英検やTOEIC、入学試験等のリスニングの点数を上げたいという人は多いのではないでしょうか。
そして、頑張っているのに英語が聞き取れるようにならないという悩みを持っている人も多いと思います。
そこで今回は、試験対策を中心にリスニングを上達させるのが難しい理由と、リスニングを得意にするリピーティングとシャドーイングの学習方法について紹介します。
リスニングが聞き取れない3つの原因
リスニングが聞き取れない、または上達しない理由は大きく分けて3つあります。
1. カタカナ発音と実際の発音のギャップがある
1つ目は、カタカナ発音と実際の発音の間に大きな違いがあることです。
学校ではTake a look at that tower.という文を習ったときには「テイク・ア・ルック・アット・ザット・タワー」のように発音することが多いと思います。
しかし実際の会話で「テイク・ア・ルック・アット・ザット・タワー」のように1語ずつ区切ってはっきりと発音されることはまずありません。
普通ネイティブは「テイカルカッザッタワ」のように音を繋げて発音します。
強調したいときには1語ずつはっきりと発音することもありますが、それはかなりのレアケースです。基本的にネイティブは音を繋げられるだけ繋げると思って間違いありません。
ときにはピリオドやコンマすら無視して2文以上を一息で喋ってしまう人もいます。
つまり「テイクと聞こえたらtake」と思っている間は、ネイティブのtakeは聞き取れないのです。
takeを聞き取るにはtake aなら「テイカ」、take itなら「テイキッ」、take overなら「テイコゥヴァ」のように、takeが実際の文の中でどのように発音されるのかをパターンとして認識し、頭の中にデータベースを構築する必要があるのです。
このデータベースが出来上がるにつれて、認識できる音が増えていきます。
慣れるまでは大変ですが、1度繋がり方を掴んでしまえば他の単語でも応用できるようになります。
take itが聞き取れるようになれば、make itやshake itが聞き取れるようになるまでに、それほど時間はかからないはずです。
まずはこの音のつながりのパターンを1つ1つ確実に身につけていくことを心がけてください。
こちらのあいうえおフォニックスも参考になります。
2. 読んで意味がわからない文は聞いても理解出来ない
リスニングが伸び悩む2つ目の理由は、そもそも英語表現が理解できていないということです。
たとえば皆さんは次の英文を返り読みしないで1度で理解できますか?
この32語もある1文、実は2019年度第3回の英検準1級のリスニングからの抜粋です。
当たり前のことですが、リスニングでは理解できなかった部分をもう1度聞き直すことはできません。
「えーと、この文の主語は何だろう…?」「あれ?このwhoseは疑問詞?それとも関係代名詞?」と考えているうちに次の文が始まってしまいます。
つまり、リスニングで試されているのは、音声を聞いて単語に変換できるかだけではなく、英文で使われている単語や文法が理解できるかまで試されているのです。
しかも、英文を聞いた瞬間に理解できるというレベルまで要求されます。
内容を覚えていられるか
そしてリスニングテストの点数が伸びない3つ目の理由は、英文の内容を覚えていられないということです。
放送が流れているときには「ふむふむ、なるほど」と思いながら聞いているのに、いざ質問文が出てくると「あれ?そんなこと言っていたかな?」となることはありませんか。
私はよくありました。今でも油断していると内容を忘れてしまいます。
これは英語だから、自分にとって馴染みの薄い言語だから起こる現象ではありません。日本人が日本語の文章を聞いても同じ現象がおこります。
次の文を1度だけ読んで質問に答えてください。
今度の日曜日は次男の誕生日なのですが、その日には長男が部活の大会のため朝から晩まで不在、その前日は姉の夫が出張なので、誕生日の2日前にパーティーをすることにしました。
次男はプレゼントにスマホを希望していますが、姉は小学生にはスマホはまだ早いと思っているためゲームソフトを買ってあげることにしました。
次男はどのゲームソフトを買ってもらうかまだ決めかねているので、日曜日に姉、次男、末っ子の3人でバスに乗ってショッピングセンターに買い物に行くことにしました。
末っ子はそのショッピングセンターで食べるソフトクリームが大のお気に入りです。
問題:誕生日パーティーは何曜日に行われますか?
読み返してみれば難しくも何ともないと思います。答えは金曜日です。
しかしこれを音声で聞くとなると、質問文が流れた頃にはすっかり内容を忘れてしまっているということがよくあります。
リスニングテストで点数を上げるためには放送内容を覚えられるようにトレーニングをすること、思い出せるようにすることも欠かせないのです。
場合によっては問題文を先読むするといったテクニックも必要になってきます。
リスニングを上達させる3つの主な方法
リスニングを上達させる方法は、リピーティング、シャドーイング、ディクテーションの3つです。
リピーティングは1文ごと、または意味のまとまりごとに音声を止め、聞こえた通りに真似して言うことです。
お手本がThis is my sister.と言ったら一度止めてThis is my sister.と発声します。
シャドーイングは音声を止めずに1~2語遅れて聞こえた通りに発音します。
文字で説明するのは少し難しいのですがThis is(This) my(is) sister(my sister).の( )内のタイミングで発声します。
そしてディクテーションは聞こえた英文を書き取ることです。
お手本がThis is my sister.と言ったら聞こえた通りにThis is my sister.と紙に書きます。
それぞれ効果が異なりますので目的に合わせて活用してください。
ステップ1. スクリプトを見ながらリピーティング・シャドーイング
聞き取れる音を増やすためには、何度も聞くだけでは不十分です。自分でも正確に発音できるようにすることが欠かせません。一見遠回りに見えますが、発音を鍛えることが聞き取りを向上するのに最も有効な手段です。
発音とリスニングは表裏一体です。
自分で聞き取れない音は正しく発音できませんし、正しく発音できる音は聞き取れるようになります。
自分が聞き取れない音を見つけ、お手本のように発音できるようにするためには、スクリプトを見ながらリピーティングかシャドーイングをすることが効果的です。
この目的では、リピーティングもシャドーイングもどちらの方が優れているということはありません。
5回リピーティングしてから5回シャドーイングするという方法でも構いませんし、シャドーイングした直後にリピーティングするという練習を5セット繰り返すという方法でも構いません。
注意してほしいのは以下の3点です。
1. 必ずスクリプトを確認しながら行なう
聞こえてきた通りに発音することは重要ですが、同時に音と文字を結び付けられるようにすることも重要です。
たとえばDo you have time?とDo you have the time?の違いはtheの有無だけですが、意味は違ってきます。
前者は「お時間ありますか、今大丈夫ですか」という意味ですし、後者は「(今の)時間がわかりますか」と質問するときに使います。
さらに言えばこれをhave a timeとすると、不可算名詞timeに冠詞aがついているので文法的に誤っている文になります。
このように日本人には聞き取りづらいaやtheの有無で意味が変わってきたり、そのほかにもlightとright、thingとsing、burnとbarnなどカタカナにすると同じ音になってしまう単語があったりしますので、必ずスクリプトを見て自分がどんな文を練習しているのかを確認しながらなるべく正確に発音するようにしてください。
2. 聞こえた通りに発音する
文字を見るとどうしてもスペルの通りに発音したくなってしまいます。
get upは「ゲット・アップ」ではなく「ゲラップ」と発音する、Did you ~?は「ディド・ユー」ではなく「ディジュー」と発音することは学校でも教わった人が多いと思います。
また、バラエティ番組やインターネットの記事で「パリピ」「パーリーピーポー」なんて言葉を見たり聞いたりすることもあると思います。実際にpartyは「パーリ」、peopleは「ピーポゥ」と発音した方がネイティブ発音に近くなります。
同様にa littleなら「ア・リトル」ではなく「アリロゥ」とか「アリル」のように聞こえますし、betterも「ベター」よりも「ベダ」や「ベラ」の方が近いです。
折角ネイティブをお手本に発音練習をするのですから、徹底的に真似しましょう。
「ア・リトル」「ベター」と発音している間はa littleもbetterも聞き取れません。
逆に言えばネイティブと同じように発音できるようになったときに、ネイティブの言っている英語が聞き取れるようになります。
正確な発音の仕方を勉強したことがない人はよい機会ですので、ここで一度発音の本を読んでみるとよいでしょう。
私が今、一から発音の勉強をするとしたら明場由美子さんの「ネコろんで学べる英語発音の本」を買います。
一つ一つの発音の仕方がわかるのはもちろん、日本人に紛らわしい発音の区別やリエゾン(単語と単語の繋げ方)、省略や脱落までわかりやすく解説されていますので発音とリスニングの両方を鍛えることができます。
余談ですが明場由美子さんのYoutubeチャンネル「Yumi’s English Boot Camp」もとても英語学習の参考になりますよ。
リピーティングとシャドーイングの両方を行う
リピーティングもシャドーイングも、片方だけやっているとつい出来ているつもりになってしまいます。
リピーティングで思いっきりカタカナ発音しているのに直していなかったり、シャドーイングでうまく発音できずにモゴモゴと誤魔化しているのに気にせずに先に進めてしまったりということがよく起こります。
周りに発音をチェックしてくれる人がいれば問題ありませんが、一人でやるときは出来る限りお手本に近い発音ができるようになるまでリピーティングとシャドーイングの両方を繰り返すようにしましょう。
ステップ2 スクリプトを見ないでシャドーイング
慣れてきたらスクリプトを見ないでシャドーイングをしてみましょう。シャドーイングはリスニングへの集中力を高めるために非常に有効な手段です。
文章を読むときに黙読するよりも音読するほうが深く理解できるように、ただ英文を聞くだけよりも発声してみた方が深く理解できます。
このときに自信を持ってシャドーイングができている部分が正しく聞き取れた部分で、何となく発音して誤魔化した部分が聞き取れていない部分です。
厳しく自己採点して弱点を見つけましょう。
知らない単語が使われているのかもしれません。
苦手な文法や構文が使われているのかもしれません。
カタカナ発音から脱却できていないのかもしれません。
いずれにせよ大切なことは、次回は聞き取れるようにすることです。
意味がつかめない部分やうまくシャドーイングできない部分は必ずスクリプトを確認し、リピーティングとシャドーイングを駆使して弱点を克服してください。
ちなみに私はリスニングテストを受けるときにこっそりとシャドーイングをしています。もちろん口を動かすだけで声は出しません。
リスニング問題の演習中に前の問題のことをひきずってしまったことはありませんか?
いつの間にか問題と全く関係ないことを考えてしまっていたことはありませんか?
私はたまにあります。
こうなると焦りが焦りを呼んでしまい、今解いている問題も次に解く問題も壊滅的になってしまいます。
リスニング本番では余計なことを考えずに、今流れている放送に集中することが最重要です。私はそのための対策として、無声シャドーイングをしています。
そうすることで余計なことを考えずに、放送されている英文を理解することに集中できるからです。
音を出さないので禁止事項にはあたりませんし、試験監督に注意されたこともありません。
どうしても気になるのであればマスクをしていけば大丈夫です。思わず声を出してしまわないようにだけ気をつけてください。
シャドーイングに関するQ&A
非常に効率の良いトレーニング方法ですが、シャドーイングを始めたばかりの学習者がこの3つをゼロから鍛えようとするのは負荷をかけすぎです。まずは少しずつシャドーイングに慣れることから始めましょう。
最初は個々の単語の意味も発音のしかたも文全体の意味も先に全部調べて頭に入れてから、英文を見ながら発声だけにフォーカスしてください。
発声がついていけるようにならないといつまでも正確にシャドーイングできるようにはなりませんし、更に言うと聞き取れるようにも意味が理解できるようにもなりません。
逆に言うと発声がしっかりできるようになれば、英文を聞き取って内容を理解できるようになるまでほとんど時間がかからなくなります。
発声で注意することはディダクション(音の省略)とリエゾン(音の連結)です。
たとえばDuo 3.0にはmy dad drops in on me「お父さんが(私のところに)ふらっとやって来る」というフレーズがありますが、これを発声するときには「マイ・ダッドゥ・ドゥラップス・イン・オン・ミー」と一つ一つ区切ったりはしません。
「マイダーッドゥラップスィノンミー」のように一息で発声してしまいます。
ダッドゥのドゥを後ろのドゥラップスと合体させ、その他の単語も繋げて発音するのです。
リスニングができるかどうかはこのようなディダクションとリエゾンに対応できるかどうかが大半を占めています。
コツとしてはお手本を聞く前に力を抜いて単語の間にポーズを挟まずにゆっくりと「まーいだーっどどぅらーっぷすいーんおーんみー」とお経のように何度も繰り返してみてください。
このときrとl、sとth、bとvなどをしっかり区別して発音すること、アクセントの箇所を少し伸ばし気味に発声すること、5~6語のフレーズなら一息で発声できるようにすることがポイントです。
これをなめらかに発声できるようにしてからシャドーイングを繰り返すと少しずつどこに強弱をつけているか、どこを省略しているか、どのように連結させているかわかるようになります。
最初はこの練習を繰り返して、徹底的に口が回らないフレーズやブツ切れになってしまうフレーズをつぶしてください。
発声をネイティヴに近づけることができると、リスニング能力が飛躍的に向上します。
一発で聞き取れないとしても、スクリプトを見れば納得できるようになったり、少ない回数の練習で苦手箇所が聞き取れるようになったりします。
英文の意味を聞きながら考える練習はこの段階に達してから始めても遅くありません。
外国語として何かの言語を学ぶ場合、ほとんどの人はリスニングのレベルがリーディングより大きく劣ります。そしてスピーキングのレベルはそれよりも遥かに下です。
母国語として乳幼児期から親しんでいる場合や聴覚情報の処理に優れた一部の人を除いて、読んで理解できない文章は聞いても理解できません。
しかも何度でも読み直すことのできるリーディングと違ってリスニングは聞いた瞬間に音が消えてしまいます。つまり1回読むだけで理解できるような文章でなければ、聞いて理解するのはほぼ不可能ということです。
言いかえればリスニングの勉強というのは、リスニングのレベルをリーディングのレベルに近づけられるようにすることだということです。
ですからシャドーイングで手応えや成長を感じるためには、最初はスクリプトを読めば一瞬で意味がわかるレベルの英文を使うことが重要になります。
レベルアップしてからも1度聞けば8割程度は意味がわかるような英文が良いでしょう。負荷をかけるとしても単語を1つ2つ調べて2~3回読み直せば意味がわかるような英文までです。
パッと見たときに文全体の意味がつかめないような英文や、1文の中に3つも4つも知らない単語が入っているような英文は最初からリスニング教材には向いていません。(ただし徹底的に知らない内容を調べて構造も意味も完璧に理解したあとで発声&聞き取りの練習に使うのであればアリです)
以上を踏まえてお勧めの教材としては、英検の自分が合格できるよりも1つか2つ下の級の過去問(公式HPで無料でダウンロードできます)、NHKラジオの基礎英語やラジオ英会話を挙げておきます。
単語も知っていて英文の意味もわかる分、リスニングと発声の課題が浮き彫りになります。おそらく最初は予想外に簡単な単語が聞き取れなくて悔しい思いをすると思います。
たとえばasked herは人によっては「アスクトゥ・ハー」ではなく「アースタァ」のように発音されることがあります。(というより「アスクトゥ・ハー」と発音する人の方が少数派でしょう)
このときに「アスクトゥが聞きとれない!」「ハ-に聞こえない!」と言っていてはいつまで経ってもリスニングは上達しません。
そもそもkもhも発音していませんから聞き取れるわけがないのです。
例えて言うなら外国人の方が「あの店員さんの『いらっしゃいませ』の『い』と『ま』がどうしても聞きとれない。どうやったら聞き取れるようになるのか教えて」と言っているようなものです。聞こえないも何も、最初から「らっしゃーせー!」としか言っていません。
聞き取れない部分は「自分にとってアースタァと聞こえたらasked her」というように自分なりの発音データベースを作っていく必要があるのです。
これを地道に続けていくと、「トウルダァ」と聞こえた時にはtold herではないか、「ウィザァ」と聞こえた時にはwith herではないかと想像できるようになってきます。
初級者~中級者の場合、自分が思っていた音と実際に発音される音の違いを理解し、正確な発音を理解するための手段としてシャドーイングを活用することをお勧めします。
その意味では手元に適切なレベルの単語集があるのであれば、それを使って練習する方が効率がよいでしょう。
単語集の場合、例文の中に一定水準以上の難しい単語が含まれていない、和訳がすぐに参照できる、代名詞の内容をほとんど考えなくて良い、音源の頭出しが比較的簡単というメリットがあります。
ある程度発声に自信がついてからは正確なスクリプトが入手できる音源であれば何でも構いません。ただし何を言っているか全然わからないような音源に手を出すと挫折する可能性が高くなります。
A2&3にも書きましたが、初心者は1度読んだだけで意味がわかるような英文を使って発声に集中し、中級者は初めて聞いた時に8割程度わかるものを使って残りの2割を発声できるようにする&聞き取って意味がわかるようにするというトレーニングを繰り返した方がよいでしょう。
ちょっと考えてみてもらいたいのですが、お坊さんのお経を何百回、何千回とシャドーイングしたらどのような効果が得られるでしょうか。確かにお経は完コピできるかもしれません。スラスラと淀みなくお経を読み上げることはできるようになるかもしれません。
しかし、それだけでお経に込められた内容が理解できるようになっているでしょうか。お経の一節を引用して人前で説法ができるようになるでしょうか。少なくとも私は百万回シャドーイングしたとしてもお経を解読できる自信はありません。
英語でもシャドーイングを単に声マネするだけの作業にしている間は残念ながら上達は望めません。
最低限どのようなシチュエーションで使っているのかが分かれば一言フレーズとして使えるようにはなりますが、意味さえも確認しないままだと発音練習をどれだけやっても使い方がわかるようになりません。
シャドーイングに限らずですが、リスニングの勉強とは音と単語を一致させるトレーニングです。まずは単語やフレーズが正確に聞き取れるようになることが最重要です。単語やフレーズが聞き取れるようになれば文全体が聞き取れるようになります。
このときに聞き取れた英文が自分のリーディング能力に収まる文であれば意味がわかるということなのです。
ですからリスニングのトレーニングをする際には必ずスクリプトを用意して聞き取った音が正しく単語に変換できるかを確認してください。
聞き取れなかった部分は音と単語が一致するようになるまで聞き直してください。このときに最も効果のある方法はお手本そっくりに発声することです。
もちろん意味を知らない単語やフレーズは調べて覚えることも忘れずに。
まずシャドーイングがTOEIC等の得点アップにどれだけ効果があるかという点ですが、トレーニングの1つとしては大きな効果がありますが、これだけをやっていれば大幅に得点が上がるというものではありません。
TOEICや英検といった試験の場合、リスニングで要求される能力は3つあります。
1つ目は放送を聞き取って意味を把握する能力、2つ目は設問や選択肢の意味を素早く読み取る能力、3つ目は放送内容から質問に該当する部分を探し出す能力です。
このうちシャドーイングで鍛えられるのは1つ目の「聞き取って意味を把握する能力」です。残りの能力を鍛えるには文法力や語彙力、速読力を鍛えなければなりませんし、同意表現の知識も重要になります。
A1~4の繰り返しとなりますが、「スクリプトを読めば意味がわかるし正解も選べるけれども、音声に聞き取れない部分がある」という問題を解決するのにはシャドーイングが非常に効果的ですが、「そもそもスクリプトや選択肢を読んでも1度では意味がわからない」という場合は単語の意味を覚えて英文の意味を正確に把握できるようにすることも必要です。
特に放送された英文の意味を「えーと何だっけ」と考えているとその間にどんどん話が進んでしまい、内容がわからないまま問題が終わってしまいます。
TOEICのリスニング対策であれば、例えばdeficitを見た瞬間に「赤字」、reimburseを見た瞬間に「払い戻す」という意味が正しい発音とともに浮かぶようにし、一度解いた問題集のリスニングのスクリプトや選択肢は即座に内容が理解できるようにしておきましょう。
次にインタビューやニュース等の聞き取りですが、聞き取りたい分野の英文を使ってリスニングのトレーニングする必要があります。TOEICや英検、市販のリスニング教材を使ったトレーニングというのは言わば基礎を身につけるための筋トレのようなものです。
どれだけ筋肉を強化したとしても、それだけでは野球でもテニスでも空手でも試合に出て活躍するのは無理でしょう。
教材の英語は基礎を身につけるには非常に優れているのですが、身につけた基礎をどのように応用できるようにするかはまた別に考えなければなりません。
単純にスピードだけでもTOEICや英検の音声はニュースやインタビューに比べてかなりゆっくりと喋っていますし、A1で書いたリエゾンとリンキングもかなり手加減されています。
そして誤解している人が多いのですが、英語がわかるだけでは英文の内容を理解するのは困難です。
たとえば日本語で「税制メリットを享受しなら資産運用」とか「財務長官に米連邦準備制度理事会の前議長を起用」とか「全集中!水の呼吸 漆の型 雫波紋突き・曲」とか言われても、元々の知識がなければ何について話しているのかよくわからないですよね。
TOEICのリスニングをいくら頑張っても、ニュースに出てくるような政治経済に特化した話題はありません。
「共和党の候補は大幅な減税を掲げて選挙戦を戦っているが、これに対して民主党の大物上院議員からは富裕層優遇の政策で経済的弱者を軽視しているという批判が挙がっている」なんて問題は、少なくとも私は聞いたことはありません。
またインタビューやドラマの場合だと、gonnaやwannaなどの省略表現、That sucks!「それ最悪だな」とかCut the bullshit!「デタラメを言うな」といったスラングなど、およそ教科書や受験参考書には載っていないようなフレーズがよく出てきます。
ニュースにしてもドラマやインタビューにしても、聞き取りの精度を挙げたいのであればその分野でよく使われる語句を中心に背景知識を身につけることが必要です。
ニュースを聞き取れるようになりたければニュース素材を、ドラマを聞き取れるようになりたければドラマ素材を使って聞き取る練習をしてください。
インタビューを聞き取りたければその人が所属する業界に関する基礎知識を身につけておきましょう。
ただし「味気ない教材の英文よりも、ニュースやインタビューなどの生の英語の方が勉強していて楽しい!」という人はそれもアリだと思いますが、「ちょっと難しくて手が出ないな」という人の場合は学習用教材を使って基礎を固めてから生の英語にステップアップした方がよいでしょう。
A1~5で書いたような内容は理解できていて、教材の音源は聞き取れるけれどもドラマやインタビューになると聞き取れない箇所があるという前提でお答えします。
学習用の音源と違って、ドラマやインタビューの場合には発言した内容と字幕が異なることが多々あります。
例えば実際の発音はcame out ofなのに字幕ではcame fromになっている、I’m gonnaと言っていた部分がI’llにされている、Dr. Smith, could you please …?と言っているのに字幕ではPlease ….に省略されているといったことがよくあります。
字幕を画面内に納めるために修正した部分もあるでしょうし、台本を元に字幕を作ったら撮影中に変更になっていたというケースもあるそうです。元々の発言が言い間違いで、字幕を作る時に正しい言い方に直したということもあるかもしれません。
私がよく視聴するYouTubeのニック式英会話では、なんとネイティヴであるニック先生でさえ次のように解説している箇所があります。
「次のところは僕でも本当にびっくりしたんですけど、gonnaをgaとだけ言っています。これは驚きですね」(https://youtu.be/ggMO25WRpEQ?t=784)
ここまでくると、非ネイティヴが100%理解するのはほぼ不可能な領域です。
いずれにせよ内容的に聞き取れているのであれば最大の目的は達成できていますし、曖昧な発音のしかたは非ネイティヴが真似するべきではありません。
何度聞いてもわからない、再生速度を落としても判別できない箇所は一旦無視して進めてOKです。
どうしてもわからない難解なセリフを30分かけて1つだけ解読するよりも、2~3分で理解できるような少しだけ難しいセリフを10個マスターした方がトータルの英語力は上がります。半年、1年と続けていくうちに自然と理解できるようになっているかもしれません。
何よりもドラマやインタビューを使った学習は「楽しい、続けられる」というのが最大のメリットですので、調べるのが面倒だとか全然理解できないというときには「そのうち分かるようになるだろう」と割り切ってスキップしてしまうのも悪くない選択です。
遮音性の高いイヤホンを使えば左耳はお手本の声だけが聞こえますし、右耳は自分の声だけが聞こえます。(もちろん左右逆でも全然問題ありません)
意識を向ける対象ですが、最終的にはお手本の音声と自分の声の両方に集中できると理想的ですが、実際にはかなりの熟練が必要になります。
2つの作業を同時に行うわけですから、聞き取りだけ・発声だけに集中したときよりも精度が下がって当然です。無理に両方を同時にやろうとするとどちらも中途半端になってしまいます。
ですから最初は両耳ともイヤホンをつけて聞き取りに集中して自分の発声は録音してチェックするか、同じ音声でシャドーイングとリピーティングを交互に行うというのもアリでしょう。
むしろ自分の声だけを聞く方がおかしな部分がわかりやすくなります。
ただしこの方法も完璧にやろうとすると負担が大きくなってしまいますので、シャドーイングをしながら「今のところは口が回っていなかった」とか「今のところは聞き取れたか自信がない」と思ったところだけを録音したりリピーティングしたりする程度に留めても問題ありません。
TOEICや英検などの試験勉強で大幅に知識を身につけた人もいれば、多読で英語がわかるようになったという人もいますし、ドラマでネイティヴ並の発音ができるようになったという人もいます。
発声の向上だけならリピーティングしたものを録音してお手本と聴き比べたほうが効果があるでしょうし、細部の聞き取り能力を向上させたいのであればディクテーション(書き取り)を頑張ったほうが効果は高いです。
一番大事なことは「継続できること」です。そして継続するためには「興味が持てること」「効果が実感できること」が欠かせません。継続さえできるのであれば勉強法を次々に変えていくのも悪いことではありません。
質問者さんがシャドーイングをやっても効果がないのではないかと感じておられるのであれば、シャドーイング以外の方法を中心に学習するのが一番良いと思います。
ではなぜシャドーイングを勧めるのかですが、これはリスニングの処理能力の向上に最も効果的だからです。他のリスニングのトレーニングと違い、シャドーイングでは休む暇なく聞き取りと発音を続けていくことができます。
1文1文止めながら理解度を確認するリピーティングやディクテーションでは、休止のタイミングで聞き取れなかった音がどんな単語かゆっくりと推測したり、文の意味をじっくり考えたりすることが可能です。
これはこれで正確さを高めるには重要なことなのですが、一方で英語を日本語に直してから考えてしまうというクセが抜けにくいという弱点もあります。
この点シャドーイングはコツをつかめると5分でも10分でも30分でもひたすら英語だけに集中することが可能です。というよりも日本語であれこれ考え始めると英文についていくことが難しくなります。
英文を聞いた瞬間に発音を分析する、発音した瞬間に意味を把握するという2点を意識しながらシャドーイングのトレーニングを繰り返すと英語を英語のまま理解する能力が飛躍的に高まってきます。
ぜひ節目節目で英語の勉強法を見直すときにシャドーイングで効果が実感できるかを確認してもらえればと思います。
次回の記事ではもう一つの手法である「ディクテーション」の効果的なやり方を解説します。