私は、この秋からロサンゼルスのコミュニティカレッジに留学中の社会人留学生です。
出国前、日本の留学エージェントを使用せずに自力で留学手続きを進める期間に、必要に駆られて培った現地とのコミュニケーションスキルが、留学してからも意外と役に立つことが最近わかってきました。
今回は、留学先現地の人とのコミュニケーション方法について体験談をご紹介したいと思います。
私にとっては今回が初めての留学なので、今年の1月に留学を決めた時は全ての知識がゼロの状態からのスタートでした。何から始めて良いのか全く分からなかったので、もちろん日本の留学エージェントには多数問い合わせをしました。(私がエージェントを使用しなかった訳は、別記事『自力のビザ申請』にてご紹介した通りです。)
まず最初に分かったことは、「F1ビザを取ること」「学校を決めて出願すること」が必要ということでした。ビザを取るのが先かと思っていましたが、留学先の学校からI-20という入学許可証をもらってからでないとビザ申請をできない、なんてことは全く知らずにスタートしました。来る日も来る日も、問い合わせ、問い合わせ、問い合わせの日々。そしてそれを一言で表すと「たらい回しの刑」でした。
この記事を読んでくださっている皆さんには、あの苦痛な経験をしてほしくないので、自分が質問したいことの正しい返答を、少しでも効率良くゲットするためのコツをお伝えできればと思っています。(学校や学科を検索する際のおすすめ方法についても、過去の記事『ビザ取得の流れ』をご覧いただけたら幸いです。)
学科の担当者は留学生の担当者ではない
学校の規模にもよりますが、学校に問い合わせる際は、基本的にはその学科や学部の総合受付のメールアドレスか電話番号を見つけることが必要です。ただし、「学科の担当者は留学生の担当者ではない」ことが最初の要注意ポイントです!
この学科ではどのようなコースがあり、何単位取るとどんな認定証が取得できるのか、学位や資格を取るためにはどのコースを選べば良いのか、といった「その特定の学科と学部、コースに関係することのみ」質問することを強くおすすめします。
多くの留学生はアカデミックな英語が完璧ではない状態で留学することと、過去にアメリカの基礎科目の英語(国語)の単位を取得していない場合がほとんどなので、専門分野のコースに入る前に、語学学校に通ったりESL(English as a Second Language)コースで勉強します。
専門分野のことは現地で英語に慣れてから考えれば良い、という場合は別ですが、多くの場合、何か特定の分野での学びを深めたいという目標があって留学するのだと思います。それであれば、この学校のこの学科ではどんなことを学べるのか、どんな教授が在籍しているのか、各学科の学費などを含めて詳細な情報を事前に調べてから、どの学校に入るのが良いかを選ぶことになります。
この際の問い合わせ先が、例えば哲学、天文学、心理学、医学など各学部各学科の総合受付なのですが、私の失敗は、この人たちに自分の情報を事細かく詳細まで説明して問い合わせたことでした。
「私は日本から留学を考えていて、過去にこのような勉強をしてこういう仕事をしていて、この後アメリカでこんなことを学びたくて、そんな私にはこの学科でどんなことが学べる可能性があるか教えてほしい、つきましてはこのメールに適任の方からお返事のアドバイスをいただきたく・・・」
この頃の私は、自分が伝えたいことと聞きたいことを、英語に訳してひとつのメールにまとめるのには軽く30分〜1時間かかっていたと思いますが、苦労して送ったメールの返信はただ一文。
「以下のリンクから留学生の担当者に連絡してください」でした。
「え、これだけ?」と肩透かしを食らいましたが、実はまだこの返答の方が良い方でした。私の長ったらしいメールを読んで、私が「留学生」だということを理解してもらえなかった場合には「新入生の担当者」に繋がれてしまいます。
私が問い合わせをした、ロサンゼルスにある私立・公立の大学、大学院、コミュニティカレッジ、シティカレッジなどの場合、「新入生」の担当部署と「留学生」の担当部署は違ったのですが、もちろん、そんなことは知らない状態で問い合わせをしていました。
自分は「新入生の留学生だ」と思って、案内された通りのリンクからまた同じように「私は日本から留学を考えていて、どんなことが学べるか教えてほしくて、〇〇学科に問い合わせたところ、こちらに問い合わせるように指示がありました。つきましてはこのメールに適任の方からお返事のアドバイスをいただきたく・・・」と長々としたメールを送りました。そうすると、またこの人からも「以下のリンクから留学生の担当者に連絡してください」という返答だけが返ってきました。
ところが、やっと辿り着いた「留学生」の担当部署の人には、元々質問したかった「専門分野の内容」については教えてもらうことができません。「学科の専門的な内容については、以下のリンクから各学科・学部に問い合わせてください。」です。
ひとつのメールに質問は一個だけ
時差があることや、学校の各担当部署が問い合わせを受け付けている時間が限られていることもあり、この時点で既に私が最初の問い合わせをしてから2週間くらい経っていました。私はもう我慢の限界で、すんなりその指示に従うことができませんでした。
「この問い合わせ先には、2週間以上前に問い合わせをしました!そうしたら△△に問い合わせるように言われて、そこの〇〇さんから、更にあなたたちの部署に連絡するように言われたのです!!だから今私はあなたに問い合わせています!そもそも、私の最初の質問は以下に記載した項目で、これらの質問に誰も答えてくれていない!たらい回しにされていて結局全然分かりません!!!困っているので教えてください!!!!!」
と文句を言いました。
そうしたら、ひとつ目の質問にだけすぐに返信が来ました。私はすぐに「お返事くださりありがとうございます!わかりました。ということは、これはこういうことですか?また、先ほどお伝えした他の質問項目についても、お返事をお待ちしています」と返信しましたが、そのまま何の音沙汰もなくなりました。
そして次の日に、今度はその部署の別の人から
「学科の専門的な内容については、以下のリンクから各学科・学部に問い合わせてください。」というメールが来ました。「たらい回しの刑」です!
この人にも同じように、「それは昨日メールをくれた◻︎◻︎さんにも伝えましたが、とっくの昔に問い合わせ済みです!!過去の問い合わせ履歴を読んで、誰か私を助けてください!」と返信をすると、また音信不通になりました。
こんなやりとりを続けて3週間くらいが経った時に、「今電話できるけど?この番号にかけてくれれば説明するよ」というメールが届きました。もちろん即、国際電話をして聞きたいことを全部聞きまくりましたが、5分もかかりませんでした。
「元々これを聞きたかったのに、いちいちみんな別の部署に繋ぐから、毎回一から説明しなきゃいけなくて本当に困っていた、ありがとう!」と伝えると「いいよ、でもひとつのメールに質問は一個だけにして。ひとつ分かったら次、それが分かったらまた次っていうメールにしてくれないと、分からない」と言われました。正直、「なにそれ」と思いましたが、3週間で初めてちゃんと質問に答えてくれた人を逃してはいけないと思い、それ以降、今に至るまで、私はいつも「ひとつのメールに質問は一個だけ」にしています。
私が日本で社会人として働いていた時は、問い合わせのメールが来たら、やり取りが一回で済むように、全ての質問事項にきちんと回答するのはもちろんのこと、その後追加で問い合わせが来そうだと予想できることがあれば、その情報も先にまとめて伝えておくように習いました。そのように教育された私からすると、何度も同じ人から細切れの問い合わせが来た方がよっぽど面倒臭いだろうと思うのですが、ロサンゼルスは違うようです。
この学校だけでなく、別の学校や病院、お店他、様々な問い合わせ先に、一個ずつ質問するようにしてからは、必要な情報がすぐに得られるようになりました。そして、ひとつずつ丁寧に「どういたしまして!他にも何かあればいつでも問い合わせてください」という返事が来るので、それを待ってから次の質問をすると、またすぐに、ちゃんとした返事が返ってきます。私の英語力の乏しさのせい、という理由も大いにあるのだとは思いますが、シンプルにひとつひとつ進めた方が、結果、とても早く済みます。
そんなこんなで、私が懲りずに何度も何度も問い合わせをしたせいで、留学生向けの最初のオリエンテーションの日には、あの日、電話で説明をしてくれた担当者だけでなく、他にも大勢のスタッフが、私のことを既に知っていました。さぞ「面倒臭い日本人」と思われているだろうと思っていましたが、あるスタッフから、「あなたは自分が理解するまで何度もちゃんと問い合わせをして確認をするから偉い。普通は分からないまま放置して、もう手遅れになってから質問にくる人の方が多い」と、思いがけず褒められました。
フレンドリーで笑顔
ところで私は人見知りなのですが、ロサンゼルスに住んでいる友人を見習って、私もこちらでは「フレンドリーで笑顔」を心掛けています。
留学生は分からないことが多いので、誰かに質問をしたり問い合わせたりする機会が大量にあります。英語がおぼつかなくて、質問している内容が相手に正しく伝わるかも不安な状態だと、大体の人は「しかめっつら」になっていることが多いと思います。電話やメールでは相手に表情が伝わらないので問題ないと思いますが、現地で人と話すときには、最初は「フレンドリーで笑顔」に話しかけた方が得をすると思います。
怖い顔で突然単刀直入に質問するよりも、ニコニコしながら「ハーイ!!!ちょっと分からないことがあって助けてもらいたいんだけれど」と話しかけた方が、全く違う対応をしてくれることが多い気がします。
先日、日本に手紙を送りたくて郵便局の窓口に並んでいると、運悪く、無愛想で怖そうな女性の係員のところに当たってしまったのですが、「これを日本に送りたいんです!実は、おばあちゃんが103歳の誕生日なの!」と、笑顔でペラペラ話しかけてみたところ、一瞬、怪訝な顔をされましたが、めげずにニコニコしながら「何日くらいで着くかな〜」などと呟いていると、だんだん対応が柔らかくなっていき、最後は「100歳超えたら、毎年特別なお祝いのパーティーを開かないといけないね!」などと、私のどうでもいい無駄話にコメントをしてくれました。
もし私が、しかめっつらで「日本までいくらで何日かかるか教えてください」とだけ質問していたら、無言のまま郵便局内のどこかのボードを指さされて、「自分であのボード見て」と言われて終わっていた可能性が大いにあると思います。英語で書かれた案内ボードをパッと見て、すぐに自分に必要な情報を識別できる英語力が私にはまだないと思うので、どれだか分からなくなってウダウダしているうちに、「次のひと!」と私の順番を飛ばされてしまっていたかもしれません。
マイノリティへの理解
話は変わりますが、アメリカでは「ジェンダー」と「人種」に注意して会話を進める必要があります。長きに渡る差別の時代を経て、マイノリティの立場にいる人を尊重し、サポートするという文化が一般社会に広がっているので、うっかり差別用語を使用してしまったりすれば、訴訟になってしまうこともあります。
日本では「they」は「彼ら・彼女ら」と習いましたが、「男女の区別を避けた単数の人」としても使われるので、クラス内で「彼女の意見に賛成です」などと発言する時などにも、そのクラスメイトが「she」なのか「they」なのかを知った上で発言する必要があるので要注意です。
私が先日、学校の診療所で診察を受けた際に、看護師さんがものすごい聞きづらそうに「ごめんなさいね、どうしても私の仕事柄質問しないといけないから聞かせてね。あなたはトランスジェンダーですか?」と言われました。キョトンとなっている私に、看護師さんが「性別欄に男性って書いてあるから、確認しないとならなくて・・・」と言い、そこで初めて、自分が男性として産まれたけれど女性に性転換した学生として質問されていることが分かりました。
どうやら、学校が私の健康保険の情報を間違えて男性として登録していたようで、後から学生課に行って正しい情報を登録し直してもらったのですが、それはそれとして、日本とは全く比べ物にならないレベルでジェンダーやマイノリティに関して個人を尊重する文化があると感じます。
例え差別をしてはいけないということを知っていても、何をしたら差別なのか、どの単語や文章は差別として認識されるのかなどを細かく知らないと、他人を傷つけてしまうことになります。
ロサンゼルスに住む友人からは、もし間違った発言をしてしまったら「ごめんなさい。私はアメリカに来たばかりで、今まだ人種差別やジェンダーなどについて勉強中です」と、正直に伝えるのが良いと言われました。まだまだ、アメリカで学ぶことが山積みです。
まとめ
今回は、私が留学する前から今に至るまでの、現地の人とのコミュニケーションについての体験談をご紹介しました。留学生は分からないことだらけです。
でも、分からないことは分からないままにしていると、ビザが維持できなくなるなどの一大事になってしまうこともありますので、私のおすすめは、日本人からすると「やり過ぎ」と感じるくらい、しつこくプッシュすることです。強くプッシュしたり文句を言ったとしても、意外に相手はケロッとしていて、悪い評価にはならないところは、私がロサンゼルスの文化が好きな理由のひとつでもあります。
そして、普段は基本的にフレンドリーで笑顔にコミュニケーションをとるように心掛けていると、かなりの確率で自分が予想する以上の好対応をしてもらうことができているので、これから留学される方にはおすすめしたい方法です。
ちなみに、もし自分が謝らなくてはならない立場になった時には、笑顔は禁物です。日本人はヘラヘラと笑いながら謝る癖がついてしまっていますが、その態度は相手を侮辱していると捉えられてしまいます。謝る時は、「申し訳ない」という表情をしっかりと示す必要があることも覚えておくと良いかもしれません。何かの参考になれば幸いです。