勉強するのも上達のカギになると思います。
本選びのコツ
紹介しました本にもあるように、和訳されていたり映画化されていたりするものを見ていれば世界観が分かるので読みやすいことが多いです。ただしイメージと違い原作はかなり難しいこともあります。
ハリー・ポッターはその典型例です。書店やネットで試し読みしてみたり、ネットのレビューを参考にしてみたりするもいいでしょう。
また、日本語で馴染みのないタイプの本を英語で読もうとするのは止めたほうがいいでしょう。どういうことかというと、普段小説を滅多に読まないのに英語の小説を読んでもなかなか理解ができないのです。
子供はそうやって言葉を覚えていきますが、日本語にすっかり慣れた大人が学習するのであれば、今までの経験を最大限活かすほうが効率的です。
ミステリー小説が好きならシャーロック・ホームズ、ビジネス書が好きなら金持ち父さん貧乏父さん(Rich Dad Poor Dad)といった具合に、ご自分が好きなジャンルの本で難易度が低いものを探していくのがコツです。
まとめ
多読に慣れてきたら、多少ルールをアレンジしていってもいいでしょう。
私は原則辞書を引きませんが、全く発音が分からない単語は発音を調べる、意味が分からずに飛ばした単語でもその後何度も出てきたら引く、といったことをしています。
また、お気に入りの本は好きなフレーズを書き写したり、分からなかった単語を調べたりして精読にも使っています。
この世に本は数多にあるのに読もうと思える本は意外と少ないものです。皆様がこの記事を読んで1冊でも素敵な本に出会っていただければ幸いです。
ライター:ミーヤ