「離島留学」を知っていますか?
「留学」と言えば、日本を離れて言語や習慣の違う国で生活や勉強することをイメージするのではないでしょうか。
帰国した子どもの成長した姿を見ることは、ご家族にとって大変嬉しく魅力的なものです。
親元を離れて留学先でさまざまな経験をして成長することは、将来、進学や就職で有利になることはもちろん、人生のあらゆる場面でその経験が役立つことは間違いありません。
しかし、留学するためには海外に行かなければならないのでしょうか?
最近の国際情勢や感染症の流行などを考えると、子どもを海外へ送り出す出ることに不安を感じてしまいますよね。では、留学は諦めるしかないのでしょうか…?
実は、留学は日本にいながらにして可能なのです。その答えのひとつとして、「離島留学」を今回ご紹介します。
「離島留学」は「島留学」や「しま留学」とも呼ばれていますが、ここでは「離島留学」に言葉を統一してご説明します。
それでは、ここからは魅力あふれる離島留学について、詳しくご紹介したいと思います。
目次
離島留学とは
「離島留学」という言葉を聞いたことはありますか?
「離島留学」とは、簡単に説明すると、日本の離島に子ども(または親子)の住民票を移して、その地域の学校に通学する国内留学のひとつのスタイルで、過疎や少子化の問題を抱える離島の問題解決を目的とした山村留学の一種です。
近年では受け入れ校も、離島留学を希望するご家庭も年々増えてきていると言われています。
離島留学のメリット
離島留学には、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは離島留学の優れた特徴をご紹介します。
- 豊かな自然や農村や山村、漁村での暮らしを体験できる
- 都会では体験できない島ならではの、自然環境で生きる力を育むことができる
- 過疎地域や集落の活性化に貢献できる
- 島特有の文化や伝統行事を体験することができる
- 学校での少人数教育を受けることができる
- 親元から離れて暮らすことで自立心が芽生える、自立を促すことができる
- 小規模校での集団生活によって、連帯感や責任感を養うことができる、など
島特有の文化や新しい環境や人間関係のなかで、寮や里親さんのもとで自立した生活を体験できます。また、離島留学では児童や生徒の人数が少ない学校が受け入れ先になるので、少人数教育を受けられることでも注目が高まっています。
そのため、あえて海外に留学しなくても、日本国内で日本の教育を受けさせながら、子ども達が成長することは十分に可能なのです。
子ども達の生きる力を育むことができることは、離島留学の大きな魅力と言えるでしょう。
離島留学のデメリット(課題や不安点)
メリットの多い離島留学ですが、やはり課題もあります。受け入れ校では事前に本人と家族との面談や現地見学、体験入学を実施していますが、それでも留学を途中で中断してしまうケースがあるそうです。
以下に、よく見聞きされるデメリットをお伝えします。
- 親元を離れることによる不安やストレスを解消できず、ホームシックにかかったり体調を崩したりしてしまう
- 環境の変化に慣れることが難しかったり、新しい環境に適応することが難しかったりする場合がある
- 中学受験や高校受験を考えている場合、留学時期など慎重に決める必要がある
- ストレスから摂食障害や登校拒否、情緒不安定などになってしまい、留学を中断することになったケースもある
- そもそも子ども本人が離島留学を希望していない
年度途中で留学を中断して家に戻ってしまうケースや、素行問題のある子どもや情緒不安定な子どもを受け入れたことで、受け入れ先が混乱してしまったケースも聞かれます。
やはり子ども自身が留学を希望して、子ども主導で計画をしなければ問題が多く見られてしまうようです。
たいていの場合は、周囲の理解とサポートによって乗り越えることができるようですが、不安や問題を自分だけで抱え込まず、自分から発信し解決していけるだけのコミュニケーション能力は最低限必要に感じます。
また、不登校の解決を目的とし、転地療法として離島留学を検討する場合は、寮や里親宅での集団生活と学校生活を送る意思が子ども自身にあることが重要です。
不安がある場合は、子どもだけを留学させるのではなく、親子で島へ移住する親子留学ができる自治体を探すことも念頭に置いて検討することをおすすめします。
親子で住民票を移す場合は、自治体によって住宅支援やUターン、Iターンなどの就職活動に関わる情報提供などさまざまな支援が受けられる場合がありますので、ぜひ検討してみてください。
離島留学の募集対象は?
小学校、中学校、高等学校で児童・生徒を募集します。例年、夏頃から翌年度の募集を開始する学校が多いです。
小学校・中学校の募集は全国から募集することが多いですが、東京都など一部の高等学校では募集地域を限定しています。
在校生の学年、性別によって募集する学年や性別が限定される場合や、受け入れ先の寮や里親宅の状況によって募集状況が変更される場合もあります。
留学期間は?
通常は、4月から3月までの年度単位での留学を想定または原則としている学校が多いです。年度が替わる時には、継続の希望があればそのまま継続できるケースが多いようです。
中には継続可能かどうか再度審査が必要な学校もあります。短期間の受け入れとして一学期間だけ受け入れている学校もあります。
お試しとして参加して、そのまま長期へ変更するケースも見られます。その他、実施状況によっては年度途中での受け入れが可能となる場合があります。
離島留学にかかる費用は?
通常、留学中の学校に関わる費用やお小遣いなどの生活費、寮費またはホームステイ費用や帰省時の交通費などは、実親が支払います。
一例ですが、子どもだけが留学する場合、実親が負担する費用は学校に関わる費用と生活費、滞在費として月額3万~10万円程度になります。
自治体によって滞在中に必要な費用や帰省費用を一部負担する助成制度を設けている場合もありますので、自治体の助成金額によって費用に差が出ます。
離島留学の受け入れ体制について4パターンの紹介
ここでは、離島留学のタイプ(型)についてご紹介します。子どもだけの受け入れは行っていない自治体もあります。希望先の地域の受け入れ体制を必ずご確認ください。
里親型(ホームステイ)
島の里親のもとから通学します。ひとつの里親宅に複数の留学生が生活することもあります。その場合は留学生が兄弟姉妹のような関係になったり、また、里親の子どもと一緒に生活したりする場合もあります。
ホームステイなので里親さんがその島での親と考えて、その家の子どもになったつもりでお手伝いをするなど、家庭的な雰囲気の中で自立心を養うことができます。
合宿型(寮生活)
島内の寮や合宿所などから通学します。寮や合宿所では、寮母さんや寮の管理人さんが一緒に生活して、子ども達の生活や健康管理をしてくれます。
規律正しい共同生活の中で、自分で洗濯をしたり自室の掃除をしたり、身のまわりのことを自主的に管理できるようになります。
親子型(親子で移住)
親子で島に移住して通学します。親は新しくその土地で仕事を探したり、リモートワークで仕事を続けたりしながら、子どもは地域の学校へ通学します。
自治体によっては、住まい探しのサポートや家賃補助などの支援があります。
孫もどし型
島の祖父母宅から通学します。祖父母宅から通学することは子どもにとってストレスも少なく、新しい環境にスムーズに馴染むことができるでしょう。
離島留学を受け入れている学校一覧 【小学校・中学校】
ここからは、国土交通省ホームページに公開された、令和5年度離島留学生を募集していた小学校や中学校をご紹介します。
小学校や中学校の離島留学制度は、それぞれの自治体によってさまざまな呼び名がついています。
鹿児島県中種子町の「種子島うみがめ留学」や、愛媛県上島町魚島の「魚島さざなみ留学」、島根県西ノ島町の「西ノ島しまっこ留学」など、海や島を連想させる事業名が付いている地域もあります。
離島留学小学校・中学校編
新潟県
- 佐渡島 松ヶ崎留学 松ヶ崎小中学校
- 佐渡島 海府夢のさと留学 内海府小中学校
- 粟島 しおかぜ留学 粟島浦小中学校
三重県
- 答志島 寝屋子の島留学 鳥羽市立答志小学校・鳥羽市立答志中学校
兵庫県
- 沼島 離島留学 沼島小中学校
岡山県
- 笠岡諸島 はぐくみ留学 六島小学校(計画中)・真鍋中学校(計画中)
愛媛県
- 魚島 さざなみ留学 魚島小学校魚島中学校
島根県
- 知夫里島 島留学 知夫村立知夫小中学校
- 西ノ島 しまっこ留学 西ノ島町立西ノ島小学校、西ノ島中学校
- 海士町 親子島留学 海士町・福井の各小学校、海士中学校
福岡県
- 地島 漁村留学 地島小学校
佐賀県
- 小川島、加唐島、馬渡島、高島 からつ七つの島留学
小川小中学校、加唐小中学校、馬渡小中学校、高島小学校
長崎県
- 壱岐島 いきっこ留学 壱岐島の小・中学校
- 新上五島町(中通島) くらしの学校「えん」しま留学 北魚目小学校
- 新上五島町(中通島、若松島)新上五島町しま留学
若松中央小学校、若松東小学校、青方小学校、上郷小学校、魚目小学校、北魚目小学校、有川小学校、東浦小学校、奈良尾小学校、若松中学校、上五島中学校、魚目中学校、有川中学 校、奈良尾中学校
- 奈留島 しま留学生 奈留小中学校
- 久賀島 しま留学生 久賀小中学校
- 対馬島 島っこ留学 対馬島の小・中学校(小規模校)
- 小値賀島 ふるさと留学 小値賀小学校・小値賀中学校
鹿児島県
- 与論島 与論町ふるさと留学 与論中学校
- 種子島 宇宙留学 南種子町の小学校(中平小学校を除く)、南種子中学校
- 徳之島 ふるさと留学 手々小中学校/山小・中学校
- 徳之島 天城町山海留学
岡前小学校、与名間分校西阿木名小学校、西阿木名小学校三京分校、西阿木名中学校
- 種子島 うみがめ留学 中種子町立岩岡小学校中種子町立星原小学校
- 種子島 種子島しおさい留学
西之表市内の小学校(榕城小学校および下西小学校を除く)
- 沖永良部島 えらぶゆりの島留学 上城小学校
- 奄美大島 今里小学校親子留学 今里小学校
- 与路島 与路小・中学校留学里親制度 与路小・中学校
- 奄美大島・加計呂麻島・与路島・請島 にほんの里・加計呂麻留学
古仁屋小学校・古仁屋中学校・阿木名小中学校を除く瀬戸内町内の各小・中学校
- 十島村山海留学
宝島小・中学校、平島小・中学校、中之島小・中学校、諏訪之瀬島小・中学校
小宝島小・中学校、口之島小・中学校、悪石島小・中学校
- 硫黄島しおかぜ留学 三島硫黄島学園
- 竹島しおかぜ留学 三島竹島学園
- 黒島しおかぜ留学 三島大里学園
- 黒島しおかぜ留学 三島片泊学園
- 甑島ウミネコ留学 鹿島小学校
- 屋久島町口永良部島 南海ひょうたん島留学 屋久島町立金岳小学校、金岳中学校
- 屋久島町屋久島 かめんこ留学 屋久島町立永田小学校
- 屋久島町屋久島 まんてん留学 屋久島町立栗生小学校
- 屋久島町屋久島 じょうもん留学 屋久島町立八幡小学校
- 屋久島町屋久島 屋久島黒潮留学 屋久島町立一湊小学校
- 奄美市奄美大島 奄美くろうさぎ留学
- 知根小学校、崎原小中学校、芦花部小中学校、住用小学校.住用中学校、市小中学校、手花部小学校、屋仁小学校、佐仁小学校
- 宇検村奄美大島 親子山村留学 阿室小中学校
- 宇検村奄美大島 親子山村留学 名柄小中学校
離島留学を受け入れている学校一覧 【高等学校】
過疎化の進む山間部や離島にある高校が全国から、または、地域限定で生徒を募集し、県外や島外からその学校で学ぶことを総称して「地域みらい留学」と呼ばれています。
中学卒業後3年間地域で過ごす「地域みらい留学 高校進学」、高校2年生時に一年間地域で過ごす「地域みらい留学 高2留学」という2つの留学スタイルがあります。
地域みらい留学に指定されている高校は北海道から沖縄までさまざまな地域にありますが、その中から今回は離島にある地域みらい留学の高校を紹介します。
離島留学 高等学校編
北海道
- 礼文島 礼文高校魅力化プロジェクト 北海道礼文高等学校
- 奥尻島 島留学 北海道奥尻高等学校
- 天売島 天売高校生徒募集事業 北海道天売高等学校
新潟県
- 佐渡島 地域みらい留学 新潟県立羽茂高等学校
東京都
- 八丈島 島外生徒受け入れ事業 東京都立八丈高等学校
- 神津島 離島留学事業 東京都立神津高校
- 新島村 ホームステイ事業 東京都立新島高等校
香川県
- 小豆島 せとうち留学 香川県立小豆島中央高等学校
広島県
- 大崎上島 大崎海星高等学校生徒全国募集 広島県立大崎海星高等学校
愛媛県
- 弓削島 弓削高等学校生徒全国募集 愛媛県立弓削高等学校
- 中島 松山北高等学校中島分校生徒全国募集 愛媛県立松山北高等学校中島分校
島根県
- 島前・中ノ島 島留学(しまね留学) 島根県立隠岐島前高等学校
- 島前・中ノ島 しまね高2留学(地域みらい留学 365) 島根県立隠岐島前高等学校
- 島後 しまね留学 島根県立隠岐高等学校
- 島後 離島留学 島根県立隠岐水産高等学校
- 島後 しまね留学365 島根県立隠岐高等学校
長崎県
- 壱岐島 離島留学 長崎県立壱岐高等学校
- 福江島 離島留学 長崎県立五島高等学校
- 福江島 離島留学 長崎県立五島南高等学校
- 奈留島 離島留学 長崎県立奈留高等学校
- 小値賀島 ふるさと留学 長崎県立北松西高等学校
- 対馬 離島留学 長崎県立対馬高等学校
鹿児島県
- 奄美大島 地域みらい留学 鹿児島県立古仁屋高等学校
- 喜界島 サンゴ留学 鹿児島県立喜界高等学校
- 屋久島 地域みらい留学 鹿児島県立屋久島高等学校
まとめ
この離島留学制度を活用して、全国から小学生や中学生、高校生を募集して、島外の子ども達を離島の学校が受け入れることで廃校の危機を回避できたケースも数多くあります。
その一方で、留学生が集まらない、受け入れ準備ができないなど、留学受入事業の実施が難しく存続が危ぶまれてしまう事例も見られます。
海外留学と違って、国内留学の場合は日本語での意思疎通ができる環境ですので、初めて親元を離れる子ども達にとってハードルも低くなるのではないでしょうか?
子どもだけが留学する場合は寮生活なのか、里親宅のホームステイなのか、または家族で留学するのかなど、子ども自身がどのような形の離島留学を希望するのか明確にすることが大切です。
この記事を読んで興味を持った方は、ぜひ一度ご家族で話し合ってみてください。
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