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全国通訳案内士の試験難易度と仕事の魅力、合格者が教えます!

今回は全国通訳案内士の資格試験を一発で合格し、資格を活かしてツアーガイドをしている私が、実際に勉強してわかった難易度や試験の難しさ、対策方法をご紹介します。
合わせて後半では、全国通訳案内士のリアルな年収データや、実際の仕事の魅力も解説します。

全国通訳案内士の資格に少しでも興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

著者プロフィール
早稲田大教育学部地理歴史学科を卒業後、高等学校の社会科教師になる。

初めての学級担任でアメリカから留学生を受け入れ悪戦苦闘するが、1年間で英語をマスター。その後英語の教員免許も取得し、高校の英語の教員に転身。

高校で長年にわたり英語検定の2級・準2級の指導をし、自身も1級を目指し学習。
55歳で英検1級に合格。TOEIC930点、全国通訳案内士も取得し英語三大資格試験を制覇。

現在は、資格を活かして外国人ツアーのガイドとして勤務しています。

全国通訳案内士の資格を取ろうと思ったきっかけ

2018年1月に通訳案内法が改正され、無資格でも外国人を案内して報酬を得ることが可能になりました(それまでは、国家資格の「全国通訳案内士」の資格なしで報酬を得た場合は違法とされていた)。

高校の教員として英語を教えてはいましたが、英語を実践で使ってお金が稼げたらと常々思っていました。
受験当時はこの資格がなければ通訳ガイドとしてお金を稼ぐことはできなかったため、是非とも欲しい資格でした。

また、「英語三大資格試験を制覇したい」とも思い、2015年に受験をしました。

全国通訳案内士は英語の試験で唯一の国家資格なのも魅力です。
英検1級やTOEICと比べると、受験科目数が多く、2次試験の難易度が高いのでチャレンジのしがいがある試験です。

資格試験について

どんな試験なのか?

1次試験が8月、2次試験が12月に行われます。2次試験は口述試験です。
英語も含めて10の言語に対応した資格試験です。

私の場合、全国通訳案内士試験(英語)に合格したことになります。
英語の場合、1次の受験科目は「英語・日本地理・日本歴史・産業・経済・政治及び文化に関する一般常識・通訳案内の実務」の5科目になります。

試験はすべてマークシート方式です。1次試験が5科目もあり、1科目でも合格点に達しない科目があると2次試験に進めないため非常に厳しい試験です。

ただ、合格した科目は翌年度に限り免除になるので、もし不合格になった科目があった場合は、翌年に不合格科目だけを受験すれば良いことになります。

また、英検1級又はTOEIC900点以上で英語の1次試験が免除になる制度もあります。

日本地理が「旅行業務取扱管理者」、日本歴史が「大学入試センター試験 日本史B60点以上」、一般常識が「大学入試センター試験 現代社会80点以上」など、資格や試験で免除される制度もあります。

一度に5科目は負担が大きいので受験科目を減らせると合格しやすくなります。
旅行会社にお勤めの方は、旅行業務取扱管理者を持っている方も多いと思います。
資格を利用して受験してはいかがでしょうか。

試験の詳細については、JNTO(日本政府観光局)のホームページを御覧ください。
参照:https://www.jnto.go.jp/projects/visitor-support/interpreter-guide-exams/

ちなみに私は、TOEICのスコアを利用して英語の1次試験が免除されたので受験の負担が少し減り、幸運にも一発合格をすることができました。

英検1級やTOEIC900点以上の方は受験科目が減るので、一度受験してみると良いと思います。

合格してわかった実際の試験難易度は?

難易度はかなり高いと言わざるを得ません。

他の英語資格試験は英語だけの試験ですが、この試験は英語以外に、地理や歴史、一般常識などの試験があり、勉強することがたくさんあります。

合格率は、2020年10.4%・2021年8.5%・2022年17.4%(JNTO資料)とかなり低いことがわかります。

どんなことが出るの?

では、どんなことが出題されるのでしょう?科目ごとに見てみましょう。

英語

読解問題や和訳問題、語句の説明問題などが出題されます。

問題文に出てくる単語は英検1級と比べるとかなり易しいですが、日本の観光地や文化、習慣などを英語で説明する問題がたくさん出題されるため、英語力にプラスして幅広い知識が必要です。

難関の英検1級に先に合格し英語免除で負担を減らしてから受験するか、幅広い知識を必要とする本試験を受けるのかは悩ましいところです。

日本地理

私は大学の地理歴史学科出身で、地理学を専攻していたため、日本地理は簡単だろうと考えていましたが、実際には意外にも苦戦しました。なぜなら、奇問が出題されたからです。

私が受験したときには「千円札に描かれている富士山は、富士五湖の内どこの湖から眺めた富士山か」とか、「次の宿坊の中で、奥の院ナイトツアーを実施しているのはどの宿坊か」などといったマニアでなければわからない問題が出題されました。

英語以外の合格点は60点あまりなので、観光地を主に基本的な日本地理の勉強をして基本問題を得点し、こういった奇問については運に頼るしか有りません。

日本歴史

歴史の問題にはあまり奇問が有りませんので、高校の日本史の教科書などを手に入れ地道に勉強することが大切です。

一般常識

一般常識も侮れません。
私の受験したときには「シャワトイレの一般家庭普及率は次のうちどれか」という問題が出ました。
カンで答えたら当たったのですが、この出題にはびっくりしました。

一般常識問題は、例えば「工場夜景サミット」など最近話題になったことを新聞で日頃からチェックしておくしかないと思います。

通訳案内の実務

私が受験したときにはなかった科目です。
通訳案内の現場で求められる知識が問われます。
観光庁が作成したテキストが観光庁のホームページにあって、そこから出題されるようです。

2次試験

1次試験の科目にすべて合格したら2次試験です。試験官は日本人と外国人の2人です。
2次試験には2つのパートがあります。1つはプレゼンテーションで、2つ目は逐次通訳です。

プレゼンはお題の書かれた3枚のカードが与えられ、その場で1枚を選び30秒間でプレゼンの準備をします。
プレゼンは2分間です。続いてプレゼンした内容について質問をいくつかされます。
英検の1級と似た形式ですがテーマが観光地や日本の文化になっています。

私が受験したときには「東海道五十三次」「高山祭り」「殺陣」の3枚でした。「東海道五十」三次を選びプレゼンしました。

逐次通訳は、試験官が200字程度の日本語を読み、それを英語にします。紙と筆記用具が用意されているのでメモができます。
この逐次通訳がうまくいくかどうかはメモの取り方次第です。

どのような勉強が必要か?

この試験の難しいところは、すべての試験に合格しなければならないところです。

前述の免除科目を使うと負担が減りますが、複数年計画になります。年1回しか受験のチャンスがないのも合格を難しくしている理由です。

英語に関してですが、1次・2次ともに英語の力以外に日本の観光地や文化、習慣などの幅広い学習が必要です。

地理や歴史は高校で習ったことをもう一度勉強する必要があります。
さらに新聞を読んで教養を身につけるのが良いでしょう。

英語検定に比べて総合力が必要なのが、全国通訳案内士の試験だと思います。
無事に1次試験を突破しても安心できません。2次試験のプレゼンのトピックの準備が必要だからです。

8月下旬に1次試験、9月下旬に合否がわかり、12月の上旬に2次試験です。

1次試験で自己採点をし、ある程度の手応えを感じたらすぐに2次試験対策に取り掛かります。

プレゼン対策

ネットから過去のプレゼンテーマを洗い出し、出題されそうなテーマについて調査し、プレゼンの構成を考えます。

例えば「東海道五十三次」の場合は、

・53 statons on Tokaido
・Hiroshige
・ゴッホ
・ガイドブック
・Tokyo↔Kyoto 2weeks
・新幹線

といったメモを作りました。

この項目を徹底的に頭に叩き込み、項目を膨らませながら2分間喋りました。
文章にして覚えようとする人がいますが、本番では頭が真っ白になり思い出せません。

このようにして「東海道五十三次」「歌舞伎」「富士山」「浮世絵」というようにカードを作っていきます。

私の場合110のカードを作りそれぞれ練習しました。たくさん作っておくと類似のテーマに使うことができます。

例えば、「殺陣」は予想もしない出題テーマですが、「忍者」や「武士」を使って即興で組み立てれば対応ができます。

逐次通訳対策

逐次通訳はなかなか厄介です。読まれる日本文が長いため全部覚えることが不可能です。
ノートテーキングがほぼすべてを占めると行っても過言ではありません。

まずテレビのニュースを見ながらメモを取る練習をします。
プロの通訳は記号でメモするようですがやってみるとなかなか難しいです。

英語でメモするのか日本語かということもありますが、私は日本語でメモします。
もし可能なら、誰かに日本の文化などをまとめた文章をたくさん録音してもらうといいです。

私は、「英語で説明する日本の文化」(語研)を利用し、妻に日本語で録音してもらいました。
このテキストは、日本に関することを短い英文で説明しているので、逐次通訳の練習に役立ちます。

録音されたものを聞いてメモを取る練習をひたすらします。
メモさえ正確に取れればそれを英文にするだけなので後は簡単です。

この練習は通訳として活躍したい人にもおすすめです。

合格後の話

求人・仕事はどうやって探すのが一般的か?

今はインバウンドの急増で仕事がたくさんあります。

最初はフリーランスでやることは不可能なので、旅行会社から仕事をもらいます。通訳ガイドの協会もあるので所属してみるのも良いでしょう。

私は、インディードで会社を見つけ、現在アルバイトで通訳ガイドをしています。

本業とした場合の年収はどの程度見込めるか?

初めは仕事を直接受注できないので、8時間働いて1日の収入が1万5000円〜2万5000円ぐらいでしょう。

旅行会社などからガイド料をフルには貰えないからです。ツアーの大きさや拘束時間によっても収入は変わってきます。

問題は、ガイド専業で食っている人が実に少ないということです。

観光庁によると、資格を持っていて実際に仕事をしている人は10%余り、そのうち年間201日以上稼働する人が1.8%、年収400万円以上はわずか4.8%です。

稼働日数をかなり上げないと本業1本で食っていくのはなかなか難しいですが、私のように退職後や主婦をしながら仕事をしたいという人にはおすすめの仕事だと思います。

仕事の将来性はあるか?

インバウンドの増加で、通訳ガイドはますます不足するでしょう。

現在は無資格でも就業できますが、依頼側としては有資格者のほうが安心して仕事を任せられるでしょう。

無資格ガイドが野放しにされ、外国人旅行者が安心して旅行できないというのは国の制度としてどうかとも思います。

また、旅行のガイドだけでなく、国際会議の通訳や国際大会の選手団の通訳、海外企業視察のアテンドなど幅広く活躍場所があります。

英語力の証明として、また資格としても有用です。取得しておいて損はありません。

楽しい仕事

外国人の通訳ガイドはとても楽しい仕事で一度やるとやめられません。

もちろん案内をしたり、安全管理や食事のお世話もするので気を使いますが、英語で楽しくお話してお金をもらっている感じです。
無料の英語レッスン付きです。何よりお金をもらった上、とても感謝されます。
いつも”Thank you.” と言われとても楽しい仕事です。

お昼に美味しい食事をごちそうになったり、サービスに対してチップをいただけることもあります。ぜひおすすめです!

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