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留学マナビジンarticlesフィリピン貧困の連鎖(2/2)フィリピン国内に仕事がない2つの理由

フィリピン貧困の連鎖(2/2)フィリピン国内に仕事がない2つの理由

フィリピンにはわずかな数の富裕層と、国民の大多数を占める貧困層とが存在しており、フィリピンに生まれた富の大半を富裕層が独占していること、および貧困の連鎖の実態について、前回は紹介しました。

フィリピン貧困の連鎖(1/2)なぜ経済成長しても一般国民は豊かにならないのか?

今回は、フィリピンに横たわる貧富の格差がなぜ生じているのか、そして貧富の連鎖を断ち切るために何が必要なのかを追いかけてみます。

ただし、貧富の格差が生まれる原因については、これまでも何回か記事として取り上げてきました。そこで、今回は駆け足で要点のみをまとめます。詳細については、各記事へのリンクを掲載しましたので、ぜひ目を通してみて下さい。

3.フィリピンに見られる貧富を生み出す構造

前回もふれましたが、貧困の連鎖が何世代にも渡って繰り返されるのは、フィリピンのなかに「貧富を生み出す構造」がガッチリと組み込まれているからです。

「貧富を生み出す構造」は、主に3つの側面から造られています。

それは、
・歴史的な背景
・働きたくても仕事がないという現実
・歴史が育んだあきらめ
の境地の3つです。

ひとつひとつ紹介していきます。

3-1.歴史的な背景

フィリピンに貧富の格差が生まれた一番の原因は、その歴史に求めることができます。フィリピンの貧富の差は、16世紀から始まる植民地時代に強制的に作られたものです。それは、スペインによる植民地支配から始まり、アメリカによる植民地支配でも継承されました。

なぜなら、異民族を奴隷のように支配するために、フィリピン人のなかに支配層と被支配層をつくることは、宗主国であるスペインやアメリカの利益につながったからです。

支配層を優遇して宗主国の意のままに従わせることで、反乱の恐れなく支配する構造を築くことができたのです。この当時の支配層は、現在のフィリピンの富裕層につながり、被支配層は貧困層につながっています。

また、支配層のフィリピン人とスペイン人の間に生まれた混血児が、裕福な一族を誕生させました。今日につながるスペイン系財閥です。

さらに、スペインやアメリカのビジネスを手助けするために中華系の人々が支配層に入り込み、中華系財閥が生まれました。

これ以降、フィリピンの経済界は財閥が既得権益を独占し、少数の資本家が国民の大多数を占める労働者を搾取するという悪循環が始まったのです。

支配層と被支配層を分けたのは土地の所有です。スペインは被支配層の一般住民から、父祖から受け継いできた土地を巧みに奪い、それを支配層やキリスト教会、スペイン人の役人などに集中的に持たせました。

こうして支配層は大地主となり、被支配層は土地を持たない小作人として搾取(さくしゅ)される構造が生まれたのです。それは、持つ者と持たざる者の違いとして、今日に至るまで大きな影響を及ぼしています。

大地主と小作人が存在するのは、日本をはじめとして各国で見られたことであり、フィリピンが特別なわけではありません。

しかし、フィリピンの場合、スペインとアメリカの圧力によって強制的に土地の分配が為されたため、他国では見られないほど極端な偏りが生じてしまいました。

国家が近代化を成し遂げる過程で、多くの国が農地解放を成し遂げています。日本も戦後、GHQの主導によって農地改革が強制的に進められたことで、その後の経済発展の礎を築くことができました。

ところがフィリピンでは、農地改革がほとんど進んでいません。植民地時代に植え付けられた大地主と小作人の関係は、今に至るもそのまま残されています。

スモーキーマウンテンなどのスラムは、地方で小作人として働いていた農民が生活苦から逃げ出し、仕事を探すために都会に出てきたことで生じています。

では、なぜ農地改革が進まないのかと言えば、大地主や財閥などの支配層が彼らの既得権益を失わないように振る舞っているからです。

フィリピン独立後は、支配層は一族のなかから政治家を輩出し、彼らの利益を代表させることに努めました。現在では、地方政治から国政まで、政治家の多くが支配層に牛耳られています。

有能な大統領として人気が高かったアキノ前大統領もまた、財閥の出身です。そのため、財閥を解体したり、農地を解放する政策には積極的に手をつけませんでした。

これまでも、マルコスをはじめ、農地改革に手をつけた大統領はいますが、そのことごとくが失敗に終わっています。

農地改革と並び、財閥の解体もまた、フィリピンの歴代大統領が手をつけようとしてできなかった聖域です。

フィリピンの主要なビジネスのほとんどに財閥の息がかかっています。かくして、財界と政界は富裕層がしっかりと抑え、彼らの権益が侵されないように監視をする社会がつくられたのです。

農地改革と財閥解体という聖域に踏み込もうとしたジャーナリストの多くは、不慮の死を遂げています。

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(RSF)」の発表によると、2017年にはフィリピンで少なくとも5人のジャーナリストが銃撃を受け、そのうち4人が死亡しています。RSFのデータによれば、ジャーナリストにとってアジアでは、フィリピンが最も危険な国といえます。

▶ 関連リンク:17年に殺害されたジャーナリストは65人、シリアが最も危険な国に:AFP

財閥や大地主に代表される富裕層による既得権益と農地の独占と並び、フィリピンの一般住民を苦しめているのが、下級官吏にまで広がる汚職です。

フィリピンで汚職が一般化したのは、マルコス政権下といわれています。マルコス政権末期の経済的混乱が、不正を当たり前とする歪な社会構造を生んでしまったのかもしれません。

富裕層の権益を守るためのシステムとして、汚職が組み込まれていることにも問題があります。

このようにフィリピンには、歴史に基づく貧困の格差を生み出すための構造が存在しています。

この構造を突き崩すためには、富裕層の抵抗に負けないだけの力が必要です。豪腕で名を馳せるドゥテルテ大統領であれば、もしかしたらどうにかしてくれるのではないか、といった期待が貧困層の人々を中心に寄せられています。

ドゥテルテ氏は、財閥とは無縁の大統領であるだけに、富裕層の顔色をうかがうことなく財閥解体と農地解放、そして汚職の追放を断行してくれるのではないかと注目されています。

3-2.働きたくても仕事がない現実

フィリピン

歴史的な背景とともに、働きたくても仕事がないという現実が、貧富の差を助長しています。

下の図表は、フィリピンと周辺国の失業率を比較したグラフです。

負の連鎖2

フィリピンと周辺国の失業率の変遷

参照元:https://ecodb.net/exec/

2017年のフィリピンの失業率は6.0%と、タイの0.7%、ベトナムの2.33%に比べてはるかに高くなっています。

しかし、失業率はその定義によって数値が大きく変わります。この失業率は、労働力人口に占める失業者の割合を表しています。

ここでいう失業者とは、仕事はないけれど就業可能であり、かつ仕事を探す活動をしていた者を指します。

また、最新のPhilippines Unemployment Rateによると、失業者の63.2%が男性です。

失業者の年齢層にも偏りが見られます。15歳~24歳の若年層の失業者が 50.1%、本来は働き盛りであるはずの25歳~34歳の失業者が、28.3%を占めています。この数字は、もっとも仕事を欲する若い世代のフィリピン人が仕事にありつけていない現実を表しています。

2017年第四半期の雇用者数は、2016年度より134万人減り、4,055万人となっています。人口がおよそ1億人であることを考えると、労働者人口が豊富であるにもかかわらず、フィリピンでは4割ほどの人しか仕事に就いていないことになります。

フィリピンに少しの間滞在してみれば、この国の人々の多くが仕事にあぶれている現実が嫌でも目に飛び込んできます。どれだけ働きたくても仕事がないという辛さは、6%という失業率だけで語ることはけしてできません。

なぜフィリピン国内に仕事がないのか?

国内に仕事がないことの主な要因は二つあげられます。

ひとつは、内乱が多く長いこと治安が不安定であったため、外国からの投資を引き込めなかったことです。

そのためフィリピンでは、経済発展に不可欠な工業が発達しませんでした。日本を見渡してみればわかりますが、多くの雇用を生み出すのは製造業であり、大規模な工場です。

ところが、フィリピンでは製造業が育たなかったため、大量の雇用が生まれなかったのです。通常は農林水産業からなる第一次産業から始まり、次に製造業や建設業を中心とする第二次産業が栄え、最後にサービスや情報産業からなる第三次産業へと産業の主体が移っていくことが一般的です。日本の経済成長も、こうしてもたらされました。

しかし、フィリピンでは第二次産業を飛ばして、第三次産業が栄えるという歪な産業構造になっています。

先にあげた4,055万人の内訳をみても、サービス部門の労働者が57.0%、農業部門25.0%、製造業などの産業18.1%の比率になっています。

この数字を見ても、フィリピンの第二次産業がいかに空洞化しているかがわかります。大量の雇用を見込める第二次産業がしぼんでいるため、雇用の受け皿がフィリピン国内には不足しているのです。

国内に仕事がないことのもうひとつの要因は、人口が多すぎることです。

負の連鎖2

参照元:https://yutakatokunaga.com/archives/1813835.html
上のグラフは、ASEAN諸国の人口推移を表したものです。フィリピンの人口が、きれいに右肩上がりの直線を描いていることがわかります。他のASEAN諸国と比べても、フィリピンの人口増加率は極めて高くなっています。

人口が増え続ける一番の理由は、カトリックの影響で中絶が法的に禁止されているためです。中絶ばかりでなく、避妊さえもカトリック教会の圧力により遠ざけられています。

経済的にゆとりのない貧困層ほど避妊できない状況にあるため、フィリピンでは貧困層ほど出生率が極端に高くなっています。ことに、スラムでは13歳ぐらいから身ごもる子も多く、その場合でも法的には理由のいかんを問わず産むよりありません。

経済的に困窮を極めているなか、さらに子供が増えることで、より一層生活は苦しくなります。増え続ける人口が、さらなる貧困を生み出しています。

人口が増え続ける一方なのに、雇用を受け入れるだけの産業が育ってないため、多くの人が働き口がないまま貧困生活を余儀なくされています。

人口が多いことは、国内の消費活動を促進することで経済成長を招く面もありますが、失業率を高めるとともに労働条件を悪化させ、劣悪な環境のなか、安い給料で働かざるを得ない状況を招きます。

貧困の連鎖を断ち切るために、今こそ人口の抑制が求められています。

3-3.歴史が育んだあきらめの境地

フィリピン

「貸し借り文化」がもたらしたもの

富裕層と貧困層が意図的に作られたという歴史的な背景、現実に仕事がないというジレンマに加え、あきらめの境地とも言うべきフィリピン人貧困層に共通する精神的な構造が、貧困からの脱出を妨害しています。

五百年に渡る植民地としての歴史は、抵抗しようにもその力がなく、支配層の言うがままに生きていくしかない絶望感を、フィリピンの被支配者層にはびこらせました。

スペインが広めたカトリックの教えにより、貧困層の人口は増え続ける一方であったため、貧困層の人々ほど大家族としての生活を強いられました。支配層に搾取されるがまま貧困生活を耐え忍ぶなか、家族愛で結束しなければ生きてはいけない状況が続いたのです。

こうして、人一倍強い家族愛はフィリピン文化の一つとなり、今に受け継がれています。

その反面、家族愛の強さは負の遺産をも残しました。食べられなければ持てる者が分かち合うという文化は博愛精神に裏打ちされた美徳ですが、その裏返しとして「食べられなくても誰かがなんとかしてくれる」という他人に依存する文化をも育んでしまいました。

こうした文化は、貧困層の人々から向上心や自立心を奪っていきました。困ったら他人に依存すればよい、という怠け心を助長してしまったのです。

その日の食べるものさえ事欠く毎日のなかで、家族や親族、隣人同士で食料やお金を貸し借りすることが当たり前のように根付いていきました。これを「貸し借り文化」と呼びます。

そこには、持てる者が持たない者を助けなければいけないという義務感が働きます。持っているにもかかわらず誰かに頼られたときに助けないと、日本の村八分のような目にあうことも珍しくありません。

そのため貧困層の人々ほど、臨時収入が入るとすぐに使い切ってしまう習慣があります。使わずにとっておけば誰かを助けるために使う羽目になるため、自分や家族のために使い果たしたほうが、よほどましなのです。

フィリピンの貧困層には、お金を後先考えずに使ってしまうと言う悪癖がありますが、そうした習慣は「貸し借り文化」の生んだマイナス面です。

貸し借り文化についての記事
フィリピン人の借金事情

クラブメンタリティーという悪癖

クラブメンタリティ
さらに、助け合うという連帯の精神は、「クラブメンタリティー」を育ててしまいました。「クラブメンタリティー」とは、フィリピン人が自分たちのメンタルを自虐的に呼ぶときの言葉です。

「クラブ」とは「カニ」のことです。フィリピンの港に近い市場に行くと、竹で編んだカゴのなかに水揚げしたカニを入れてある光景をよく目にします。カニを一匹だけカゴに入れておくと、カニは竹かごを器用に上り、たちまち逃げ出してしまいます。

では、カニが逃げないようにするには、どうすればよいと思いますか?

正解は「竹カゴのなかに多くのカニを入れておく」です。すると一匹のカニが這い上がろうとすると、他のカニも逃げ出そうとするあまり、そのカニの足を挟んで引っ張り始めます。こうしてお互いに足の引っ張り合いをするため、いつまでたっても一匹も逃げられなくなるのです。

これが「クラブメンタリティー」です。

仲間意識が強いがゆえに、一人だけ抜け駆けすることをフィリピンの人たちは許しません。もし、自分たちと同じ貧困生活から抜け出そうとする人がいると、ねたみや嫉妬からそれを邪魔しようと動く人が驚くほど多いのです。

悪い噂を流したり、さまざまな罠を仕掛けたりして、自分たちの世界から抜け出せないようになんとか足を引っ張ろうとします。

長い植民地生活は、生まれながらについている格差については初めからあきらめるものの、自分たちと同じ世界にいる人の抜け駆けに対してはことさら敏感で、何としても許さないという意固地さを生みました。

激しい貧富の差が何世紀にも渡って続いているにもかかわらず、暴動がおこるわけでもなく、理不尽な身分社会が維持されてきたのは、こうしたフィリピン人のメンタルに負うところが大きいといえるでしょう。

貧困から抜け出すには、それなりの努力があったはずですが、クラブメンタリティーはそんなことを考慮しません。理性ではなく感情なのです。努力や勤勉さの結果として這い上がろうとする人の足でも、ためらうことなく引っ張ります。

クラブメンタリティーが徹底した社会では、這い上がろうとする努力そのものが否定されます。下手にがんばれば激しい妬みを買い、人から足元をすくわれるだけだからです。

そのため、その日を生きていくことしか考えられない刹那的な生き方が、貧困層では当たり前になりました。

フィリピンの貧困層は精神的にも、貧困から抜け出せない連鎖を自ら招いています。

歴史的に生み出された貧富を生み出す構造、働きたくても仕事がないという現実、そして精神面の3つが相まることで貧富の格差が生まれ、貧困の連鎖が生じています。この3つの根を断ち切ることが、フィリピンの再生へとつながります。

では、具体的にどうすればよいのでしょうか?

4.教育こそが夢や希望への架け橋

フィリピン

4-1.貧困の連鎖を止めるための具体策

フィリピンに存在する貧困の連鎖を止めるために、具体的には次のことが必要です。

1)農地解放を進め、フィリピンの大多数を占める農民が、農業だけで豊かな生活を送れる環境を整備すること。
2)財閥を解体して既得権益を広く開放する規制緩和を推し進めること。規制緩和が実現すれば、外国からの投資を受け入れやすくなります。
3)カトリック教会の圧力に負けることなく、避妊へのアクセスを容易にすることで人口抑制を実施すること。
4)中央から地方にまではびこる汚職の構造を根こそぎ改革すること。
5)大型インフラ整備を推し進めたり外国資本を招き入れることで、国内に雇用を生み出す産業を育てること。
6)貧困層の人々が自立できるような支援活動を推し進めること。

この他にも、地方の格差をなくすための政策や富裕層への累進課税や相続税の引き上げなども、必要になるでしょう。もちろん、これらは貧困層の人々の手が届かないところにあるため、政治主導による改革が待たれます。

4-2.教育の重要性

上記のことを踏まえた上で、貧困層の子供たちへの教育をもっと徹底させることが求められています。フィリピンの貧困家庭では、教育をめぐっていつも同じ選択を強いられています。子供たちを食べさせるために学校を辞めさせるか、満足に食べさせることはできなくても学校に通わせ続けるかの二択です。

貧困の度合いにもよりますが、最貧困層で後者を選ぶ家庭はほとんどいません。明日の暮らしよりも、今日を生き抜くことの方が重要だからです。貧困層の子供たちは貴重な労働源です。家族の生活を支えるために、学校へ通うよりも働くことを求められるのが一般的です。

フィリピンはもともと教育熱心な国です。周辺諸国と比べても教育水準が高いことで知られており、2015年に世界銀行が公表した識字率は 96.6%です。wikipediaによる「識字率による国順リスト」を見てみると、フィリピンの識字率の高さはASEAN諸国のなかでトップです。

ちなみに識字率のなかには、単純な算術計算を行う能力である「初歩の計算能力」も含みます。貧困の格差が大きい割に識字率が高いのは、アメリカによる植民地政策の残した数少ない恩恵の一つです。

政治的な混乱が続いたため、一時は識字率が落ち込んだこともあります。国連による「ミレニアム開発目標レポート2006」によると、1990年から2004年の間にフィリピンの青年識字率は、97.3%から95.1%に低下しています。青年識字率が低下したのは、東南アジアで唯一フィリピンだけでした。

青年識字率は、15歳から24歳の青年の識字率を表しています。フィリピンの青年識字率は2008年から回復に転じ、2015年には98.2%に達しています。

就学率も高く、2011年~2012年のデータによると初等教育で97%、中等教育で65%を記録しています。ただし問題は就学はしても、その後多くの子供たちが途中で脱落してしまうことです。

卒業率は小学校で65%、高校で50%に過ぎません。卒業できない理由としてもっとも多いのが、「家族の経済的な理由」です。貧困の度合いが増すごとに、小学校を卒業することさえできない子供たちが増えます。

ケソン市のアルフレッド・バルガス議員は2017年に、小学生と高校の脱落者数は480万人に達し、2012年以来11%増加したと報告しています。

Number of elementary, high school dropouts rising – lawmaker:philstar.com

小学校や中学校に通うことをやめ、親の仕事を手伝い始める子供たちの行き着く先は、父母となんら変わることのない貧困にあえぐ日々です。その救いようのない状況については、前回の記事で具体的に紹介した通りです。

こうした貧困の連鎖を食い止めるには、子供たちに教育を施し、まともな仕事に就ける可能性を広げるよりありません。親と同じ仕事に就くのではなく、他にも選択肢を与えることが何より大切です。

貧困から抜け出せるように、今も各種のボランティア団体やNGOが、子供たちの教育支援に動いています。そうした現場でよく指摘されるのが、はじめは目を輝かせて勉強していた子供たちの多くが、小学校高学年にもなると急速にやる気を失っていくことです。

現実を理解する力が備わるにつれて、多くの子供たちに「どれだけ頑張って勉強しても、貧困にあえぐ親のような人生しかない。ゴミ山から一生抜け出せない」といったあきらめの気持ちが、芽生えてしまうからです。

その頃になると、貧困層の多くの子供たちは夢や希望を失ってしまいます。夢や希望は、頑張れば手が届く範囲にあると思えるからこそ、はじめて抱くことができるものです。

実現する可能性が限りなくゼロに近いとわかれば、はなから夢も希望も持ちません。貧困層の子供たちは、夢と現実とが完全に切り離された世界に生きています。

しかし、そうしたあきらめの境地を是正できるのも教育だけです。教育を受けることで良い仕事に就けるチャンスが生まれ、貧困から抜け出せることを子供たちに教える必要があります。教育こそが、夢や希望への架け橋なのです。

ただし、教育の力だけで貧困を生み出す構造そのものを突き崩すことには無理があります。学歴をつけただけで良い仕事にありつけるほど、フィリピンの社会は甘くないからです。

現在のフィリピンでは、大卒でもなかなかまともな仕事にありつけません。「大学を出ただけではファストフード店のカウンターに立てるのが精いっぱい」といったぼやきは、よく耳にします。

実際、マクドナルドやジョリビーで履歴書を持った大学生が列をなしている光景を、時折見かけます。働き口が極端に少ないフィリピンでは、ファストフード店に就職するだけでも大変なのです。

しかも、はじめから正社員として採用されることはまずありません。半年間は雇用されるものの、その後で正式に採用される当ては一切ありません。

仕事を求める人口が多いフィリピンでは、働き手はいくらでも見つけられます。常に採用する企業の立場の方が強く、労働条件が悪くても、給料が安くても、働き手に困ることはありません。

そのため、大卒といえども激しい競争を勝ちきらなければ、就職には至りません。新卒で正社員として採用されるのは、ランクの高い大学をトップに近い成績で卒業したり、大学院などでさらに学歴をつけたり、難関といわれる資格を取得した一握りの若者だけです。普通に大学を卒業しただけでは、縁故関係やコネがない限り良い仕事には就けません。

大卒でさえ、そのような厳しい状況のなか、小学校を中退しているだけの貧困層の子供たちがまともな職にありつくことなど、まずありえません。せめて高卒の学歴がないと、仕事に就くことさえおぼつかないのが現実です。

見通しはけして甘くはないものの、せめて最低限の教育だけでも子供たちに保障してあげられる社会にしなければ、貧困の格差はいつまで経っても解消できません。

フィリピン政府も貧困層への教育支援に積極的に動きつつあります。貧困層に対して無理のない融資を行うマイクロファイナンスにおいても、子供を学校に通わせることを条件とする対応が始まっています。

ドゥテルテ氏が大統領になったことで、フィリピンに横たわる貧富を生み出す構造そのものを是正しようとする動きは、歴代大統領のどの政権よりも強まっています。

しかし、フィリピン社会に打ち込まれた貧困の連鎖というクサビを抜くのは簡単なことではありません。是正のためには、まだ何十年もかかることでしょう。

それでもドゥテルテ政権になり、その試みは確実に進められています。政府主導による上からの改革と、教育による底辺からの改革が合わさることで、貧困の連鎖を過去のものにできるかもしれません。

改革はまだ、始まったばかりです。

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ドン山本 フリーライター
ドン山本 フリーライター
タウン誌の副編集長を経て独立。フリーライターとして別冊宝島などの編集に加わりながらIT関連の知識を吸収し、IT系ベンチャー企業を起業。

その後、持ち前の放浪癖を抑え難くアジアに移住。フィリピンとタイを中心に、フリージャーナリストとして現地からの情報を発信している。

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