英会話を上達させたいけれど何をやればよいかわからない、オンライン英会話をやっているけれども中々上達が実感できない、という人は多いのではないでしょうか。
新型コロナの影響でオンライン英会話をする方は増えました。確かにオンライン英会話は英語力を上げるのに有効な手段ですが、それだけでは会話力を鍛えるのは困難です。
そこで、会話力を鍛えるための手段として私がお勧めしたいのが「英作文」を使った勉強法です。
この記事ではオンライン英会話だけで話せない原因、効果的な使い方、英作文練習のコツ、添削方法、おすすめ参考書などをご紹介します。
なぜオンライン英会話だけでは会話力は伸び悩むのか?
なぜオンライン英会話で会話力が伸び悩むかというと、負荷がかかりづらいからです。
オンライン英会話のメリットの1つは、色々な講師と話ができることです。
しかし、これがデメリットでもあるのです。
講師は変われども話す内容は同じになっていないでしょうか。
よほど意志が固く、志の高い人でもない限り、「言える内容を言う」練習に偏ってしまいがちなのです。
例えば旅行について話すときに皆さんはどのような話をしますか。
過去に行って一番印象的だった場所と今度行ってみたい場所、それ以外にどれだけの引き出しがあるでしょうか。
毎回違う内容について話しているという人は、ほとんどいないと思います。
同じ人と話していれば話を深堀りするチャンスもあるかもしれませんが、毎回違う講師と話していると同じことについて話しがちです。
最初のうちは言いたいことを何とか英語で表現して、うまく伝わらない部分を直して、と少しずつ上達していくのですが、ある程度スラスラと話せるようになってしまうと同じ内容ばかり話しているので新しく学ぶ部分がどんどん少なくなってしまいます。
もちろん「今までにハワイとオーストラリアに行った話と、京都や奈良を訪れた経験について話をしたから今度はドイツに行った話をしよう。ショッピングで苦労した話はもう何回もしたから、次は道に迷った話でもしようか」と意欲的かつ計画的に準備できる人は問題ありませんが、かなりの少数派だと思います。
オンライン英会話は、スポーツで言えば練習試合のようなものです。
プロの野球選手やテニス選手が素振りを欠かさないように、サッカー選手やバスケットボール選手がパス練習やシュート練習を欠かさないように、英語を上達させる際にも練習と実戦を使い分ける必要があります。
本番でできるようになりたければ、練習しておくべきなのです。
会話の最中に今まで一度も見たことも聞いたこともない表現をいきなり思いついて、試しに言ってみたら相手が理解してくれた、なんてことは滅多にありません。
英作文で英会話力が向上する3つの理由
私が表現力を鍛えるのに英作文を勧める理由は3つあります。
英作文おすすめ理由1:英会話よりも難易度が低い
1つは全く同じ内容を学習するなら、英作文の方が会話よりもずっと難易度が低いからです。
ちなみにここで言う難易度が低いというのは価値が低いという意味ではなく、習得が容易で効果を出しやすいという意味です。
間違えたら書き直せます。
書きながらより正しい書き方は何かということを考える時間もあります。
何よりも書いた英文が形に残りますのでどこが間違っていたのか一目瞭然です。
一方で会話では、何を話すか自分で考えなければなりません。語形や語順を間違えても直せませんし、そもそも間違えたことに気づくかどうさえ怪しいです。
たとえば「私と弟は川に釣りに行った」を英語にしてみましょう。
主語は「私と弟は」だからI and brother……かな?「川に釣りに行った」は……えーと、「川に」だからto riverで、「釣りに行った」はgo to fish……
会話しながらだとこのように考えてI and brother …えーと… to river …あー… go to fishのように言ってしまうことがあるのではないかと思います。
そしてオンライン英会話であれば、ほとんどの講師がその意図を汲み取ってくれるでしょう。
しかし、この場合正しい英文は、My brother and I went fishing in the river.です。
②~ and Iの語順の方が一般的である
③動詞を過去形にしていない
④「~に行く」はgo ~ingが一般的である
⑤「川に」はfish「釣りをする」とつながるのでtoではなくin
⑥riverに冠詞が必要
という6箇所を修正する余地があるのですが、会話しながら全て見つけるのは中々難しいのではないでしょうか。
講師がミスを細かく指摘してくれるタイプであれば色々と教えてくれるかもしれませんが、私の経験上そういう講師とはあまり話が盛り上がりませんので、会話自体がつまらなくなります。
一方で意味が通じればOKという人も沢山いて、そういう講師だと間違いを恐れずに話すことができるので話は盛り上がるのですが、正確な英語の知識を身につけるという点については向いていません。
文法や表現は英作文で増やす、会話では意思疎通を楽しむ、と割り切るべきなのです。
英作文おすすめ理由2:文法単位でマスターでき、効率が良い
英作文を勧める2つ目の理由は、表現力を増やすのに効率が良いからです。
会話力を鍛えることは表現力を増やすこととほぼイコールです。
それは単純に単語を覚えるだけの場合もありますし、フレーズを覚えることの場合もあります。
そして最も効率よく表現力を増やすには、文法をベースにして英作文に取り組むことです。
次の2つの文を見てください。
This is a pen.「これはペンです」
The man standing at the door is the one you are looking for.「ドアのところに立っている男性があなたが探している人ですよ」
この2つの文が、文法的には全く同じ構造であることがわかりますか?
この2つはどちらも【主語+is+補語】「[主語]は[補語]です」の文です。
主語が「これ」であればthisが入りますし、「ドアのところに立っている男性」であればthe man standing at the doorが入ります。
補語が「ペン」であればa penが入りますし、「あなたが探している人」であればthe one you are looking forが入ります。
文法だけで全ての英文が理解できるようになるわけではないのは事実ですが、文法単位で英学を学習することが最も効率よい英語の学習法であることも事実です。
書店には英会話フレーズ集がたくさん置いてありますが、私は初級者~中級者が英語学習のメイン教材として使うことはお勧めしません。
たとえばフレーズ集ではI’m glad to see you.がただ「会えて嬉しいよ」とだけ紹介されています。
このI’m glad to see you.をただ「会えて嬉しいよ」とだけ覚えてしまえば1つしか表現力が増えませんが、【感情を表す形容詞+to不定詞】で「~して嬉しい、悲しい、驚く、残念だetc.」という原因を表す表現だと理解しておけばいくらでも応用することができます。
glad「嬉しい」をsad「悲しい」、surprised「驚いた」、sorry「残念だ」にかえれば4種類の表現を使えるようになります。
am gladのかわりにwas gladにすれば「嬉しかった」になりますし、will be glad「会えたら嬉しいだろう」にかえることもできます。
さらにsee you「あなたに会う」の部分もread the letter「手紙を読む」やhear the news「知らせを聞く」、get the present「プレゼントをもらう」と無限に変えていくことができます。
つまり文法を理解した上で英作文に取り組むと1つの例文からその何倍、何十倍もの表現力を得ることができるのです。
もちろん、フレーズ集は「こんな時はどのように言う」という辞書的に使う分には非常に役に立ちます。
いきなりフレーズ集の英文を片っ端から覚えていくよりも、一通り文法を学習してから応用方法や例外を確認するのに使うのがお勧めです。
英作文おすすめ理由3:学習に負荷をかけられる
英作文を勧める3つ目の理由は、学習に適切な負荷がかけられることです。
人間には考え方のクセというものがあるので、自分の頭だけで考えていると使う表現に偏りができてしまいます。
まずは中学レベルの文法を一通り正確に使いこなせるようにしましょう。それで、最低限のコミュニケーションは十分にとれるようになります。
昔からよく言うように「英作文は英借文」です。
たとえば「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」という本には、Will you please make some coffee? 「コーヒーを入れてくれるかい?」という文があります。
まずはこれを丸々覚えてしまいましょう。
Will you please ~?で「~してくれるかい?」という文だと覚えてしまえば、make some coffeeをclean the roomに替えて「部屋を掃除してくれるかい?」が作れますし、wake your dad upにすれば「お父さんを起こしてくれるかい?」にすることができます。
一通り文法がマスターできたら、今度は様々な表現が登場する問題集に取り組んでみましょう。
たとえば「よくばり英作文」という問題集には「家でゴロゴロしています」という問題があります。
「ゴロゴロする」を英語で何と言えばよいかわかりますか?
「家のあちこちで座っている」と考えてsit around the houseと表現することができます。
昔の書籍は不自然な英文がたくさん載っているものもありましたが、最近の書籍はネイティブチェックが行われているものも珍しくありません。
CDやダウンロードで音声が聞けるものが標準になりつつあります。
英作文の書籍を使い倒すというのは、英語を勉強する上で非常に理にかなった選択肢だと言えます。
なぜ中学・高校で習った英語が役に立たないと感じるのか?
こういう話をすると「中学・高校の英語の成績はトップクラスだったのに英語を話せないという人もたくさんいるじゃないか。英作文の本をやったって効果は薄いんじゃないか?」と反論されるかもしれません。
いくつか理由はありますが、最大の理由は彼らが英語の勉強をテストで高得点が取れるというレベルで終わらせてしまったからです。
記号問題でいくら正解できても、穴埋めクイズがいくらできても、並べ替えがいくらできても、それだけでは英語を話せるようにはなりません。
英語が話せるようになるには、一切のヒントなしで自分の頭の中だけで英語を組み立てる能力、つまり英作文がほぼパーフェクトに正解できる力が必要です。
更に言えば10秒で喋る英文を1分かけて考えているようでは、間が空きすぎてしまいます。
10秒で話す内容を10秒以内に頭の中で組み立てられるようになって始めて、会話で通用する英語力になるのです。
さらに相手の言っている内容を聞き取れるだけのリスニング力も要求されますし、相手に伝わるように発音のトレーニングもしなければなりません。
ゆっくり考えれば答えが理解できるとか、何度も考え直してようやく正解に辿り着くというレベルでは「英語がペラペラ」とは程遠いのです。
もちろん今日勉強した内容を、今日完璧にマスターできるという人はほとんどいません。
「瞬時に英語が頭に浮かぶレベル」に到達するまでには「今日は穴埋め問題が解けた」「今日は並べ替え問題で正解した」と段階的にステップアップすることが不可欠です。
焦らずに、ただし最終目標は高く掲げて取り組みましょう。
英作文勉強法:添削はオンライン英会話がおすすめ
ここで、英作文の学習をする上で1点注意してほしいことがあります。
それは、独学で習得した言葉というものは、大なり小なり不自然な箇所があるということです。
たとえば「自動車で」はby carですが、「自分の自動車で」をby my carとしてしまうと誤りです。正しくはin my carです。
また、My dream is becoming a professional baseball player.は日本語に逐語訳すれば「私の夢はプロ野球選手になることです」となって問題なさそうですが、ここではbecomingではなくto becomeを使うのが一般的です。
このように、日本語をベースに考えていると完成した英語が不自然になることがあります。
これはどの言語にも起こり得る話です。
日本語でも「ピアノを弾く」「ギターを弾く」とは言うのに「ドラムを弾く」「笛を弾く」とは言いません。
何か食べたいときは「お腹がすいた」と言いますか、何か飲みたいときに「喉がすいた」とは言いません。
書籍の表現を丸暗記しておく分にはそれほど問題ありませんが、自分で表現をアレンジしていくとどうしてもこの問題に直面することになります。
こういうときこそオンライン英会話を活用するとよいでしょう。
「今日はこの表現を使おう」と決めておくのも話の中で使ってみるのもよいでしょうし、単刀直入に次のように言ってもよいでしょう。
「今日、いくつか英文を書きました。意味が通じるか気になっています」
こう言えば講師もわかったと言ってくれるはずです。
読み上げるなりチャットボックスに入力するなりして相手に伝えれば、おかしい箇所やより一般的な言い方を教えてくれるでしょう。
ただし講師によって賛否が分かれることもありますので、できれば複数の講師にたずねてみてください。
日本語でも「食べれる」は絶対にダメで「食べられる」と言わなければならないという人もいれば、「食べれる」でも通じるからOKという人もいます。
「役不足」を本来の「本人の力量に対して役目が簡単すぎること」ではなく、「力不足」という意味だと思って使っている人もいます。
言葉というものは個人の好みがどうしてもありますので、1人の意見が必ずしも正しいとは限りません。
色々な人と話せるのがオンライン英会話のメリットの1つですので、ぜひ様々な人の解釈を聞いてみてください。
英作文勉強法:お勧め参考書5選
最後にお勧めの書籍を5つ紹介しておきます。
「瞬間英作文」シリーズ(ベレ出版)
会話力を鍛えるための英作文本といえば「瞬間英作文」シリーズが定番です。
中学レベルの英文が中心になっており、型を定着させることに重点が置かれています。敢えて語彙も抑えられており、文型の基礎をマスターするのには最適です。
今までに、
①どんどん話すための瞬間英作文トレーニング
②スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング
③ポンポン話すための瞬間英作文 パターン・プラクティス
④おかわり!どんどん話すための瞬間英作文トレーニング
⑤おかわり!スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング
⑥バンバン話すための瞬間英作文「基本動詞」トレーニング
の6冊が出版されています。
特におすすめしたいのが①と④です。
この2冊は文法ごとに編集されていますので、効率よく英文の型をパターンとして覚えることができます。
大体どの英文も言えるようになったら、ランダムな順番に配置し直した②や⑤、英文の一部を置き換えるトレーニングをする③で理解度を深めたり、⑥で動詞の知識を増やしたりするのがよいでしょう。
大切なことは、著者の森沢洋介さんも書いていますが、スピーディーに英語に直せるようにすることです。
日本語を見て「『これは』はthisで、『良い』はgoodで…」と考えるのではなく、「これは良い本です」という日本文を見た瞬間にThis is a good book.と出てくるようになるまで繰り返してください。
「決定版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本」(中経出版)
→「決定版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本」(中経出版)
カリスマ予備校講師である竹岡広信先生の最高傑作の1つです。
この本の素晴らしいところは「こう書けば伝わる」「こういう英文では伝わらない」というところを詳しく紹介してくれるところです。
例題ではよくある間違いを先に提示し、どこが不自然なのか、どういう表現をすべきなのかが解説されています。
たとえば「自然の中で暮らす」というときにはlive in natureでは通じず、spend time outdoors「屋外で過ごす」としたほうがよいとか、「視点を変える」と言いたいときには直訳でchange viewpointsとしても伝わらず、look at things from a different point of view「違った視点から物事を見る」と言えばよいといった日本人が間違いやすい表現の解説が非常に詳しく記載されています。
ジャンル的には大学受験対策ですが、作文力や会話力を高めたい社会人にも是非手にとってもらいたい1冊です。
「よくばり英作文」(駿台文庫)
こちらは同じく竹岡広信先生の書籍です。左右見開きで左側に日本語、右側に英文と解説が掲載されており、全部で418問載っています。
問題文もバラエティに富んでおり、日常でよく使いそうな英文が多数含まれています。
たとえば「男女の平等は当然のこととされているが、政治の場で活躍している女性はほんの一握りである」といった社会的な文もあるのですが、「とりあえずマックでお茶して、あとどうするか決めようよ」といった日常会話も多数収録されています。
一部重複もありますが、「英作文が面白いほど書ける本」を一通り終えたあとで知識を深めるのに使うのが効果的です。
「NHK基礎英語1~3」「NHKラジオ英会話」のテキスト
家にNHKのラジオ講座のテキストがあるという人は是非、英作文の教材として活用してください。
特に「基礎英語1~3」や「ラジオ英会話」には簡単な表現を使いつつも日常生活で使えそうなフレーズが多数あります。
例えばAh, I’m sweating…「ああ、汗だくだわ…」やExcuse me, but could I say something here?「悪いけど、それにひと言言わせてもらえるかしら」なんてセリフがあります。
別記事でも紹介しましたが、聞いて終わりにするにはもったいないクオリティです。
関連記事:NHKラジオ講座は時代遅れ?英検1級講師が英語初級者におすすめする2つの理由
放送を聞いてから1~2週間後に復習を兼ねて「こんなとき英語でどのように言うか」と考えながら英語にしてみるのがお勧めです。
英検1級・英検準1級「英作文問題完全制覇」(ジャパンタイムズ社)
→英検1級・英検準1級「英作文問題完全制覇」(ジャパンタイムズ社)
私が英検の英作文やスピーチの対策をするときに最も役に立ったのが「英作文問題完全制覇」です。
英検の英作文では「宇宙開発はコストに見合うか」「言論の自由の規制は正当化できるか」といった賛否が分かれるようなトピックが出題されます。
そもそも日本語でもどのような内容を書けばよいかで悩むレベルの問題ですが、更にそれを英語で表現しなければなりません。
そこで私が最初に取り組んだのが「英作文問題完全制覇」の和文英訳です。
「英作文問題完全制覇」はコンテンツブロックと言われる、1つの主張を50語程度でまとめたものが200個以上掲載されています。
たとえば、Lies to the public such as false advertising should be banned.「虚偽広告のような一般市民への嘘は禁止されるべきだ」といった英文が多数掲載されていますので、これを音読したり書き写したりするだけでもどのように論理展開をすればよいのか、どのように例を挙げればよいのか、どのような表現が使えるのかがわかります。
また、他の対策本に比べて和訳が素直で意訳が少なめですので、非常に学習しやすくなっています。
そしてこの本は英作文の対策本でもありますが、二次試験の面接でも通用するフレーズが豊富に使われています。
私が英検1級に合格できたのは「英作文問題完全制覇」を覚えきってしまうくらい繰り返したからだと言っても過言ではありません。
英作文練習のコツは頭の中に例文集を作ること
今回は会話力を伸ばすには英作文の演習が効果的であるという話をしました。
英会話を得意にするには英語で思考することが重要ですが、そのためには「こういうシチュエーションではこういう英文が使える」という例文集を頭の中に作っておくことが重要です。
普段から良質の英文をどんどん頭の中にストックすることを心がけてみてください。
また、英作文の添削はオンライン英会話を活用してみることもおすすめしますよ。