英検やTOEIC、入学試験等のリスニングの点数を上げたいという人は多いのではないでしょうか。
そして、頑張っているのに英語が聞き取れるようにならないという悩みを持っている人も多いと思います。
そこで今回は、試験対策を中心にリスニングを上達させるのが難しい理由と、リスニングを得意にするリピーティングとシャドーイングの学習方法について紹介します。
目次
リスニングが聞き取れない3つの原因
リスニングが聞き取れない、または上達しない理由は大きく分けて3つあります。
1. カタカナ発音と実際の発音のギャップがある
1つ目は、カタカナ発音と実際の発音の間に大きな違いがあることです。
学校ではTake a look at that tower.という文を習ったときには「テイク・ア・ルック・アット・ザット・タワー」のように発音することが多いと思います。
しかし実際の会話で「テイク・ア・ルック・アット・ザット・タワー」のように1語ずつ区切ってはっきりと発音されることはまずありません。
普通ネイティブは「テイカルカッザッタワ」のように音を繋げて発音します。
強調したいときには1語ずつはっきりと発音することもありますが、それはかなりのレアケースです。基本的にネイティブは音を繋げられるだけ繋げると思って間違いありません。
ときにはピリオドやコンマすら無視して2文以上を一息で喋ってしまう人もいます。
つまり「テイクと聞こえたらtake」と思っている間は、ネイティブのtakeは聞き取れないのです。
takeを聞き取るにはtake aなら「テイカ」、take itなら「テイキッ」、take overなら「テイコゥヴァ」のように、takeが実際の文の中でどのように発音されるのかをパターンとして認識し、頭の中にデータベースを構築する必要があるのです。
このデータベースが出来上がるにつれて、認識できる音が増えていきます。
慣れるまでは大変ですが、1度繋がり方を掴んでしまえば他の単語でも応用できるようになります。
take itが聞き取れるようになれば、make itやshake itが聞き取れるようになるまでに、それほど時間はかからないはずです。
まずはこの音のつながりのパターンを1つ1つ確実に身につけていくことを心がけてください。
こちらのあいうえおフォニックスも参考になります。
2. 読んで意味がわからない文は聞いても理解出来ない
リスニングが伸び悩む2つ目の理由は、そもそも英語表現が理解できていないということです。
たとえば皆さんは次の英文を返り読みしないで1度で理解できますか?
この32語もある1文、実は2019年度第3回の英検準1級のリスニングからの抜粋です。
当たり前のことですが、リスニングでは理解できなかった部分をもう1度聞き直すことはできません。
「えーと、この文の主語は何だろう…?」「あれ?このwhoseは疑問詞?それとも関係代名詞?」と考えているうちに次の文が始まってしまいます。
つまり、リスニングで試されているのは、音声を聞いて単語に変換できるかだけではなく、英文で使われている単語や文法が理解できるかまで試されているのです。
しかも、英文を聞いた瞬間に理解できるというレベルまで要求されます。
内容を覚えていられるか
そしてリスニングテストの点数が伸びない3つ目の理由は、英文の内容を覚えていられないということです。
放送が流れているときには「ふむふむ、なるほど」と思いながら聞いているのに、いざ質問文が出てくると「あれ?そんなこと言っていたかな?」となることはありませんか。
私はよくありました。今でも油断していると内容を忘れてしまいます。
これは英語だから、自分にとって馴染みの薄い言語だから起こる現象ではありません。日本人が日本語の文章を聞いても同じ現象がおこります。
次の文を1度だけ読んで質問に答えてください。
今度の日曜日は次男の誕生日なのですが、その日には長男が部活の大会のため朝から晩まで不在、その前日は姉の夫が出張なので、誕生日の2日前にパーティーをすることにしました。
次男はプレゼントにスマホを希望していますが、姉は小学生にはスマホはまだ早いと思っているためゲームソフトを買ってあげることにしました。
次男はどのゲームソフトを買ってもらうかまだ決めかねているので、日曜日に姉、次男、末っ子の3人でバスに乗ってショッピングセンターに買い物に行くことにしました。
末っ子はそのショッピングセンターで食べるソフトクリームが大のお気に入りです。
問題:誕生日パーティーは何曜日に行われますか?
読み返してみれば難しくも何ともないと思います。答えは金曜日です。
しかしこれを音声で聞くとなると、質問文が流れた頃にはすっかり内容を忘れてしまっているということがよくあります。
リスニングテストで点数を上げるためには放送内容を覚えられるようにトレーニングをすること、思い出せるようにすることも欠かせないのです。
場合によっては問題文を先読むするといったテクニックも必要になってきます。
リスニングを上達させる3つの主な方法
リスニングを上達させる方法は、リピーティング、シャドーイング、ディクテーションの3つです。
リピーティングは1文ごと、または意味のまとまりごとに音声を止め、聞こえた通りに真似して言うことです。
お手本がThis is my sister.と言ったら一度止めてThis is my sister.と発声します。
シャドーイングは音声を止めずに1~2語遅れて聞こえた通りに発音します。
文字で説明するのは少し難しいのですがThis is(This) my(is) sister(my sister).の( )内のタイミングで発声します。
そしてディクテーションは聞こえた英文を書き取ることです。
お手本がThis is my sister.と言ったら聞こえた通りにThis is my sister.と紙に書きます。
それぞれ効果が異なりますので目的に合わせて活用してください。
ステップ1. スクリプトを見ながらリピーティング・シャドーイング
聞き取れる音を増やすためには、何度も聞くだけでは不十分です。自分でも正確に発音できるようにすることが欠かせません。一見遠回りに見えますが、発音を鍛えることが聞き取りを向上するのに最も有効な手段です。
発音とリスニングは表裏一体です。
自分で聞き取れない音は正しく発音できませんし、正しく発音できる音は聞き取れるようになります。
自分が聞き取れない音を見つけ、お手本のように発音できるようにするためには、スクリプトを見ながらリピーティングかシャドーイングをすることが効果的です。
この目的では、リピーティングもシャドーイングもどちらの方が優れているということはありません。
5回リピーティングしてから5回シャドーイングするという方法でも構いませんし、シャドーイングした直後にリピーティングするという練習を5セット繰り返すという方法でも構いません。
注意してほしいのは以下の3点です。
1. 必ずスクリプトを確認しながら行なう
聞こえてきた通りに発音することは重要ですが、同時に音と文字を結び付けられるようにすることも重要です。
たとえばDo you have time?とDo you have the time?の違いはtheの有無だけですが、意味は違ってきます。
前者は「お時間ありますか、今大丈夫ですか」という意味ですし、後者は「(今の)時間がわかりますか」と質問するときに使います。
さらに言えばこれをhave a timeとすると、不可算名詞timeに冠詞aがついているので文法的に誤っている文になります。
このように日本人には聞き取りづらいaやtheの有無で意味が変わってきたり、そのほかにもlightとright、thingとsing、burnとbarnなどカタカナにすると同じ音になってしまう単語があったりしますので、必ずスクリプトを見て自分がどんな文を練習しているのかを確認しながらなるべく正確に発音するようにしてください。
2. 聞こえた通りに発音する
文字を見るとどうしてもスペルの通りに発音したくなってしまいます。
get upは「ゲット・アップ」ではなく「ゲラップ」と発音する、Did you ~?は「ディド・ユー」ではなく「ディジュー」と発音することは学校でも教わった人が多いと思います。
また、バラエティ番組やインターネットの記事で「パリピ」「パーリーピーポー」なんて言葉を見たり聞いたりすることもあると思います。実際にpartyは「パーリ」、peopleは「ピーポゥ」と発音した方がネイティブ発音に近くなります。
同様にa littleなら「ア・リトル」ではなく「アリロゥ」とか「アリル」のように聞こえますし、betterも「ベター」よりも「ベダ」や「ベラ」の方が近いです。
折角ネイティブをお手本に発音練習をするのですから、徹底的に真似しましょう。
「ア・リトル」「ベター」と発音している間はa littleもbetterも聞き取れません。
逆に言えばネイティブと同じように発音できるようになったときに、ネイティブの言っている英語が聞き取れるようになります。
正確な発音の仕方を勉強したことがない人はよい機会ですので、ここで一度発音の本を読んでみるとよいでしょう。
私が今、一から発音の勉強をするとしたら明場由美子さんの「ネコろんで学べる英語発音の本」を買います。
一つ一つの発音の仕方がわかるのはもちろん、日本人に紛らわしい発音の区別やリエゾン(単語と単語の繋げ方)、省略や脱落までわかりやすく解説されていますので発音とリスニングの両方を鍛えることができます。
余談ですが明場由美子さんのYoutubeチャンネル「Yumi’s English Boot Camp」もとても英語学習の参考になりますよ。
リピーティングとシャドーイングの両方を行う
リピーティングもシャドーイングも、片方だけやっているとつい出来ているつもりになってしまいます。
リピーティングで思いっきりカタカナ発音しているのに直していなかったり、シャドーイングでうまく発音できずにモゴモゴと誤魔化しているのに気にせずに先に進めてしまったりということがよく起こります。
周りに発音をチェックしてくれる人がいれば問題ありませんが、一人でやるときは出来る限りお手本に近い発音ができるようになるまでリピーティングとシャドーイングの両方を繰り返すようにしましょう。
ステップ2 スクリプトを見ないでシャドーイング
慣れてきたらスクリプトを見ないでシャドーイングをしてみましょう。シャドーイングはリスニングへの集中力を高めるために非常に有効な手段です。
文章を読むときに黙読するよりも音読するほうが深く理解できるように、ただ英文を聞くだけよりも発声してみた方が深く理解できます。
このときに自信を持ってシャドーイングができている部分が正しく聞き取れた部分で、何となく発音して誤魔化した部分が聞き取れていない部分です。
厳しく自己採点して弱点を見つけましょう。
知らない単語が使われているのかもしれません。
苦手な文法や構文が使われているのかもしれません。
カタカナ発音から脱却できていないのかもしれません。
いずれにせよ大切なことは、次回は聞き取れるようにすることです。
意味がつかめない部分やうまくシャドーイングできない部分は必ずスクリプトを確認し、リピーティングとシャドーイングを駆使して弱点を克服してください。
ちなみに私はリスニングテストを受けるときにこっそりとシャドーイングをしています。もちろん口を動かすだけで声は出しません。
リスニング問題の演習中に前の問題のことをひきずってしまったことはありませんか?
いつの間にか問題と全く関係ないことを考えてしまっていたことはありませんか?
私はたまにあります。
こうなると焦りが焦りを呼んでしまい、今解いている問題も次に解く問題も壊滅的になってしまいます。
リスニング本番では余計なことを考えずに、今流れている放送に集中することが最重要です。私はそのための対策として、無声シャドーイングをしています。
そうすることで余計なことを考えずに、放送されている英文を理解することに集中できるからです。
音を出さないので禁止事項にはあたりませんし、試験監督に注意されたこともありません。
どうしても気になるのであればマスクをしていけば大丈夫です。思わず声を出してしまわないようにだけ気をつけてください。
次回の記事ではもう一つの手法である「ディクテーション」の効果的なやり方を解説します。